部活後に、数学準備室へ来いと。
今日の昼休みに恋人の尋臣に伝えたはいいけれど。

…俺って、尋臣の部の顧問じゃん?
部活サボって、ここで待ってていいのか…?
まぁいいか。
今日、部活出てったら、尋臣に昼休みに渡した部活内容表の意味もなくなるし。
自分で渡せって感じだからな。

まだだいぶ時間がある。
そう思っていたときだった。

ドアがノックされる音。
直後、大きく開いたドアの先。
尋臣かと思い目を向けるがそこに立っていたのは、2年の外丸夕貴と水本泉だった。

「なぁんで、樋口智巳がいるわけぇ?」
「城崎先生の部屋だろー?」
……こいつら。
久しぶりに会った。
学園の中でなぜか、俺にちょっぴり敵意を見せる城崎派の生徒だ。
っつっても、なんだかんだで、悪友みたいな感じ?
企む時だけ気が合う。
2年で呼び出して欲しい奴らはこいつらに頼めば呼んでくれるし。
一緒に裏DVDコピーしたり等、遊ぶときだってあるわけだ。
泉は弓道部で、一応、俺の部だし。
っつーか、泉、部活サボりかよ。俺もだけど。

が、城崎よりも俺が教師としての人気が高いのがちょっと気に食わないみたいで。

二人がけくらいの大きな椅子に座って、机に肘をついている俺をまるで見下すかのように腕を組んで。
…まぁ、かわいいんだけど。

本来、教科ごとの準備室は1年と2年で一部屋しか用意されていない。
つまり、1年数学担当の俺と、2年数学担当の城崎とは、この部屋を共用することになっていたり…。
とはいえ、たかが準備室。
授業前に寄って必要なコンパスやらを取ってきたりするだけで。
そんなにコンパスとか定規とか使う授業も少ないし。
城崎と直接会うことはほとんどなかった。

「…用があるから。城崎にはちゃんと伝えてあるし」
だいたい俺の部屋でもあるし。
「どーせ、またどっかの生徒とやるために部屋使うだけでしょ」
「空けてよ。ここ、使いたいんだよねぇ」
「なにに使うわけ?」
 別に空けてやらないこともない。
 尋臣に1つメール送って場所変えりゃ済む話だし。

「城崎先生、ヤろうと思って」
「そうそう。いまから呼び出してね。でも、樋口智巳がいるんじゃぁ呼んでも、ここには、来ないんじゃないの? 夕貴―」
「あーもう、樋口智巳のせいで台無し?」

この二人の関係は、どうも夕貴が仕切って、泉がそれについて行く感じだな。

「……お前ら3人はさ、どういう関係なわけ?」

「うーん、ヤリ友? たまに3人でやって」
「あぁ、そんな感じ」
「でも、他の奴も相手するよ。城崎先生、他に付き合ってる人、いるっぽいし」
ヤリ友ですか。
「で。お前らって、サドだっけ?」
「なにそれ。俺は普通だけど、夕貴はサドじゃない?」
「っていうか城崎先生がMっていうか」

あぁ。
あの先生、Mなのか。
城崎とは、したことないんだよなぁ。
俺のタイプじゃないっていうか、他に相手いるし。
あえて手を出そうって思わなかったから?

「…俺もいていいなら、城崎、ここに呼んでやっても構わないけど?」

 そう言うと、二人は顔を見合わせて考える。
「参加するわけ?」
「いや、いるだけ。俺、ここで待ち合わせ中だから」
「樋口智巳に見られるのかぁ」
「でも、城崎先生、そういうの結構好きそうだよねぇ」
「たまにはかわったことしたいしねぇ」

二人は頷いて『まぁいっか』という結論を出す。
「っていうか『呼んでやっても』って何様? それ」
「…樋口智巳様だよ」
 駄目だ、こいつらといると、つい素になりそうになる。
「たかが、数学の先生じゃん。俺だって夕貴様だし?」
「俺も、泉様だし」
「わかったから。ほら、どっちか携帯かしな。城崎の番号、入ってんだろ?」
「っていうか、樋口智巳、城崎の番号知らないわけ?」
 ほんと、つるまないからなぁ、あの人とは。
「別に、特に話す機会ないからな」
「へぇ。まぁいいや。はい」
 そう夕貴が城崎の番号を表示させてから貸してくれた。

『夕貴? どうした?』
「いや、樋口だけど」
『えぇっ!?』
めちゃくちゃ驚いてるな、この人。
「実は今、数学準備室に夕貴と泉が来てまして」
『あぁ、すいません、邪魔しちゃって』
「いえ、俺が使おうと思ってたのは、もうちょっと遅い時間なんでいいんだけど。いまから来れる?」

城崎は快く返事をしてくれた。


「…なぁ、樋口智巳って、部長と付き合ってるってホント?」
 好奇心旺盛な方、泉が俺に聞く。
部長。つまり尋臣だ。
「ノーコメント」
「ちぇっ、つまんねー。教えろよ」
小学生か、こいつは。
「付き合ってるよ」
しょうがないから教えてやる俺も俺だけど。
「ふぅん。初めは友達だったの?」
「いや、友達っつーか、教師と生徒だけど」
「そっか…」

なんか、悩んでんのか、泉は。

人のやりシーン見るなんて久しぶりだな。
ちょっと楽しくなってきた。

そうこうしてるうちに、ドアがノックされる音が響く。

「城崎先生―っ」
二人が、飛びつくように城崎に寄っていく。
「樋口先生、すみません、この子たち…」
お前は保護者か。

「あぁ、全然、いいって。城崎が謝ることじゃないし」

「城崎先生、Hしよ?」
あぁ。直球ですか。
ちょっとかわいいな、夕貴。

城崎の横から抱きついて。
耳元でそう言うのが聞こえる。

「なっ…あ…すいません、もう出てくんで…」
「構わないし? どうぞ、ココ使って?」
「いえ、そんな…っ」

あわててるなぁ、この人。
ホント、押しに弱いんだろう。
「ねぇ。樋口先生もあぁ言ってるし…。しよ?」
泉め…城崎の前では、俺のこと呼び捨てにしないのか…。
いい子ぶりやがって。

二人に挟まれて。
城崎はどうにも出来ずに、おろおろしている。

泉の手が、城崎のズボンの上から股間をそっと撫で上げていく。
「っ!!……いいかげんに…っ」

「城崎…」
城崎の目の前に立って。
にっこりと笑いかける。
両側の夕貴と泉は俺を、ジっと俺を見守っていた。

「…いいよ、ここでして…。いつもしてんだろ…?」

なにも言えなくなったのか、泉がズボンのチャックを下ろしていくのにもうまく抵抗できないでいる。

夕貴は城崎の左側から左手で、城崎のを直に掴んでそっと擦り上げていった。
「んっ!!…あっ…やめ…」
泉は右側から城崎のシャツの中へと手を忍ばせて。
首筋に舌を這わす。

俺は、もう一度、そこにあった椅子へと腰掛けた。
「城崎先生…こっち向いて?」
夕貴がそう甘えて、反射的にそっちを向く城崎と口を重ねる。
「んぅっ…ん…っ」
思いっきり夕貴が城崎の頭を抱え込んで、逃げられないようにしていた。
泉は城崎のズボンと下着を下の方までおろしていく。

「なっ…泉っ…駄目だって…っ」
泉は城崎の前に回ってしゃがみこむと、舌で愛撫する。

…けど、その角度微妙に見えねぇし。
ちぇ。

俺は正面の机に肘をつきながら、ボーっと見学。
っつーか、泉と夕貴、いいコンビだな。

「…泉。樋口が見えなくてつまらながってる」
夕貴がそう言って。
城崎の体を横に向ける。
「樋口のためじゃないからな」
泉はそう言って。
俺に見えるように今度は口に城崎のを含む。
「ぁっ…やめ…っ…やっっ…」
「…先生…いつもより感じてる?」
夕貴は後ろから、城崎のシャツを脱がしていった。
指で、乳首を愛撫して、耳元でなにか囁いて。

「夕貴―、いい仕事してんねぇ」
暇だから、声掛けてみたり。
「…黙ってろよ、樋口」
「……せっかく、いろんな玩具貸し出ししてやろうかと思ったのに」
「……なにか持ってるわけ?」

ノってきたねぇ。
「…城崎って、玩具とか使ったこと、あんの?」
「えっ…ぁっ…そんな…っ」
「へぇ。ないんだ?」
俺は、いろんなサイズ、形のバイブをいろいろと机に並べる。

「城崎先生、どれがいい?」
夕貴がそう城崎に聞いてあげて。
泉に口で愛撫されている最中ということもあり、答える余裕がないようで。

「ぁっ…や…夕貴っ…」
「嫌なの…? 玩具で遊んであげるんだよ?」
「えー、オススメはコレです」
「…樋口ぃ、テンション下がるからっ」
「まぁいいじゃん。多少、邪魔したいんだって」
「何言ってんだよ」
あぁ、俺、夕貴みたいなタイプとつるんでるの結構好きだな。
「見てみ? このねじれにこの長さ。上手く入らなかったら、回せばグルグル入ってくし? 出てくるときが見ものなんだよ。振動させっと、グルグル回りながら出てくるから。おもしろいよ。……いやらしく見せ付けてくれたら、ソレ、タダであげる」
「ホント?」
夕貴はタダとかお得とかに弱い。
俺から、笑顔でバイブを受け取っていた。

よし。

「泉…ちょっと、おいで?」
「もぉ、なに?」
こいつって、なんだかんだで断らないよな。

その間に、夕貴が前からゆっくりと、とりあえず指を挿し込んでいく。
「ぁっあっ…んーっ…」
ゆっくりゆっくりと、城崎を気遣い奥へと押し進めて行くのがわかった。

俺の隣に泉が座って。
「なんだよ、樋口」
あいかわらずデカい態度だ。
「…お前、あんま客観的に見たことないだろ? ちょっと見てなって」
「なぁ、そんなこと?」
「いいから」
俺が、強く言うと、やっぱり最後は俺の方が立場的に上なわけだし、今、夕貴が離れていて一人だということもあってか、しょうがなく黙る。

「夕貴。そのままちょっと2人で進めてな。泉とお話するから」
泉は舌打ちをして。
夕貴は玩具を手に入れて気をよくしたのか、了解してくれていた。


「泉…」
俺は、椅子に深く座り込むと、泉の体を無理やり強引に自分の前へと座らせる。
「なっ…」
「静かに。夕貴たちの邪魔になるだろ」
「…っつーか、意味わかんねぇし。…盛ってんの?」
「違ぇよ」
後ろから泉を抱きしめて。
泉は、かったるそうにため息をつく。

「大きくしてんじゃん、泉くん」
ズボンの上から股間に触れてそう言ってやる。
「…そりゃ、城崎のやってたらそうなるって」
「違うだろ」
そう言うと、振り返って、驚いたように俺を見た。
「なに…それ」
「お前、もし一人だったら、城崎とやる気、あんまないだろ」
「なに……」
不安そうな顔。

あたりだ。
こいつ、絶対、夕貴のことが好きだ。

俺は、泉のズボンのチャックを下ろして直に掴みあげる。
「っな…おいっ」
「見てみろよ…。城崎、夕貴に指入れられて、前も扱かれて。気持ちよさそうじゃん…?」
俺が前を扱いてやると、泉は抵抗せず、おとなしくなっていた。
「っ…なに考えて…」
「向こうからはこっち、机で見えないから。安心しろ? …夕貴の手、やらしぃな」
俺は、夕貴の真似をするように、泉のに指を絡めて亀頭を撫でる。
「んっ…ぁっ」
「後ろにも、1本入れてやるよ…。これで、一緒」
そう言って、自分の指を舐め上げて。
下着の中まで手を突っ込んで、入り口をその指でそっと撫でてやる。
「っやめっ…」
「静かに。2人に気づかれる」
そのまま、そっと指先を押し込んでいく。
「んっ…んーっ…」
「ちゃんと声、殺せてえらいねぇ」
あぁ。久しぶりにサド心くすぐってくれますね、この子。
…まぁ、今回は俺の子じゃないので我慢しますけど。

「キツ…。処女?」
「っ…うるさ…っ」
「最後まではやらねぇから安心しな。…好きなやつのためにとっとこうな」
「なっ…」
夕貴が、俺のあげたバイブを中に入れて行くのが見えていた。
俺も、それに連動するように、奥へと指をさらに押し入れていって。
中の指をそっと動かして慣らしていく。
「ぁっ…んっ…んぅっ」
泉は、俺にされながらも、夕貴と城崎の方をジっと見ていた。
ただ、この刺激には不慣れなのか、俺の腕に爪を立ててつかまっていた。
ホント。
かわいいな、こいつ。
でもって、夕貴のこと、好きなんだろう。

「泉、お前、かわいいな」
「なっ…」
「素直になれって。…後悔するぞ…」
「……っ」

俺はそっと、指を引き抜いて、泉のをまた、しまってやった。

「…樋口…っ俺…」
「好きだろ…。夕貴のこと」
「…うるさいよ、お前」
「はいはい」

バイブが城崎の中で振動しているのが見てわかる。
「ぁっあっ…んっ…夕貴っ」
結構、いい声出しますね、城崎も。

「もう、イきそうなの?」
あぁ、こいつ焦らしそうだな。
「夕貴、イかせて見せて」
「…しょうがねぇなぁ」
夕貴は俺の方へと城崎を見せるようにして、バイブで中を掻き回していた。
「ぁっんっ…やめっ」
「イっていいよ、城崎」
そう俺に言われて、我慢出来なかったのか。
「んっやっ…あぁああっっ」
一応、俺から顔を逸らすようにして、イってしまっていた。

ずるずると、中からバイブが回り落ちていく様はやはり見てて楽しいな。

「城崎、よかった? そろそろ俺の待ち人着そうなんで…」
「あっ…すいません…。出てきますんでっ」
「なぁ、なに言ってんだよ、樋口智巳っ」
まぁ、ホントはまだまだ時間に余裕はありますが。

「まぁいいや。泉っ。場所移そうぜ?」
そう泉へと言う。
俺は、泉の頭をそっと叩いて。
「…後悔すんなよ」
もう一度、言ってやる。
「俺っ…」
少し泣きそうな顔で、俺を振り返っていた。
「…無理…」
「無理じゃねぇよ」

「泉ぃ、早く来いって」
「…うん」

泉は、迷うようにして、夕貴の方へと向かう。
城崎と夕貴が出て行って。
「ちょっと待ってて」
泉がそう夕貴たちに言う声が響いた。

泉だけが部屋に残ってドアを閉める。
「どうした?」
「……俺…。言ってみる」
「ん、告白?」
「うっさいなぁ」
…ちょっと、難しいな、この子。
照れ隠しなのだろうか。

「がんばれよ」
「…でも、城崎がいるから今日は…」
「…手、回そうか?」
「へ…?」

少しくらい協力してあげようかなぁとか思うわけだ。
泉のこと、なんか気に入ったし。

「お前が本気なら、俺は協力するし? 城崎、放送で呼び出そうか」
「そんなん、樋口智巳の声ってわかるだろ」
「…いや。4年の数学教師。知ってるだろ。桐生にやらせるよ。なんだかんだ言って、あいつ、数学教師のリーダーだから、あいつが呼び出せばそういう集まりってことになるだろ」

「…わかった…」
そう言って、泉は出て行った。

あぁ、なんかイイことした気分だな。

とりあえず、俺は桐生に電話して、城崎を呼び出して欲しいというだいたいの内容を説明した。
あとは、泉次第だろ。


なんだか泉見てたら、無性に尋臣に会いたくなってきたな。
馬鹿か、俺は。

まだ部活終了までにはだいぶ時間が残っている。
…少し、弓道部まで顔出しに行ってみるかな…。