今日は、工藤のクラスでは数学の授業がない。
「……つまんね」
職員室の自分の席で時間割を見ながら、ついそう洩らしていた。
「なにがつまんないって?」
上からそう声をかぶせられ、振り返る。
「あぁ、智巳ちゃん。いやあね。今日は、2年3組の授業がなくって。行きたかったなぁと」
「一度くらいほかの教師の授業とか覗いてみたいよな」
「あ。いいねぇ。行かせて、1年」
隣の席……1年の数学教師の智巳ちゃんの席から、時間割を取って俺のと見比べる。
2時間目。
俺が空いてる時間に、智巳ちゃんの授業。
「2時間目。OK?」
「俺が見られんの? まぁいいけど?」
「今日もちょっとは楽しくなっかねぇ」
 

とりあえず1時間目。
「はーいはい。テスト返しな」
2年2組は昨日授業がなかったから、まだテストを返していない。
まったくもって、このクラスは…。
平均点が一番高い。
頭のいいやつらがうまい具合にこのクラスにそろっちゃってる感じ?
普通、振り分けするから、うまい具合に、数学得意なやつが来たんだろ。

「総一郎〜」
100点満点のうちの一人。
頭良くて運動できて。
「お前が、性格悪くてよかったよ」
「はい…?」 「な
んでも完璧いい子ちゃんは嫌いだから」
「俺は、いい子じゃないって…?」
「腹黒だろ♪ 好きだな。ある意味、いい性格だよ」
「どうも」
にっこり笑って、俺からテスト用紙を受け取って、席へと戻る。
腹黒万歳だよ。

「優斗…」
こいつはちょっと厄介。
「はいはい♪」
俺の前にきて、手を出して、テストをくれと言わんばかり。
「…どうせなら、基本問題解いたら…?」
「それだったら、基本しか出来んみたいやん?」
応用問題だけ解いて。
基本問題は空欄。
馬鹿なやつのための点数稼ぎみたいな問題?
そういうとこは空欄なわけ。

こいつの場合、時間がなかったとかじゃないんだろ…。
わざと…だ。

まぁテストの点数のみで、俺は成績つけないからいいけどさ。
だって、こうやって応用解けて40点のやつと。
基本中心に解けて40点のやつと。
同じじゃおかしいだろ。
もっとも。
応用だけ解く、こいつがおかしいんだけど。

「なんで解かないんだ? 基本問題。簡単だろ? ってか、見れば解けるじゃん」
「愛ゆえ?」
「愛…」
「俺の好きな人が、頭のいい男が嫌いなんだとさ。ま、わざと悪い点取っても、喜んでもらえないだろうけど。だからって、いい点取るのも嫌なの。順位で負けたいから」
なるほどねー…。
「わざと解かないのもいやみらしくない…?」
「…やっぱ…? 俺、馬鹿だからそこら辺、よくわかんなくって、いつもむかつかれてる」
ちょっと変なとこでお馬鹿だからな、こいつ…。
「…お前が頭いいのは、わかってるし。そういうことなら、まぁいっか」
「どうも♪」

愛…ねぇ…。
2年生ともなれば、そんなこと語り出すんだ…。
なんとなく、愛って言葉で、思い出したのが工藤だった。
今日も、補充ですかね。
「考え事?」
「あ…? あー…。ちょっと。まぁ一応、俺教師だし…数学できない子とか、心配で」
工藤が、数学の授業に集中できないのは、俺のせいなわけだろ。
だからって、工藤に嫌われても、集中してくれないだろうし。
あいつの数学の悪さには困ったな…。

ボーっと考えてて渡しそびれたテストをやっと優斗に渡した。

とびきり悪いやつがいないこのクラスでは、すんなりと答え合わせが出来る。
ラクだな…
やりがいのないクラスだこと。
まぁいいけれど。



それより2時間目。
智巳ちゃんと一緒に教室に入ってすぐ。
「どちら様?」
「智巳先生の彼氏?」
「職務中なのに?」
「片時も離れたくないって?」
さりげに俺、質問責め…?
ドア付近にいた2人が、楽しそうに俺に聞く。
「ってか、授業参観?」
俺の横にいた智巳ちゃんがそう口を開いた。
うまい具合に、ノッたな…。
「智巳先生だけだよ、そうやってノってくれんの♪」
「たいてい、アワアワされるし」
2人の生徒は、別に質問の答えなんてまるで期待してないようで、ただ楽しそうに笑っている。
幸せそうなやつ等だな…。
「かわいい生徒だな」
智巳ちゃんにそう言うと、『だろ?』って、俺の耳元で、そっと答えた。
「どっちも、いじめがいがないやつらだけど?」
「あ、酷いね、智巳先生」
「智巳先生のこと、好きだから、こんなに数学がんばってるのに」
「だったら、たまにはまともに授業聞け?」
「聞いてますよ♪」
「テスト、どうでした?」
いきなり敬語にしたり、うまい具合に使い分けてんのな…。
「智巳ちゃん、まだ返してないんだ?」
「あぁ、このクラス、昨日なかったからな」
テストの点数をまとめて書いてある名簿を見て、智巳ちゃんは軽くため息を漏らす。
「…いじめがいのないやつら」
…いい点、取れてるんだ…?

「で、結局、どちら様?」
ほかの学年担当の先生なんて、全然、関わらないからなぁ。
それにこいつらまだ1年だし。
知られてなくて当然だろう。
「2年担当の数学教師。桐生だよ」
「数学の先生だったんだ。来年、俺らの担当になるの?」
「いや、そういうわけじゃないよ。今の2年。来年は3年。一緒にあがってくから」
「来年もお前らは、たぶん俺が受け持つから。はい。そろそろ席つけ?」
俺はというと、今日、休みでいないらしい、空いた席へと勝手に座る。
「はい、テスト返すから。その前に、そこに勝手に座ってるやつのことは、別に気にしなくていいから」
ひでぇ。
そう言って、普通にテスト返しをはじめる。
返された直後とかって、みんなざわついて席立ったりしてる。
さっきの2人の生徒のうちの一人が、俺の座ってる席にやってきていた。
「…あぁ、さっきの…」
「悠貴です。桐生先生って智巳先生と仲いいんだ…?」
「智巳ちゃんとは…そうだね。結構、なんでも話せるし」
この悠貴って。
智巳ちゃん好き…?
「相手してくれるよ、あの人」
「相手…?」
「そ…♪セックスしようって言えば、すぐいいよって答えてくれるだろうね」
「…でも、付き合ってる人いるんじゃ…」
「それとこれとは別ってやつ…?」
「誰の話…?」
さっきのうちのもう一人が、悠貴の後ろからひょっこり顔を出す。
「智巳先生の話」
1年生、かわいいかも。
そりゃ、1年全部がこうじゃないだろうけど。
なんか、初々しいし。
いろいろ聞いてくれるのって、かわいいし。
「桐生先生は?」
悠貴じゃない子の方が俺にふる。
「…俺…?」
「そ♪セックスしようって言われたらどうする?」
「相手によるけど」
「俺だったら?」
かわいいね…この子。
「いいね。願ってもない」
「あはは♪でも、俺、受向きじゃないし。ご奉仕し合うくらいなら♪」
どこまでマジですか。
でもいいね。
昨日、結局、工藤とはしてないし。
人にぬかれんのもご無沙汰だし。
「そういうこと、よくするわけ…?」
「悠貴とはよくするよ」
「付き合ってるとかではなく…?」
「付き合ってないよ。ただ、一人でぬくより気持ちいいから」
いい考え方。
「俺にもしてよ。彼女いなくて欲求不満」
軽いノリで誘ってみる。
「下手だよ? それでもいいなら構いませんが♪」
「オッケー♪名前は?」
「ん…拓耶」
「拓耶ね」
ノリにのったときだった。
頭の上を、バシっとなにかでたたかれる。
この感触。名簿だな。
智巳ちゃんだ。
「どこの教師が、生徒にフェラ頼む?」
「ココの教師だねぇ」
ってか、そんな堂々と名称出さなくても…。
「答え合わせすっから…。とりあえず、お前ら、黙っとれ?」
『はーい♪』
二人が、元気よく返事をする。
席につけとは言わないんだ…?
答え合わせちゃんとしろとか…。
「…テスト、どうだった?」
「智巳先生の問題、簡単だから♪」
拓耶と悠貴が俺に見せたテスト用紙は、二人とも100点満点。
こりゃ、智巳ちゃんもいじめがいないだろうな…。

簡単…ってわけでもないよな…。
「数学得意なんだ…?」
「俺はね。悠貴はそうでもないよな」
「…まぁね…」
あ、智巳ちゃんのためにがんばってるとか。
愛だねぇ。
工藤にも見習って欲しいもんだよ。




そんなわけで、放課後。
ばっちり約束どおり、保健室で拓耶と再会。
もちろん、保健の柊先生には話つけてある。
俺のかわりに職員室にいてくれたり。
いたとこで、職員室なんてなんもすることないけど。
柊のことだから、隣の智巳ちゃんとしゃべくってるんだろ。

「ん…ホント、未熟モノですが…」
「かまわないよ…」
椅子に座る俺の前に跪いて、取り出した俺のモノにためらいもなく口をつける。
かわいいね…ホント。
「せんせっ…ん」
「なに?」
「…一緒に…しない…?」
我慢出来ない…?
「いいよ」

ベッドの方へと移動して。
「俺が、上でいい…?」
そう聞かれ、かまわないと、俺はベッドに寝転がる。
「じゃぁ、ズボン、全部脱いじゃいな」
「…ん…」
少し迷ってから、拓耶は、下に履いていたものを脱ぎ去って、俺の体をまたぐ。
もちろん、俺の顔の方に足を向けて。
「いいよ。もうちょっと、上までおいで」
「ん…」
拓耶は、俺のを手で擦り上げながらも、体を俺に寄せる。
露わになっている拓耶のモノに下から、舌を這わすと、拓耶の体が軽くビクついて、腰が引ける。
「っぁっ…」
「好きな用にしてていいからね」
「ん…」
拓耶は、俺のモノを丁寧に何度も舐め上げてくれる。
口に含んで舌を絡ませられ、濡れた音を立てならがしゃぶられて。
上手いじゃん…。
「ン…っっ」
一生懸命なのがまたそそる。
かわいいな。
こっちも、ちゃんとご奉仕しますか。
「っせん…せぇっ」
「ん…。気持ちいい…?」
「っぁっ…んっ…ぃい…っ」
拓耶の腰に手を当てて、引き寄せながらも、舌先で強く刺激する。
「ゃっ…ぅンっ…んっ」

ノリにのってきたとこで、邪魔ものってのはくるもんなのか。
むしろのってないときだったら、邪魔ものなんて風に感じないのか。
嫌なタイミングで、保健室のドアの開く音が響く。
「っぁっ…せんせ…」
「困る…?」
「…俺は…ぃいよ。見られても…平気」
「俺も」
気が合ってよかった。
「ンっ…」
もう、どうでもいい。
「ぁっ…桐生せん…せっ」
拓耶の声が響く。
そのせいなのか、保健室から、また誰か出て行くような感じの音。
気を使ってくださりどうもですよ。
「んっぁっ…イきそ…っせんせ…」
「いいよ…」
「はぁっ…せんせっぁっ…んぅっ…ぁっぁあぁんんっっ」
拓耶は、自分がイくと、やっと俺へのご奉仕に専念してくれる。
やられながらは、やっぱ、無理みたい。
そんなとこもかわいいけど。
俺のもちゃぁんとイかせてくれて。
脱力から、2人でそのまま、少しだけベッドで寝て。

もう、6時ってときだった。
拓耶は、部活に顔を出すと行ってしまった。
俺はというと、まだ、ごろごろしてたり…。

「桐生ちゃーん」
保健の柊先生の声。
「…なに…?」
ベッドのカーテンを開けて、本人を確認。
「雪之丞、来たでしょ」
にこにこ笑って、柊は、俺に言う。
「…来た…?」
「職員室に雪之丞来たから。桐生ちゃんは今保健室って教えた」
「俺に用事で来たの?」
「そうなんじゃないの…? ってか、ココで会ってないんだ?」
んー。
もしかしなくとも、ご奉仕中のときのですか。
「どーして、俺が保健室だって教えちゃうかなぁ」
「まずいことになると思ったから」
にっこり笑ってあっさりそう言われると、反論も出来ない。
「…まぁいいや」

俺は、工藤を探しに、とりあえず、2年3組の教室の方へと向かった。

にしても、俺に用事…?
昨日の今日だから、会いたがられないと思ったんだけど…。


って…。
あれ?
俺、『明日も補充』とか言ってたっけ…?
軽いノリで言い過ぎて忘れてた。
というか、工藤だって、あれはノリだって思うだろ、普通。
マジで、補充やるとか思う…?
しかも、職員室まで呼びに来てくれちゃいますか。
律儀なやつだな…。



2年3組の教室。
中をのぞくと1人。
机に伏せて、長めの髪を横に垂らして。
きっと眠ってるんだろうな。
待ちくたびれて寝ちゃった…とか。
かわいいね、まったく。

「工藤―…」
少し離れた場所から工藤を呼んでみるが返事はない。
やっぱ寝ちゃってるかな。
あえて起きないように、小さめの声で呼んじゃった俺も俺だけど。

伏せてる工藤の下に、数学の教科書が開かれていた。
ちゃぁんと、やろうとはしてくれてるんだ…?
でも寝ちゃうあたりどうなんだ。
俺を待ってた? なんてな。

髪に手を絡めてやると、少し俺から逃れるみたいに頭をずらす。
「工藤…」
屈んで、耳元で呼ぶと、ピクンと体を跳ねさせて、ゆっくりと起き上がる。
「ん…」
寝ぼけてるな。
「桐生…せんせ…」
あれ…。
なんか、悲しそう?
俺が、拓耶といろいろしちゃってるシーン見たから…?
聞いただけかもだけど。
「なに…? 工藤…。言いたいことがあるならはっきり言って」
「別に…」
すぐ俺と逆方向へと顔を向ける。
かわいいね、まったく。
「…教えてやる…」
「え…」
赤らめた顔で、こっちを向く姿もイイね。
「…数学」
指先で、机の上に乗ってる数学の教科書を叩いてやって、わざと、気づかないフリをしてやる。
勘違いしちゃったくせに。
なに教えてもらえると思ったんだか。
まぁ、勘違いさせるように言った俺も俺だけど。

工藤は、自分が勘違いしたことに気づいてか、恥ずかしそうにうつむく。
いいね、いいねぇ…。
俺は、前の席に横向きに座って後ろを向く。
「テスト用紙は…? もってる?」
俺が昨日のことなんてまるでなにもなかったみたいなそぶりをすると、戸惑いながらも、反論せずにテスト用紙を取り出した。
「…ん…じゃあやるか…」
昨日以上にボーっとしてやがる。
こんな状態で数学の勉強なんて出気るわけねぇよなぁ…。
「…昨日のこと。俺と話し合う?」
前から工藤の首筋をそっと指先で撫で上げる。
昨日、俺がつけた痕が赤く残ったまま。
「触るなっ」
そんな言葉はもう無視。
頬を両手で掴み、思いっきり口を重ねてやると、工藤は体をビクつかせて、俺の腕を取って引き離そうとした。
「んぅっ…っン…」
昨日思ったけど。
こいつの声、めちゃくちゃイイ。
舌を絡めてやると、俺の腕を取った手が、滑り落ちていく。
「んっ…っン…」
しばらく絡めあった舌先を残しながら、そっと口を離していくと、唾液の糸がひく。
「…ん…」
羞恥心でも高めてやろうかと思ったんだけど。
工藤の方はそれどころでもないようだった。
ボーっとしちゃって、焦点が合っていないみたい。
「今日は、最後まで教えてやるよ」
「…なに…」
「抵抗すんなよ」
俺は、立ち上がると、工藤の腕を取り、無理やり立たせる。
「なにすっ…。もう…っ…昨日のは、忘れろって…」
「言ったねぇ。単なる気紛れで言ってくれたわけ…?」
工藤はなにも言えなくなったのか、ただ俺から目線をそらす。
気紛れなんかじゃないんだろって。

無理やり、工藤の体をうつ伏せに机へ押しつける。
俺は、自分のベルトをはずすと、工藤の両手首を後ろ手にそれでしばりあげた。
起き上がらせて、後ろから抱くようにしながらシャツのボタンを上から順にはずしていく。
「っやめ…っ」
「なんかもう、教師だからとか、どうでもよくなってきちゃってね…。それだけ、工藤のことが気になってるってことなんだけど」
耳元で、囁かれるのが弱いらしい。
耳元でそう言うと、体を強張らせる。
「っ…せんせ…」
もう、抵抗しようとかそっちよりも、今この状況に対してどうすればいいのかわからず不安を感じてるように思えた。
「最後までって…意味。わかるだろ?」
工藤のズボンと下着を下ろしてしまい、ソコには触れずに、胸の突起を指先で緩々とさする。
「っんぅ…っ」
少しいじってやるだけで、工藤の股間のモノが勃ち上がる。
「いやらしいこと、期待してる?」
「っ…違…」
「違わねぇだろって」
耳元に舌を這わして、両方の手でじっくり胸の突起を撫で回してやると、少し身動ぎする。
「っん…っはぁっ…」
「自分で自分の見てみろよ。もうビンビンじゃん…?」
「っやっ…だ…っぁっ…」
「やだじゃねぇだろ。お前がいやらしいんだよ」
「っやっ…ぅっ…やぁっ」
ピクンと体を震わせたかと思うと、工藤の体が一気に崩れ落ちる。
ガクンと床に座り込んでしまった工藤に合わせて、俺も座り込んでやった。
工藤の足に絡まるズボンらを抜いてやり、また、後ろから相変わらず乳首ばっかり攻めてやる。
「ふぅっ…やっあっ」
仰け反らせた工藤の体が俺へと体重を預けていた。
物足りない中途半端な刺激が苦しいのか、足で床でもけるみたいにしながら、俺へと体を押し付ける。
「はぁっあっ…やぅんんっ」
「触って欲しい…?」
工藤は目を閉じたまま、コクリと頷く。
「いやらしいな…」
俺は、胸ポケットに入ったままだった指示棒を取り出し伸ばすと、その棒の先で、工藤の股間のモノを軽く突付く。
「っあっくっ…」
「ちゃんと、自分の目で見てろよ」
棒の先で、根元から何度も撫で上げてやると、我慢出来ないみたいに工藤の腰が浮く。
「っやっんっ…んくっ」
「もっといやらしい液出しちゃいな。後ろに使えるから」
中途半端な刺激で先走る液が、竿を伝って後ろの方まで伝っていく。
「はぁっあっ…っゃ…だっ」
「何が?」
とことん、無視状態で、指示棒を床へ置き、工藤の口の中へと指を入れる。
「っんぅっ」
「しっかり舐めとかないと、痛いのは自分だからな」


なぁんて、かっこつけてはみるものの。
やばいな。めちゃくちゃかわいい。
素直に頷いてくれちゃうとことか。
「なぁ、工藤…。俺のこと、好きなんだろ…?」
「っ…んぅんっ」
声にならない声。
これじゃわかんないって。
俺はたっぷり濡れた指先を工藤の口から引き抜いて、もう一度、工藤に確かめるように聞いてみる。
「…好き?」
「っ…なんで…」
「もし、お前が嫌いっつーんなら……ってか、好きじゃないっつーんなら、やらないかな。あぁ、ちゃんとベルトも外してやるから安心しな。昨日のことも今日のことも、まったく全部忘れて、お前のことは、単なる数学の苦手で困った生徒くらいに思うことにするわ」
軽−くそう言って、工藤の返事を待つ。
やっぱ、教師としては、少しくらい躊躇しないとなぁ?
「工藤…? 答えな」
濡れた指先で、そっと唇に触れて催促する。

こんな状態じゃ、たとえ、好きだったとしても嫌いとか言いかねないけど。
それでもコレにかけてみるっつーかなんつーか。
素の俺ってのは結局、こういうやつなんだし。
こんな状態で、嫌だと思われるんなら、俺は引こうと思うわけだ。

「っ…せんせ…」
工藤は、俺に体重を預けたまま、顔を俯かせる。
「…っ好き……」
消え入りそうな声で、それでもはっきり、そう答える。

『好き』のあとに『じゃない』とか、つかないよなぁ?
てっきり、『嫌い』って言われるのかと思っていたから、一瞬、体が強張る。
「は…?」
つい、聞き返してしまっていた。
いや、わざともう一度言わせたいとかじゃなくって。
本当に、普通に聞き返してた。

その俺の聞き返しに答えずに顔を背けるあたり、やはり『好き』って言ってくれたのに間違いはないのだろう。
「こんなにひどくされても、好きとか言えるわけ…?」
俺は、後ろから工藤の体を片手で抱いて、もう片方の手の濡れた指先で、そっと股間のモノを撫でる。
「っんぅっ」
「…初めてなんだろ…?」
そう聞くと、口では言わずに、そっと頷く。

からかうことも忘れてしまっていた。
「じゃぁ、ゆっくり入れるから…。力、抜いとけよ」
「や…」
「大丈夫だって。俺の言うとおりにしてな」
「…ん…」
少しだけ迷ってから、頷く。
すっごい、かわいいわ。
お前、自分を縛ったの、俺だって、ちゃんと覚えてるのかっての。

俺は、前から回した指を、そっと秘部へと差し込む。
「っんぅんんっ」
「力、抜きなって」
「出来な…っあっ」
キツいな。とりあえず、今日は無理だわ。
指だけで気持ちよーくいかせてあげましょうかねぇ。
とりあえず、俺も、信用とか失いたくないし?
なんつっても、こんだけやっといて、まだ俺のこと好きとか言っちゃってくれる心意気に惚れた。
「痛くはないだろ?」
「ん…っ」
体が受け入れまいとするのに対抗して、ゆっくり奥へと指を進めていく。
「っやっんぅっ。やめっ」
「落ち着きなって」
奥の方まで入った指の動きを止めて、首筋にキスをする。
工藤の手を縛ったベルトを余っている方の手で外して開放してやった。
工藤は刺激に絶えるみたいに、自分の指を口元に持っていき歯を立てる。
「やめなって」
俺はその手をそっとどかしてから、奥まで入り込んだ指先を少しだけ抜く。
「っやっ」
抜かないでほしいとかじゃなくって、動かされるだけでキツいんだろう。
自然と俺の腕に絡めた工藤の手が爪を立てる。
「ここ…な。前立腺」
意味もなく解説しながら、そっとノロい速度で支障がないくらいに指を少し折り曲げる。
「っ…や…だっ…そこっ」
それでも、ソコがものすごく感じるトコだってわかってか、過剰に嫌がった。
「もっと感じな」
中で、そっと指を動かしながら、前立腺を刺激する。
「っひぁっ…っやっ…やだっ…てっ…っ」
一定のリズムで、何度もそこを擦ってやると、泣き出しそうな鼻にかかった声で、そう訴えた。
それでも、どうにも抵抗もできずに、ただ、体を強張らせる。
「もっ…やっ…ひぁっくっ…あぁあっ…」
生理的なのかわからないが、涙を流しているのが、仰け反った瞬間に覗えた。
「どうして? 気持ちいいだろ?」
「っやっ…変っ」
「じゃぁ、前もしてやるから…な?」
何を言い聞かせてるのか、自分でもよくわかんねぇんだけど。
とりあえず、工藤の体を自分の体で受け止めながら、余ってる方の手で工藤のモノを包み込む。
「っふゃっあっ」
「落ち着いて、気持ちイイこと考えて。余計なことは忘れろ」
「ぅんんっ…せんせぇっ…」
というか。
俺は、なに言ってるんだ…?
明らかに教師風出てるな…。
って、そんなことはどうでもいいけど。
前をそっと擦り上げてやると、やっと、快楽をうまく感じられるようになったみたいで、俺の腕に抱きつくようにする。
「んっ…はぁっあっ…せんせ…っ」
なんか。
すべてを俺にまかせてくれるっつーか。
こんなことだけど頼りにされるみたいなのってやっぱ嬉しいし。
俺って、教師だからなぁ。
そういうのって、堪らない。
「工藤…。いいよ。好きなときにイきな」
「っくぅっンっ…ゃくっ…や…イくっ…」
「ん…いいよ」
って、俺、なんでこんな工藤にやさしくしてやってんだろ。
頼られるって、やっぱやばいわ、たまんねぇ。
俺、めちゃくちゃ教師くさい感情持ってんじゃん。
頼られたり、下手に出られたり、素直にされると、こっちもやさしく対応したくなる。
まぁ、人間ってそんなもんだろ?
反抗してくるやつには、こっちも反抗…というか、対抗したくなるっつーか。

何度も工藤の中を突いてやりながら、擦りあげてやると、俺の腕に爪をくい込ませながら体を震わせる。
「ひっゃあっ…んっ…ぁっやっ…ぁあああっっ」

俺の手の中で、工藤が欲望を弾け出すと同時くらに指を引き抜いてやった。
後から引き抜くのって、変に敏感でつらいだろうし?

工藤の体が落ち着くのを待ってから、そっと軽いキスをする。
それでもまだ、ボーっとしちゃってた。

「…工藤…。大丈夫か。じゃぁ、今日はもう暗くなったし…」
って、俺、なに言ってんだろ。
意味不明な理由。
しかも、6時あたりまで待たせた俺が言うかっての。
「あのさ、工藤。数学は、やる気がなきゃ俺がどうがんばっても無理だと思うんだわ。だから…お前のやる気が出てきたときにでも、俺んとこ来いな」
やる気なんて、出るのかわかんねぇけど。
無理やりやらせるのもなんだかなぁだし。

「桐生先生…。なんの…つもり…」
「え…?」
今、やっちゃった行為のこと?
というか。
数学については、ノーコメントなんすか?
俺も逆に、今やっちゃったことについて、ノーコメントだったけど?
でも、一応、形としては、数学の補充なわけだし…。

ちょっと、教師に浸ってみたのになぁ?
現実に戻される感覚。まぁ、現実でも俺は教師なんだけど。
「なんで…こんな…」
「工藤が好きって言ってくれたからだろって。ちゃんと途中で確かめただろ?」
「俺が…桐生先生を好きだから…?」
だろ…?
工藤が、俺を好きじゃなかったら、やっぱ止めとこうかなって思うわけだし。
「そう言ってるだろ」
向き合った工藤は、そう言う俺を悔しそうな顔で睨む。
俺、また、まずいこと言っちゃった…?
「工藤―…。言いたいことあるなら言ってくれんと、さっぱりなんだけど」
工藤は、悔しそうな表情をうつむかせて、俺から顔を逸らした。
「教師って、いろんなこと、面倒みてくれるんですね」
静かに、冷めた口調でそう言って。
もう一度顔を上げると、冷笑さえ浮かべている。
「桐生先生を慕ってくる人には、みんな、こうやってあげてるわけ?」
「そういうわけじゃないって」
かわいい子しか…いやいや、そういう問題でもないか。
また、遊びってわりきってるのとか、いろいろ違うだろっての。
「俺じゃ…相手にならないんだろ…?」
「なんでそうなるんだよ」
「だって、最後までって、言ったのに…っ」
「だから、それは、お前の体を気遣ってなんだけど」
「結局っ。俺がお前を好きだから、それに合わせてやっただけで。お前自身は、俺を好きなわけじゃないんだろっ」
そういう解釈ですか。
あぁあ。
そうだよな。
好きって言ってくれて。
じゃぁ、やりましょう、ってなったら、俺の気持ちどうこうより合わせてやってるだけみたい。
というか、相手が好きって思ってくれてるのをいいことにうまい具合に欲求不満を解消するっつーか。
いや、その点だったら、俺はイってないからOKか?

だからか。
教師って、いろんなこと面倒みてくれるんですね…とか言ってきたのは。
あわせてやってるだけって思われてる?
「違うって。こんなこと工藤にしか…」
あ。だめだ、これは。
嘘だって、バレバレだし。
逆に、言うといやらしいよ。

それがわかってか、思いっきり睨まれる。
「…保健室、工藤、来たんだよな…」
「…はい」
もう、どうにもならんな。
昨日から落ち着いて、少しいい感じになったと思ったのに。
昨日の傷は、そうすぐには癒えませんかね。
こう、冗談みたくはぐらかしちゃったアレ。
先入観として、植え込まれちゃってる?
やっぱり、どう優しくしてやっても、もう『しょうがなーく生徒の面倒みてあげてる』ってな風に見えちゃうわけ?

教師が生徒の面倒みてなにがわるいんだよ…って開き直りたくもなるけど。
問題が違うよな。
しかも、なんか、途中から俺、浸っちゃってて、めちゃくちゃやさしい先生みたいになってたし。
まさしく、『面倒見のいい先生』だったよな。
こうやって、最後までやらずに気遣ったりしちゃうのも、駄目なわけか?

やっぱり、強行突破しかない?
「まぁさぁ。俺としては、最後までやるつもりだったよ? だけど無理そうだからやめたんじゃんか。だって、無理やり犯すのもアレだろ?」
「…教師だからだろ…? いろいろ支障でないようにしてんだろって」
こんの、ひねくれもんがっ!! って、怒鳴りたい気もするけど、ひねくれさせてんのは俺だよなぁ。
「確かに保健室でいろいろやってたけど? 俺は、来る者拒まずだし。逆に、どうでもいいモンは追わないし? わかる?」
「わかんねぇ」
考える間もなく即答しやがって。
「どうでもよくねぇからこうやって補充とかしてんだろ?」
あ。
補充はまずいな。
工藤の数学が悪いのをよくして、教師の株上げてるみたいだ。
でも、実際、数学の勉強はしてないしなぁ?

まずは、教師と生徒みたいな関係を断ち切った方がいいのかよ。
やさしくしたら、駄目なわけか?
数学の成績が悪いとか、そういうこと気にしたら駄目?
でも、俺、教師だからなぁ?

せめて工藤と二人っきりのときくらいは、教師、捨てる?
教師らしいことせずに。
やさしいのも教師っぽく思われるし、支障がどうこう言われるし。
やっぱキツく行くしかないでしょう。
とにかく生徒として扱わないようにってか。
むずかし…。
「まぁ、なんつーか、こうやってお前に執着してるわけ。好きだからね。というわけで、明日も、補充。待ってろよ?」
いや、今日、忘れたのは俺だけど。

結局、やっぱり、最後には、教師の特権、使っちゃったりするわけで。
教師と生徒の関係を崩すのにも、時間がかかるなと、改めて感じたりもした。