「…付き合ってる奴とか、いんの…?」
いないだろうなとは思ったけれど、一応、聞いてみる。
「…いないですけど」
やっぱりな。
「じゃあ、どうですか」
「どう…って…」
「俺と、付き合うの。考えられない…?」
「……今は、ちょっと…考えられないんですけど…」
部活とおんなじ断り方ですし。
「考えて」
「え……」
「ちゃんと考えて。イエスかノーだったら、どっちなの」
尋臣は、答えれずに迷ってるもんだから。
あぁあ。少し期待してしまうじゃないですか。
まぁ、先生相手にノーですとは言いにくいのかもしれないけど?
「キスしていい?」
「な…あ、そんなの…駄目…ですよ」
「さっきしたのに?」
「さっきは、勝手に…っ」
「じゃ、勝手にしてもいい?」
「…そんな…おかしいです」
俺の視線から逃げるように、尋臣は顔を俯かせる。
やばいなぁ。
ホントかわいい。
っつーか、強行突破しないって、俺らしくねぇな。
こいつ、なんか強行突破でいきなり押し倒して、とにかくやったりしたら、次の日、学校休みそうなタイプだし。
訴えられても困るし。
自分が学生時代の頃の恋愛とはわけが違うなぁとか改めて思う。
立場とか考えなきゃいけなくなってきてるし。
「…キスさせてよ」
耳元で、囁くように声をかけると、息が拭きかかる感触に体をピクンと跳ねさせる。
頬が、ほんのり赤みを帯びていた。
そんなに嫌がってねぇんだ?
ホントに嫌だったら、頬なんて赤らめてらんねぇよな。
青くなるっての。
付き合うまでにはいたらなくても。
俺のこと、好きだとかそういうの考えるまでにはいたらなくても。
今、ヤることに関しては、イけるんじゃねぇの?
あとはもう。
やっぱり最後は強行突破か。
耳に、軽くキスをして。
「いい…?」
聞きながら、頬を撫でてやると、あいかわらず、肯定できないのか、黙ったまま。
しょうがねぇなぁ。
違う聞き方しますか。
「尋臣…。駄目なの?」
駄目だとも肯定できないみたいで。
それじゃあもう、いいでしょう。
いただきますよっての。
頬を掴んで、思いっきり口を重ねてやる。
「んぅっ…」
尋臣の右側に座っていた俺は、左手で尋臣の髪を軽く掴みながら上を向かせて。
頬を撫でていた右手で、シャツの上から胸元を撫でる。
嫌なら口、堅く閉ざせばいいものの。
余裕がないのか、俺の舌はいとも簡単に、尋臣の舌を捕らえられる。
舌先が触れ合うと、また素直に体を跳ねさせて、反射的に俺の腕を掴んだ。
「ンっ……ぅんっ…」
エロい声。
たまんねぇな。
俺の腕を掴んでくれたのはかわいいけれど、それを無視して、俺はシャツの中へと手を滑らせる。
直接、尋臣の胸元を撫でてやって。
その勢いて、体勢を少し立て直しながら、押し倒した。
たまに口を離してやるが、舌は触れたまま。息継ぎだけさせてやる。
尋臣の前髪をかきあげてやりながら、何度も口を重ねなおす。
「んぅっ…ぁっ…んー…っ…」
そっと口を離して。
唾液の糸が、引く。
酸素不足ですか。
肩を上下させて、息を荒げて。
うつろな目で俺を見上げる。
「…気持ちよかったの…? 尋臣」
「え……」
尋臣の股間が、大きくなっているのが目に入っていた。
俺は、尋臣の顔を見たまま、胸においていた手で、尋臣の股間にズボンの上から触れる。
「んっ…」
「おっきくなってる」
「っ違っ…」
「違うの?」
急がば回れ。
俺が、攻めまくっても意味ないっつーか、こいつから欲しがるように仕向けたいもんだ。
立場もあるし?
ズボンの上から何度も撫で回してやる。
「わかんない? おっきくなってんの。わかるでしょ」
撫で回してるせいなのか、言葉責めが好きなのか。
次第に硬さを増していくもんだから、俺もいい気になってくる。
「キスしたから? それとも、胸触られたから…?」
「っあっ…んぅっ…」
顔赤いねー。
潤んだ瞳で見てくれる。
「尋臣くんは、胸で感じるの…?」
こいつは口では素直になにも言えないタイプのようだから、体で示す反応を、逐一伝えてやるのがいい。
右手は股間に触れたまま。
左手で尋臣のシャツを巻くりあげ、胸の突起にねっとりと舌を這わす。
「んーっ…」
体がピクンと跳ね上がる。
逃げるように、軽く反り返った体が、逆にいやらしい。
思ったより敏感ですね、この子。
慣れてないだけでなく。
舌先で突きながら、吸いあげたり、転がしてやると、素直に股間は反応するし。
「っンっ…あっ…んぅっ…んっ…」
定期的に声が洩れる。
その声を抑えようと、尋臣が自分の手の甲で口を塞いでいるようだけど。
鼻から洩れる声や、酸素不足で息継ぎしようと、開いた口からタイミング良く出る声だけでも、充分、エロくて俺はそれをおかずにイけますよ。
愛撫を止めて、上から尋臣を見下ろすと、どうしてやめたんだろうという視線で見上げられる。
「続き、していい?」
一応、聞くと、不安そうな顔。
だけれど、股間は期待に膨らむ。
文字通り、膨らむだな。
なんて考えてる場合じゃねぇ。
「いいんだ…?」
その反応した股間を、指先で撫でて、尋臣を見ると、顔を真っ赤にして、泣きそうになる。
自分が反応してしまったのが分かってるんだろう。
拒むような言葉を言うに言えない感じ。
やばいやばいやばい。
めっちゃ虐めたい。
キれそう。
「尋臣…。…嫌いで虐めるわけじゃないから。理解しといて」
そうとだけ言い、軽くキスをして、尋臣に反論させないようにして。
尋臣のズボンと下着をすばやく引き抜いていく。
「あっ…やめっ…」
肘をついて上半身を少し起して、その様子を不安そうに尋臣は見ていた。
俺自身、腰を下ろし、軽く足を開いて膝まげて。
その俺の足に、尋臣の足をひっかけさせてから、腰を寄せる。
そそり立つ股間を、指先でそっと撫でていくと、強く感じる部分で尋臣が体を震わせた。
「…見える…? わかる? すごい、溢れてんの。先走り」
「っ…なに言って…っ」
「ココ、ぬるぬるしてる」
亀頭を撫でて示すと、尋臣は、顔を背け、今度は見ないようにしていた。
「見てなくて平気?」
俺は、尋臣の股間から手を離し、指先を舐め上げる。
尋臣は、そっと伺うような視線を向けた。
「先生…っ」
「…続きってわかるでしょ? どういうコトすんのか」
「俺っ……こういうの…っ」
したことないのなんて、もうわかってますって。
だけれど、あえて聞きましょうか?
「…なに?」
「あ………したこと…ないから…」
「初めてが、俺じゃ不満?」
「そういうわけじゃっ」
「じゃあ、OKだ?」
舐めあげた指先で、入り口を突くと、いよいよ尋臣の体が緊張でこわばるのが目に見える。
「…やめ…っ」
「1本くらい、平気だろう?」
「無理…」
「無理じゃない」
俺は、笑顔を向けて、ゆっくりと指先を押し込んでいく。
「あっ…んーーっ…」
「力抜けよ…」
「キツ…ぃ…っ」
「んー…ゆっくり息吐きな…?」
「あっ…はぁ…っ」
俺を拒むことよりも、いま、この感触から逃れたいのか、俺の言う通り、ゆっくり息を吐いてくれる。
「落ち着けば、キツくないだろ」
「ん…」
指が奥まで入りきって。
さて。どうしましょう。
この調子じゃ、最後まではキツいよなぁ。
俺、今日、こんなつもりじゃなかったし、ローション持ち合わせてねぇし?
自分がヌきたくてやってるわけでもないし。
尋臣くんに、男同士の気持ちよさをわかってもらえれば、今回はクリアじゃねぇの?
そう決めて。中に入り込んだ指で、ゆっくりと掻き回す。
「あっ…んーっ…やめっ」
体勢がキツいのか、少し起き上がらせていた上半身を完全に床に寝転がらせる。
行き場のない手が、床の板に爪を立てていた。
「んぅっ…あっんぅンっ」
「わからないかなぁ…。ココらへん」
少しだけ、指を引き抜きながら、前立腺の辺りを指の腹で撫でてやる。
「ぁああっ」
面白いくらい尋臣の体が跳ねて。
反射的に出てしまった声が恥ずかしかったのか、そっと俺の表情を盗み見た。
「いいよ…声出しなって」
涙を溜めた目で、俺を見上げる。
しょうがないですねぇ。不安ですか。
俺は、指を差し込んだまま、なるべく動かさないようにして、自分も尋臣の右側へと寝転がる。
左肘をついて、上体だけ起こし、上から見下ろして。
軽く頭を撫でてやると、また不安そうに俺を見た。
「なにが不安?」
「……っ…なんか…変…っ」
「…別に、後ろで感じてイってもいいし。俺は別にそれが恥ずかしいことだとは思ってないから」
そう言うと、余計に自覚したのか、顔を真っ赤にするが、俺を見てそっと頷いた。
俺はまた、指先で、尋臣の感じるところを緩く何度も、突いてやる。
「あっ…んっ…ぅンっ」
「…感じてきた…?」
「はぁっ…ぁあっ…やっ…そこっ…」
「気持ちイイだろ? 前立腺」
「あっんっ…はぁっ…やっ…やぁあっ…」
一旦、ぎゅっと目を瞑り、その後、薄く開いた目で、俺を見る。
トロンとした目。
なんつーか、理性飛びました?
あえて、俺は突っ込まず、尋臣の様子を見ながら、緩めに内壁を擦り続けた。
「あんっ…ぁあっ…あっ…んぅ…っ」
気持ちイイのはわかりますが、そこまで飛んでくれると、こっちもやりがいあるっつーか。
なんとなくのイメージだけれど、こいつ、こういうの初めてだろ?
一人で、ヌいてるときって、単調に擦りあげるだけしか経験してなさそうだし。
新たな刺激にメロメロですか。
メロメロって、久しぶりに考えた。
古臭いけど、他にたとえようないよな、メロメロって。
涙で潤んだうつろな目が俺に向けられるが、目が合っているという感覚はなかった。
どこ見てるんだか。
ぼやけて俺のことはっきり見えてないんだろうな。
尋臣の手が、自分の股間をそっと掴むのが目に入った。
本来なら、虐めますよ。
後ろだけじゃ物足りないのかって。
でも、こいつ、声かけたらせっかく悦ってるのに、理性復活しそうで。
まぁ復活したところで、どうせまたすぐ失うだろうけど。
ともかく、俺は本気でこいつが欲しくなったから。
虐めて俺の気分が良くなるのよりも、こいつを知ることの方が先だ。
なにも言わずに、心地いいくらいの刺激を送り続ける。
慣れたヤツならじれったいって思うだろうな。
「はぁっ…ぁンっ…あっ…あぁあっっ」
尋臣は膝を曲げ、欲しがるように腰を動かす。
「んーっ…ぁっあっ…せんせぇ…っ」
別に焦らそうと思ってたわけじゃないんだけど。
貪欲ですねぇ、尋臣くん。
声かけますか。
「どうした? ココ、気持ちいい…?」
「ぁっ…いいっ…あっ…んぅンっ」
恥ずかしがると思って声かけなかったのに、俺様のこと、速効、無視ですね。
余裕ないですか。
尋臣の耳に軽くキスをして。
「俺が擦ってやるから。手、どかしな?」
そう教え、体を起こす。
尋臣が自分のから手を離すのと入れ替えに、左手で掴みあげ、そっと擦っていった。
「んぅっ…あっ…やぁっ」
人と自分とじゃ全然違うよなぁ。
溢れ出た先走りの液が、手に絡んで、いやらしい音がした。
もちろん、後ろも強めに突いてやる。
「はぁっ…やっ…あぁあっ…もぉっあっ…ぃくっ…あっ」
「んー…いいよ。そのままイきな?」
「はぁあっ…ンっ…あっんぅっ…あぁああっっ」
尋臣は、体をビクつかせ、欲望を弾けだす。
指を引き抜く感触に、また小さく体を跳ねさせていた。
あとはもう、脱力状態。
ぐったりとした様子で、俺を見る。
「気持ちよかった…?」
「…ん……」
なんとか声を絞り出し、肯定してくれる。
とろけてんなー、こいつ。
酒でも飲んだかってくらい。
このまま持ち帰って、なぁんかもっといろいろしてやりたくなるような感じ。
っつーか、俺は、気持ちよくさせて、はい終わりってつもりはねぇのよ。
あぁ、自分が気持ちよくなりたいとかでなく。
真面目な恋愛ですから。
恋しちゃってますから?
上から見下ろすのもなんだし、俺も寝転がって、尋臣を見る。
尋臣は、まだボーっと、さっきまで俺がいただろう位置を見上げていた。
「…尋臣…。考えれるようになったか」
「え…」
やっと、力なく俺の方へと顔を向ける。
「さっき。今は考えられないっつったろ。俺と付き合うの。で? 考えれるようになったかって」
「それは…っ」
「考えて」
尋臣は、俺から視線を外した。
「…俺…樋口先生のこと、まだよく知らないから…」
昔の俺だったら、知らない相手とこういうこと、やっちゃうんだ? って、からかってただろうな。
「じゃあ、知ろうとしてくれるわけ?」
「それは……知りたいです…けど」
教えますよ、そりゃもう手取り足取り。
顔を赤らめて、おろおろしてやがる。
理性、戻ってきましたかね。
「じゃあ…俺のこと、知ってみて、よさそうなら付き合おうって、見定めてくれるわけ?」
「そんな…見定めるとか…」
「いいよ。見定めろって。お前のいいように合わせてみせるから、俺のこと知って、しっかり調教しな」
どう言えばいいのかわからないのか、尋臣は、俺を見れずいるもんだから。
もう一度、尋臣の上へと体を重ねて、見下ろしてやる。
わざわざ体勢変えてるわけ。
目、見て話したいから?
それは、わかってるんだろう。
尋臣は、逸らしちゃいけないんだと判断したのか、不安そうな表情で、それでも俺を見てくれた。
「出会って間もないのに、付き合うだなんて、お前が考えられない気持ちもわかるし。教師と生徒だし。…だから、しょうがねぇけど。教師とか生徒とか関係なく、いろいろ俺のこと、尋臣に知ってもらう機会は、いただきますから。それは、いいだろ」
「それは……はい」
「…他の男は、知るなよ…」
つい、付け足すみたいにそう言ってしまう。
言うつもりなかったのに、心ん中で思ってたことが、つい口に出た。
俺、すげぇうざい束縛男じゃねぇの?
「はい……」
俺が撤回しようかとか、どうにか冗談めかして流そうだとか考えてると、尋臣がそう返事をしてくれる。
いいのかよ、おい。
「いや、尋臣。友達として知り合うのはいいんだけど、なんつーか、男として…ってよくわかんねぇか? 俺のこと知るっつーのは、日常的なもんの話だけど、他の男に関しては性的というか。まぁ、ぶっちゃけやるなってことだけど」
「…理解…出来てます」
「…そっか」
俺は、立ち上がり、尋臣の手をとり起き上がらせる。
「じゃあ…」
「…さようなら」
なんだか、気まずいような、そっけないような挨拶で、俺らは別れた。
明日、こいつ休んだりしねぇよなぁ。
俺と学校で会うの気まずいかもしれねぇけど。
でも、それほどまでに俺に対して、嫌悪感は抱いてないよなぁ。
もうちょっと、遠回りしてもよかったか?
昔の俺に比べたら、ずいぶん、遠回りな方だと思うけど。
尋臣も、相手が俺みたいな教師だと、そうそうすぐに返事は出来ないだろう。
翌日。
尋臣が学校へ来ているか、気にはなったが、朝から調べる暇もないし。
俺はそれを気にしたまま、授業をすすめ、やっと昼休み。
「桐生」
職員室へ戻ってきた桐生を呼ぶ。
「どうしたの?」
「…今日、尋臣って、学校来てたか?」
「そんなん気にするってことは、なにかしたわけですか」
あっさりと、勘ぐられるが、別に構わない。
「来たのか休みか、教えろって」
「来ましたよ。それと、はい」
抱えていた名簿を開いて、桐生は俺へと1枚の紙を手渡す。
「…なんかあったの? 智巳ちゃん」
「……多少ね…」
尋臣の名が書かれた、弓道部の入部希望用紙だった。
これは大いに期待しちゃってもいいですかね。
「じゃ、桐生。俺、図書館行ってくるから」
「ん? 図書館? その紙、持ったまま?」
…置き忘れたし。
「…ん…」
「そう」
桐生は、特に追求せず、優しく見守ってくれていた。
…ちょっと、慣れないな、この感覚。
結局、俺はその用紙を持ったまま、図書館へ向かった。
部活までには、もっと弓道の知識、身につけないとな…。
|
|