腰の砕けている俺をおぶってくれて寮まで……行くと思ったんですけど。
美和は勝手に、俺を渡り廊下に下ろす。

校舎の一号館の二階と二号館の二階を結ぶ廊下だ。


原因はわかってる。
「玲衣くんの、俺の背中に当たるんだけど」
美和がそんなこと言うもんだから。
そりゃ、あたるよ。
でも勃ってねぇんだし、そう感じないだろ。
わざと言ってんのかよ。
それがまたむかついて。
「ばかだろ、お前」
そう言ったせいだと思う。

怒ってんのか。
廊下へと進みだすもんだから、とめられねぇし。
「美和っ…。下駄箱、方向違うんだけど」
「そう?」
このタイミングで、謝るのもおかしな話で。

いやな沈黙が続き、つれてこられた渡り廊下で下ろされ今に至る。

厄介だな。
怒っているかもしれないから、ちょっと怖い気もするし。

「美和…寮、行かねぇの…?」
「どうして?」
どうにか美和の機嫌を取ろうと、普段使わない頭とか使ってみる。
上から美和の視線が突き刺さっていた。
見てられず、顔を俯かせた。

「……部屋で……したいし…」
「なにをしたいの?」
したいとか言ってしまったことに、めちゃくちゃ恥ずかしくなる。
「…っ…さっきの…続きとか…っっ」
別にしたいわけじゃねぇけどっ。

「玲衣くんが、俺の、一回、口でイかせてくれたら考えようかな」
「ばっ……」
またついバカと言いそうになって、慌てて口を噤む。
口で。
実はしたことがない。
されたことはあるが。

ここで、美和にやられるよりは、俺がした方が、恥ずかしくはない…か。
いやでも、無理だろう。
抵抗ある。
それにどうやればいいんだ。
美和が俺のを口でしてくれたときのことを思い返す。
舌を絡めて、口に含んで。
……無理だろ。

そうこう考えていると、しゃがみこんだ美和の手がズボンの上から股間に触れ、体がビクついた。
「っ…!!」
「どうして、硬くした?」
やばい。
ホントに、欲求不満なんだっつってんだろ。
脳内で、いろいろ考えちまったせいだ。

「…もう、いい加減、部屋連れてけよ…っ」
そう言うのに反発するよう美和は何度も俺の股間を揉みしだく。
「っ…んっ…やめっ…」
手をどかそうと美和の腕に爪を立てた。

「美和っ……んっ…部屋で…すればいいだろっ」
「ここで、欲情したのは玲衣くんの方だ」
「っ…違ぇよっ」
つい、いろいろ考えちまっただけだろうが。
やっべ。
気持ちいいし。
「.…はぁっ…んっ…謝る…からっ」
「なにを?」
「だからっ…いろいろと!」

許してくれるつもりなのか、美和の手が離れる。
そのまま、口を重ねられた。
「んっ…」
舌が絡まるのとか、気持ちいいし。
ボーっとする。
「ぅんっ…んっ…」
「舌、絡めるの上手くなったよね」
「っばっか…っ、なに言って…」
……なに言って…は俺だ。
ばかって。
なに言ってんだ俺。

やばい…そう感じたのは言った直後の自覚と、美和の楽しそうな顔を見たからだ。
一気に押し倒され、ズボンと下着を引き抜かれる。

「やめろってっ!」
俺が抵抗するのもむなしく、脱げたズボンと下着を持ち、美和は立ち上がった。
それに合わせて俺も、体を起こす。
「あんまり、そういうこと言うなら、このまま持って帰っちゃおうかな」
ズボンと下着を?
持ってお前だけ帰られたらいくら立てるようになったところで、恥ずかしくて動けない。

あまりの提案についまたバカだと言いそうになった。

「…帰るなよ」
なにも言ってくれず、美和はただ俺を見下ろす。
なに。
マジで怒ってんの?
違ぇよな?
でもなんにしろ、帰られたら困る。
「…美和…。帰ら…ないで」
しょうがなくいやいやそう言うと、しゃがんで、俺を見た。
「どうしよう.」
どうしようじゃねぇよ。
バカ。
「…っ…一緒に、寮で…」
「寮でしたいの?」
美和の手が、直に俺のを掴むとゆっくりと擦りあげていく。
大きく体がビクついて、後ろの壁にぶつかった。
「んっ…ぅん…っ」
「我慢、出来ないでしょ。腰、揺れてるし。一回ココで抜いてこうか」
「っや…だ…っ。もう、やだ…っ」
あまりにも自分の思うようにならず、涙が溢れてくる。
それを見てか、美和が手を止めた。

「嫌?」
そう言って、美和の指先が奥の窪みを撫でる。
「っ! ……美和…? もう…ココじゃやめろよ…っ」
「人目が気になって、玲衣くんが燃えない…てなら考えてもいいんだけど。  
玲衣くん、いつもより感じてるし。そんなん見たら、もっと感じさせたいって思うでしょう」
美和が耳元で話していたかと思いきや、舌の這う感触。
「っんっ…んぅんっ…!!」
 ゾクゾクして、顔を逆方向へとずらした。
「舐められるの、好き?」
俺が感じているのがわかってだろう、空いている手で俺の頭を押さえて、美和は音を立てながら耳を舐めてくる。
「ゃっ…んっ…離…っっ…や…っ」
いやらしい音が響く。
あいかわらず、入りそうで入らない位置を指がさ迷って。
欲しがるみたいに腰が動くのが自分でもわかって、恥ずかしくてたまらなかった。

実際、もう欲しくてたまらない。
「美和ぁ…っ…ゃ…だ、もうっ…。トイレとかっ」
せめて、隠れられる位置で。
「欲しいの…?」
「…んっ…だからっ……別の場所で…っ」
「欲しいんだ?」

「……欲しぃ…っ」

手が離れる。
やっと、どこか連れてってもらえる…?
美和が、俺の頬を撫でて、涙を拭った。

「玲衣くんは、自分がエムだって自覚はないの?」
「…え…」
「すごい、今、エッチだよ」
違う…だろ。
恥ずかしくて耐え難くて。
早く逃げ出したいのに。
美和の視界から逃れるよう俯いた先に映った自分のモノは、たっぷりと蜜を滴らせている。
違うってば。
だからこれは、ただ欲求不満なだけで。
部屋であってもこうなはず。
涙で視界がぼやけた。

腰を引き寄せられる。
「え…」
美和が腰を寄せて、いままさに入れようとしてて。
嘘だろ。
移動すんじゃないのかよ。
「っ…美和…っ…」
「あんまり大きな声出すと、誰か来ちゃうかも」
「っや…っ…入れな…っ」
「どうして?」
大きな声出る。
あんな空き教室とは違って、誰か通ろうと覗くかもしれない。
そりゃ、覗いて俺らがこんなことしてたら通らないだろうけど。
「…っ…見られ…っ…っあ!!」
美和に訴えようと思ったけれど、美和のが中に押し入ってくるもんだから、俺の言葉はかき消される。
「ぁああっ…抜…っ…やだっ…」
「駄目…。だって、玲衣くんのからすっごい溢れて後ろまでつたってるし、どんどん呑み込んでくれるし」
「ぁん…っ…やっ…やぁあっ」
感じるところを突かれながら奥へと突き進まれ、自分の声にあいかわらず羞恥心が高まった。
奥まで入りきって落ち着くと、美和は俺の頭をそっと撫でる。
「見られちゃうかもね。俺以外の人にさ。俺と繋がってるとこ」
興奮した様子でそう言う美和の声は、すごく色っぽくてたまらなくドキドキした。
「…や…だ…っ」
「本当は、好きでしょ。恥ずかしいこと」
俺って、本当にエム…なのかな。
恥ずかしいこと、こんなにたくさん言われてるのに。
「かわいいね…」
「っ…やぁあっ…!!」

耳元で美和にそう言われると、引き金だったみたいに体がビクついて、イってしまう。
嘘。もう嫌だ。
最悪だ。

「どうしたの…? そんなに泣いてさ。恥ずかしい? いつもより早くイっちゃったね」
美和が軽く腰を揺らすと、断続的に少しずつ残った精液とが溢れてくる。
「あっやっ…ゃあっ」
「もう一回、今度は一緒にイこうか。中で出してあげるから」
わざといやらしい言い方をして、それでも中を突き上げられて、何度も体がビクつき制御できそうになかった。
「もぉ…っ…ぁんっ…だめ…っやっやぁっ…見られっ…」
「あ、さっき、人通ってたかも」
それが本当かどうかはわからないけれど、もし見られてたらと思うと恥ずかしくてたまらない。
「ぃやっ…あっ…美和ぁっ…ゃめっ…」
「どうしたの? 言ってごらん」
「はぁっあんっ…見られ…ちゃ…っ」
「玲衣くん、こんなに足開いて、腰振ってるから、見られちゃったら、恥ずかしいね」
煽られてるのもわかってる。
それなのに、どうしよう。
すごい興奮する。
「やぁあっ…美和、やだぁっ…ぃくっ」
「やなのに、イっちゃうの? …恥ずかしくない?」
恥ずかしいのに、嫌なのに。
もう駄目だ。
「ぁんんっ…ぃくっ…やあっいっちゃうっ…やあっ…あぁああっっ!!」




結局、俺がイってしまうと、美和は自分のを引き抜いて外で出してくれていた。
…やっぱ、ここで中出しするとかは、自重してくれているんだろうか。
なんにせよ、俺はもうなにも考えたくない。

今度は一応、ちゃんと寮まで俺を運んでくれて、ベッドに寝かせてくれるけれど。

なんだ、こいつ。
絶対、すっげぇサドだし。

なんで、俺、こんな意地悪なヤツと付き合ってんだか。
そう思ったとき、自分がエムだからかとか、考えちまう。

むかつくけど、こういうのが好きなんだろうか。
もちろん、あんなとこでやるのはどうかと思う。
けど、美和にこんな風にされても、どこか、嫌じゃない。
楽しいような……。
絶対、言わねーけど。
美和のこういう性格、なんかたまんないかもしんない。
最悪だ俺。

「…美和のバカ…」
そう言うのにも、少し期待が混じるようになってしまった俺はもう重症だ。