疲れた……ホントに……。
なんなんだ、この学校は。
入学式からまだ3日だってのに俺ってば、初なことづくし。
入学式の日には、ルームメイトの悠貴先輩の手でイかされるし。
次の日には、クラスメートの啓吾にやられるし。
素敵なスクールライフはドコへやら。

とりあえず当初の予定では、初めての土曜日はさ?
新しく出来た友達のトコとか行きたいな〜とか思ってたわけよ。
でも疲れてそれどころじゃないっつーかなんつーか。
俺はもう、疲れてるわけよ。
たっぷり休息しないと……。

―ピーンポーン―
そんな時にインターホン。
誰なんだっての、俺の休息を邪魔する輩は。
と、悠貴先輩が、ドアに向かう。
そうか、そうだよな、全部悠貴先輩にまかせときゃいいんだよな。
俺はベットに寝転がったまま、悠貴先輩に導かれる人を見ていた。
あ、入学式の日に、確か悠貴先輩とやってた人。
「おはよ」
朝から、元気なのか色っぽいのか、わからない感じで俺に向かって言う。
「おはようございます……」
とりあえず、応えてはみるけど……。
まさかやりだしたりしちゃう……?
その前に逃げたいなーなんて。
「ねぇ、悠貴先輩。もうあの子に手、出したの?」
「ん、最後まではしてないよ」
「そぉ?」
その人は悠貴先輩の頬を誘うように撫でながらこっちを伺う。
そんな目で見ないでくださいっての。
俺は逆方向に体を向けてその視線から逃れる。

それでもなんつーか、視線からは逃れられても、悠貴先輩を誘う言葉が聞こえてくる。
……こんなトコでゆっくり休められないって。
啓吾の部屋はもっと休めないだろうし。
晃の部屋にでも行って休ませてもらおうか。



そんなこんなで晃の部屋の前。
インターホンを押す。
いや、なんか緊張する。
他の人の部屋に行くのなんて初めてだし。
中からかすかに返事が聞こえたので、俺はドアを開けて晃の部屋に入り込んだ。
「あ……深敦くん」
「ごめん。急に来ちゃって」
「ううん」
ルームメイトはいないようで、晃だけだった。
今日はなんだか浮かない顔。
いや、昨日もそれほどハイテンションだったとかじゃないんだけど。
あぁ、俺が啓吾にやられたから、もう俺の顔見るのもいやだったりして。

晃は俺にお茶を出してくれて、机の前に座り込んだ。
それにあわせて俺も向かいあわせるようにして座る。
「なんかさ。ルームメイトの友達が来ちゃって、ゆっくり出来そうになくってさ」
それにしても。
やっぱ晃の浮かない顔が気になっちまう。
こうゆう時って聞かない方がいいのかもしれない。
でもどうしても聞かずに入れないんだよな、俺って。
「なんかあったの……? 暗い顔してるぜ?」
そう言うと苦笑いして頷く。
「……えっと」
俺のせい……? そう目で訴えてみたり。
それが通じたのかは分からないけど
「ちょっと昨日いろいろあったんよ」
って……。
「いろいろ?」
「うん。啓ちゃんにフラれちゃった」
にっこりと……無理やり笑ってそう言う。
フラれたって。
「……そんな……告ったんだ?」
晃は『違う』と首を振る。
「でもなんとなく分かる時ってあるでしょ。これは駄目だなって思ったり……。 啓ちゃんは僕みたいなのは恋愛対象じゃないみたいなんだ」
「……そうなんだ」
「深敦くんみたいなのが恋愛対象なんだってさ、啓ちゃんは」
そうは言われても、俺にはどう答えていいのか分からない。
それは残念だったな、なんて言えるわけねぇし。
俺が途惑ってると、晃は軽く笑った。
「深敦くん、啓ちゃんのこと、嫌い?」
「えぇっ?」
啓吾?
啓吾は……いきなり人のこと犯したりどうかと思うぜ?
そりゃ、それでよがってた自分もどうかと思うけどっ。
それさえなければ……俺、啓吾と普通に友達になってたのかな。
いや、それは微妙。
サドっぽいし……って、雰囲気だけで人を判断しちゃ駄目だろうけどさ。
というか啓吾のことを好きだっつってた晃の前で、『俺は啓吾は嫌い』なんて言えねぇしっ。
かと言って、『好き』とか言うのもさ。
どうなんだろ。
自分の好きだった人を他の人が好きって言い出したら……。
その人の良さをわかってくれて嬉しいとか思うのか?
それとも、その人の良さを分かるのは自分だけでいいんだってな感じで嫌に思うかも。
「嫌いじゃないけど……まだ会って間もないしよくわかんねぇ」
ついあいまいに答えてみたり。
「そっか。啓ちゃんはね……いい人だよ。僕はフラれちゃったけどね。 深敦くんなら付き合えるかも」
「そんな付き合うとか……」
啓吾だからとかじゃなくって。
俺、まだ一応女の子好きなんだけど。
そりゃあ女がいたからって、仲良くなれてたかどうかはわかんねぇけど。
なれてなさそうだけどさぁ。
俺って、女に滅多に話しかけなくって男とばっかつるむタイプだし……
のわりには彼女欲しいとか人並みに思ってみたこともあったりな。
「理想のタイプとかさ、ないん?」
そう聞かれて考え込む。
「うぅうん。やっぱ、俺より背が低くって、話しやすくって面白くて、美人ってよりはかわいい系? 2人でいて楽しいのが一番かな。でも結局は俺を好きでいてくれれば誰でもいいかな〜なんて」
変に理想の彼女像を想像して浮かれて語りだす。
「女の子じゃなくって。男の子でも?」
「……男?」
晃の中じゃ、もう頭ん中、男同士なんだろうな。
俺は聞かれるとすぐ男と女だと思っちまってたけど……。
男ねぇ……考えたことねぇし。
「男と付き合うとしたら……ね。気持ちよくやれればいいんじゃないの?」
ついそっけなくそう言ってしまう。
だって男同士の恋愛ってどうなんだ?
一緒に仲良く買い物とか行くのもおかしいし?
欲望をはき出せれる相手がいいんじゃねぇの?
晃はにっこり笑って
「じゃあ、啓ちゃんはOKだね」
って……。
「なぁ、なんでそんな啓吾にこだわるんだよ。いや、そりゃ晃が啓吾のこと好きってんだからいいんだけど、俺に勧めてるみたいに聞こえてさ」
「うん。勧めてる」
少し、悲しいようなよく分からない表情で晃は言った。
「啓ちゃんっていろんな人と関係あったから、誰か1人に絞って欲しいなぁとか思うんよ。 なんていうか……『あいつは誰とでもやる男だ』とか悪いイメージついちゃいそうで」
なんとも晃は啓吾想いですこと。
「……なるほどね」
となると、余計に啓吾のイメージのために俺が付き合うってのもどうなんだって話だ。
「でもさ、俺でいいわけ?」
「うん。深敦くんならさ、啓ちゃんも好きだと思うし」
「どうしてそんなんわかるんだよ?」
「わかるよ。なんとなく……だけど」
「俺は啓吾のいいトコ、しんねぇし」
すぐ人に手、出したりいやらしく焦らしたり。
やなとこばっか。
「困ってるときは助けてくれるよ」
「だからって冗談でヤったりしていいわけ?」
「……そうだね……。でも嫌がるのを無理やりとかはないでしょ? そうゆうことしない人だから」
そう言われて、自分どうだったんだろうとか思う。
無理やり? なのか?
いや、でも俺、感じまくってたし。
それに晃の啓吾に対する『いい人』ってのをあえて壊すような発言はしない方がいいよな。
「啓ちゃんはね……今でもときどき、訛るんよ。自分のこと、素で語る時とか。……人に何かを聞くときとか、言い聞かす時とかはもう滅多に訛らないみたいだけど。その……するときとかもしかして訛ってんのかなぁ……なんて」
少し、照れたように俯いて言った。
「……訛ってるって」
啓吾、訛ってんの……?
聞いたことないんですけど?
いや、俺が気にしてなかっただけでもしかしたら訛ってた?

そんなこんなで啓吾の話でなぜかもちきり。
昼になってしまっていた。
「お腹すいたから俺、戻るよ」
晃の部屋を後にして、俺は自分の部屋に戻った。


晃のトコ行くと嫌でも啓吾のこと、考えさせられる。
……訛ってんのか。
俺とやった時って訛ってなかったよな。たぶん。
つまりさ、俺とやってる時、まだ自分を隠してたのかよ。
なんかムカツク。
俺、全然余裕なくなってんのに。

それからしばらく啓吾のこと考えちまってたけど、昼寝してテレビ見て風呂に入った頃にはもう忘れちまっていた。
それでも次の日。日曜日。
夜、8時頃、啓吾が俺の部屋に来る。
晃に教えてもらった事がいろいろと頭を駆け巡った。



「深敦、おもしろいもん、見せてやるからちょっと来な」
そう啓吾が言うけどなんつーかいかにもあやしいっての。
それでも気になって行ってしまう自分がバカで嫌になる。
しかも目隠しまでされて。
気になっちまうんだよ、おもしろいもんとか言われるとっ。
部屋らしきところへ連れてかれてしまう。
「おもしろくなかったらキレるからな」
そう言うと、『じゃあ、後でキレな』って……
「は?」
つまりそれって『おもしろくない』ってことか?
そうだよな?
「てめっ……」
殴りかかろうとする手は空振って、バランスを崩した体は、あっけなく啓吾に預けられる。
そのまま、ベットらしきところに倒れこんでしまっていた。
「な……っ」
体を起こされてすぐ、啓吾が後ろに回ると、俺の両手を後ろで固定する。手錠か?
「おいっ……てめぇ、外せって」
そうは言っても無理である。
手早くシャツを脱がされたかと思うとそれだけでなく、ズボンと下着も一気に剥ぎ取られる。
「ちょっ……」
待て待て待てってっ。
また、俺流されてる。
駄目だって、分かってるんだけど、流されてるっ。
しかもなんていうか、目隠しとかされてっと、すっごく変な感じ。
周り全然わかんねぇし。
後ろから前に回った手で、啓吾がいきなり俺の股間のモノを擦り上げると、俺の体が必要以上に過敏に仰け反った。
「ひっ……ぁっ」
やめろって。
やめて欲しいのに、気持ちよくってやめて欲しくないとも思っちまう。
「や…っ…ぁっ」
なんか、自分でも嫌になる。
啓吾の指が、いやらしく絡みつくようで、上下に動かされる映像を鮮明に想像しちまう。
「やめろって……っ」
見えないと、されてる以上のこと、想像しちゃったり。
すっげぇ、手が器用に動いてるように思える。
俺って変態じゃん。
すると、なんの前触れもなくいきなり俺のを弄っていた啓吾の指が奥を撫で、ゆっくりと差し込まれる。
「イっ……ぁあっ」
いきなり入れてんじゃねーよっ。
「なにっ……」
なんかひんやりとした感覚。
「別に? いきなり入れっと、痛いだろ? ローションつけてやってるだけ」
それはどうもありがたいことでっ。


中が熱くって……。
我慢出来なくなってくる。
「ぁっ……あっ…馬鹿…っ…」
「馬鹿はお前だろ?」
くっそ……こいつマジで、ムカツク。
確かに頭は悪いけど、そういう馬鹿じゃなくって、馬鹿なんだってばっ。
「馬鹿ってっぁっ……言った方が馬鹿ぁっ」
「じゃ、お前だろ? ホントに馬鹿」
「はぁっ……ぁあっ」
駄目……反論できねぇし。もうこんな奴、無視だ無視っ。
奥の奥まで入り込んだ指が、なんかローションを塗りたくるかのごとく、中をかき回す。
「ぁっ……やぁっ…っ」
熱くて熱くてもう泣きそう。
いや、すでに涙腺ゆるんじまってわけわかんねぇ状態。
「もう、目隠し取ろうか」
やさしく耳元で言うと、目を隠していた布を取る。
でももうそんなんどうでもよくなってきちまってる。
出し入れされる指が気持ちよくって、タイミングを合わせて締めたり緩めたりしちゃってるってのが自分でもわかった。
「やっ……くっ…やっ」
自分で自分が嫌になる。
でも気持ちよくってしょうがねぇんだよ。
本当は中が熱くて堪らないから、もっともっと掻き回してくれないとじれったくってしょうがなかった。
でもそんなこと言えるわけがねぇし、そんな自分が嫌すぎる。
「ぁっ……ふぁっ」
気持ちいいって事しか考えれなくなっちまう。
理性が吹っ飛びそうになる。

なんでこんなことすんだよ。

そう思った時、晃の言っていたことをふと思い出す。
『啓ちゃんはね……。今でもときどき、訛るんよ。自分のこと、素で語る時とか』
俺は啓吾に自分の事、語られたことねぇかわわかんねぇけどっ。
訛ってる奴って意識してないと標準語とか使えねぇもんじゃねぇの?
「啓吾っ……ぁっあっ」
「すっご……もう濡れてる」
「はぁっ……ぁっ」
指を増やされて、2本の指が中で器用に蠢くと中だけじゃなくって、全身が熱くなってきて、ドコに力を入れればいいのかわけがわからなかった。。
もうイきそう。
「まだイくには早いんじゃねぇの?」
俺がイきそうだってのを分かってか啓吾がそう言った。
お前は俺を相手しているときでもそうやって余裕で標準語使ってられんのかよ?
訛ってるってどんな風?
なんかわかんねぇけどイライラする。

指を一気に引き抜くと、啓吾は代わりにローターを差し込んでいく。
「っやめっ……ぁっ…くっ」
他ごと考えてると、抵抗力が下がっちまうし。
まあどうせ手錠が取れないから抵抗なんて出来ない感じなんだけど。
「どんどん入ってくな、ココ。ずいぶんやらしー体になったじゃん」
軽く笑ってそう言うと、奥の方まで入れられる。
「ぁっ……も、やめっ」
俺が制するのも無視で、啓吾は奥まで入れたローターのスイッチをいきなり前触れもなくONにした。
「ぁあっ……ぁっあっ、んぅうっ……ひぁっ」
止め処なく声が溢れて、体が仰け反る。
「やっやめっ…ぁっあっ……ぁあぁっ」
一際大きく体が跳ねて、アッサリ頂点に達してしまう。
「早ぇよ……おい」
普段だったら焦らすだろうに、予想外に俺がイってしまったようで、今回は止められずに済んだ。
でも、逆にツラい気がしないでもない。
イったばかりの敏感な体に、容赦なくローターの刺激が襲い掛かる。
「ひっ…ぁっあっ……止めっやっ、啓吾っっ」
止めるどころか啓吾は俺の股間のモノを手に取って、強く擦り上げていく。
前からと後ろからの刺激でわけがわからなくなってきていた。
「深敦くん、元気だねぇ」
あえて君付けでいやらしく呼ぶ。
溢れ出た精液を亀頭に塗りたくるかのようにして、啓吾は親指の腹で擦った。
「ぅンっ……やっやぁっ…ぁあっ」
ビクビクと体が震え上げる。
すっげぇ気持ちいいのに、イったばっかでイけないような、やな感じ。
自分の体が熱くって変になっていくのが分かる。
「な……っんでっぁっあっ」
つい口から洩れたセリフに啓吾が反応してローターを一気に引き抜く。
「なに?」
「……はぁっ」
いや、わざわざやめなくてもいいんすけど。
とか言いそうだったけど、やめてくれないとまともに話せないかな。
というかあらためて『なに』とか聞かれると答えづらい。
「だからなんで……こんなんするんだって」
「……どう答えて欲しいわけ?」
逆に聞かれてしまう。
そんなの。
なんだろ俺。
『好きだから』とか言われれば満足なのか?
晃の言葉がまた浮かぶ。
啓吾は自分のこと素で語るとき、訛るって……。
そうなんだよ、素じゃない状態で人のこと、ヤるなっての。
俺が必死で声殺したりして、それでも駄目で自分、さらけ出しちまってるってのに。
一人で馬鹿みたいじゃねぇかよ。
ヤってるときくらい素でいたらどうなんだよ。
「お前さ……別に俺のこと、好きじゃないんだろ?」

ほら、よく自分で自分のことを『俺って馬鹿だから〜』とか友達に言ったりさ。
あーゆうのって、ホントは『そんなことねぇって』って否定されたくて友達に言ってたりすんじゃん?
なんか……そんな感じ。
『そんなことねぇ』って言って欲しいような気がして、そんな聞き方しちまう。
「深敦は? 俺にやられてどうなわけ? 嫌? 体は嫌がってねぇみたいだけど?」
くすくす笑って、上を向いてしまっているモノの亀頭を指で突く。
「ぁっ……ばっか……言えって」
そうやってなにもかも、逆に聞いて、はぐらかしてんじゃねぇよ、馬鹿。
「なにを?」
「だからっ……」
俺のこと、好きかどうか……って。
さっきは流れで言っちゃったけど、あらためて聞けるもんじゃない。
「啓吾、もっとさ……人のこと、聞いてばっかじゃなくって、自分のこと言えよ」
「俺のこと、知りたいわけ?」
「っなに言って……ちげぇよ」
……俺、啓吾のこと、知りたがってる?
違う違う。
そうじゃなくってさ。俺のことだけ一方的に聞かれるのが嫌だっての。たぶん。
俺も答えてねぇけどさ。

やっぱつけたす。
俺の理想のタイプ男版。
気持ちよくやれるだけじゃ駄目だよな……。
やっぱ俺のこと好きでいてくれないと。

「そうやってさ冗談で人のこと、犯したり、おかしいだろ?」
「犯しとおかしいかけてんの?」
「違ぇって、馬鹿っ」
カチャっと後ろで止めていた手錠を外してくれる。
「え……」
「確かにおかしいよな……。冗談で人のこと犯してたらね」
笑いながら言うと、啓吾は手錠で擦れた俺の手首を軽く舐める。
「じゃ、好きでもねぇ奴に犯されて感じるってのはおかしくねぇの?」
「……それは……本能」
「じゃあ俺も。本能が深敦を犯したがってんの」
笑いながら言う啓吾になんか腹が立ってきた。
「真面目に答えろってばっ」
俺は啓吾の方を振り返って怒鳴った。

思いがけない俺の行動に啓吾が一瞬、言葉を失ったように見える。
「真面目に? 別に嘘じゃねぇって。犯したいと思ったから犯したわけ」
だからなんで犯したいとか思うんだよ。
本能とか言うわけ?
理解に苦しんで不機嫌にしていると、啓吾が軽く溜息をつく。
「……深敦さぁ……。俺が冗談でお前のこと犯したと思ってんだ?」
「え……」
冗談じゃなきゃ…なんだっての。
「だって……お前男好きだし、いろんなやつと関係あったってっ」
「……その情報どっから入手してんだよ」
「……どっからでもいいだろ? 違うのかよ」
少しの沈黙。
「……別に嘘じゃねぇけど」
ほらな?
誰にでも手、出しちまうような奴なんだっての。
「……遊びって割り切った奴としかしてねぇっての」
啓吾はそうつけたした。
えぇっと、つまり。
「……俺は?」
遊びって割り切れてないような気がするんすけど……。
「……深敦? 深敦は本能」
「は……?」
また本能ですか?
わけわかんねぇって。
「なんだよ、本能本能って意味わかんねぇよ。ちゃんと理由述べろって」
「理由がないから本能だっての」
「じゃあ理由もなくやってたわけかよ」
「気持ちいいからやってたの」
「気持ちいいだけじゃ駄目なんだってばっ」
そう、言ってしまってから『なに言ってんだ?』って、思い直す。
「気持ちいい以外に深敦は何か求めてるんだ?」
軽く笑みを見せてから、啓吾は思いっきり腕を引っ張って俺を引き寄ると、向かい合って抱きつくような感じで俺の背中に手を回す。
「言ってみろよ。聞いてやるぜ?」
耳元でそう言って、後ろからゆっくりとまた指を2本ほど差し込む。
「ひっ……ぁっ」
「気持ちいいだけじゃ駄目なんだろ? 深敦は」
「うるさっ……好きでもない奴を、気持ちいいって理由だけで犯すなよっ」

「じゃあ、俺が深敦のこと、好きだったら犯してもいいんだ?」
「はっ……ぁっ?」
そう……なるのか……?
「っ……別にっ啓吾、俺のこと好きじゃねぇだろ?」
「好きだよ」
あっさり言ってくる。
「っぁっ……てめっ……俺のこと、犯したいからってっ」
そんな嘘、言ってんじゃねぇよ。
そう言おうとしたけど啓吾が先に
「嘘じゃねぇって」
そう答えた。
もう頭がパニック状態。
「なっ……ばかっ」
「反論できねぇからって、人のこと、馬鹿とか言うなよなー。深敦が気持ちいいっての以外に求めてんのってこーゆうのじゃねぇの?」
気持ちいい以外に。
俺のこと好きでいてくれないと。
さっき、自分が考えた理想のタイプを思い出したら、変に顔が熱くなってきた。

じゃあ俺に合わせて言ってくれてるわけ……?
それとも……マジ?
そりゃ、好かれるのは嫌じゃない。
でも、嘘で『好き』って言われんのは嫌だ。
「……本気かよ」
「本気」
「じゃあ、なんで訛ってねぇんだよっ」
「はぁ?」
そうだ。
自分のこと、素で語るんだったら訛ってみろってんだ。
「自分のこと……言う時は訛るって……やっぱ嘘なんだろっ?」
「……アキか水城か兄貴だろ。情報源は」
中を少し激しくかき回して、啓吾が舌打ちして言った。
「ひっ……ぁっあっ……」
「別に、ダセぇから、深敦の前では標準語使ってただけだって」
「なっぁっ……訛れよっ馬鹿っ。気ぃ使って人の事やるなっ」
「……そりゃどうも」
軽く笑うと啓吾は、指を引き抜いて、ゆっくりと俺の中に、自分のモノを押し込んでいった。
「ぁっ……くっ」
何……俺。
なんで啓吾に『訛れ』とか言ってんの?
なんで啓吾に、素でいて欲しいとか思っちゃってんだよ。
「訛ってたら深敦は俺の事、信じてくれる?」
耳元で、そっと啓吾が囁くように言う。
訛ってればいいってもんでもないいんだけどっ
「……言葉に気ぃ使わんでいいとセックスに専念出来るわな」
奥の方まで全部、啓吾のが入ってちまうと、わけがわかんなくって、俺はもう啓吾の言葉を理解できなくなってきていた。
「俺の後ろに手、まわしといて」
「……っん」
言われるがままに、啓吾の後ろに手、回しちゃってたり。
ゆっくりと、俺の体を揺さぶりながらも啓吾自身が軽く腰を動かして内壁を擦り上げていく。
「ぁっ……あっ…やめっ啓吾っ」
「……好きならいくないん?」
「ぁっだってっ」
お前、今だけじゃねぇの?
そうやって好きとか言って。
「信じれん……? 俺が……深敦のこと、好きって」
「っんなのっ…ぁっ…信じれなっ」
「別に、不自由してねぇし……。深敦以外にも探しゃ相手いるし」
「ぁっ……やっ」
執拗にいいトコ突かれて、もうわけがわかんなくって、我慢が出来なくなる。
「ひぅっ……ンっ…はぁ……啓吾ぉっ」
つい手に力がはいって、啓吾の背中に爪を立ててしまう。
それでも啓吾はなにも言わずに、俺を揺さぶり続ける。
「ぁっ……やぁっも……ぁっあぁっ…あぁんんっっ」
ビクンと体が痙攣して、啓吾のお腹の方に欲望を放っていた。
その代わりって言ったらなんだけど、啓吾のが俺のお腹の中にドクドクと流れ込んできていた。



一気に力が抜ける。
俺がそんなに嫌がらなくってやっちまうとなんだか後味もそれほど悪くない気がしてきた。
「啓吾ってさ。やりたいからってわざわざ好きでもない相手に好きとか言う?」
疲れ果てて寝転がったまま聞いてみる。
「言わねぇって。そこまで人間落ちちゃいねぇよ」
「……マジで?」
「マジで」
……信じていいのかよ。
じゃあ本当に……お前は俺のこと好きなわけ?