うわ。
 やばいかも。
 当たりひいちゃったって感じ?

 俺のルームメイト。
 神崎天翔先輩。
 すっごいかっこいいんだけど。

「立花祭くん? よろしくね」
 そう扉の先に立つ先輩のこと、しばらくボーっと眺めちゃってた。

「祭くん?」
「あっ…はい、よろしくお願いします…っ!」



 ……って、言ったはいいものの…。

「んっ…んっ…せんぱ…っぁっっ!」
 なんで。
 なんでなんで?
 俺、寝てただけなのに。
 気付いたら、天翔先輩が、俺の取り出して、手でこすってて…っ!
「どうした? 祭」
 祭って、いつのまにか呼び捨てだし。

「あっ!! ゃっ…」
 やばい。
 意味わかんないし。
 このままじゃホント、いっちゃうんじゃ…。

 やばいよ。

「っ…離し…っ…ぅンっ…あっ…ぁあっ」
「ふぅん。祭って、気持ちいいとそういう声、出しちゃうんだ?」
 うそ。
 そんなん、あえて指摘されると恥ずかしいし。
 なんで。
 出すじゃんか。
 出す…よね?
 だって、元彼とかにも、声かわいいって言ってもらってたし。

 わかんない。
 慌てて、手で口を塞ぐ。
「あれ。塞いじゃうの? 聞かせてよ」
 手を止められそう言われるけど恥ずかしくて、首を横に振った。

「先輩命令なんだけど?」
 にっこり笑ったまま、そう言われてしまう。
 命令って?

「手、どかして?」
 恥ずかしい。
 けど、逆らっちゃいけないような気がして、そっと手をどかした。

 天翔先輩は、俺の目をジッと見たまま、指先で亀頭に爪を立てる。
「っ! ん〜〜〜っ!!」
 体がビクついた。
 涙溢れるし。
 なんか…俺のからも溢れてるよね…?
 やだやだ。
 爪立てたまま、グリグリ先押さえられて。
 そんなんされたら、おかしくなるってっ!!

「ひぅっ…いっ…んっ…んぅんっ」
「ベトベトだね」
 そう言って、俺のズボンと下着を抜き取っていく。
 え。
 ヤる…の?
 そりゃ、別にやったことないわけじゃないし。
 この人、かっこいいし。
 でも、なんか。

 向こうはやたら冷靜で、恥ずかしい。
 出会ったばっかだし。

 こんなの。

 先輩の指先が、後ろの入り口を撫でて示す。
「あ…っ…やめてくださ…っ!!」
 やっとはっきりそう言うと、少し考えこんで。
 それでも指先が、入り口付近をユルユルと撫で続ける。
「んっ…ぅんっ」
 俺、すっごい溢れてる、どうしよう。
 天翔先輩が触ってるソコが、滴った液でだんだんヌルヌルしてくのがわかるくらい。
「祭はやめて欲しいの…?」
 しょうがない…みたいな口調でそう言う天翔先輩に頷いて示す。
 なのに。
 指が入り込む。
「あぁあああっっ!!」

 そんな…。
 会ったばっかなのに。
 すごい声出ちゃったし。
「指、奥まで入ってくね…」
「っっひっくっ……やめてくださ…って…言ったのに…っ」
 泣けてきた。
「うん、だけど、入れて欲しそうにヒクつかせてたから。指先に先走りの液絡んでくるし」
「違…います…っ」
「そ? 違うんだ?」

 そう言って俺に微笑んで、入り込んだままの指先が、中をかき回していく。
「ぁっあっんーっ!!」
 駄目。
 死んじゃう。
 飛んじゃう。
 恥ずかしいし。

「っンっ…ぁっあっぁあっっあぁああっっ!!」



 ねぇ。
 おかしいよ、こんなの。
 会ったばっかなのに。
 わけわかんなくて、涙が溢れて。

 無理やりだ。
 でも俺、感じちゃってたから、なにも言えない。

 恥ずかしい。
 当たりじゃなくて、ハズレ引いたかなぁ。

 気持ちいいにはいいんだけど。
 天翔先輩はそんな俺を見て満足なのか、自分は抜こうとしない。
 俺だけ。

 淡々と、笑顔のまんま、俺の体を拭いて寝かしつけられる。
 意味わかんないし。

 翌朝、平然と『おはよう』なんて言われるもんだから、俺もまたなにも聞けなくて。

「あの……昨日…」
「よく眠れた?」
「はい…でもっ」
「早く準備しないとね」
「……はい……」

 一瞬、夢だったんじゃないかとか考えたりもした。
 本当に、意味がわからないもの。


 けどね。
 次の日も。
 俺が寝て、気付いたら先輩がまた…。
 どうして。
 昨日のは……ほら、寮の掟ってわけじゃないんだけど、先輩後輩の立場をわからせようとしただけだったりさ。
 そういうんじゃなくて?

「いいよ…祭は寝てて」
「はぁっあっ…んっ! んっ…!」
 気持ちいいんだけど。
 なんでなんだろ。
 後ろに指を入れられて、イかされて。
 後処理をしてもらって、そのまま眠らされる。


 次の日も次の日も。

 こんなのが日課になっちゃったらどうすんだよ。
 すでになりつつあるけどっ。


「祭、起きてるの?」
 こんなこと何日も続いて、寝れるわけがない。
 布団に入ってしばらくしても、目がさえちゃって。
「だって…っ」
「どうした?」
「っ……先輩が…」
「別に、かまわないけどね」

 今日はうつ伏せにさせられ、そのまま、指を突っ込まれる。

「後ろからされる方が感じる?」
 わかんないってば。
「んっ…ぁあっ…あっ」
 必死で、ベッドのシーツに爪を立てて我慢した。

 気持ちいい。

 気持ちいいんだけど、焦らされる。
 そこ、違うのに。
 今日はいつもと違って後ろからだから、わかりにくいとか?
 違うよね?
 わかってて焦らしてる?

 もうちょっと上…。
「んっ! ぁくっ…ぁあっ」
 そう。
 そこ。
 気持ちいい。
「ぁっあっ…せんぱぁっ…」
「腰、自分で動かしてる…。そんなにもどかしい?」
 だって。
 先輩が違うとこ撫でるから。
 少し腰が動いただけだ。
 正当な理由が思いついても恥ずかしいのに変わりはない。

 今日はいつになったらイかせてくれるんだろ。
 この人は、自分が出したいわけじゃないみたいだから、俺が出すまでの過程を楽しんでるんだろうけど。

 先輩が疲れるまで?
 飽きるまで?
 さすがに、イかせないままで終わるってことはないだろうけど。

 もう頭がボーっとする。
 どんくらい長くソコ弄られてんだか。  

 焦らされてる。  

 そろそろ、イかせてくれないと。
「はぁっ…あっ…はぁ…ん…っ」
 腰がくねる。
 やらしいなって、自分でもわかってる。
 だけど…っ。
 もう、欲しい。

 イっちゃえば。
 抜いちゃえば、落ち着くから、ココに欲しいだなんて思わないで済む。
 だから、早くイかなきゃ。

「あっ…っんっ…ぅんっ…!」
 駄目だ。
 考え事してるせいか。
 先輩も、じれったい動きするし。
 イけない。
 欲しい。
 もっとおっきいのが…。  

 いつも1本の指しか入れてくれないけれど、的確に突かれて、前も嬲られるから…っ。

 ねぇ、絶対、焦らしてるでしょ。
 もう指1本で、そんな時間かけられたら麻痺してくるし。
 細いよ、足りないよ。
 拡げて。
 それか、前も触って。
 もしくは、中でイイとこ突いて。

「もぉ…っっ…あっんぅんっ」
 イけない。
 苦しいのに。
 そっと指を引き抜かれてく。  

 え…。
 終わりとか、言わないよね?
「やっ……」

 振り返った先にいたのは、企むような笑みを見せる先輩で。
 不覚にもどきっとした。

「や…? じゃあどうされたい?」
 仰向けにされて、じっくりと見下ろされて。  

 指がまた中に入り込む。
「んーーっ!!」  

 そうか。
 見られると余計に感じるんだ。
 後ろからのときだって、どんくらい見られてたかわかんないけど。
 今、すっごい顔とか体とか、視線が突き刺さる。
 
 恥ずかしい。
 指が的確な位置を突く。
「やぁっあっ…んっ…。ぃくっ…あっ…あぁああっっ」

「祭は見られながらの方が好きなんだね」

 イってしまった俺をジッと見下ろして。
 いつものように体を拭いてくれる。

「…なんで…こんなこと…」
「嫌?」
 嫌かどうかって聞かれたら、嫌じゃないのかもしれないけれど。
 理由がわからないから、戸惑うというか。

「じゃ、止めておこうか」
 俺がなにか言う前にあっさりそう言って、にっこり笑うとまた、いつものように先輩は自分のベッドの方へ。
 …どういうつもりなんだろう。

 本当に、止めるつもりなのかな。

 翌朝はあいかわらず、お互いに夜の話はしない。
 なにごとともなかったかのよう。
 だからね。
 本当に夜のあの時間のときだけ、違う感じなんだ。


 今日もまた、なかなか寝付けない。
 先輩が気になるから。

 だけれど、一向に先輩がこっちのベッドに来る様子はない。
 俺が起きてるの気づいているから……とかじゃないよね。
 だって、昨日、起きててもかまわないって言ってたし。
 止めておこうかとも言ってたけれど……。
 俺が寝たらまた?

 少し起きてはいたけれど、気づいたら眠ってしまっていた。
 朝、携帯のアラームで目が覚める。

「おはよう」
 あいかわらず、さわやかに俺に挨拶をしてくれる先輩。
 何事もなかったかのように……というか、今回は本当になんにもなかったんだ。

「……おはようございます」

 なんでするんですかって、聞いてたのに。
 今度は、なんでしないんですか? って聞きたい自分がいる。
 俺が、嫌がるから……?
 嫌ではない。
 っていうか、嫌とは言ってないし。
 先輩なら、俺の体が欲しがってるって気づいてるんじゃないかな。
 じゃあ、飽きた?

 だとしたら、これで普通のルームメイトの関係になれる。
 よかった……はず。

 でも気になるし。
 気になるから、今日もまた夜更かし。
 というか、寝付けずベッドに寝転がるだけ。

 襲われなくて不安って、自分どうかなっちゃったんだろうか。
 おかしいよ、こんなの。
 だって、なにもされないのは普通のことなのに。
 無視されているわけでもない。
 朝、優しく挨拶してくれる。
 すごくいい先輩でいてくれる。

 もう。
 まともに眠れないほど、先輩のことで俺の頭ん中、いっぱいだ。