「それで? 次はどうして欲しい?」
 ベッドの上、向かい合って座る芹澤が、俺に尋ねる。
 俺は、芹澤の視線を感じながら、着ていた自分のシャツを掴んだ。
「ああ、脱がせて欲しいんだ? いいよ」
 すぐに察してくれた芹澤が、シャツを脱がしてくれる。
 本当に面倒見がいい。
「……さっきから……ジンジンして……おかしいんだけど……」
「ん、どこ?」
「ここ……」
 自分の指先で乳首に触れると、それだけで体がピクリとはねた。
「ぁ……!」
「ああ……ずっと触ってなかったのに、すごい勃ってる……」
 俺が指を離すと、かわりに芹澤の指が乳首の先端を触れてきた。
「はぁっ……はぁ、ん……」
「硬いね……須藤のここ。撫でたら、ジンジンしてるの、解消されそう?」
 優しく撫でられてるはずなのに、なんだかビリビリする。
「わかんな……はぁ……いっ……うぅ……」
「痛かった? 敏感になりすぎちゃってるのかな。指より舌の方がいい?」
 頷くと、芹澤は屈みながら、唾液を含んだ舌で右の乳輪を優しく舐めてくれた。
「んぅん……はぁ……」
 指より柔らかくて熱くてヌルついた舌先が、乳首の周りを器用に這う。
「ぁあっ……あ、ん……ん……吸わな、で……」
「うん……大丈夫、強くしないから……さきっぽも舐めるよ」
「ん……ぅん……あっ……ああっ!」
 芹澤の舌が乳首の先端に触れると、少しだけ体がビクついた。
「……続けるよ。痛かったら、すぐに言って」
「ふ、ぅ……ぅん……はぁ……はぁっ」
 舌の平で、ゆっくり押しつぶされて、撫でられて、妙な痺れが、官能的な快感へと変化していく。
「ぁあ……んっ……あっ……はぁ……ぁあっ、ん」
「いつもは……ちゃんとつまんで、引っ張ってあげないとイケないのに、今日は亀頭くらい敏感になっちゃってる?」
 舐めながら言葉を挟まれる。
 芹澤の言う通りなのかもしれない。
 気持ちよくて、たまんない。
「はぁ……ん……ぁあっ……ぁあっ、ん……あ、ん……ん、せり、ざわぁ……」
「ん?」
「あ……あ、ん……おか、しぃ……あっ、あん、んっ……ぁあっ、ん……!」
「……うん、敏感だし、いつもより、かわいい声出ちゃってるね。敏感になった乳首舐められると、いつもと違った感じになるのかな。精神的なもの?」
 別に、芹澤が俺を女扱いしているわけじゃないし、乳首で感じる男だっている。
 それでもやっぱり、フェラをされるのとは全然、精神的にも感じるものが違う。
 性欲を満たすための行為から、かけ離れているように感じた。
 もともと芹澤は、足とか指とか舐めまくるけど。
 乳首を弄られると、かわいがられているような錯覚を覚える。
 錯覚なのかどうかわからないけど、かわいがられたところで、いつもなら理性が働くし、いまだって、頭では理解しているつもりなのに、みっともなく甘えた声を出してしまう。
「はぁ、ん……あぁ、んぅ……ぁ、ん……ぃや……」
「いや?」
 自分で自分が嫌になる。
 それを伝えようとするときでさえ、はしたないくらいに甘えた声で、こんなの、さすがに芹澤も引くんじゃないか。
「せりざわぁ……あぅ、あっ……へんなこえ、れる……」
 思った以上に舌が回らなくて、恥ずかしいのか引かれたくないのか、わからないけど涙がじわりと溢れてきた。
「かわいい声だよ」
「あぁっ……あ、あまえてる……みたい……」
「俺は須藤に甘えられるの大歓迎だよ。みたいじゃなくて本当に甘えてよ」
 甘えたいわけじゃない。
 そう思うのに、甘えた声が出てしまうのは、甘やかされたいからなんだろうか。
「ぁ……わかんな……あ、あう……ん、せりざわぁ……」
「須藤はいろいろ考えすぎなんだよ。面倒なこと嫌いなくせに……考えすぎるから、面倒だって思うのかもしれないけど」
 そう言いながら、今度は左の乳首に舌を絡めていく。
「あぁんぅ……!」
「ん……待ってた? 体ビクついちゃったね。こっちもいっぱい舐めるから……もう片方は……少し触るよ」
 いままでさんざん舐めてきたせいで、ぬるついている右の乳首の上を、芹澤の指が行き来する。
「ぁあっ……あんっ……ひぁっ……ぃく……あうっ……いっひゃう……」
 俺は小さく体を震わせながら、両手で芹澤の頭を掴むことしかできないでいた。
「痛くは……なさそうだね。そんなに乳首気持ちいいんだ? じゃあもうごちゃごちゃ考えるのやめにしよ? めんどいでしょ。好きにしていいから」
「めんろい……あぁっ……はぅ、んぅ……せりざわぁっ……あ、あん……いくぅ……」
「うん……俺の舌……好き?」
「はぁ……しゅき……ぁっ、あんっ……ああんぅっ、なめ、てっ……あっ……もっと……もっとぉ……!」
「ん……」
 会話をしている時間すら惜しい。
 その想いが伝わったのか、芹澤は言葉にすることなく小さく頷いて、俺の望み通りたっぷり舌を絡めてくれる。
 もともとこいつが舐めるの好きだから付き合ってやってるつもりでいたけど、俺の方が、舐められるのが好きだったのかもしれない。
 舐められすぎて、そういう体になってしまったのかもしれないけど。
 ああもうなんでもいい。
「あぁっ……いくぅ……あぁんっ、あっ、あっ……あぁあああっ!!」
 ビクビク体が跳ねて、絶頂を迎えると同時に、強く芹澤の頭を抱え込む。
 芹澤は俺の乳首に口づけたまま。
 いつしか激しくなっていた舌の動きを緩めてくれていた。
「はぁ、はぁ……あ……んぅ……」
 そっと腕を緩めると、芹澤が俺を押し倒す。
「須藤……イッちゃったけど、もっと舐めていいよね?」
 体を起こした芹澤が、俺の膝を深く折りたたんで、浮いた腰を引き寄せる。
 自分の足の間から芹澤を覗くと、興奮した様子で、性器の奥にある窄まりを見つめていた。
「……そこ?」
「うん……須藤、今日、セックスする気満々で、ナカまで綺麗にしてきてるでしょ。めんどいこと嫌いなくせに……そういうの、めちゃくちゃかわいいんだけど」
「別に……」
「ここ……舐められるの、いや?」
「…………足も……」
「足、舐められるの好きだもんね。それもあとでするよ。いっぱいしてあげる」
 芹澤はそう言うと、待ちわびてヒクつく箇所に舌を絡めてくれるのだった。