須藤はたまに、とてつもなくエロい。
 そういう気分の日なんだろうけど。
 いつもより敏感で、いつもより甘えた声を出す。
 自覚は……あるのかないのかわからない。
 ただ、俺はそんな須藤がかわいくてたまらなく好きだった。
 もちろん、普段の須藤も好きだけど。

 高校生の頃。
 いつもは、きっかけ含めて俺からキスをして、触って、抜いたりしてあげていたけれど、その日は違った。
 放課後、須藤がめずらしく誰もいない教室で委員会だった俺を待っててくれて、
「まだ残ってたんだ? 一緒に帰る?」
 そう尋ねると、小さく頷いた後、
「今日は……しねぇの?」
 そう聞き返された。

 なにをしないのかとか確認する前に、俺はイスに座ったままでいる須藤にキスをした。
 学校で、軽く口づけるくらいのことはあったけど、このときばかりは抑えられなくて。
 上を向かせて、たくさん舌を絡めて。
 鼻から洩れる声と濡れる音を聞きながら堪能していると、須藤の手が俺の腕を掴んで、さりげなく股間へと誘導してきた。
 触れると、もう大きくなってて、ますます興奮したのを覚えてる。
「ん……んぅ……」
 口を離して須藤を確認すると、めちゃくちゃ蕩けた顔をしていて、俺はそんな須藤を見つめたまま、布越しに股間を擦りあげた。
「はぁ……ぁ……芹澤……ここ……学校、なんだけど……」
「うん。でもすごい硬くなってる」
 そもそも触らせたのは須藤だ。
 須藤は頷くみたいに俯いた後、顔をあげて俺にキスしてくれた。

 完全に欲情してるんだって思った。
 定期的にキスくらいしてたし、家でたまに抜き合ったり、それ以上のこともしてたけど。
 友達同士だし、本来しないことの方が普通で、たぶん気づかないうちに期間が空きすぎてしまっていた。
 この頃にはもう、しないことが普通じゃなくなってきていたんだと理解する。
「ん……はぁ……だめ……ぃく……」
「ん……?」
「あ……いく……せり、ざわぁ……」
 そう訴えてくれる須藤がたまらなくかわいくて。
 このままイかせたくて。
 でもわずかに働いた理性で手を止める。
「あ……ん……ん……ゃ……」
 須藤は反射的に腰を浮かせて、俺の手に股間のモノを擦りつけてきた。
「大丈夫……するよ。取り出すからね」
 服を着たままイくのはまずいだろうなんて思っただけで、焦らしたつもりはない。
 それでも、結果的にそうなってしまっていた。

 須藤の前にしゃがみこんで大きくなったモノを取り出す。
 そこはもう先走りの液で濡れていて、俺はそれを舌で拭うようにして、先端を口に含んだ。
「んんっ……んっ……ぁ……んっ……んぅ……!」
 須藤は俺の頭を掴むと、自ら腰を振ってくれて、俺は須藤にされるがまま、奥までそれを受け入れた。
「はぁ……はぁ……ん……はぁ……ぃっ……ん、んんっ……んぅんんっ!!」
 腰を震わせながら吐き出された須藤の精液を、俺はそのとき初めて飲み込んだ。

「……飲んだの……?」
「うん……」
「……ごめん」
「そんな強く頭押さえつけられてたわけでもないし、嫌だったら口離してる。あ、でも、精液飲んだ口とはキスしたくない?」
 冗談っぽくそう告げると、
「人に飲ませといて、したくないとかないよ」
 そう言ってくれた。
「でもまあ、したいってわけでもないよね?」
 須藤が気を遣ってくれていると思った俺は、ひとまず終わらせようと立ち上がる。
 すると、須藤も立ち上がって、軽くだけど俺にキスしてくれた。
「……俺が芹澤の……口でしたら、キス、したくなくなる?」
「いや、俺は別に……された後でも前でも、したいよ」
「じゃあ……する」
「するって、なにを?」
「……俺だけ学校でイったとかやだし。お前、勃起してるし」
 須藤は俺の前にしゃがみ込むと、そのまま、俺がしたみたいに口で抜いてくれた。


 2人で俺の家へと向かう帰り道。
「ごめん」
 須藤はまた謝った。
「なんのこと?」
「……どうか、してたから」
 普段とは違うことをした自覚はさすがにあるらしい。
「別にいいよ。むしろ大歓迎。なに? 溜まってた?」
「……別に」
 俺は、その意味がよくわからなかった。
 溜まってたんなら、理解できる。
 そうじゃないのに、そういう気分だったんだろうか。
 やっぱり溜まってて、照れ隠しかななんて思っていた。


 それから、たまにだけど須藤がエロくなる日があった。
 普段、俺の方が我慢出来てなかったし、たぶん焦らすこともほとんどなかったけど。
 須藤の方から誘ってくれる日は、だいたいエロい。
 俺はひそかに、須藤には発情する日があるんだって、思うことにした。
 溜まってるとか、焦らされてるとか、そういうのとは関係なく、定期的に訪れる日なんだって。

 そんな日を、俺はいつも楽しみにしてたけど、大人になってからというもの、どうやら須藤は自制心と理性を覚えてしまった。
 あきらかに今日は発情の日だなってときでも、どこか我慢してるのが俺にはわかって。
 まあ、それでもやらせてくれるし、普段以上にエロいことには変わりないんだけど。
 須藤自身、辛いんじゃないかって思った俺は、
「もっと欲しがっていいよ」
 とか、
「毎日、甘えていいからね」
 みたいなことを言ってみたけど、須藤があからさまに欲しがることも甘えることもなかった。
 それでも、やっぱり限界はあるらしい。
 そういうとき、須藤は俺の家で酒を飲む。
 どうしても働いてしまう自制心と理性を、強制的に取っ払う手段なんだと思う。

 普段ほとんど酔わないのに、酔ったときの須藤はたまらなくかわいい。
 でも、本当は酔った須藤がかわいいんじゃなくて、発情の日に酔って誤魔化してる須藤がかわいいんだと思う。
 俺としては、酒なしで欲しがってくれて構わないんだけど。

「あっ……あっ……あん……んぅ……」
 俺を押し倒して、跨って、咥え込んだままゆらゆら腰を揺らしてくれる須藤を下から見上げる。
 頬が赤いのは、酒のせいか照れているのか。
 わからないけどかわいくて、須藤の頬を撫でていると、
「せりざわぁ……ん……」
 須藤は俺の手を取って、胸元に誘導してきた。
「須藤って、乳首大好きだよね」
「はぁ……ん……ちが……んぅ……」
「ああ、ごめんごめん。我慢しなくていいから。ね」
 つい俺がこういうことを口にするせいで、いつも自制しちゃうのかもしれないけど、酒のせいに出来るいまは、すぐなかったことにしてくれる。
 硬くなっている乳首を指で撫でると、須藤はナカをヒクつかせながら、揺らしていただけの腰を浮かせて抜き差ししてくれた。
「ぁあっ……あんっ……あっ……あっ!」
 いつもはあまり声を出さない須藤がたくさん喘いで、口の端からよだれを零しそうになりながらめちゃくちゃ感じまくっている姿を、なんとか長く堪能したくて、俺はイきそうなのを必死で我慢する。
 それなのに――
「あ……ん、せりざわ……はぁ……あっ……イけない……?」
 自制心も理性も失ってるはずの須藤が、俺にそう聞いてくれる。
「ううん……イきそうだよ……もう、ずっと前から……」
「はぁ……だったら……ん……出して……あっ、ん……イっても……まだ、イけんだろ……」
 どうやら抜かなくていいみたいだし、1度で終わらせるつもりもないらしい。
 もちろん、須藤が満足するまで付き合う気ではあったけど。
「ナカ……出していいの?」
「はぁっ……ん、いい……あっ……いく……ああっ、ぁん……んっ」
「……須藤もイきそうなんだ? いいよ。イッて?」
 片方の乳首を撫でたまま、空いた手で須藤のモノを軽く擦ってやると、須藤の体がビクビク震えた。
「ああっ……それ、きもちい……あっ、あっ、あぁあああっ!!」
 須藤が射精するのに合わせて、俺もまたナカにたっぷり射精する。
 須藤は深くまで俺を咥え込んだまま、余韻を味わっているみたいだった。
「はぁ……ん……ふぅ……」
 イく前は、もう一度したいみたいだったけど、さすがに落ち着いただろうか。
 そう須藤を窺うと、
「……こっち」
 少しだけ間をおいてから、触れていなかった方の乳首に手を誘導された。
「ああ……両方の方がよかった?」
「ん……」
「じゃあ、両方一緒にするね」
「ぅん……ん……んぁあっ……ん!」
 翌日、須藤は『飲み過ぎた』なんて言いながら、さりげなく今日の言い訳をして。
 俺は『たまにはいいんじゃない?』って、それを受け入れる。
 からかいでもすれば、須藤はきっと我慢しちゃうだろうし。
 この日のことは触れず、匂わせず、ただ俺の中にとどめておく。

 もし酒を奪ったとしても、須藤が欲しいってタイミングで焦らしさえすれば、甘えてくれそうだなって気もしていた。
 シラフで甘えてくれるなんて、めちゃくちゃかわいいに決まってるけど、いまは言い訳する余地を与えてあげる。
 須藤がそうしたいならそれでいい。


『明日休み。今日、芹澤んちで飲める?』なんて、唐突に送られてきたメッセージを見ながら、これまでのことを思い返す。
 思わずにやけそうに顔を必死に抑えながら『もちろん、いいよ』と返事を送るのだった。