弟の啓吾が、同級生とよくやっていることは知っていた。
 たぶん、付き合ってるとかじゃない。
 でも、啓ちゃんはかっこよくて美人だから、抱きたくなる気持ちも理解できる。

 最初は本当に、普通にやってるだけだと思ってた。
 だから俺は、すごく羨ましく思っていた。

 啓ちゃんが望んだことじゃないって、なんとなくわかってきて。
 それなら止めなきゃいけないとも思ったけど。
 そのときにはもう、手遅れだったのかもしれない。
 啓ちゃんは……おかしくなってしまった。
 訪ねてくる同級生を帰した後、ときどき、俺を誘う。
 セックスさせてくれる。
 ……したくなっちゃってるんだよね。
 同級生に都合よく犯されるのは嫌かもしれないけど、とにかくしたいみたい。
 俺は、そんな啓ちゃんの性欲を、ときどき発散させてあげた。

 こうなってしまう前に、どうにかできたんじゃんないかって思うけど。
 どうすればよかったのか、わからなくて。
 俺は、優斗兄とその友達の榛くんに相談した。
 俺じゃ正常な判断は出来ないから。
 啓ちゃんがいじめられていること、おかしくなってしまったことだけ伝えた。
 いじめられてるわけじゃないって思いたいけど。
 そんな風に思って、羨ましいだなんて俺が考えてたせいで、判断が遅れて、啓ちゃんは俺みたいにセックス好きな子になっちゃったんだ。
 淫乱なのは、俺だけでいいのに。

 同級生たちに、俺が代わりになるって名乗り出ることは簡単だ。
 俺ならそれが出来る。
 でも……たぶん、俺は喜んじゃって、啓ちゃんの気持ちに寄り添えなくなる。
 2人に犯してもらえるなんて、ずるい。
 俺も、優しくいじめられたい。
 啓ちゃんも、本当は喜んでるんじゃないかって、頭をよぎる。
 だから、そんなことはしない。
 そう思ってた。

 それなのに、ある日、俺は我慢出来なくて。
 してはいけないことをした。

 啓ちゃんは昼から眠っていた。
 そのとき、同級生がうちを訪ねてきた。
 いつもみたいに、啓ちゃんは疲れてるからって断って、そのことを啓ちゃんに伝えて、啓ちゃんと俺がセックスすればいいのに。
「俺が、相手しようか」
 つい、そんな提案をしていた。

 最低だ。
 啓ちゃんを庇うならまだしも、俺は啓ちゃんを餌に、この2人とやりたいだけ。
「え、いいんすか?」
 俺より年下。
 俺にはもう、付き合い始めてる人だっている。
 でも、だからこそ、興奮している自分に気づく。

 高校2年……冬のこと。
 啓ちゃんは中3で、もうすぐ中学校を卒業する。
 すべてから解放される。
 だから、その前に……そう思ってしまったんだと思う。

「佐渡のお兄さん、マジでかわいいんだけど」
 やりたいだけの社交辞令かもしれない。
 それでも嬉しいし。
 俺は2人に挟まれて、撫でられて、舐められて。
 たまらなくなった。
 2人が俺の服を脱がせてくれて、1人が後ろから足を抱えると、もう1人が前から指でナカを押し開く。
「はぁ……はぁあっ……あ、ん……!」
「めちゃくちゃヒクついてるし。やわらか……すげぇ使い込んでる?」
「ん……ぅん……使って、る……はぁっ……使って……そこぉ……」

 しかたなく……啓ちゃんの代わりのフリしたかったけど、それも無理だった。
 指で慣らす必要なんてないそこに、名前も知らない子のモノが入り込んでくる。
「んぅんんんっ!」
 入った瞬間、イキかけた。
 我慢したのに、後ろの子が俺の性器を擦るせいですぐにイカされた。
 イったにも関わらず何度も出入りされて、体がびくついた。
 たくさん喘いでいると、後ろの子が俺の口を性器でふさいだ。
 口のナカまで気持ちいい。

 前にいた子が中出しした後、後ろの子に押し倒されて、精液まみれのナカを性器で掻き回された。
「ぁあっ、あんっ、んっ…あああっ! ぁんっ、いくっ……いくぅ……!」
 俺がイクと同時に、2人目の精液が入り込んでくる。
 気持ちよくて、たまらなくて。
 しばらく、余韻に浸った。



 その日の夜。
 啓ちゃんが俺の部屋を訪ねてきた。
「……なんで?」
 啓ちゃんにそう聞かれて、俺はなにも答えられなかった。
「したよね? あいつらと」
「…………した」
 ごまかせなくて白状する。
「俺のため?」
 啓ちゃんのためじゃない。
 それが申し訳なくて、涙が溢れた。
「ごめん……ごめんね、啓ちゃん……」
「なんで? なんで謝るん? 俺のためなら――」
「啓ちゃんのためじゃない。だから、ごめん……」
「俺のこと、かばってる? 俺のためなんて言ったら、俺が気にするから……」
「違う……セックス……したかっただけ……」
 きっと、啓ちゃんは俺に幻滅する。
 最低な兄だって思うだろう。
 泣いたって仕方ないのに、涙がとまらない。
 啓ちゃんは、そんな俺の手に触れて、指を絡めてきた。
「……したかったんだ? それで、してよかった?」
 いまの気分は最悪。
 でも、あのときすごく気持ちよくて、たまらなくて、余韻がまだ残ってる。
 ああもう、最低だ。
「ごめん……」
「気持ちよかったから、謝ってるん?」
「……うん」
「だったら、謝らなくていいよ。どうでもいい人とセックスしたくなって、気持ちよくなるの……俺だけじゃないんだって思ったから」
「……うん」
「ちょっと……安心した……」
 啓ちゃんだけじゃない。
 俺と同じになって欲しかったわけじゃないし、啓ちゃんと同じになろうとか思ってたわけじゃないけど。

 やっぱり、これはいじめなんかじゃない。
 啓ちゃんはいじめられてなんかいない。
 相手がどう思うかは勝手だけど、啓ちゃん自身は、もう、そう思わなきゃならないところまで、きてしまっているような気がした。

「啓ちゃん……啓ちゃんがしてきたこと、されてきたこと……重く捉え過ぎないで……啓ちゃんよりずっと……俺の方が、誰とでもセックスしてるから」
「……そう、なんだ?」
「啓ちゃんが嫌なら嫌がっていいけど。大したことじゃないよ。俺も、友達の代わりに、先輩2人としたことあるし。でも、自分のことかわいそうなんて思ってない。そのときも……気持ちよくて、たまんなかった……」
 啓ちゃんは、俺を見て頬を緩ませた。
「ありがとう、透兄……」
「ごめんね、こんな淫乱なお兄ちゃんで」
「ううん。軽く思わせてくれて感謝してる」
 そう言って俺を見つめる啓ちゃんが愛おしくて、唇を重ねた。
「……啓ちゃん、していい?」
「……今日、もう散々したんだろ」
「入れられたけど、入れてないもん。啓ちゃんがしたいなら、入れられる側でもいいけど。しよ?」
「……うん」

 啓ちゃんとするセックスは、2人にされたのとは違って、いっぱい喘いじゃうようなエロさや興奮はなかったけど、すごい幸福感を味わえた。

 近いうちに、恋人のみやちゃんに報告して、そのときはしっかり、いじめてもらおう。