会社の限られた昼休み時間……俺はだいたいいつも、美和と過ごしていた。
 正確には仕事中も、結構な頻度で美和と過ごしているけど、そういうことじゃない。
 プライベート時間として、俺は代表室のイスに座る美和の前に跪く。
「ん……ふ……ん……ん……」
 今日は美和に誘われて、促されて、昼食より先に美和のモノを口に含んでいた。
「……早くしないと、玲衣くんのしてあげる時間、なくなっちゃうよ」
 美和がイったら、次は俺の番。
 俺が先か美和が先か……俺が先に抜いてもらったこともあったけど、結局その後、美和のをしているうちに、また欲しくなって、モンモンとしたものを抱えながら午後を過ごしたことがある。
 だから先に美和のを済ませて、後に自分がしてもらった方がいい。
 おとなしくしたがって、とにかく早くイかせて、時間切れにならないように。
 大きくなっているソレを手で擦り上げながら、カリや亀頭に舌を絡めて、丁寧に……丁寧に愛撫すると、美和の手が俺の頭を支えた。
「ん……上手になったね、玲衣くん」
 ここで反発するのは、やつの思うツボだ。
 反論も反発もしないで、イかせることに専念していると、美和が俺の頭をそっと撫でてくれた。
「はぁ……出していい?」
 美和の熱っぽい声は、腰にクる。
 小さく頷いて、しっかり美和のを咥え込むと、美和は俺の頭を掴みながら腰を浮かせた。
 美和ので舌の上や上あごを擦られて、身震いしてしまう。
「んぅ、ん……」
 美和の方が感じてるはずなのに、声を漏らすのはいつも俺の方。
 今さら恥ずかしいとかないけど。
「出すよ」
「ん……ぅん……」
 出される……そう身構える俺の口内で、美和は性器をビクビク跳ねさせると、溜まっていたものを吐き出した。
「っ……!」
 美和のが出された瞬間、反射的に頭を引きかけたけど、美和に押さえられてどうにか留まる。
「零さないように……ね」
「ん……ん……んぅ……」
 ビュクビュクと、断続的に2、3度出されて、気持ちよさそうで……共感しているみたいに俺まで気持ちいい。
 いつもより多い……気がする。
 気がするだけかもしれないけど、たくさん出してもらえて嬉しいのか、身体がゾクリと震えた。
 やっと美和に頭を解放されて、含んでいたモノを口から引き抜くと、零さないように出されたものを飲み込む。
「ん……はぁ……あ……あ……」
「ん……玲衣くん、ちゃんと我慢できた?」
「ん……」
 つい自分で弄りたくなるけど、そういうことをしていると、美和は中断して指摘してきたり、結局、無駄な時間を過ごすことになる。
 いままでのことがあるからよくわかっていた。
 ただ、触らなくてもイきそうなくらい気持ちいい。
「我慢した……から」
「うん。机、座って?」
 足が少し痺れていたけど、どうにか立ち上がって、すぐ後ろの机に腰掛ける。
 美和は、あいかわらずイスに腰掛けたまま、それでもこっちに体を寄せてくれた。
「先に、キスしていい?」
「ん……まだ……」
「俺の味する? いいよ」
 体を少し屈ませると、美和が下から口を重ねてくれる。
 美和の……口でしたばっかだし、出されて飲んだばっかりだけど。
 舌を絡めて、溢れてくる唾液は、美和が飲み込んでくれた。
「ん、ん……ふぅ……う……」
 この舌で……早く……。
 ベルトを外して、チャックを下ろして、自分のモノを取り出す。
 それに気づいた美和とキスを終えると、期待で腰が浮き上がった。
「はぁ……あ、あ……もう……」
「うん。してあげるね。すごい……ベトベト……」
 溢れていた先走りの液が、竿まで濡らしていたけれど、美和が丁寧に舌先で拭ってくれる。
「くぅう……あ……んん……」
 美和の舌先が裏筋をなぞると、腰がビクビク震えた。
「はぁ……あ……う、ん……あ……あ……美和……」
「ん……?」
「ぁ、ん……はぁ……はぁ……あ、く……きもち、い……」
「うん、よかった……」
 休みの日なら、一度イッたところで、もう一度、することもできるだろう。
 でも、さすがに今は、一回が限界か。
 それなら、もうちょっと味わっていたい。
 まだ、咥えられてもいないし。
 美和も、それがわかっているのか、ゆっくり愛撫するように、敏感な亀頭やカリを避けて舌を絡めていく。
 それでも十分感じるし、頭がぼんやりしてしまう。
「ぁ……あ、ん……それ……ぁ……あ……ん、いい……はぁ、あ……ん」
「……いっぱい声出したいのに……小声で我慢してる玲衣くん、かわいい……」
 ここが会社じゃなかったら、もっと声を出していただろう。
 出したいのに出せない状況に、興奮しているのかもしれない。
「はぁ……ぁ……あ……ん……はぁ……ん……はぁ……はぁ……あ……あ……」
 小さな声で喘ぎながら、浮き上がりそうになる腰を必死に抑え、与えられる快感に浸っていたときだった。

 コンコンと、ドアをノックする音が響く。
 その音に体が跳ね上がったけど、頭は理解が追いつかなくて、俺はただ美和を見下ろした。
「……誰か来たみたい」
 美和に言われ、遅れて気づく。
「はぁ……だめ……」
「急ぎの要件かも」
「ん、ん……昼休み……なのに……仕事すんな」
「うん。仕事だったら断るよ。でも、仕事の要件じゃないかもね」
 だったら、急ぎで対処する必要もない。
 美和は、いままで避けてきた先端に舌を絡ませる。
「あっ! んっ、んっ!」
 このままイかされる……そう思ったけど、どうやら俺の勘違いらしい。
 美和は立ち上がって、いったんキリをつけるみたいに俺にキスをした。
「ん、んぅ……はぁ……俺より……」
 優先すんのかよ。
 そんなめんどくさい言葉が出かかったけど、昼休憩とはいえ職場だし、美和の昼休みは、ほとんどいつも俺が奪ってる。
「そんな顔しないでよ。これでも玲衣くんのこと、優先してる」
 出かかった俺の言葉を、美和はもちろん察していた。
「ここで来た人無視して玲衣くんの相手するより、ずっと……興奮しない?」
「は……?」
「焦らしてあげる」
 俺の耳元で、美和が楽しそうに告げる。
 俺自身、焦らされるのが好きってわけじゃない。
 でも、焦らされる俺を楽しみたくて……それで美和は、ドアのノックに対応する気だ。
 つまり、俺を優先してる……というか、俺中心で行動してくれているのだろう。
 さっきまで舐められていたモノは、どうにもしまう気になれない。
 俺は机から降りると、イスが収納できるスペースに、身を隠した。
 ドアからは死角で見える場所じゃない。
 会社の代表である美和の部屋に、ずかずか入り込めるやつは、美和以外、秘書である俺だけ。
 引き出しに背を預けながら、最後、舌が這わされた先端に指を這わせた。
「はぁ……」
 ため息にも似た吐息を漏らしていると、ガチャリとドアが開く。

「すみません。歓迎会についてなんですけど」
 ドア付近で話している社員の声が耳に届いた。
 そんなの、メールで済ませたらいいのに。
「秋庭さんって……」
「ああ……ごめんね。かわりに俺が聞くよ」
 どうやら俺に用事だったらしい。
 それなら、今はいないって追い払ってくれていいのに。
 いるよって呼ばれるよりマシか。



 話は思ったより長く続いた。
 そう感じているだけかもしれないけど。
 美和が話を長引かせれば長引かせるほど、俺を焦らして楽しんでるんだって思ってしまう。
「ん……はぁ……はぁ……う……く……」
 いきたい。
 出したい。
 俺も、口でされてイきたかったけど、待ってる間に一回イって、それからまた抜いてもらってもいいんじゃないか?
 イッた直後……すっきりしちゃうかもしれないけど、それでも美和に舐められたら、すぐにまたやる気になれそうだし。
 出したばっかりで敏感になってるのを、美和が丁寧にしゃぶってくれたら――
「ぁ……んん……ん、くっ!」
 想像しただけでイきかける。
 どうにか我慢して自分の指をしゃぶると、唾液を絡めて、その指先で先端を撫で回す。
 たくさんぬるつかせても、当然、美和の舌の感触とは程遠い。
 それでも、さっきまで美和が舐めてくれていたところ……美和の唾液と自分の唾液が混ざり合ってくれているような気がして、頭が蕩けそうになる。
 もしかしたら、口に残っていた美和の精液の名残りが、塗りつけられているかもしれなくて。
「はぁ、はぁ……ふぅ、うう……」
 先走りが溢れる尿道口に、あるかもわからない美和の精液を撫でつけていると思うと、もう限界だった。
「ひぁ、う……ん、んん……はぁ、はぁ、んんん……っ!!」
 少し物足りない刺激だったかもしれないけど、どうにか脳内で補完して、強引に射精する。

 解放感と背徳感が混じり合っているみたいで、頭が追いつかない。
 なにも考えられないでいると、いつの間にか美和が俺の元へと戻ってきた。
 話は終わったらしい。
 しゃがみこんで、俺の手に着いた精液を舐め取る。
「んん、ん……」
「我慢できなかった?」
 美和の手は、イッて間もない性器を掴んで擦り上げてきた。
「ぁあっ、あっ……! ん、んっ!」
「声……殺せなくなってる。大きい声、出ちゃってるよ」
「ひぁ、ああ……あ、ん、ん……つよ、い……」
「うん……敏感だね……」
 敏感になっているのを確認し終えたみたいに、美和の手が離れていく。
 助かったけど、物足りない。
 そんな風に思っていると、美和は俺の手を引いて、また机の上に座らせた。
「汚さないようにしないと」
 美和は、竿に垂れてしまっている精液を舌で拭い、亀頭に口づける。
 音を立てるようにして亀頭を吸い上げられると、俺の体は大きく跳ねた。
「んんんっ! ああっ、あっ……んん、いっ……んんんっ!」
 まだ残っていたのか、立て続けに射精してしまう。
 ただ早すぎて、美和のことを味わい尽くした気はしない。
 早々に終わらされた……そんな気でいたけれど、美和は亀頭に舌を絡め続けてくれる。
「ひっ、ん……ん、ああっ、んんっ!」
 終わって欲しくなかったけど、身体がついていかない。
「ああ……あ、あ、あんん……あ……だ、め……」
「ん……?」
「ひぅ、う……んん、あっ……ああ、ん……それ……される、と……」
「うん……知ってる」
 美和は、いったん口を離してそうとだけ告げると、俺のをしっかり掴んで固定した亀頭に、強く舌の平を押し付けてきた。
 したいけど、これ以上は、歯止めが利かなくなってしまう。
 でも、全部、美和のせいにすればいい。
 美和は代表だし、休み時間だし。
 押し付けられた舌が、亀頭を擦るみたい左右に動く。
「ぁあっ、あっ……あ、ん……ああっ、あっ、でる……」
「ん……ちゃんと教えて」
 知ってるって言ったくせに、それでも言わせたいらしい。
「ひぁっ! あぅ……ん……潮、でる……ああっ、あっ、あああっ!!」
 我慢出来なくて……美和がやめてくれなくて、強めに舌で撫でられ続けたそこから、潮を吹いてしまう。
「ひっ、くぅ……うっ……あっ、あっ! もぉ……あ、ん、あっ! やっ……ああっ!」
「はぁ……とまんない?」
 言葉を挟みながら、指先でも亀頭を擦られて、立て続けに潮が溢れてきた。
「はぁ、はぁあっ……うん、あっ、ああっ、ん……だ、め……あっ、あっ、美和ぁっ!」
「ん……なに?」
「ひ、う……ああっ……はぁ、あっ……あっ、い、く……いく!」
「ん……メスイキ?」
 敏感な先端ばかりを弄られて、体の奥深いところまで快感が行き届いているみたいだった。
「あああっ、いっ……ぁっ……ああっ……いっ、ひゃう……」
「会社では、メスイキしない約束だったよね? いきそうならやめようか」
 美和の手が離れそうになるのを、俺は必死に止める。
「やめ……あっ、あっ、やめる、の、やっ!」
 手首を掴んで、美和の指が俺から離れないように……そうすると、美和も続けて指で撫でてくれた。
「あああっ、ぁん、あっ、ああっ!」
「ん……すごい声……体も、ずっとビクビクしてるね」
 美和が亀頭を撫でてくれるたび、断続的にびゅっ、ぴゅっ、と吹いてしまう潮を見下ろしながら、体の奥から溢れてくる快感に身をゆだねる。
「ああっ、あっ、あんっ、あっ……いくっ……んぅん、いく、いくっ……」
「うん……約束やぶったら……あとで、おしおきね?」
 涙で視界はぼやけていたけれど、美和は、すごく興奮した笑みを浮かべているように見えた。
 美和の笑みを見たからか、おしおきという言葉に反応したのか、体が震え上がる。
「わかってる?」
「ああっ、あっ……わかっ……ああっ、あっ、あんっ、あっ……んんんんんっ!!」

 必死に声を押し殺して、絶頂を迎える頃には、目の前にいる美和のシャツを、めちゃくちゃに濡らしてしまっていた。
「はぁ、はぁ……ああ……ぅん……はあ……」
 そもそも、イクなんて言わずに勝手にイけばいいんだけど。
 そうすれば、変なところで止められることも、攻められることもない。
 それでも伝えてしまったのは、心苦しいわけでも罪悪感でもなくて……たぶん約束とかの問題でもない。
 知って欲しかったり、攻められたかったりしたんだろう。
「気持ちよさそ……」
「ん……はぁ、あ……きもち……はぁ、はぁ……」
「……午後、仕事になんないかな」
 美和は、淡々と濡らしたタオルで体を拭き、用意していた替えのシャツに着替えながら、ぐったりする俺に声をかける。
「ふ、う……はぁ……残業、する」
「メスイキして頭働かないから、だらだら仕事して残業するって……?」
 美和の言いたいことは、もちろんわかっていた。
 会社の代表として見過ごせることではないだろう。
「サービス残業、する……」
「させないよ」
「ん……」
 立ち上がった美和は、机に座ったまま俯く俺の顔をあげさせると、優しくキスしてくれた。
 舌も、たっぷり絡めてくれる。
「ん、ふぅ……う、はぁ……あ、ん……ん……」
 離れていきそうな舌先を、俺は必死に追いかけた。
「はぁ、あ……ん、んん……み、わ……ん、んっ」
 しっかり舌を絡め取られて、口内が美和の味でぐちゃぐちゃになる。
 俺の味かもしれない。
 濡れた音も、味も、舌触りも、全部やらしくて、シャツの中に入り込んできた美和の指先が乳首を転がすと、またイきそうなくらい全身気持ちよくなってしまう。
「はぁ、はぁ……ぁ、あ、あんんっ!」
 まるで、さっきメスイキした名残りみたいな……余韻に加えて、これまで触れられてなかった乳首に刺激を与えられて、俺はもう一度、軽い絶頂を迎えた。

「こんな少し乳首弄られたくらいで、甘イキしちゃうくらい感じやすくなってるし」
「ん……はぁ、キスも、した……」
「キス……そんなに気持ちよかったんだ?」
 改めて聞かれると恥ずかしいけど、反発する気も起きないくらい、身も心も蕩けていた。
「はぁ……う……」
「……残業してまでこなす仕事、玲衣くんに振ってないから、休んで」
「はぁ……?」
「半休」
 つまり、午後は休みで……早退?
 気遣ってくれている……と思う美和のその答えを、俺は素直に受け取れなかった。
 美和は俺を好きでいてくれるし、たぶん人として必要としてくれているけど、だから手元に置いてるだけで、一緒に仕事をするパートナーとして必要ってわけでもないんだろう。
「……いや?」
「ん……俺がいなくても……仕事回るんだって思っただけ……」
 だらだら仕事されるくらいなら、いらないってことなんだろうけど。
「誰か1人体調崩したくらいで回らないようじゃ、会社としてまずいでしょ」
「そりゃ、まあ……」

 ずっと前から、薄々感じていたけど、それでいいと思ってた。
 でも、突きつけられると、なんかちょっと悔しくなる。
 俺がいなくても、仕事は回るらしい。
 いなくても回る人を雇うなんて、会社にとっては無意味どころか迷惑だ。
「もっと……俺より優秀な秘書……雇えばいいのに」
 雇って欲しくないし、嫌だけど。
「いないよ。そんな人」
「いるだろ……」
 自分の力不足が理解できないほど馬鹿じゃない。
 タスク管理みたいなことは苦手だし、ほとんど美和にフォローしてもらっている。
 本当は、俺が美和をフォローする立場なのに。
 向いてないけど、美和に誘われて……というかなんかノリと勢いで……会社を立ち上げた美和について行くことにして。
 でも、なにもできそうにない俺に与えられたのが、秘書というポジションだった。

「俺の秘書として、玲衣くんより優秀な人はいないよ。まず俺が自分を出せなくて疲れるし、一緒にいて息が詰まるような人、秘書にしたくないでしょ」
「……うう」
 なんか納得させられそうだし。
 結局、俺が秘書として有能になれば、こんなこと思わずに済むんだろうけど。
「玲衣くんは体力あるし、瞬発力も行動力もある。人と距離を詰めるのもうまいし、荷物の整理とか、セッティングとかも、ちゃんとしてくれるよね」
 それもすべて美和より劣ってるってのは、学生時代から身に沁みて感じてきた。
「スケジュール管理とか……秘書っぽいのは苦手だし」
「俺が求める秘書は、そういうんじゃないよ。どうしても嫌なら考えるけど、玲衣くんには、近くにいて欲しいな」
 そんなストレートに頼まれたら、断れないし。
「なんか……ずるい」
「そう? ちなみに半休取ってもらうけど、帰らずここにいて?」
「休みなのに拘束されんのかよ」
「有休でいいよ。帰りたい?」
 美和がここにいてって言ってるのに、そんな中、帰る気にはならないし。
 有休なら、好きに休んでお金ももらえる。
 でも――
「……有休じゃなくていい。ここでごろごろしてる」
「もうなにか考えるの、疲れてきてるでしょ」
 美和の言う通り、頭がうまく働かない。
 でも結局、美和の思い通りにことは進んでいる。
「はぁ……」
 美和の思い通り……。
 俺はひとつ、ある疑念にぶち当たった。
「誰か来たの……わざとだったりする?」
 そう尋ねると、美和は嬉しそうに笑みを漏らす。
「最近、前以上に俺のことわかってくれてるよね」
 答えになってないけど、たぶんわざとだってことだろう。
「お前のせいじゃん」
「うん」
「俺が……使いものにならなくなったのも……」
「玲衣くん、有休使ってって言っても、全然、休んでくれないからね。今日も結局、使ってくれそうにないし」
 それは、自分が会社でちゃんと役に立っている気がしないからだ。
「別に必要ないし……つーか、だとしても、なんでこんなやり方……」
 そう疑問をぶつけてみたけれど、答えはわかり切っていた。
「楽しいからかな」
 やっぱり、こいつはどうしようもないやつだ。
 たぶん、俺に対してだけだけど。
 こんなめんどうなのが、他の誰かに向いてしまっても困るし、バカだと言いたい気持ちをぐっと堪える。
「……しかたねぇなぁ」
 そう呟く俺を見ながら、美和は嬉しそうに笑っていた。