「ちょっと待って。帰って来たばっかだし、手、洗ってくる」
正直、どうでもいいって思ったけど引き止められなくて、芹澤を見送る。
ベッドで横になるけれど、体は落ち着かない。
熱い。
やっぱり、媚薬を飲んだのは間違いだったか。
そんなことをぼんやり考えていると、芹澤が戻ってきてくれた。
「とっとと入れた方がいい?」
「ん……」
横を向いたまま小さく頷くと、芹澤は俺のズボンと下着を脱がしにかかる。
自分から望んだことなのに、少し唐突で妙に緊張した。
興奮しているのかもしれない。
膝を折りたたむようにして足を開かされる。
「さっきイッたのに、また勃起しちゃってるね」
「ん……」
芹澤を窺うと、指に舌を絡めて舐めていた。
そんな些細な時間ですら待ち遠しい。
つい開かされた以上に自ら足を開くと、やっと芹澤の指が入り込んできた。
「あっ! んっ、んぅ……!」
「ゆっくりの方がいいよね」
早く欲しい。
けど芹澤の言う通り、ゆっくりしてくれないと、たぶん体ビクつく。
頷くと、芹澤は時間をかけながら、強い刺激にならないように、優しく奥へと指を押し込んでいく。
「はぁ……んっ、んぅ……はぁ……」
「んー……大丈夫そう? 最初は外しとこうか」
俺が頷くのを確認しながら、感じるところを避けるようにして、1本の指が奥まで到達した。
「ん……はぁ……はぁ……ん……」
「……入ったよ。動かして平気?」
「ぁ……待って……はぁ……んっ……」
呼吸して、少しナカを締めるだけで、芹澤の指をまざまざと感じ取る。
直接、押さえつけられてるわけじゃないにしろ、そこには欲しかった芹澤の指が入ってて、触れてるわけで、体の奥の方がゾクゾクしてきた。
「はぁ……はぁ……ん……はぁ……せりざ……ぁっ」
「んー……?」
「あ……ん……だめ……かも」
芹澤の視線に耐え切れなくて、腕で目を覆う。
「だめって?」
「……ん……ぃき、そぉ……」
「いいよ。須藤はイキたくない?」
「ん……いき……たぃ……はぁっ……あ……」
いきたいけど、動かされてもいないのに、イクのも抵抗がある。
かといって、いま動かされたら、強すぎておかしくなるに決まってる。
戸惑う俺に気づいてか、芹澤の手が俺の膝を優しく撫でてきた。
「少しだけ、ゆるーく動かすよ」
芹澤の吐息を膝に感じた直後、そこに口を押し当てられる。
見なくてもわかった。
膝を吸われて、舌が絡みつく感触。
くすぐったいようななんとも言えない感触だけど、いまはたまらなく感じてしまう。
そっちに気を取られている間にも、ナカに入り込んだ指がわずかに動く。
「ぁあっ……ん……はぁ……あ……あっ、待って……」
「もしかして、ナカでイキそ?」
腕をどかして、芹澤を窺う。
芹澤は、俺をからかうでもなく、真剣な表情で……いや、興奮してんのか。
膝に舌を絡めながら、ジッと俺の目を見てきた。
芹澤は、いろいろ見逃さない。
首を少し下に向けるだけで、理解してくれる。
「体勢変えるのは、キツいよね」
仰向けに寝転がる俺に覆いかぶさるようにして体を寄せてくれる芹澤の背に、腕を回す。
ぎゅっとしがみつくと、わずかに動いていただけの指が、ゆっくりとナカを撫であげる。
「ぁあっ、あっ! ん、あっ……んぅんっ! はぁっ!」
「もうちょっと強くした方がいい? 大丈夫そう?」
「ぁんっ……あっ、いい……あっ……この、まま……ぁあっ……いくっ……あぁっ、あっ、あぁあああっ!!」
ビクビク体が震えて、俺は芹澤にしがみついたまま絶頂を迎えた。
「はぁ……はぁ……ん……はぁ……」
余韻を味わいながら、芹澤に絡めていた腕の力を緩める。
芹澤もまた、それが合図だったみたいに指を引き抜いた。
「須藤って、いつも最初にナカイキするときすごく構えるよね」
「……別に」
わかってる。
もう何度もしてるけど、それでも射精とは違う芹澤だけが与えてくれる快感に、身構えてしまっていた。
毎日セックスしてるわけでもないし、それなりに日を置いているからか、その日最初のナカイキは、必ずと言っていいほどなにかにしがみつく。
なにかっていうか、だいたい芹澤なんだけど。
「……いったん構えないと」
「うん。構えてぎゅうってしがみついて、それから委ねてくれんだよね?」
「……なにいちいち言葉にしてんの」
「確認。かわいいなぁって思って。2回目からもしがみついてくれていいんだけど」
2回目だってすごく気持ちいいけど、1回の衝撃とは違う。
なんていうか、タガが外れたみたいにイけるだけだ。
「構えなくても、委ねれるし……」
「あ……そっか。そういうことなんだ? じゃあ、喜ぶとこ?」
「なんでもいいよ。つーかなにあたり前のように2回目とか言ってんの」
「するでしょ。今日はとくに2回でも3回でも、ナカイキしそうじゃん」
まだ少し指を入れただけ。
芹澤とセックスしたわけでもないし、たぶん芹澤の言う通りになるんだろう。
「あ、満足しちゃったんなら、別にいいけど」
慌てて付け足す芹澤を見て、小さくため息を漏らす。
「ホントに別にいいと思ってる?」
「んー、入れられるんなら入れたいけど、俺、その事後感ある須藤の寝顔でイけるし」
こいつはいつもそうやって俺を優先する。
そのくせやめろって言っても、舐め続けたりするけど。
一瞬、こいつも媚薬を飲んだら、どうなるんだろうと頭をよぎる。
俺に気を遣う余裕もなく、抱きまくるんだろうか。
……いや、さすがにいま、乱暴に扱われるのはまずい。
やめておくとしよう。
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