「くっそ、バカ」
「自分の都合よくセックス出来ないと怒る玲衣くんもかわいくて好きだよ」
「……お前……気持ちよくねーの?」
 不安が過ぎる。
 その不安を打ち消すよう美和が耳元で笑った。
 と同時に、体が浮いた。
「ぅわっ」
 ひょいっと机の上に体を乗せられ、中に入り込んだままのモノがゆっくりと退いていく。
「ぁあっあっ」
 机の奥の壁に背中がぶつかった。
 膝裏を押さえつけられ、大きく開いた足の間を、美和の視線が突き刺さる。
 俺ん中、入ってる。
 退いて、また中に入り込んで。
 背筋がゾクゾクした。
「んぅんんっ」
「気持ちいいよ。イきそうだった。けどもっと堪能したいなって」
 俺は、気持ちよく終わりたかったのに。
 それでも、内壁をじっくり擦られ、また気分が蕩けてくる。
「はぁっんっ! んぅっ……あっ」
「ね……。さっきのまた言ってよ。出して、って」
 言えって言われると言いたくない。
 言いたくないけど、出して欲しい。
「言わないなら、今日は外で出そうかな」
 こいつなら本当にそうする。
 バカだから。
 俺を虐めるためなら自分の気持ちよさは二の次にする。
 中で出すなって言っても出してきやがるときもあるくせに。
 わけわかんねぇ。
 それよりもう、俺の思考能力も低下してきてる。
 さっき出されると思ってたのに出されなかったせいで、期待値高まっちゃってるし。
 早く欲しいし。
「っ……美和ぁ……っ」
 小さく首を横に振り、外で出そうとする美和を止める。
「また誰かに聞かれたい? 電話しようか?」
 もう一度、首を横に振って拒む。
 それなのに、美和はまた俺の携帯を手に取る。
「ゃめっ……ぅんっ!」
「すごいね。目、すっごい蕩けちゃってる。もうなにも考えたくなくなってるでしょ」
 体が熱くて、力が入らない。
 だって、さっきから美和のが何度も出たり入ったり、まるで焦らすみたいで。
「……誠樹くんに聞かれながらおねだり出来たらいいよ」

 ふざけんな。
 そう思うのに、体がまたゾクゾクしてきた。
 俺、どうなっちゃうんだろうって、怖くてドキドキしてたまんない。
「んっ……はぁっ……美和っ」
「いい? かけるよ」
 駄目だと、小さく横に首を振る。
 美和が、それでもかけるってわかってるけど。

『玲衣? どうした?』
「ごめん。美和なんだけど。ちょっと10分だけ時間もらえないかな?」
『10分? 構わないけど』
「今、そこにいるのは誠樹くんだけ?」
『幼馴染もいるけど、まあ本読んでるから構わないよ』
「そう。玲衣くんが聞かれながらしたいって。いい?」
『いいけど。……マジなの?』
「うん……。ね、玲衣くん」

 美和たちの会話が、なんとなく聞き取れるのに理解出来ない。
「はぁっ! んぅっ……んっ!」
 美和の指先が、俺の口に入って、舌を撫でる。
 催促するみたいに。
「ぁあっ、あっ……ん、ぁんっ! ゃっ……」
「や?」
 じれったい。
 さっきからずっと、気持ちいい部分を避けるように出入りして。
 もっと、擦って欲しいのに。
 お腹の方、先端で押すようにして、ぐって中に。
「美……和ぁっ……はぁっ……あっ」
 目の前に携帯を差し出される。
 俺の声、誠樹に聞かれてるんだ。
 俺の声っていうか、美和とセックスしてる所。
「ぁあっ……んっ! んぅっ! んぅんんっ!!」

 体がビクついて、イきかける。
 それなのに、美和の携帯を持っていない方の手が俺のペニスの根元に絡まって、イかせてくれない。
 首を横に振っても、笑顔を向けられるだけ。

 苦しい。
 イきたい。
 涙が溢れる。
 イかせろよ、バカ。
 美和の胸元を叩くが、力が入らない。
 俺のを掴む手に爪を立てても、美和は離してくれない。
 あいかわらず、中を出入りする美和のが気持ちよくて、頭がくらくらした。
 気持ちいいのに、じれったい。
 だって、もっと気持ちいいのを知ってるから。
 もう少し、上の方押さえつけてくれたら。
 もう少し、速度をあげてくれたら。
 かき回して、中で、出してくれたら。
 ……全部、全部こいつわかってるくせに。
 溢れ出た先走りと、さっき出した精液が結合部分にまで垂れていて、美和のが入り込むたび中に塗りたくられる気がした。
 なんか、ぬるぬるして、ぐちゃぐちゃで。
 いやらしい音がする。
「玲衣くん。どうするの? やめたいならやめるけど」
 美和はそう言って、ゆっくりと俺の中から退いていく。
 煽ってるだけだ。
 そう言って、俺から欲しがるのを待ってるだけ。
 そう思ったのに、美和は本当に全部引き抜いてしまう。
「はぁっ……ふざけっ」
「……なに?」
「ばっか……っなんでっ」
 いままであったものが無くなってしまって、そこがヒクつく。

 入れて欲しいのに。
 手を伸ばし、美和のペニスに触れてみる。
 脈打ってて、熱くて、硬い。
「……美和だって……ホントはしたい……くせに」
「別に、やめてもいいよ」
 嘘だ。
 こんな状態でやめられるはずがない。
 けれど、口でさせられたりやり方を変えられてしまうかもしれない。
 俺はもう、ここでイきたい。
 中で出して欲しいし。
 ……誠樹に聞かれながらおねだりできたらって。
 そんなこと、俺がするわけ?
「玲衣くん。10分経ったら誠樹くんにも悪いし切るよ」
 切って欲しい。
 でも、切ったらたぶん、こいつは中で出してくれない。
 なんでこんなに中出しして欲しいんだよ、俺。
 もう最悪だ。
 美和が欲しくてたまらない。
「っ……美和……ん……っ入れ……」
 小さめの声で。
 それでも訴えると、すぐさま押し当てられた美和のが入り込む。
「ぁあああっ! ああっあっ!」
 ずぶずぶと、遠慮なく奥まで。
「ひぁっあっ! だめっぁあっだめっ……」
「なにが?」
 なにがじゃなくて。
 そんな一気に奥まで来たらおかしくなる。
 俺の好きなとこ、強く擦りながら押さえつけるようにして奥の奥まで。
「……また、イきかけた?」
 美和が俺の根元掴んでなかったら確実にイってた。
 苦しい。
「ぃくっ……ぁああっいくっ美和ぁっ」
「そう?」
 そう? じゃなくて。
 イきたい。
「離しっ……ぁあっんっ……」
 遠慮なく掻き回しながら、俺のことを見下ろす。
 すっごい気持ちいいとこ突かれてんのに、美和が離してくれないせいでイくにイけない。
「……わかってるよね? 玲衣くん」
 わかってる。
 離せって言って離してくれる相手じゃない。
「美和ぁっぁんっ! あっ……してっ」
「なにを」
「っ……ん、中で……ぁっ」
 出して。
 そう目で訴えても美和は許してくれない。
 ああ、そうだ。
 俺、また美和のことバカって何度か言ったっけ。
 だってこいつが、バカだからついバカって言っちゃうんだよ。
 しょうがねーじゃん。
「中っ……ぁっん、出してっんぅっ! もぉっ」
「はっきり言って?」
 早く。
 早くしろよ。
 頭おかしくなる。
「美和っぁあっあんっ、あっ、早くっ」
「うん、なに?」
「出してっぁあっ……ぁんっあっ、俺ん中でっ」
「なにを?」
「美和の、せーえき……っ出してっぁあっ! あっ、はやくっ」
「泣きすぎ。よくわからないよ。……そろそろタイムオーバーか。誠樹くん、ありがとう」
『……いや、俺はいいけど』
「じゃあ、また明日」
『ああ、また』

 携帯の受話器をオフにされる。
 美和は、携帯を傍らに置き、俺の頬を撫でた。
「なぁっな、はやくっ」
「どうしようかな」
「ちゃんと、ねだったのにっ」
「そうだね。かわいかったよ。ね。俺だけにもっとおねだりして。そしたらあげる」
 やっと、俺の根元を掴んでいた美和の手が離れる。
 これでもうすぐにでもイける。
 でも次は、美和と一緒じゃないと駄目だ。
 中で出されて、満足したい。
「美和っぁんっ! あ、出してっ……あっ、奥でっ」
「奥で出されたいの?」
 美和の手が、俺の足を掴んで、ぐっと腰を押し付けられる。
 すごく奥の方まで届いて、体が震え上がった。
「ぁああっ! いくっっやっいくっ」
「いいよ。俺も、イクから」
 奥の方まで入り込んだ状態で、美和が中を掻き回す。
 体が震えて、ビクついて。
 我慢してると、美和のが中に流れ込んでくる。
「ひぁあっあっ! あぁああっ!!」


 やっぱり、中で出されるとすごく気持ちがいい。
 熱くてたまらない。
 美和がイった直後、俺もイっちゃって、力が入らない。
 奥が熱い。
「はぁ……ん……」
「……大丈夫? 疲れた?」
 小さく頷くと、美和は俺の中から刺さったままだったモノを引き抜く。
「んぅ……」
「俺が指で掻き出そうか?」
 掻き出さないと。
 でも、美和にされたら俺、またやりたくなっちゃいそう。
 自分でしよう。
 そう言いたいのに、駄目だ、眠い。
 疲れた。
「美和……寝たい」
「……しょうがないね」



 あれから何時間経っただろう。
 気付けば、部屋は真っ暗で、俺はベッドに寝転がっていた。
 ……隣に美和もいる。
「……美和? 寝てる?」
「起きたよ」
 ああ、起こしちゃったか。
「今……2時? 俺、夕飯食べてないし」
「うん、熟睡してたね」
「宿題……」
「終わったよ」

 さすがだぜ、美和。
 いつ終わったんだろう。
 聞いて、もしついさっきとか言われたら申し訳ないから、聞かないでいよう。
 いや、聞かなくても申し訳ないことには変わりないんだけど。
「助かったよ。これで心置きなく明日、学校行けるし」
「誠樹くんに会うのは平気?」
 そうだ。
 最悪だ。
 聞かれたんだった。
「やっぱり俺……」
「ね、玲衣くん。せっかく俺が急いで宿題やったのに、まさか休むなんて言わないよね?」
「だいたいお前が思い出させるからっ」
「俺が言わなくても、明日、誠樹くんと会えば思い出すでしょ」
 そりゃそうだろうけど。
「……なんで、途中で電話切ったわけ?」
 やっぱり、俺のイクところは聞かせたくない……とか。
「全部聞かれたかった?」
「そうじゃねーけど」
「玲衣くんの恥ずかしい声聞かせるのは楽しいけど、俺がイってるシーンは聞かせてもおもしろくないでしょう?」
「は?」
「だから、あくまで玲衣くんが1人で欲しがってる状態にしたいなって」
 そうだ。
 美和がイってるならともかく、あれじゃあ俺、美和がやる気ねぇのにせがみまくってるって思われてもおかしくはない。
「最悪だ」
「そうかな」
「やっぱり休もうかな。何度もイって疲れたし」
「たくさん寝たから大丈夫でしょ」
 結局、こいつは1回しかイってないよな。
「……なぁ。なんでお前ってそんなにイかねーの? 俺って……」
 そこまで気持ちよくなかったりする?
 ……とは聞きづらい。
 けど、伝わった気がする。
 そっと頬を撫でられた。
「我慢してるだけ。いいなら何度も何度も、中出しするけど?」
「いや、何度もとかっ」
 ……いいかもしんないけど。
「お前、最近、調子乗ってるよなー」
「違うよ。最近、玲衣くんが素直になってるだけ」
「違ぇし」
 ただ、美和に教えられて肉体的には求めちゃうようになっちまってるけど。
「美和が……定期的にしてくれりゃ、こんな風にはなんねーのに」
「俺は、玲衣くんが性欲発散するための道具ってわけじゃないから」
 ……わかってる。
 わかってるけどさぁ。
「俺だって……」
 性欲発散させたいだけってわけじゃない。
 そうじゃなくて。
 ……美和としたいって、なんとなく思うときがある。
 いまだってキスしたい。
 あんだけセックスしたのに、キスはしてないから。
 別に抜きたいわけじゃなくて、ただ美和と口を重ねて舌を絡ませ合いたい。
「ねえ、玲衣くん。別に定期的に玲衣くんの方から求めてくれたら、相手するよ?」
「な……俺から?」
「だって、定期的にしてくれたらって言うわりには、そんなに求めて来ないよね」
「だって……」
 俺からなんてそんなこと。
 したことねーし。
 いつもお前が煽って襲ってくるから。
「お前が気付いてヤれよ」
「したくてたまらないのに求められないでいる玲衣くん焦らしてるのも楽しいからね」
 最低だ。
 気付いてるくせに。
 いまだって、もしかして気付いてる?
 俺が、キスしたがってるってこと。
 ……気付くわけないか。
 いや、気付いててもしてくれそうにない。
 ホント、なんてむかつくやつなんだ。
「美和……」
 小さく口を開く。
 少し体を寄せて、顔を近づけてみる。
「なに?」
「……やっぱなんでもない」
「やっぱってなに?」
「いい。なんでもねーからっ」
 顔を逸らした瞬間、俺の腕を美和がぐっと引っ張った。
 また、美和の顔を見てしまう。
 至近距離。
「襲ってくださいって目、してる」
「っふざけんな。バカ」
「バカ? 口は災いの元、ってことわざ知ってる?」
「それくらい知ってる」
「……その口、塞いでおこう?」
 そう言って、美和は俺に口を重ねてくれた。