「あのさ。さっき須藤、やろうと思えばそこら辺にも相手いるって言った?」
「言ったけど」
 芹澤は、少し拗ねた表情で俺を見る。
「……芹澤だってやってんだろ。俺以外と」
「やったこともあるけど、付き合い出してからはやってねぇよ」
「は……?」
 正直、そんなことはありえないと思っていた。
 頻繁に会っているわけでもないし、こいつがモテるのは学生時代から見てきている。
 あえて確認したことはないけれど、どうせやってるんだろうってそう思っていた。

「……それ、なんか重い」
「いやいや、酷いね。でも別に須藤にまで同じようにしろって言ってるわけじゃないから」
「……そう」
「ただ俺が、須藤以外とやる気しねぇってだけ」
 そうにっこり笑うが、俺はただ後ろめたさを感じていた。
「本気で言ってんの?」
「本気だよ。だって俺、須藤のことめちゃくちゃ好きだし」
「うざい」
「須藤も、他の相手とやっちゃっても、俺とは違うって感じてくれてんでしょ?」
 さすがに一緒なわけがない。
「っつーか……やってるけど、やられてはいない」
「……ああ、入れられてはいないってこと?」
「まあそういうこと」
 そう伝えると、芹澤は解りやすく顔を綻ばせ俺をぎゅっと抱きしめる。
「痛い」
「しよ……? 須藤」
 もうさっき中出しされて、一旦小休止したところだ。
 面倒でまだ服を着ていないけれど、一応仕事もしなくてはいけない。
「……とりあえず掻き出せよ」
「そうだったね。その後、するかどうか考えてくれる?」
「……まあ。とりあえず後で考える」
「了解。立てる?」
「立ってすんのは、なんかだるい」
「しょうがないなぁ、須藤は」
 そう言うと、俺の体をコタツの上へと寝転がらせる。
 背中の下へと枕を置いてくれて、大きく俺の足を開いてしまう。
「須藤、入れていい?」
「……言わなくていい」
「はいはい」
 ゆっくりと、少し前まで芹澤のモノが入っていた所に指が入り込む。
「ん……」
 2本、入り込んだ指先がぐっと中を押し広げていく。
「ん……くっ、んっ!」
「……須藤って、俺の指大好きでしょ」
「はぁ……」
 俺は顔を背け、芹澤の言葉を無視する。
 それでもたぶん芹澤には伝わってしまうだろう。
 奥や入口を広げられる感触は耐え難くて、つい空いている芹澤の腕に爪を立てる。
「はぁっ……んっ……んっ」
「俺のチンコで拡げられんのとだいぶ違うの? 指だとさ」
 全体的に、1つの大きなモノが入るのと、指でぐにぐにと押し広げられるのとでは感じ方がだいぶ違う。
 なんだか指の動きや形がまざまざと感じられ、妙な羞恥心にかられてしまう。
 芹澤の腕を掴んだまま、上半身だけ体を捻り横を向く。
「んっ……はぁっ……ぅん……ん」
「やば……。俺すっげぇ須藤ん中、出しちゃってるね。たくさん出て来た……」
 言わなくていいのに。
 ぐちゃぐちゃになった中に入り込んでいた液が、芹澤の指を伝い外に流れていく。
 嫌な感触だ。
 なんで、そんなたくさん出してんだよ。
 いちいち考えなくていいのに、不意にさっきまでの芹澤が脳裏に浮かぶ。
 すごく俺を求めてくれていた芹澤のこと。
 これは芹澤が、俺で感じた証だ。
 付き合い出してからは俺としかしてない芹澤の。
 意識したくないのに、そう思ったとたん体がゾクリと震えた。
「ぁっ……あっ!」
「ん……どうした? 須藤」
 いちいち些細な変化に気付くなよ、バカ。
 意識しすぎて、感じだしたなんて言えるか。
 いや、言うつもりはないけれど、悟られたくもない。
 それでも芹澤は気付いてしまうんじゃないかって、そう思うだけでまた俺の鼓動は高鳴っていく。
 バカだろ。
 後処理だぞ。
 いちいち感じてんじゃねぇっての。
 こんなんで感じてたら終わらない。
 こいつの指先だって、俺を感じさせるつもりの動きじゃない。
 そう思うのに、芹澤にとって俺が特別なんだと意識させられるとおかしくなりそうだ。
 重いって思ったのに。
 嬉しいのか、俺は。
 チラリと目を向けると、芹澤は優しく俺を見て笑う。
「あっ……ん……芹澤っ」
「んー……マジでどうした?」
「ぁあっ……だめ……っ」
「ん?」
「それ……あっ、ゃだっ」
「え?」
「抜いて……っ」
「もう少し、ちゃんと出さないと……」
 これ以上、芹澤の指なんて入れてたらダメだ。
 感じて、熱くなる。
「も、自分でする……からっ」
「いいって。面倒なの嫌だろ」
 そう言いながら、少し強めに芹澤の指が折れ曲がる。
「やっ……ぁあっ!」
 大きな声が洩れ、我慢が効かなくなる。
 感じたくないのに、我慢出来なくて、芹澤の指を求めるみたいに腰が動いてしまう。
「ぁっあっ……ぅんんっ!」
「……須藤、感じたいなら感じていいよ」
「っ……んっ!」
「俺にその気ないのに感じちゃうの、恥ずかしい? あのね、ホント今は掻き出すだけのつもりだったけど、別にそれで須藤が気持ちいいなら俺は嬉しいよ」
 掻き出されてるだけで感じるとか、そんなことあるわけない。
「早く、ん、抜いて……」
「抜いて欲しくないって体が言ってるんだけど」
「バカ……ぁっ……あっ」
 芹澤の指がただじれったくてたまらなくて、何度も腰を揺らしてしまう。
 俺が腰を揺らすたび気持ちいい所を掠めて、もう感じてないだなんて言えるレべルでもない。
「……やっぱ今日の須藤、すっげぇエロい」
「んっ……ぁっ」
「今日、結構もうイったのに、まだこんな感じてくれるんだ? 一応、感じさせないようにしてたんだけど」
 わかってる。
 わかってるから恥ずかしくてたまらなくて。
 ムカつくから芹澤の腕に強く爪を立てたいのに力が入らない。
 ただ、芹澤の服をぎゅっと掴み、動かしてくれない芹澤の指を求め続ける。
「はぁっあっ、あっ! ぁんんっ……」
「俺、須藤の体すっげぇ解るからさ、ここまで焦らすことってなかったんだけど。須藤ってこんななっちゃうんだ?」
「あっ……なにっ……」
「そりゃたまには軽く焦らして須藤の反応見ることもあったけど。今、すっごいよ。こんなに俺のこと欲しがってくれて」
「っ……ふざけんな。も、いい……からっ……はやくっ」
「早く……抜いて欲しい? それとも掻き回して欲しい?」
 解ってるくせに。
 まるで俺の体の反応を楽しむように芹澤はなにもしてくれない。
 だから俺の体はまた勝手に反応してしまう。
 もう掻き回して欲しくてたまらない。
 腰を揺らすと芹澤の指先が当たって、イきかける。
 けれどギリギリでイけないような感覚に、俺の思考能力は低下し、自然と自分のモノを掴んでいた。
「あっ……ぁんっ! あっあっ……ぁあっん!」
「うわ……自分で擦っちゃうんだ?」
 もうどうでもいい。
 芹澤には幾度となく感じている姿を見られてきていた。
 だから、別に恥ずかしくない。
 そう思いたいのに、俺だけが1人いやらしく求めているようで、いつもはあまり感じない羞恥心を覚える。
 羞恥心がこんなにも体を昂らせるものだと初めて理解した。
「あっ……ん、ぃくっ……」
「このままでイけそう?」
 芹澤がほとんど動かしてくれない指を腰を揺らすことで感じながら、自身を高めていく。
 イけそうだけれども、芹澤が動かしてくれたらもっと気持ちいいのは解っていた。
 めんどくさい。
 そうは思うけれども、拒み続けることの方がめんどくさい。
「あっ……ん、芹澤ぁ……」
 俺は、小さく首を振り、イけないと伝える。
「はぁっ……も、イく……あ、イかせ……っ」
 目の前の芹澤が固唾を飲むのがなんとなく理解出来た。
 直後、中に入り込んだままの芹澤の指が、ゆっくりと中を掻き回す。
「ぁあっ! あっあっ! んぅんっ!」
「イく?」
「あっ、いくっ……いくっ……ぁあっ、あぁああっ!!」

 少し芹澤に煽られただけですぐに吐精してしまうが、芹澤は指の動きを止めてはくれなかった。
「ぁっあっ……芹澤っ……ん、も……」
「焦らしたのは俺だけどさ。俺もすっげぇ焦らされてたんだよね」
「はぁっ……んっ」
「須藤の中、すっげぇ気持ちいい。俺の指ぎゅうぎゅう締めて、たまんない。もう少しココ、掻き回していい?」
 もっと早くからとっとと掻き回せばよかったのに。
 そんなこと今さら思っても無駄だ。
 それに、はじめは本当に掻き出すだけのつもりだったのはお互い様。
 芹澤はぐちゅぐちゅと俺の中を掻き回す。
 そういえば、あんな何十分も俺の足を舐めれるくらいだから、もしかしたら本当に、しばらく掻き回し続けるかもしれない。
 俺が例え麻痺してうまく感じなくなったとしても、芹澤は自分が好きだからとやり続けてしまいそうだ。
「ゃだっあっあっ……あっ、それっ……やだっ」
「どうして? 須藤の体、すごいビクビク震えてる」
「ぅんっ! はぁっ……ホント……あ、待ってっ、あっ」
「……もしかしてさ。結構イっちゃったし、出さずにイきそう?」
 今の自分がわからなくて首を横に振る。
 ぎゅっと芹澤の腕にしがみつく。
「ひぅっ、ぁあっ……ぅっ……くっ」
「苦しい? ……中で、イかせてあげる」
 優しい口調でそう言われると、理解出来ないまま頷いた。
 すると芹澤は中の、敏感な部分をぐっと押さえつけてしまう。
「ひぁあっ! あっあっ!」
「んー……暴れないで、須藤。大丈夫」
「あっ……ん、そこぉ、やっあっ……だめっあっ……ぁあっ」
「いつもと違う? 変な感じ?」
 俺は涙を流しながらもコクコクと頷いた。
「……えっと、こう……かな。力抜いて。俺に委ねて?」
「んぅうっ! あっあっ……芹、澤ぁっあっ……んぅんんっ!」
 体が小さく痙攣して、自分の体なのに抑えられなくて。
 恐くて芹澤にしがみつく。
「ゃあっ! あっ……あぁあああっ!!」

 一際大きく体が跳ね上がり、初めての感覚に陥る。
 ゆっくりと芹澤の指が抜けていくが、俺の体はぼんやりして、気持ちよくて。
 まだ震え続ける体をそっと芹澤が撫でてくれる。
「はぁっ……ぁっ……あっ……」
「……イっちゃった?」
 そうか。
 俺、今、芹澤にイかされたんだ。
 それも、精液を出すだけのイき方とは違い、出さずに女みたいなイかされ方。
 そう思うと、ものすごく恥ずかしくてかぁっと顔が熱くなる。
 俺の返事を待たずに芹澤は俺の体を起こし、ぎゅっと抱きしめた。

「……なん、だよこれ」
「んー……須藤が俺に委ねてくれた証拠?」
「……うざい」
「男女でも気を許してなきゃ中ではイけないって言うでしょ」
「知らない」
 とにかくもう芹澤のせいで体に力が入らない。
 言葉通り、芹澤へと体を委ねてしまう。
「……お前、代わりに仕事して」
「しょうがないなぁ、須藤は」
「…………ホントにやらせるわけないだろ」
「じゃ、体拭いてあげる」
 答えずにいると、芹澤はそっと俺を解放し、傍にあったタオルを濡らしに行ってくれる。
 すぐさま戻ると、俺の体を拭き始めた。
 さすがにもう意識するわけにはいかない。
 平静を装いただ拭かれていく。
「あのさ、須藤。一応聞くけど今日はもうヤる余裕ない……とか?」
 掻き出された後、1回くらいならいいと思っていたが、こんな風に指でイかされてはいくらゴム有りとはいえ結構キツい。
 もちろん、芹澤がヤりたがっているのは百も承知だけれど。
「……してもいいけど」
「あー。いやそうだな、須藤。さすがにこの状態の須藤にはし辛いかな」
 めんどうだ。
 めんどくさいけれど、たまには芹澤のために動いてやるか。
「……じゃあ、口でする」
「は?」
「二度も言わせんな」
「だって、それこそ須藤、面倒だって言いそうじゃん」
「……面倒だよ。面倒だけど……まあいっかって思ってるから言ってんだろ」
「須藤……」
 芹澤は大きく頷いて俺に抱き着くと、そっと口を重ねてくれた。