思ってもいない高校合格。
本当に。
駄目で元々っていうか。
そんな感じで受験した高校だったから。

俺の中ではもう、他に受験した2校のうちのどっちかに行く事になるだろうと、いろいろ想像してたんだけど。

ああ、でもこう頭のいい高校?
なんで受かっちまったんだろう。
後でつらくなりそうじゃん?
受けたのは俺だけど。
俺ってホントは……って別に隠してるわけでもねぇんだけどバカだし?
頭のいい奴ってなに考えてんだろな。
やっぱ真面目な話とかしてるわけ?
もう真面目な話ってなんなんだか想像もつかねぇけど……。



そしてとうとう入学式。
大きな桜の木のある学校。
いかにも真面目ってな感じの奴らが、わさわさいる。
なんていうかもう、眼鏡必須みたいな。
まあ、眼鏡だらけってわけでもないんだけど。
もしかしたら、金髪なのって俺だけかもしれない。
それはちょっと敬遠されそうで、寂しい気がするけど。
でも、1年の入学時ってのはそんなもんかなぁ。
で、学校に慣れてきたらだんだん髪染めるとか。

それにしても、この学校。
家から通うにはちょっと遠いんだよな。
そんなわけで、寮生活をすることに。
これはちょーっと楽しみだったりする。
はじめは慣れるために先輩と同室らしいけど。

入学式の最中は、名簿番号が前後の奴と、少しだけ話した。
今日はそれだけ。教室にも行かなくていいらしい。

俺は、早々と学校の隣に立てられている寮へと入り、自分の部屋を探した。
入学案内と一緒に送られてきた紙によると、どうやら俺は3年生の人と一緒みたいなんだけど……
ドアに貼り付けられている部屋番号。
自分の部屋に間違いないと、何度も見直してから、緊張しつつもノックする。


全然、返事ないんですけど?
こういう場合って入っていいのか?
一応、俺の部屋になるわけだしいっかな?


もう一度、部屋番号を確認してから、ドアを勢いよく開けてみる。

「あっ…ぁっ…っン」
……はい?
いきなりのことで、体が硬直状態。
なんですかね……。
なにがなんだか。
たとえば、そういうビデオ見てるんだとかなら、まだ驚かないけれど、二次元じゃなくって。
実際、そこで俺が見たのは、艶めかしい裸体……。

って男だよな。男子校だし 。
でも、外から誰か連れ込んでるだとか、そういうことも考えられなくもない。

目が離せず、つい見入ってしまう。
やっぱり、男。
2人とも。
なんか……繋がっちゃってるんですけど。
つまりやっちゃってる。
「え……と……」
どうする事も出来ずにいる俺を、繋がったままの2人がジっと見る。
「ダレ……?」
女役にまわってる方の人が、男役の人に聞く。
「……知らないけど」
……ってか。
ホントなにやってんの、この人たち。
「ねぇ君……」
その声で、やっと我に返る。
「あぁあ、ごめんなさ……」
ってなんで俺が謝らなきゃいけねぇんだよ、とか思ったけどもうっ……。
とにかくそう言って、勢いよくドアを閉める。
……奴らがやり終わるまで、待ってろって?
嫌……だけどそうせざる得ないだろ。
だいたい、ドア開けたらすぐ、ベッドが見える部屋って、どうなんだよ。それは。
はぁあ。
一気に、体の力が抜けるような感覚。
俺はドアの近くにもたれかかり、ずるずるとそのまま座り込む。
びっくりした。
いつ、終わるんだよ。
眠くなってきちまったじゃねぇか……。
入学式、立ちっぱなしだったし。
前日俺らしくもなく、緊張してちゃんと寝れなかったし。
いろいろあって結構疲れてんだよな。
ちょっとくらい寝ちゃっても大丈夫か……。



「う……ん……」
そのまま寝ちまった?
髪をかき上げられる感覚に目を覚ます。
「起きた……?」
目の前に、さっき……って寝てたからどんだけ前だったかはわかんねぇけど、男にハメてた男が。
俺の上に重なって髪を触ってくる。
わけわかんねぇ……。
なに? 寝起きで頭が働かねぇ。
「ドアの外で寝ちゃってたから運んできたんだよ。こっちは君のベットだからそのまま寝てていいからね」
この人が同室の先輩か。
じゃあお言葉に甘えてもう寝ちゃおっかな……。
………って、こいつはどいてくれないわけ?
なんで、俺の上にいるわけ?
「あの……どいてくれません?」
「意外にはっきり物事言うんだ?」
そうか?
上に乗られてたら、どいてもらおうとするのが普通だろ?
そりゃあ、いきなり先輩に楯突くのは、新入生として、珍しい行為かもしれないけど。
先輩は全然どいてくれないし。
それどころか俺の股間あたりをズボンの上から弄ってくる。
「ちょっ、何して……」
思い切って先輩をどかしにかかる。
「……だめ?」
だめ? っておい。初対面の奴相手になに考えてんだ? ホント 。
「あたり前っ……」
それでもソコを刺激され続けると抵抗意識とか弱まってきちゃって……。
「は……ぁ……」
それに気づいてか先輩は軽く笑うと、片手でオレのズボンのジッパーを下ろして直接、俺のモノを手に取る。
「っ……あ、あのっ」
「なに?」
そんな平然とコトを進められると抵抗しにくいんですけど……。
このままさっき見たみたいにやっちゃったりするわけ……?
それはそれでだいぶ興味もあるけれど……。
まさかオレがハメられる方? ……だよな。

なんて考えてるうちにも、先輩のもう片方の手がシャツの中に入り込んで胸のあたりを触ってくる。
ホントなに考えてんだよ、この先輩は。
「ちょっ…あっ」
くすぐったい。
つい体が捩れちまう。
「くすぐったいんだ?」
ちょっと笑いながら頷く俺に先輩が笑みをこぼす。
「……じゃあ、もっと刺激的にしないと君は駄目なんだ?」
とかわけのわからない事言い出したかと思いきや、手にしていたオレのモノをさっきよりも強めに扱き出す。
「あっ…ふっ…」
いきなりされた刺激のせいで体が変に仰け反った。
「やめ……」
「そっか。まだ入学したばっかだもんね。制服、汚したくないよね」
気づかなくてごめんーな感じで先輩が俺のズボンを下着ごと脱がしていく。
いや、そうじゃないだろ。やべぇよ。
シャツのボタンも次々とすばやくはずされていって……
「意外にやらしい体してんね。ココ…」
露わになった俺の乳首を先輩が舌で愛撫する。
「…あっっ……」
なんだ、この声っ。
出てしまった声に自分で驚くよ。
とりあえず、もうどうすりゃいいのか。
慌てて自分の手で口を塞ぐ。
「……声、出しなよ」
先輩はそう言って、俺の手を退かしてしまう。
「あっ、ふぁっ……」
自分のモノを他人の手で扱かれる感覚に、ゾクゾクと快楽の波が押し寄せてくる。
しかも、胸まで舌で刺激されるし。
こんなの知らないって。
「はぁっ……あ、ぁあ…」
耐えれない、もう。
あろうことか先輩の頭に手をまわしてしまう始末。
なにしてんだよ、俺っ。
「ぁっ…んっっ…」
先輩は、俺の腕の中から顔を上げると、少し笑みを見せてから、口を重ねる。
「ン…んぅっ」
舌が入り込んで俺の舌を絡めとって。
俺、一応、これ、初めてだったりするのに。
でも、もうそんなこと、考えてる場合じゃない。
イッちゃうってっ。
「ん……んぅんんっっ」
キスしたままの状態で、俺は先輩の手の中に欲望を放っていた。

口が離れてもなにも言えなくって、なんていうか、もう放心状態。
そのまま上にかぶさっている先輩の方を見る。
「かわいいね。深敦くんでしょ?」
かわいいとか言うなよ。オレは男なんだぞ? ったく……。
とか思ったけど、今の俺って男らしくないっつーか……。

それより、名前。
名簿とかもらってんのかな? 同じ部屋になるやつの。
「俺は悠貴って言うんだ。覚えといて」
 そう言うと、悠貴先輩は俺の上からどいて、洗面所らしき所の方へと向かう。

……最後までやられんのかと思ったけど。
まぁ、なんつーか……助かったな……。



「おはよ」
耳元で囁かれるような声。
声の主は、悠貴先輩だ。
「……おはようございます」
なんて目覚めの悪い朝なんだろう。
「朝食のとり方、教えるから」
あ、やっぱ、ルームメイトの先輩ってそういうこと教えてくれるんだ……?
「はーい」
「着替えてから食べる? 食べてから着替える?」
どっちでもいいんだけど。
「どっちが多いんですかね」
「普通は、着替えてから行くかな。ってのも、部屋、戻るのが面倒ってだけだけど」
そうだよな。
「じゃあ、着替えてからで」



朝食も無事に済み、俺たちはお互い教室へ。
クラスはルームメイトの話で持ちきりだった。
「お前も寮なんだろ?」
そう話してきたのは髪が少し長めでちょっと見た目的にサドっぽい感じのやつ。
そいつと一緒になって別の寮生活してる奴らも俺の近くに来た。
「そうだけど……」
「先輩、どんなやつだった?」
先輩ったってなぁ。
「変なやつだぜ? 嫌いじゃないんだけど、よくわかんねぇよ」
「なんだよ、ソレ……」
ちょっと笑われてしまう。
うーん、確かに俺、言ってることわけわかんねぇ。

だってあの先輩おかしいだろ?
いきなり襲ってきたりさ? でもまあ、そんなこと言えねぇし……。
「そうだな。容姿的には真面目そうで………ってかさぁ、見ちゃったんだよ」
ふいに俺は部屋に入るときに見たあの光景を思い出してはっとする。
「なにをだよ?」
興味津々にそいつらがその話題にくらいつく。
「あのな、部屋開けたらその先輩ってのがさ、別の先輩とやってんの」
あ、相手が先輩かどうかの確証はないけど。
「……だからなにをだよ」
席についてる俺を数人が見下ろす。
「いや、だからさ? やっちゃってんの。ハマってんだって。 ドアあけたとたんに聞こえてきたのが喘ぎ声だぜ? ……そんな先輩」
俺のルームメイト説明終了ー……な感じで手を払う。
「へぇ……おもしろそうじゃん」
「は?」
なに言ってんだ?
「おもしろい……って、男同士だったんだぜ?」
「……男子校だしな。そんくらい予想出来るって」
「なんだよ、お前なにも知らずにココに入ってきたわけじゃないんだろ?」
「そんな奴、いるんだ?」
「まともな奴はせいぜい寮にしないよね」
近くにいた奴らが口々に言う。
なんだってんだよ……。
俺、なにも知らねぇよ?
知らずに入っちゃまずいのかよ。
まともな奴は寮にしないって……じゃあ、お前らはみんなまともじゃねぇのかよ。
「この金髪……狙ってんのかと思った。入学式当日から勇気あるよな。これは人目ひくだろ」
一番はじめに話し掛けてきたサドっぽいやつがオレの髪に指を絡ませる。
「別に……狙ったわけじゃねぇけど。中学、校則厳しかったから卒業したらすぐ抜くって決めてたんだよ」
そう答えてからさりげなく頭をずらしてそいつの指から逃れる。
「……で、さっきのはなんなんだよ。何も知らずに……ってなにか知ってて入るべきなのかよ?」
この学校……。
顔を見合わせてそいつらのうちの一人が口を開く。
「……昔、先輩がものっすごい恋愛してからだよな。結構うわさになっちまって。 別にそうゆうやつらばっかだったんじゃねぇけどその話聞いてなんとなく気になって……。 ソレ系のやつらが入ってくるようになっちまったんだよな」
「何年も経つうちにどんどんそっちに染まってってるんだよねぇ、この学校」
愉しそうに言ってやがるし?
なんなんだってんだ……ったく。
「それ系ってなんだよ」
「ホントに知らないんだ?」
軽く笑いながら見下ろされる。
ったく気分悪いなぁ。
「まぁ、ノーマルな奴はほとんどいないってことだよ。せいぜいバイだろうね」
せいぜいって……。
「じゃ……お前らっ……」

その答えを聞く前に、チャイムが鳴り、先生が来てしまう。
おいおい……ちょっと待てって。
どういうことだ……?