学校へと戻ってみたものの、桐生はまだ仕事中だろうし、職員室で出来る話でもない。
近くで、桐生の仕事が終わるのを待ってみようか。
それにしたって、いつになるかわからないし、待ってることくらいは伝えたい。
結局、俺は職員室を覗くことにした。
桐生は机に向かってなにかしていたけれど、当然、他の先生もいる。
少し緊張しながら、桐生の席へと向かう。
「桐生先生……」
「ん? どうした?」
俺を見て、桐生はにっこりと笑ってくれる。
ただ、俺が聞きたい話は笑っていられるものではない。
「ちょっと話が……」
仕事後で構わないと言いかけたけど、仕事後に生徒と話すなんて、そっちの方が不自然か。
他の先生もいる手前、なにも言えなくなってしまう。
そんな俺に気づいてか、
「行こうか」
桐生は席を立ってくれた。
2人で職員室を出てすぐ、俺は用件を伝える。
「……話があるんだけど、仕事後とか、どこか時間ないですか」
「いま出来ない話?」
「すぐ終わるかどうか……」
「……悪い話?」
悪い話……じゃないことを俺は祈ってる。
「桐生……俺以外に好きな人……」
自分が思う以上に、精神的にきてたのか、言葉に詰まってしまう。
自分はなんてうっとおしいんだろう。
そうはなりたくなかったのに、気になってしまう。
桐生は俺の頬を撫でると、そのまま唇を重ねてくれた。
廊下だけれど、誰も見当たらない。
嬉しくて、それだけで不安が和らいでいく。
「ん……んぅ……」
舌先が絡まって、気持ちよくて、それだけで腰が抜けそうになるキスだった。
「ぁ……んぅ……」
「明日休みだし、うち来る?」
「え……」
「その前に、こっちおいで」
突然、腕を強く引かれたかと思うと、すぐ近くの教室に連れ込まれる。
桐生はドアを閉めると、俺の体をそのドアに押し付けるようにして、もう一度、口を重ねた。
「んっ! ん……」
さっきよりも激しいキス。
それだけじゃない。
桐生はズボンの上から俺の股間を撫で回し始める。
「はぁっ……ん、ん! やぁっ!」
「かわい……」
「待って……桐生……ん! まだ……あっ!」
「俺が他の人となにしてても、いままでそんなに気にしてないみたいだったのに、どうしたの。付き合いだして、不安になった?」
話をしながら、桐生は俺のベルトを外し、ズボンのチャックをおろしてしまう。
「あ……」
取り出されたモノを直接擦られ、快感を引きずり出されていく。
「ああっ、あっ、ん! んんっ!」
「はぁ……していい? めちゃくちゃ犯したい」
俺のを手で擦りながら、熱っぽく、桐生が耳元で囁く。
体中がゾクゾクして、俺も桐生にされたくなっていた。
先に手紙のことを解決して、すっきりした上で抱かれたい気持ちもあるけれど、すっきりしない可能性だってある。
そもそも、こんな荒々しく俺を求めてくれる桐生を拒みたくはない。
めちゃくちゃオスっぽい、俺がすごく好きな桐生。
この桐生に、何度も犯されてきた。
プライドがズタズタになるほど。
強引であればあるほど、求められている気がして、たまらない。
「あ……ん、ん……いい……」
そう伝えると、桐生は俺の体を半回転させ、今度は後ろから体を寄せてきた。
俺は目の前のドアに手をついて、自分の体を支える。
「雪之は俺に、なにされたいの?」
俺のモノを掴み直してくれるけど、今度はまるで焦らすみたいに、ゆっくりした速度で撫でるだけ。
俺の方から腰を動かしそうになる。
「はぁ……ん、んっ! やぁ……!」
「や……? じゃあ、やめる?」
「や……ん、やぁ……ん、んっ……きりゅ……ん!」
「腰動いてるよ、雪之ちゃん……俺の手使ってオナニーしたいの?」
「ちが……ん! あっ……ん、やだ……あっ……やぁっ……」
「して欲しいこと、ちゃんと言おうか」
頭がボーッとする。
強引にここまでしておいて、それでいて放置するなんて。
早く、早くして欲しいのに。
わかってるくせに。
「んん……犯……して」
なんとか告げると、桐生は俺のズボンと下着を、膝までおろす。
すぐさま、唾液で濡らしてくれたのか、後ろから指が入り込んできた。
「ひぁっ……んーーっ!」
「そう……声、我慢して? 聞こえちゃうかもしんないし。ナカ、たくさん弄ってあげるからね」
言葉通り、桐生の指がぐにぐにとナカを押さえつける。
「ん、んぅっ!……ぁ……ん! ん……あん!」
「あーあ……かわいい声出ちゃうね……。気持ちよくて我慢出来ないの?」
我慢しようと思うのに、桐生の指がいい所を押さえつけるたび、思わず声が漏れてしまう。
「じゃあ、いまは指だけにしとこうか。こっちは舐めてあげる」
桐生は指を入れたまま、俺の前にしゃがみ込んで、性器を口で咥え込む。
「ひっ……ん……ああっ……ん、んぅっ!」
後ろを指で掻き混ぜられながら、桐生の口内で吸い上げられ、たまらず桐生の髪をぎゅっと掴む。
「やっ……ん、んんっ……やぁっ、ん……!」
桐生にこういうことをされるのは、少し久しぶりだった。
付き合って以来、数回したけど、付き合いだしたことで少し、気が抜けてしまったのかもしれない。
したのは、先週だったか。
気持ちよくて、すぐに限界が来てしまっていた。
「くぅっ……ん、んぅっ、ぁっ……ん、あんんんっ!!」
ビクビクと体が震えて、桐生の口の中で吐精する。
桐生は、それをすべて飲み込むと、指を引き抜いて、ゆっくり立ち上がった。
「ん……」
俺はというと、逆に脱力してしまい、座り込みそうになるところを桐生が支えてくれる。
「仕事終わったら、寮まで迎えに行くから」
「犯したいって……言ったくせに……」
「雪之ちゃんが、大きい声出すからでしょ」
「出さなかったらしてたんですか」
「してたよ」
即答されてしまい、返答に困ってしまう。
声を殺せなかったのは事実だ。
でもあんなの殺せるわけがない。
「うちでならたっぷり声出していいから。ね? ちゃんと犯してあげる」
「言い方……」
「だって、抱かれるより犯される方が好きでしょ?」
「違う……」
「どっちでもいいけど。いい子で待っててよ」
子供っぽい扱いには少し腹が立つけれど、優しく頭を撫でられると、嬉しくなってしまう。
桐生にズボンを履き直された後、俺はポケットからスマホを取り出した。
「桐生……その……」
「ん?」
「待ってるけど……もし、来れないなら連絡欲しいから……」
俺がなにを言いたいのか、だいたいわかったらしい。
「ロック外して。番号入れるから」
「ん……」
「行けないなんてことないと思うけど。だいたい時間わかったら連絡する」
桐生のスマホは職員室に置いて来たのか、俺のスマホから電話をかけて履歴を残す。
やっと桐生と連絡先を交換出来た……それだけのことで顔がにやけそうになる。
そんな俺に気づいているのかいないのか、わからないけど、桐生はキスしてくれた。
「んぅ……ん……」
「ああ……雪之ちゃんの味しちゃうかな」
「……変なこと言うな」
「やらしい味だろ。マジで犯したくなっちゃうからこのへんにしとくか」
もう一度、軽く俺の頭を撫でて、教室のドアを開ける。
「それじゃあ……」
そう背を向けかけた桐生を、俺は慌てて呼び止めた。
「桐生……!」
気になることはなにも解決していない。
好かれてる実感は出来たけど、桐生は途中でやめてしまったし、俺に付き合ってくれただけ。
「……結婚、してる?」
俺が尋ねると、桐生は優しく微笑んでくれた。
「してないよ。そんな心配してたの?」
「じゃあ……深雪って、誰ですか」
手紙に書かれていた女の名前を告げる。
「…………え?」
さっきは即答してくれたのに、普段、全然動じない桐生の表情が固まった。
やっぱり、俺には知られたくない関係の人だろうか。
「女……ですよね……」
平気なフリをするのは難しい。
桐生の返答を聞く前に、俺は顔を逸らした。
桐生はそんな俺を、優しく抱きしめてくれる。
「どうして知ってんの、その名前」
「手紙に……」
「ああ……あれを見たわけね……」
「全部は見てませんけど……その……」
「いいよ。置いといたのは俺だし」
桐生は、俺を抱いたまま、小さくため息を漏らした。
「お前が心配するようなことはないから」
「俺には関係ないってこと?」
「そういう意味じゃないよ。いずれ話すつもりでいたんだけど」
なにを言われるのかわからなくて、心臓がバクバクと音を立てる。
「深雪ってのは…………俺の名前」
かなり言いにくそうに桐生が告げる。
「……は?」
俺は抱かれたまま、顔をあげて桐生の方を見た。
「ふざけた言い訳に聞こえるかもしんないけど、証拠なら後で見せる。だから、お前は安心して、俺の仕事が終わるの待ってて」
桐生の言う通り、ふざけた言い訳にしか聞こえない。
だいたいあれは、桐生の字に見えた。
仮にもし本当に、深雪ってのが桐生だったとしても、筆跡が似ている誰かが、世界一愛してるなんて手紙を桐生に出したってことになる。
よくわからないことだらけだったけど、ここは桐生を信じて待つしかない。
「……わかった」
「少し遅くなりそうだから、ご飯は先に食べて、お泊りの準備しておいて」
「泊り……?」
「金曜の夜遅くにうちに来るんだし、俺はそのつもりだったけど?」
桐生の家に行くのは初めてだ。
当然、お泊りなんてのも。
「……わかった」
照れくさくなる俺を、桐生がまた優しく撫でてから、そっと解放してくれた。
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