夏休みも、残りわずか。
家へと帰る人も多い中、俺の恋人、尋臣は、寮に残ってくれていた。


「あー…桐生は、明日出るんだっけ? 補習でさ」
『一応ね。智巳ちゃんも学校行くんでしょ。弓道部』
「んー…部活ねぇ。顔出そうかなぁとは思ってる」
 寝転がりながら適当な話を桐生と電話でして。
 俺の上に跨って、俺のモノを咥えこんだ尋臣が、腰を動かしそうになるたびに足を撫でて『動くな』と制す。
「っ…んっ…あっ…」
「っつーか、4年担当は大変だねー」
『ほんと、俺も1年かわいがりたいって』
「でも、部活持ってないからまだイイんじゃない?」
『智巳ちゃん、普段、部活顔出してんの?』
「あんまりー」  
 
目線を上げ、尋臣を見ると、少し涙ぐんで俺を見る。
「っ…もぅ…っ…んっ…」
 俺は、視線を外し、桐生と話しながら、空いている手で博臣の股間のモノを擦りあげた。
「っんっ!! あっ…」
 慌てて、口を押さえて。
我慢しきれないのか、尋臣が腰を揺らす。
「……んっ…んぅっっ」
手を伸ばして、口を押さえる尋臣の腕を取る。
が、もう片方の手で押さえちまうわけで。

だけれど、睨んでみせると、俺の意図が通じたのか、手で押さえるのをやめてくれていた。
「んっ…ぅんっ…」
俺も、下から軽く突き上げてやる。
「ぁっあっ…んーっ…ぁあっ」

「桐生―…また、明日な。いまから彼女とラブりますので」
『というか、聞こえてますから。…やり中にかけてくんのやめろって』
「はいはい。ばいばい」

というわけで。
携帯をオフに。

「…あーぁあ。興ざめ。もうちょっと我慢できないかなぁ。人が電話してるときくらい腰、止めてられないの?」
 そう言っても、今はもう電話をしてないからか、腰を動かし続ける。
「はぁっあっ…んっ…やっあっ」
「お前ってさぁ。前々から思ってたんだけど、やってるとき、それに夢中で俺の話聞いてないよな」
「違っ…あっ…あっ…もぉっ…智巳っ」
「2学期入ってすぐ、1年が野外合宿でさぁ。俺、3日間、一緒に行くんだよ」
「やぁっ…っやっ…あぁああっっ」

腰を動かした尋臣が、勝手にイって、俺の腹の上へと欲望をはじけだす。
「ぁ…っ…」
「……だから、人の話聞けって」
「ごめ…」
「やる気失せたから。どいて?」
そう言っても、尋臣はなかなかどいてくれようとしない。
「…尋臣―…。もういいだろ、お前はイったんだから。俺もやる気ないし」
無理やり押し倒して、自分のを尋臣から引き抜いて。

風呂場へと向かった。

明日は、どうすっかなぁ。
なぁんて考えながら湯船に浸かる。

…にしても。
15分くらいたったか?
尋臣が来ないか、ぶっちゃけ待ってんだけど。
来ねぇし。

しょうがない。
俺が風呂場から出て行くと、そこには尋臣の姿はなかった。
「あれ…」
つい、一人なのにそう声が洩れる。

「やりすぎましたかねぇ」
最近、独り言増えてきたし。
やべぇな。

しょうがなく、俺は尋臣を捜しに行くことにした。

っつっても、心当たりがない。
ここは、尋臣の部屋だし?
あいつが、恋愛沙汰で、友達の部屋に行くってのも考えにくい。

屋上とか?

寮の屋上へと向かってみるが、姿は見当たらないし。

まさか、実家に帰らせてもらいます系じゃねぇよな。
なぁんて考えながら、つい笑ってしまう。

…笑ってる場合じゃねぇし。

少しうろつくが、無駄に動いてもわっかんねぇし。
俺は、寮内の中心で、テレビをボーっと眺めていた。
病院の待合室みたいなところだ。
まさに、俺、待ってるよなぁ、なんて思いながら。

「……なにしてんすか、智巳先生…」
そう声をかけてくれたのは、和奏だ。
ラッキー。
尋臣と俺のこと知ってるし。

「和奏は?」
「俺は、ちょっと道迷ったんで、地図見に戻ってきたんすけど」
確かに、ここには寮内の地図がありますけど。
「…お前、その地図、持ち歩いたら?」
「あ、ちょっと一旦、拝借してコピーさせてもらおうかな」
なんて言うけれども。
「職員室にコピー置いてあるから、今度持ってきてやるよ。…どこ行くつもりだった?」
「204号室。真綾嬢の部屋っす」
「お前、真綾と面識あるんだ?」
「真綾が学級委員だから」
和奏は副会長だもんなぁ。
「じゃあね。智巳先生」
っと、行こうとするもんだから、つい腕を取る。
「…先生…?」
どう言ったもんか。

「和奏の部屋ってどこだった?」
「どうしてですか?」
「なんとなく」
「…409ですよ」
「行っていい?」
「これから、俺、真綾嬢のとこ行くんですけど」
「知ってる」
「……いいですよ。あまりいじめないでください」
にっこり笑って和奏が言う。
「……わかった。鍵、開いてる?」
「開いてますよ」
やっぱり。
いるんだろうなぁ、尋臣。
和奏にだけは素直というか。
にしても、今回はちょっと重症ですか。
普段だったら、友達のところなんて、行かないだろうし。

409号室のドアを開けると、寝転がる尋臣の姿。
「ん…和奏…?」
「違ぇよ」
ベッドの傍に立ち見下ろす俺を見て、尋臣が、焦るように俺から少し逃げる。
「少しやりすぎた」
素直にそう言って、寝転がる尋臣に体を重ねる。
頬を掴み、口を重ねてやって。
「ん…」
「な? 尋臣…やりなおそう?」
「っ…俺はっ…樋口先生が、悪いんですよ…」
…こいつ、そういえば結構、硬いっけ、考え方。
真面目だし。
「あんなことされたら…っあんなの無理に決まって…」
そう言う尋臣を無視して、ズボンのチャックを降ろす。
「ちょっと…っ聞いて…っ」
「聞いてる」
直に取り擦りあげていくと、尋臣の体がビクついて、俺のシャツを掴んだ。
「んっ…!!やめっ」
「無理だった? 尋臣くんなら出来ると思ったんだけど?」
何度も擦っていくと、俺のシャツを掴んだまま、顔を逸らす。
「んっ…ぅんっ…はぁっ…」
すっげぇ、エロい顔するよなぁ、こいつ。
なんて眺めながらも、いったん手を離し、指を舐め上げ、もう一度、下着の中へと手を突っ込む。
「っなっ…やめてくださいっ」
はいはい、怒ってますねぇ。
俺はあいかわらず無視しながら、ゆっくりと指を差し込んでいった。
「んっ…んーっ…」
尋臣は必死で声を殺しながら、ベッドのシーツを握り締める。
感じるところを指先で軽く突いてやると、逃げるように足が動いていた。
「ぁっ…んっ…んぅんっ」
俺から見られないようにか顔を逸らして。
横を向いて目を瞑った尋臣の頬を、涙が伝う。
やっべぇ。
駄目だってわかってるけど、サド精神爆発するっての。
優しくあまぁく慰めてやるつもりだったのに。
「なに…嫌がってたくせに、感じてんの…?」
耳元で言いながら、少し強めに前立腺を突くと、ビクンと尋臣の体がはねる。
「ぁあっ!! んっ…んぅんっ…」
つい出してしまった声を隠すように尋臣は手で口を押さえた。
俺はあえて無視をして、何度も何度も指でソコを強く突くと、その強すぎる刺激に耐えられないのか、手を口から離して、俺の胸元を叩く。
「やめっ…ぁあっ…あっ」
ビクビクと跳ねる尋臣の体を見下ろしながら。
意味をなさない尋臣の抵抗を胸で感じながら自分がサドだと認識する。
「んぅんんっ…もぉっ…やぁっっぁあっ」
「イきそう?」
「やぅっ…せん…せっ…」
はいはい。
まぁだ拒みやがりますか、こいつは。
そういうとき、絶対、智巳って呼ばないんだよなー。
それがまた楽しいんですけど。
「やめっ…ぁあっ」
「イきそうか聞いてるんですけど?」
強めに言うと、やぁっと、顔をそらしたままだけれど、いままで俺の胸を叩いていた手で、シャツを掴む。
「っぃくっ…やあっ」
「へぇ…。尋臣さん、嫌だったんじゃないのー?」
イきそうな尋臣の張り詰めた股間のモノに指を絡めて。
強く握りイけないようにしながら、後ろの指を動かしてやる。
そりゃもう、ぐちゃぐちゃにかき混ぜてやる。

「なぁっ…やめっ…やぁあっ…あっぁあっ…智巳ぃっ…やっやぁあっ」
わかりやすく俺の名を呼んで、求めてくれて。
あぁ、かわいいけど、逆効果。
いじめたくなる。
「あぁ、俺、セラピストじゃないし? 保健の先生でもないし? 心理学も学んでないから。はっきり言われないと、なんも理解出来ないんで」
「っぁっあっ…おねがっ…ぁあっ…もぉっ…許しっ…」
「イきたいだけだろ? お前」
「違っ…あっ智巳ぃっ…だめっもぉっだめぇ…っ」
「駄目ってなんですか」
「はぁっ死ぬっ…からぁっ」
意味分かりませんよ。
優等生のセリフとは思えませんが。
まぁ、数学に関しては優等生じゃないよなぁなんて分析中。
「死にませんよ、こんなことで」
「やっやぁあっ…死んじゃうっ…ぃやっごめ…なさっあぁっ…もぉっやっっ」
あぁ。確かにいつもの尋臣は死んでんなぁ。
俺は、指を引き抜いて、そっと手を離す。
泣きながら、それでも少し不満そうに俺を見上げて。
「どうしたい…? よく考えて答えろ?」
少しだけ、間をおいてから。
「…騎乗位で…やらせてください…」
真面目に…それでも不安そうにそう答えてくれる。
リベンジしてくれるつもりなのだろう。
お前、その状態じゃ無理くさくないかと思いながらも、了解してやると、尋臣が俺の体に跨った。
自分で俺のをゆっくりと飲み込んでいく。
「ぁっあっ…んぅんんっ」
まぁた体ビクつかせて。
全部飲み込むと、一旦、俺を見下ろす。
「先走りですっげぇべとべとなんだけど。お前、俺のことちゃんとイかせれんの?」
「っ…は…い…」
「別に、俺より後にイけってわけじゃねぇから。イきたきゃイってもいいけど。お前から言い出したことだし、ちゃんと俺もイかせろよ…?」
そう釘をさして。
尋臣は頷くと、自分のシャツの前をはだけさせる。
チラっと俺を見て。
触って欲しいってのはもちろん、わかってますよ。
だけれど、俺はなにもしないでジっと尋臣を見つめると、そっと顔を横に向け、俺の視線から逃れていた。
少し腰を揺らしながら。
尋臣はなにもしない俺に求められずに、自分の指で胸元を弄る。
もちろん、空いた手で股間も擦りあげて。
「ぁっあっ…んぅっ…」
いやらしいなぁ。
まぁったくHを知らなかったこいつが、こんだけエロくなって。
そうしたのは俺だと思うと、すごく興奮する。
「んぅっ…智巳ぃっ…ぁあっ…んっ…んぅんっ…」
下から見てると、マジでエロいわ。
「もっとさぁ…かわいく喘いで?」
「なっ…」
俺を一瞬『冗談じゃない』という顔で見て、口を噤むが、迷うよう目を泳がせてから、やっと口を開いた。
「ぁっ…んっ…」
「聞いてた?」
「っ…んっ…」
頷くと、そのまま、顔を俯かせて。
涙が零れ落ちていた。
「っあ…んっ…ぁんっ…あっ…やっんっ…やぁんっ…」
「そう…かわいいよ、尋臣…」
頬を撫でてやると、今度は、恥ずかしそうに、それでも少し、とろんとした目で俺を見つめる。
「あんっ…ぁっ…智巳ぃっ…やんっやぁっ…ぃいっ…いっちゃうっ…」
「ふぅん…」
今度は、優しく聞きながら、頬を触れていた手で、胸元を撫でていく。
「はぁんっ…智巳っ…あっ…もっとぉっ…あっ…ぁんっ…触ってぇ…っ」
「はいはい」
「はぁっぃくっ…やっ…ぃくっぁああっ…やぁあああっっ」

尋臣は、俺の腹へと欲望をぶちまけて。
俺はあえてなにも言わずに、尋臣の行動を見守る。

と、イってしまったにもかかわらず、がんばって腰を動かしてくれていた。
「ぁんっあっ…ぁああっ」
イったばっかで感じすぎるのか、少しぎこちない動きで、いっぱいいっぱいの様子。
「…無理すんなよ…」
手を差し伸べると、尋臣は俺の手を取り指を絡めた。
「はぁっあっ…智巳ぃ…っ…」
うまく腰を動かせず、中途半端な刺激を送られる。
それは尋臣もよく理解してるだろう。
別に、俺は、『ちゃんと動け』なんて思ってないし?
いや、冗談で、虐めて言うことはあるだろうけど。
いまの状況では、別にかまわない。

だけれど、尋臣は気にしてくれてるのか、もう一生懸命ってのが見てわかる。
「ぁっあんっ…やっ…」
泣きながら、それでもまぁだ俺に助けは求めないで。
充分ですよ。
少し時間をかけて。
やっと、俺を見る。
なぁんか、小学生とかが、がんばってもがんばっても逆上がり出来なくて助けを求めるみたいな、そんな表情。
少し悔しそうな?

「っあっ…智巳…っ」
「ん…どうした…?」
「っ出来な…っ…ぁっ」
「…わかったから」
「っごめっ…」
「うん、いいから。腰砕けてんだろ?」
頷く尋臣を確認して。
繋いだままだった手を離し、腰を掴むとそっと揺らしてやる。
「ぁっあっ…んぅンっ」
「強い?」
「あっ…平気…っ…あんっ…あぁあっっ…」
下から軽く突き上げて、前立腺を避けつつ心地いいくらいの刺激を送ってやると、慣れてきたのか、尋臣が腰を掴む俺の腕に手を絡めた。
「はぁっぁあんっ…ぃいっ智巳ぃ…あっっ気持ちぃよぉ…っ」
酔いすぎですわ、それ。
たまにはいいか。
「尋臣―…自分の、擦りあげな?」
「んっあっ…ぅんっ…」
自分のを擦り上げる尋臣を確認して。
何度も突き上げながら、感じるところを突いてやると、体をビクつかせて俺の体に爪を立てる。
「ぁあっあっ…だめっあっ…ぃっちゃうっ…」
かわいいな、こいつ…。
俺って、結構、ベタ惚れじゃんよ。大丈夫か。
「ん。いいから。俺もいく」
「はぁっあっ…ぅんっ…ぃくっ…あっ智巳ぃっ…もぉっあっぁあっあぁあああっっ」


2度目の欲望を放つ尋臣に合わせるようなタイミングで俺は、尋臣の中へとソレを放っていた。


尋臣は、申し訳なさそうな表情のまま。
「どうした?」
「…だって…。結局、イかせられませんでした…」
「俺、イきましたけど?」
「でも…俺がイかせたわけでは…」

俺が、自ら腰突き上げたりしたからですか。
ホント、真面目だよなぁ、こいつ。
「俺が耐えれずに、腰動いちゃっただけだし」
「俺が、もどかしい動きしか出来なかったから?」
まぁそうですけど?
「いや、突き上げたくなったから」
喜んでいいのかわからないのか、少し首をかしげて困ったような表情で。
尋臣はなにも答えれずにいた。

「まぁ。細かいことは考えないとして」
「っなんでですかっ…?」
「俺、数学教師だし」
「意味分かりません」
「じゃあなにか? まぁたリベンジでもしますか? イかせてくれますか。でもって、俺は腰動かすなって? そういうのは、俺がやらなくてもガンガン動けるくらいになってから言え。だいたい気持ちよくって俺が腰動かしちゃって、なにか悪い?」
そう言うと、不安そうに俺を見る。
なんなんですか、それは。
なぁにが不安なんでしょう?
「なに」
「…っ俺は…動けないし…」
「だぁから。いいっつってるんですよ。そんなの求めてませんよ?」
つい勢いで敬語になりながらもそう言うと、今度は顔を逸らして。
「もっと…上手な人の方が、好きでしょ…」
そんなことが、不安?
「ちゃんと動けとか、そりゃいろいろ言ってきましたけど? それで動けなくって、『じゃあ、俺様、動けるほかの人に乗り換えますから』なんてするわけねぇし。もう28ですよ? セックスの良し悪しで人を選ぶ時代は終わったのだよ」
某アニメの赤いあいつ風にね、語尾。
「昔はソレで選んでたんですか…」
語尾無視かよ。突っ込めっての。
「いまはどうでもいいんだよ。肉体よりも精神の方が強いですから」
「…はい…」
「わかる? わかった? わかんない?」
「わかりました…」

手放しに喜んだ表情を見せてくれることはなかった。
だけれど、尋臣は恥ずかしそうにしながらも、頷いてくれる。
その頭を撫でてやり、そっと口を重ねた。