次の日も、また、掃除中に会ってしまう。
が、今日はたぶん、こいつが俺を待ち伏せしてたんだろう。
無視して通り過ぎようとする俺の腕を取るもんだから。
「なんだよ…っ」
「玲衣くん、俺と付き合わない?」
また、こいつは唐突に。
なにを…。
「…はぁ?」
「付き合わないかって。もしかして、男に抵抗ある?」
俺の友達だって男と付き合ってるし。
そういうのは全然、抵抗ない。
が、こいつが俺にそんなこと言うなんて、思ってもいなかったし。
おかしいだろ。
「…気づいてると思うけど、俺、美和のこと嫌いなんだけど」
「やっぱり…でも、俺は好きなんだよね」
「…付き合えないから」
そう背を向けると、腕を強く掴んで、引き寄せられる。
「痛っ…てめぇっ」
「付き合う前に君のこと無理やりやったら、強姦とか言われちゃいそうでしょう?」
唐突になにを?
「…つまり、やりたいから付き合いたいわけ?」
「君とね」
冗談じゃねぇよ。
いくら本気で好かれてたとしても、こいつのこと、俺は嫌いだし。

で、やったら別れんの?
考え方がよくわかんねぇ、こいつ。

「…離せよ…っ」
「はい」
「俺は、付き合えないから」
「じゃあ、しょうがないけど、今夜あたり、やりに伺いますね」
だから、意味わかんねぇってっ。
つまり、やることはもう決定で?
それが、強姦か合意かの違いってことですか?
「来るなよっ」
「行くよ?」
「俺の部屋、知らねぇだろっ」
「そんなの、すぐ調べれる」
恐ぇってば。
ストーカーな勢いじゃねぇの?
「無理やりやられるのが恐い? 俺、彼女には優しいよ? 考えておいて? 俺は本気で玲衣くんが好きだから」
にっこり笑う笑顔は、いままでの会話が嘘のようなさわやかさだった。

嫌いなやつに告られた。
普通、俺が嫌ってるの、わかってんなら、美和も俺のこと嫌になるんじゃねぇの?
あ、いやがらせ?
わけわかんねぇ。

大嫌いな相手なのに。
好きとか言われて、少しだけ、無駄にドキドキしてしまっていた。

誰か。
相談しよう。
俺は、下校後、誠樹の部屋へと即行、移動した。
自分の部屋にいると、あいつが着そうだし。
「誠樹、相談が」
「んー。どうしましたか」
「あのさぁ。俺って、すっげぇ美和のこと嫌ってんじゃん?」
「あぁ。あからさまにね。バレバレですけど」
「だよなぁ。バレるよな」
「まぁ、俺は、玲衣の近くにいるからねぇ。なんとなくわかるけど。ほら、お前、運動で負けたのとか、あいつが初めてだろ」
そうなんだよ、そうなんです。
ねたみくさいんですけど、それが原因だったりしますよ。

「でさ。そういうのって、やっぱ美和には伝わってそうな気がすんだよ」
「…まぁ、よく話すなら、バレるかもしんないけどさ。玲衣って社交辞令してまでクラスメートと付き合うタイプじゃないし? 純玲と、そこまで接点ないだろ。お前が一方的にけんか腰なだけに見えるよ」
つまり、あいつは俺のこと気にしてないって?
ところがどっこい。
違うんだよ、それが。
俺、一応、嫌いだって伝えたし。

「…あのさ。告られたんだけど」
「………え?」
少し沈黙してから、やっと俺を睨むように聞き返す。
「なぁ、なんでかなぁ? 俺、嫌ってるってわかるだろうに」
「…ってか、マジなの?」
「あ、あれは、冗談か? 美和のアメリカンジョークってか」
「いや、別にあいつ帰国子女でもなんでもねぇからアメリカンではないだろうけど」
「冗談で、からかってんのかよ。それはそれでむかつくし」
「…冗談で告るようなタイプには見えねぇけど…」
じゃあ、本気?
ありえないっての。
「…嫌がらせか。俺、今日、あいつに犯されるかもしんない」
そう言うと、誠樹は笑いだす。
「なぁに言ってんだよ、お前」
「マジだってば。告白が本気だとしたら、それはそれでやられそうだし。嫌がらせだとしても、やられそうだし。どっちにしろ今日が命日なんだよ」
俺をなだめるように肩を叩いて。
「まぁ、落ち着けよ。そんなタイプじゃないだろ、純玲は」
「ちがーうっ。だまされてんだよ。やつは悪者だね」
「はいはい。じゃあ、全部、いまはネコかぶってるって? だとしても、あれだけ取り繕えるんなら、それはもうすばらしいことだよ」
「すばらしくねぇよ」
「よく考えてみろよ。勉強できて。運動できて。真面目そうで。まぁ、これは嘘だとしてもだよ。かっこいいし、人気あるし。そんなやつに告られたって。自慢になるよ」
たしかに、やつの悪いところがうまく思いつかないんだけど。
「ありえねぇよ、なんで俺なんだよ」
「逆に、玲衣だけが敵意見せるから、気になるとか?」
あぁ。
確かに、俺だけがあいつに敵意むき出しかもしんねぇな。

「…あいつ、すっげぇ不良だったんだよ」
「なんで?」
「だいたい、編入っつったら、なんか事件起したに決まってんだろ。前の学校で、なんか問題起したに決まってんだよ」
「それはどうかな」
「じゃあ、なんで編入してんだよ」
「…まぁ、なにかあったんだろうけど…。俺も純玲のことこれからはちょっと注意して見てみるよ」
あぁ。誠樹がわかってくれてよかった。
けど、これからじゃ遅いような。
「っってか、どうすればいい? やられるんだけど、今日」
「なんで? そんな兆しがあんの?」
「モロに、今日、やりに行くって言われたんだって」
「…うーん。相手怒らせないようにして優しくしてもらえば?」
「のんきなこと言ってんじゃねぇよっ」
「あぁ、悪い悪い。でも、それって逃げ続けても逆効果だろ。ちゃんと話し合えば?」
…だよなぁ。
今日が避けれても、翌日だって会うんだし。
余計、相手怒らせそうだし。
ココは下手に出るか。
「…口で話すとモロに負けそうじゃねぇ? あいつ、頭いいし」
「腕力でも負けるだろ」
切ないなー、ホント…。
「ちょっと、どうにか話し合ってみるよ…」
「お前、熱くなりやすいから、冷静に話し合えよ」
「了解」
出来るなら、そうしたいけど。どうなることか。

彼女には優しいっつってたけど。
つまり、俺が付き合わないって言ったら、無理やりやられるわけ?
彼女になったら、やさしくやられるわけ?
どっちにしろ、やられんの?
おかしいだろ。

…昨日の二の舞になりそうだけど。
教室で、話し合おうとして結局、手、出されて。

だけれど、話し合うしかねぇだろ?
逃げ続けても意味ないだろ。
逃げたら反動大きそうだし。
ホントに、来るのか?
からかわれただけか?

俺は、緊張しながらも、自分の部屋に戻り、ボーっとテレビを見ながら過ごしていた。
もちろん、頭に入ってねぇけど。

ルームメイトの尋臣先輩は、あいかわらず帰りが遅いのかいないし。
いたらまだ、あいつも急におかしな行動に出ないだろうからまだ少し安心なんだけど。

すると、インターホン。
誰だよ、もう。
っつーか、奴ですか?
俺が、そっとドアを薄く開け確認すると、やっぱり美和だ。
「入っていいかな?」
「…やる気がなくて、話すだけなら入れる」
「……しょうがないね…。じゃあ、話すだけにする」
ため息をつきながらそう言うもんだから。
ドアを開け中にそいつを入れる。

「ルームメイト、いないんだ?」
「たぶん、すぐ帰ってくる」
来ないだろうけど、そう言っておこう。

「で。今日、掃除中に言ったのは、なんだったわけ? 冗談?」
ベッドに座る俺に合わせて、隣に座り込む。

「冗談であーゆうこと、言うように見える?」
見えませんけど。
本気であんなことさらっと言うようにも見えねぇっての。
「俺は、お前が嫌いだから。付き合えない」
「じゃ、やるだけ?」
なにを…言ってんですか、だから。
不意打ちで、俺をベッドに押し倒すもんだから。
「っお前、やらねぇって…っ」
「信じたわけ?」
…信じちゃいましたけど。
あんなため息見せるもんだからっ。

…抵抗するとこか、ここは。
俺は、手で美和の体を押し退けようとするけれど、肩をベッドに押し付けられると意外と手が不自由なのに気づいた。
両足も。
もがいてるうちに、美和の足が乗りかかる。
美和の腕に爪を立ててみせるけど、涼しい顔で俺を見下ろすだけ。
「っ離せって、馬鹿やろっ」
俺の両手首を片手で掴んでしまうと、用意していたのか、ネクタイで縛り上げる。
その先を、ベッドの端に縛りつけ固定してしまうと、あと、俺が抵抗できるのは足だけだ。
その足も、美和が上に乗ってちゃ上手く動かせない。
「っ…やめろってっ」
あぁ、俺、すっげぇ情けない声出た。
いやすぎる。
俺を無視して、美和はシャツのボタンを外していくと、胸元を撫でていく。
「っ…やめ…」
俺の言葉を消すように、口を重ねられ、舌が差し込まれる。
今度こそ…そう思うのに、その舌を上手くかわせないっつーか。
絡めとられ、頭にいやらしい音が響く。
「んっ……ぅんっ…」
やべぇ。なんかすっげぇ恥ずかしいし。
口を重ねている間に、美和の手が、俺のズボンのチャックを下ろして。
手が、取り上げた俺のを、容赦なく擦り上げる。
「んっンっ…ぅんっ…」
もう逃れたいのに。
美和の左手ががっちりと俺の頭を押さえて。
唾液が送り込まれる。
「んーっ…んっ」
苦しい。
やぁっと開放されたころには、呼吸するのにいっぱいいっぱいで。
「はぁっ…あっ…」
ズボンと下着を脱がされていくけれど、どうすればいいのかわかんねぇんだって。
「っおい、美和っ。ちょっと、落ち着けってっ」
「俺は、落ち着いてるよ」
「離しっ…話そうっ。こんなことっ」
「ココ、もう硬くなってるねぇ…」
俺のを根元から指先でなぞられると、恥ずかしいのと、その刺激で、体が強張る。
「んっ…」
なにも言わずに、何度も擦りあげられて、体中が熱くなった。
「んっ…ぅんっ…あっ…んっ…」
やべぇ。
気持ちいい。
と、頃合と見てか、離れた手。
目を向けると、指先を舐め上げる姿。
「っなっ…なにっ、無理っ。馬鹿っ」
「ココも初めてなんだよねぇ?」
指が、後ろの入り口を撫でて示す。
すっげぇ恥ずかしいしっ。
「なぁ、いい加減にしろってっ」
「彼女になる?」
「なんで? 意味わかんねぇっ」
「残念。強姦にならない程度に、気をつけよう」
あぁ、マジですか。
指が、ゆっくりと入り込んでくる。
「んっんーっ…やめっ」
「キツいなぁ。さすがに。1本入れるだけでも大変だ」
その入り込んだ指が、ゆっくりと中を探っていく。
「んっ…ぅんっ」
「無理やりやろうと思ったんだけど。優しくしたくなるのは、やっぱ、好きだからかな」
優しいのか、これは。
「はぁっあっ…抜っ」
じっくりと俺の顔を見下ろしながら、指を動かして。
そんな間近で見んなよ。
「あっ…ンっ…」
「感じるの…? 俺の指で」
「はぁっ…あっんぅっ…」
なに、俺、感じてんの?
「ちが…っ」
「感じてるんだ…?」
言い当てられて自覚すると、すっげぇソコが熱くてたまらなくなってくる。
「ぁっあっ…ん…くっ」
「ココが、気持ちいい?」
突かれた箇所が、気持ちよくて、体が跳ね上がった。
「ぁあっ…んーっ」
「そうなんだ?」
俺の体と会話してんじゃねぇよっ。
「ンっ…やめっ…ぁあっあっ…」
「すごい…声、やらしいんだね…。こんなやらしい声出すなんて、思ってもいなかった」
熱っぽく、少しからかわれるようにそう言われ、恥ずかしくて、たまらなくなる。
「もっと聞かせて?」
もう絶対、声出したくないって思うのに。
さっきよりも強く指先が中を蠢くもんだから。
「ぁあっんっ…やぁあっ」
手で押さえたい。
やだ、こんな声。
こんな嫌いな奴に聞かれるなんて。
「はぁっぁんっ…やっ…」
涙が溢れる。
やばい。
声、止まんない。
「ぁっあっんぅっあんっ…やぁっあっ…」
「そんなに気持ちいい? すっごい声、出てるけど」
「はぁっあっ…んーっ…ぁっあんっ…やっあっ…あぁあああっっ」

馬鹿、俺。
最悪だ。
すごい声出して、イっちゃって。
嫌なはずなのに。
一旦、抜かれた指先で、俺の精液を拭うと、また指を押し当てられる。
「っもう、やめっ…」
「じゃあ、もう俺の入れちゃっていい?」
「んなの、無理っ」
「でしょう? 慣らしてあげるから…」
そう言うと、2本の指先が、ゆっくりと中に入る。
「ぁっあんんっ」
「気持ちいいなら、そんなに泣くことないのに…。あぁ、気持ちよすぎて泣けちゃう?」
指が、ソコを押し広げるようにして、慣らしていく。
もうわけわかんねぇっての。
もちろん、こいつは嫌いだけど、気持ちよくて。
こんなの初めてで。
だけど、めちゃくちゃ恥ずかしい。
「はぁっあっんぅっ…」
「欲しがってよ…」
んなこと、お前相手に出来るか、馬鹿。
「んっ…あっ…はぁっ」
「焦らしちゃおうか?」
馬鹿、もう死ね。
ホント、嫌い。

言葉通りに、焦らすようにイイ所を避けられる。
くっそぉ。
だからって、俺は絶対に欲しがるもんか。
持久戦ですか。
負けるわけにはいかねぇんだよ。
「っくっ…ぅんっ…はぁっ」
「そんなに欲しい?」
「あっ…誰がっ」
「腰がねぇ。やらしく動いて欲しがってるけど?」
「ちげぇっ…ぁあっ…」
悔しい。
体が、変にビクつく。
こんな奴に。

「んっ…ぁっあっ…もぉっやっやぁっ」
「泣かないで…? 俺のこと、好き?」
「んなわけっ」
「頷いてくれたら、気持ちよくさせてあげる」
「んっ…誰が、あっ…んなことっ」
「…頷くだけなのに。よく拒むね…」

そう言うと、さんざん焦らしながら中を掻き回していた指が、そっと引き抜かれる。
「ね…入れていい?」
「やめろってっ。俺は、お前が嫌いだしっ」
「気持ちよくなりたくないの?」
「……っお前とは、なりたくない」
「そんなに俺のこと、嫌い?」
真面目な口調でそう聞かれ、少し胸が痛む。
「……うん」
なんでもないフリして頷くと、予想外にも、そいつは俺の足元、ベッドへと座る。
「なんで?」
なんでって。
「そんなの、嫌いなもんは嫌いなんだよ」
「どうしてさ。こんなにも、体は欲しがってくれてるのに、拒むわけ?」
「だから、嫌いだからだっつってんだろ。それ以外、理由ねぇよっ」
少し、沈黙が続くもんだから。
言い過ぎたかなって。
そう思った。

「…なんとなく、わかってたよ」
口を開いた美和は、下を向いたまま。
表情は伺えなかった。
「玲衣くんが、俺のこと嫌ってるって。避けられてるのもわかったし。そんなに話したこともないのに、なんで嫌われるんだろうって思って。ずっと気になってた」
俺が避けてるのも嫌ってるのも、わかってたんだな、やっぱ。
…なんで、シリアスにんなこと言い出すんだよ。
俺が悪いんですか?
そりゃ、変な理由で嫌ったのは悪いと思うよ。
でも、それはもうしょうがねぇじゃん。
だからお前も、もう俺のこと無視すりゃいいのに。
なんでそんなに気にしてくれるんですか。
「…美和、こんなことしてどうすんの? 俺は、もっとお前を嫌いになるだけだよ?」
「…そんなに嫌いなの?」
そんな言われ方をすると、そんなに嫌いなのかわかんなくなってくんじゃねぇかよ。
「…早く、手、ほどけよ。…俺はお前と話したいんだよ」
「逃げられそうだ」
「逃げねぇからっ」
怒鳴ると、そっと俺の手に絡まる布を解いてくれた。

ったく。
起き上がろうとすると、またその腕を取られ、ベッドに押し付けられる。
「なっ…」
口が重ねられて、また舌を絡め取られて。
熱い。
体中が熱くなるようなキスだ。
もともと熱かったんだけど。

「嫌わないでよ…」
「だったら、んなことすんなよっ」
「なにもしなくても、俺のこと嫌うだろ?」
…確かにそうだけど。
「…嫌だった…?」
意外な言葉に、一瞬思考が停止。
…嫌だったって。
「…あたり前だろ、何聞いてんの、お前」
「どうすればいいのか、わかんなくて」
どうされれば、俺はこいつを嫌わないでいれたんだろう。
俺だってもうわかんねぇっての。

っつーか、こいつ、勉強も運動も出来るくせに。
恋愛に関してはめちゃくちゃ下手だったりするんだろうか。
俺のこと、ホントに好きだとしたらだけど。

「美和…結局、コレは嫌がらせなの?」
「なんで? 好きな相手、押し倒して。嫌がらせなわけないだろ」
「こんなんして、嫌われるって思わなかったわけ?」
「好きだから…伝えたかった」
なに言ってんだ、こいつは。
「それホンキ? だとしたら、すっげぇ不器用なんだけど」
俺でも、もうちょっとまともなアプローチ考えるっての。
頭悪くねぇ?
いや、イイけど、悪い。
美和の自分より劣った所を見つけると、少し嫌いという気持ちが薄れた。
というより、俺、バレバレなくらいに嫌ってて。
こいつ、転校して間もないのに、傷つけたよなぁ。
しかも、結構、適当な理由で。
ねたんでただけだし。

心苦しい。
痛いな。
「ホンキで、好き」
上からそう見下ろされ、ついため息が洩れる。
「…それ、なによりも先に言えよ…」
馬鹿だな、こいつ。
「入れろよ…」
「え…?」
「入れろっつってんだよ。なに? 萎えた? なぁに躊躇してんだよ。散々、入れたがってたくせに」
そう言う俺に、もう一度キスして、ゆっくりと、美和のモノが中に入り込む。
「くっ…んっ…ぅんんっ!!!」
痛い。
熱い。
こんなの初めてで。
「ぁあっ…ぃっ……」
「痛い…?」
「はぁっ…あっ…んーっ」
痛みに耐えようと、美和の腕に爪を立てた。
「全部…入ったから。力抜いて…」
「んっ…ぅんっ……優しく…しろよ…? 彼女には、優しくすんだろっ?」
「…うん…」
美和は、俺にそっと口づけして応えると、ゆっくりと、優しく中を掻き回していく。
「ぁあっ…あんっ…美和ぁっ…あっ…」
少し前後に動かされ、痛さよりも、気持ちよさが上回って。
美和は、あいかわらず俺の表情を伺う。
その視線から逃れるように顔を背けるが、見られてる感から逃れられなくて、恥ずかしくてたまらない。
「っぅんっあっ…ぁあっ」
こんなイイなんて。
気持ちいい。
「はぁっあっ…ぁんっ…もぉ、やぁあっ…ぃきそぉっ…美和ぁあっ」
「すごい…やらしいね…顔とか声とか、体とか…」
鬼畜なのか素で言ってんのかわかんねぇよ。
どっちにしろ、羞恥心煽られる。
「ぁあっあっ…んっ…やんっ…ぁあっ…ぃくっ…やぁっあぁあああっっ」


あぁ。
俺もう、手、縛られてなかったんだった。
声、抑えればよかった。
あんなにもおっきな声出して、イってしまって。
恥ずかしすぎ…。

「玲衣くん…俺と、付き合ってくれるの…?」
嫌いだったのも、一方的なねたみだし。
それで、傷つけたのに罪悪感、感じちゃうし。
罪滅ぼしのつもりってわけでもないけれど。
こんなに罪悪感を感じるのは、少なからず、こいつのこと、少しだけ嫌いじゃないんだろう。
恋愛ベタな姿見てたら、なんか、勉強と運動できてようが、いやみに思えなくなったし。

「馬鹿だなー…ホント。お前みたいな奴と付き合おうなんて思える奴、そうそういないよ。変だよ、アプローチの仕方がさぁ。もう少し考えたら?」
「…ごめん」
「ごめんって言われても。…まぁいいよ。俺はわかったから。理解できました。あなたのアプローチが」
そう言って、美和の手を握る。
「付き合おう…? 美和…」

命日の予定だったんだけどなぁ。
今日が、記念日に変わってしまう。
ホントわけわかんねぇよ。
たった少しのことで、心が揺れ動いちまうもんなんだ?
あぁ、でも、思えば、相手がこいつだからだ。
少しのことでむかついて。
少しのことで、それがどうでもよくなって、罪悪感、感じて。
こいつのこと、俺って意外に意識しまくってんじゃん。

だいたいさ。
運動できるこいつが、周りの奴らに『すごい』とか言われてて。
それにイラついてって。
つまりモテるこいつにイラついたわけだろ?
嫉妬か?
…俺も馬鹿か。

あぁあ。なんだかんだ言って、こいつの存在、俺にとってなにか特別なんだろうな。