夕方、弓道場へ向かったが、尋臣の姿は見当たらなかった。

かといって、部員に聞くのもなぁ。
うろうろしていると、逆に声を掛けられる。
「智巳先生、久しぶり」
真綾だ。
滅多に部活に来ないから、俺と顔を合わせることは、ほとんどなかった。
が、部活以外で、たまぁに会うため、どちらかといえば、仲はいい。

「なぁに捜してる?」
バレバレですか。
「いや、別に」
「今日は、月曜日だよ?」
企むように、そう言われ。
尋臣が委員会だったということに気づいた。
今日、尋臣に『部活後』とか言っちゃったし。
あんま、あいつちゃんと頭に入ってねぇのかな。
…修学旅行中の部活内容については、修学旅行前に配れば問題ないしなぁ。
それまでに俺がココ来てたらわざわざ尋臣に昼休み渡した意味ないんだけど。


よくよく考えたら、尋臣が昼休みどうしてたかなんて、知る部員いないし。
昼、教室に戻った尋臣が、ちゃんとクラスの奴に言い訳出来る材料さえあればOKなわけで。

つまりもうあの部活内容用紙の役目は果たしただろう。

にしても、真綾。
こいつ、俺が尋臣捜してるって気づいてんだよな。
「っつーか、月曜日だし? お前、委員会だろ」
真綾だって、クラス代表で、月曜日は委員会のはずだけど。

「…んー。たまにはサボらせてくださいよ」
「まぁ俺は別に構わないけど?」
「あとで、ちゃぁんと生徒会長に会いに行ってきますよ」
「…会いに?」
「ん? やるかも?」
そういえば、こいつって生徒会長と元ルームメイトだったっけ。

「……もうすぐ修学旅行だろ。お前は…? どうすんの?」
真綾の彼氏は3年の悠貴だ。
しかも、俺と入れ替えに入った宮本先生を毛嫌いする第一人者でもある。
ぶっちゃけ、俺のこと、好きだったみたいだし?
まぁ、それがちゃぁんとした恋愛感情なのかは微妙だし、もう今じゃ真綾のことが大好きだってのは俺もわかってるし応える気はないんだけど。

「…どうするもなにも。別になにも」
「俺、行くつもりなんだけど」
そう言うと、俺を下からジっと見上げる。
いい気はしないだろうな。
「そ。悠貴をよろしく」
少しだけ間を空けてから、笑顔でそう俺に言ってくれる。
こいつって、結構、大人だよなぁ。
「…ん…。じゃ、その間、尋臣をよろしく」
「了解」

結構、真綾みたいな性格の子、好きだな。
「じゃあ、俺は、委員会行ってきますので」
そう素直に言い残し、俺は尋臣のいるだろう学祭実行委員の教室へと向かった。



やっぱり。
また真面目に委員会やってるし。
ドアを開くと、こっちを見て、一瞬、焦って見せるが、すぐさま関係ないように話を続けていた。

ジっと、見つめていると、視線に気づいたのか、目が合って。
それからだ。
少しだけ、尋臣が集中できていないようで。
ボーっとしてる?
この委員会が終わったら、俺とやるって。
それがわかってるから?
気が気じゃないんだろうけど。

みんなで意見を言い合って、ざわついた状態の中でも、ただ俺の視線は尋臣に集中していた。

尋臣は、避けるように俺を見ないようにしている。
ただ、目がやばいなぁ。あいつ。
エロい。

委員会も、終わって、みんながゾロゾロと教室を出て行き、最後に残った尋臣がやっとこっちを見た。
「…樋口…先生」
「……2人んときにそういう呼び方すんなよ。他人行儀だろ」
立ったまま、ボーっとしちゃってる尋臣へと近づいて。
抱き寄せて、口を重ねる。
「んっ…」
顔を背けて嫌がる尋臣の後頭部を掴んで、強引に重ねて、舌を絡めとっていく。
「ぅんっ…」
尋臣の足の間に自分の足を割りいれて、腰を支えながら、尋臣を上に向かせて、唾液を送り込むと、ビクついて、俺の腕を掴む。
「…飲んで…」
それだけ伝えて、また口を重ねて。
何度も絡まる舌の音が響く。
「っぁっ…んっ…」
不意に、腕に重みを感じる。
尋臣の足に力が入らないのか。
俺は、その体を支えながら、ゆっくりと尋臣の体を床へと座らせた。
「…どーした…? 尋臣…。今日は早いなぁ。いつも嫌がるくせに」
「…別に…いつも、嫌がってるわけでは…」
「こんな場所でーとか言うだろ。だけど、こんな場所で欲情したのはお前が先だよなぁ?」
座り込む尋臣の前にしゃがみこんでそう言う俺を、少し驚いたように見る。
「なに…言って…」
「委員会の間、なぁに考えてた?」
「っ…それはっ…」
「ほら。学祭のことに決まってるって、即答してみせろよ」
嘘がつけない性格だよなぁ、こいつ。
手で、ズボンの上から股間をなでると、体をビクつかせて、顔をそらす。
「ぁっ…」
「もうすっごい硬いんだけど…」
「っ…やめっ…」
「いやらしいこと、考えてた?」
「っ…違っ…やめて…ください。…誰か…来るかも…」
「さっき、お前、みんながいる前でいやらしいこと考えてたくせに」
「だから、考えてなんか…」
「あっそ」
立ち上がる俺を、座ったまま見上げて。
まぁた、こいつってば、すっげぇ『申し訳ない』って顔するもんだから。
俺の我侭なのに。
いっつも、怒らせちゃった、どうしようみたいな顔してくれる。
それがかわいくて、また虐めたくなるんだよなぁ。
だけど、今日は、少し優しくしてあげよう?

「ほら…」
手を差し伸べて、尋臣を立ち上がらせる。
「…たまには、ベッドでちゃぁんとしようか…?」
耳元でそう言うと、それだけで頬を赤らめて。
恥ずかしいのか、やっぱり頷いてはくれないけれど、否定はしなかった。

俺が、教室を出ると、一歩後、ついてきてくれる。
後ろから尋臣がついてくるのを確認しながら、足を進める。
と、前の方から来る生徒。1年生だろう。
「あ、樋口先生、数学のテスト範囲、教えてください」

そう声をかけられて。
足を止めるが、尋臣はもちろん、気づかれないようにか、止まらないし?
俺を通り越していく尋臣を目で軽く見送りながら。
俺はテスト範囲を教えてあげて。

生徒と別れると、早歩きで、尋臣へと追いつく。
先行くなって。
なぁんて言っても無駄なのはもちろんわかってる。
「尋臣…。気が変わった」
そう横から声をかける。
「え…?」
「いや? 優しくしようと思ってたけど? やっぱり、変更」
「なに…それ」
「別に?」
「……俺が…先に行ったからですか」
あー、俺、それだけのことで気持ちが揺らぐんだよなぁ。
なんか、少しだけ寂しいとか思ったんだろう。
そういう行動、尋臣がするってのは充分理解出来るのに。
理解出来るから、構わないけれど、こんな形で仕返しするなんて。
馬鹿だなぁ。なんて思うけど。
しょうがねぇだろ。
尋臣の事、好きだからなぁ?

「…いいから、行くぞ」
俺は尋臣を引っ張って、保健室へと連れて行く。
尋臣は、自分が先に行ってしまったことに後ろめたさがあるのか、黙って俺にされるがまま。
中に入ると、柊がいた。
「あれ、智巳ちゃん?」
「ベッド借りますー」
「なっ…」
尋臣は、柊を確認して、驚くように俺を見る。
無理やりベッドへ連れて行き、尋臣を押し倒す。
「あっ…やめっ」
「別に、柊、俺らが付き合ってんの知ってるし? 直接見られるわけじゃないし、声だけだし? いいだろ、お前、Mだし」
そう言いながら、尋臣の腕を自分のネクタイで縛り、ベッドの端へと縛り付ける。
「尋臣さぁ。もうちょっと体鍛えたら? すーぐ縛られちゃってさ。やばいだろ。俺だから抵抗しないわけじゃなくって、俺以外でも、どうせすぐこうなんだろ」

シャツのボタンを外し、胸元を撫でていく。
「っ…んっ…」
「なぁ…お前って、人に聞かれてると、いつもよりすっげぇ敏感だよなぁ?」
耳元でそっとそう言うと、顔を赤らめて俺を見る。
乳首を撫でるだけで、息をあらげ、体をビクつかせた。
「ぁっ…んっ…んぅっ!!」
何度も、指先で転がしながら、見下ろして。
尋臣は恥ずかしそうに顔を背ける。
「はぁっ…んっ…ぅんっ…んっ」
「…暇だから、電話しちゃおっと」
そう言う俺に、不安そうな目を向けた。
あぁ、なんて楽しいんだか。
片手で、ズボンのチャックを下ろし、尋臣のを撫でる。
「んっ…ぅンっ…やめっ…」
「あぁ。すっげぇ、ぬるぬるだし。あ。もしもし? 桐生さんちの深雪ちゃんですか?」
『…名前出すなよ。切りますよ』
「はいはい。じゃあ、桐生」
『…まぁいいけど。で、なに?』
俺はあいかわらず、尋臣のを擦りあげたまま。
「んぅっ…んっ…ぁっあっ…んっ」
「暇なんで。電話しようかと」
尋臣は泣きそうな顔で、俺になにか訴えようとしていた。
もちろん、ソレを無視して何度も尋臣のを擦っていく。
「ぁっ…んぅっ…ンっ…あんっ…んーっ」
「桐生―…今日の尋臣くんはどうでしたか?」
『ん? 別に普通かな? そこまで意識して見てなかったけど…』
「ふぅん。授業中、いやらしいことばぁっか考えてたみたいでさぁ」
そう言うのを聞いてか尋臣は、必死で首を横に振る。
『尋臣が?』
「そう。欲求不満で。いまも、俺が桐生と電話してんのに、我慢出来なくって、一人H、見せてくれてるわけ」
「違っ…あっ…んぅっンっ」
先走りでぬめりのついた手を、下着の中へ突っ込んで、後ろへとゆっくり指を差し込んでいく。
「あっ…ぁああっっやっ」
『お前、あんま尋臣虐めんなって』
「それ、桐生に言われたくないなぁ。お前の方が、彼女虐めてるだろ?」
『…あいつが嫌がるからそう思えるけど、行為的には、智巳ちゃんの方が酷いことしてるかと』
聞かれているせいか、少し指を動かしてやるだけで、ビクビクと体を震わせ、涙を流す。
「やんっ…あっ…智巳ぃっ…あっぁあっ」
自然と腰がくねる。
もうイきそうなんだ?
尋臣を無視して、俺は桐生と話しを続けた。
「嫌がることするのはいいんすか」
『まぁ、よろしくないね』
「俺の彼女は、嫌がってないから。じゃあ、もういいや。切るね」
『……なんなんだよ。じゃあな』

電話を切って。
尋臣の頬を撫でてやって。
「ほら、切ってやったから。な?」
「ぅんっ…ぁっあっ…もぉ…いくっ…やっあっ」
泣き顔で頷く尋臣がかわいくてたまらない。

…こいつ、絶対、電話切れたからもう大丈夫って思ってるよなー。
柊のこと忘れてるなぁ。
しかも、電話したのは俺なのに、切ってくれてありがたいだとか、勘違いしちゃってそうだ。
とりあえず、1回、イかせますか。
「後ろだけでイける?」
「はぁっぃくっ…智巳ぃっやあっ…」
「いいよ、イきな?」
「ぁあっあっ…やっあっ…ぁんっあっあぁあああっっ」

体を大きく跳ねさえて。
イってしまうと、トロンとした目で俺を見る。
抵抗できそうになかったから、俺はとりあえず尋臣を縛っていたネクタイを外してやった。

「智巳…」
「お前さ。なんか忘れてない?」
「え……」
「そこに柊いるの」
「なっ……!」
おろおろする姿を眺めながら。
もう一度、イったばかりの尋臣のを手で擦る。
「やっ…めてくださっ…」
もう遅ぇっての。
「すっかり忘れてたよなー。お前」
「違っ…んぅっ…っやぁっ」
「イったばっかで敏感? それとも、聞かれてるから感じすぎるの?」

答えなんて聞くつもりないけど。
ゆっくりと、さっきまで指が入り込んでいた尋臣の中へ、すでに猛りきっている自分のモノを押し込んでいく。
「やっやめっ…樋口せんせっ…やめてくださっ」
「…お前、なに言っちゃってんのかなぁ。いまさら」
「やっぁあっ…んーーーっ」

ゆっくりゆっくりと、奥まで入りきって。
涙を流す尋臣の頬に舌を這わす。
「…かわいいよなぁ。ホント、お前」
「や…っ」
「俺のこと、好き?」
「っ……やめてください…っ」
柊効果、抜群だな。
「……後で後悔すんなよ?」
「え…っ」
「俺のこと、好きじゃないんだ?」
今度は、少し迷って。
「っ……好き…ですけど…っこんな…っ」
小さな声で、そう告げる。

「ホント、かわいいわ、お前」
そっと口を重ねて。
軽くカーテンをあけ、顔を出す。
「柊先生―…。お願いなんだけど、場所、貸切させてくれません?」
「いいですよ。智巳ちゃんには、借りがありますからねぇ」
こっちも、いろいろといつも協力してあげてますから?
柊は、企むような笑みを浮かべ俺に鍵を見せ、机に置く。
いや、それ置いたら、外から、閉めれないだろ。
……鍵閉める気ねぇな…。

柊が部屋を出てくれるのが音で分かる。
「ほら、尋臣…二人きりだ…」
そう告げて、そっと抜き差しすると、過敏に体をはねさせる。
「ぁあっ…あっぁんっ…んーっ」

もともと悪い状況にさせといて。
それを俺が改善することで、ものすごいイイ奴だと勘違いさせる。
…尋臣って素直だから、すーぐ勘違いしてくれるんだよなぁ。
俺のこと、優しいだなんて思ってくれちゃってそうで。

「2人きりでも、場所違うと、興奮する?」
「っんっ…はぃ…っあっ…んやぁっ」
律儀に、『はい』とか言ってくれなくていいんだけど。
でも、言ってくれたからには突っ込みたくなるもんで。
「…興奮してんだ…?」
耳元でそう聞いてやると、顔を背けて、戸惑いを見せる。
「っ智巳ぃっあっ…ぁんっあっ…」
「なぁ、尋臣、どうなの?」
「ぁあっ…はぃっ…あっすごいっ…あっっ…」
まぁ、興奮していつもよりすごい感じるってことだろう。
顔、真っ赤だし。
泣きまくりだし。
すっげぇかわいくて、こっちまでいつも以上に興奮するっての。

「…尋臣―…騎乗位で、して欲しいな?」
そう頼んでみると、素直に頷いてくれる。
今日はイイですねぇ。

一旦、引き抜いた俺を反対に押し倒して。
俺のに手を添えて、ゆっくりと、納めていってくれる。
「はぁっあっ…んーっ」
上から見下ろすのもイイけれど、こうやって見上げるのも、やぁっぱ、たまらなく好きだ。

体の横に意味もなく垂らしていた手を、尋臣が握るもんだから、自然と指が絡む。
すっげぇ、乙女なんですけど。
俺の手に指を絡めたまま、腰を揺さぶってくれる。
「ぁっあっ…はんっ…智巳っ…ぁあんぅっ…」
「気持ちいい?」
「あっ…はぃっ…ぃいよぉっ…あっっ…もぉ、やぁあっ」
「片方、手、離しな…」
「え…っ」
一気に、不安そうな顔を俺にむける。
「…お前の、触ってやるから」
「……は…い」
少し、顔を背け恥じらいながらも、俺の右手を解放してくれる。

体を揺らす尋臣にあわせるようにして、尋臣の股間を擦り上げていくと、俺の左手に絡む尋臣の手に力が入るのがわかった。
「はぁっあっ…智巳っ…あっ…もぉっやっ…いきそぉっ…あんっ」
「んー…。イきな…? 俺もイくから」
「あっ…ぁあっんっ…やっあっ…あぁああっっ」


俺の手に爪を立てて、尋臣が欲望を弾けだすと同時くらいに、俺も尋臣の中へと放っていた。

力尽きて、倒れこむ尋臣を抱き、頭を撫でてやると、ボーっとした中でも、少し恥らいながら、俺に身を寄せる。

「尋臣ってさ…。騙されやすそうだよな」
「…なんですか、急に…」
「俺が、保健室連れ込んだわけ。柊がいるのにな。のくせしてなんか、柊、追い出したときに、お前、俺のこと、いい奴だとか、勘違いしてそうだったし。桐生との電話のときも」
あえて気付かせるのもあれだけど、そう言うと、尋臣は、少しだけ、考え込んで。

「…でも…優しいから、電話も切ってくれたし、二人きりにしてくれたんでしょう…?」
優しいからって、俺に直接聞かれても。

「いや、ホントに優しい奴は、はじめっから、2人きりの場所でやらねぇ?」
「でも…っ」
否定しようとするものの、なんにも思いつかなかったのか、なにも言えないまま、顔を背ける。
まぁ、否定しようとしてくれるだけでも、嬉しいんだけど。
「いいよ、無理に否定しなくて」
「…でも俺…たぶん…Mだし…」
顔を隠すように、俺にくっついてそういうもんだから。
あぁもう、ホント、やべぇな、こいつ。
っつーか、Mじゃなきゃ、俺の彼女なんて務まんねぇよ。
「そんな、発言しちゃやべぇよ、お前。虐めてくださいって言ってるようなもんですけど?」
「……そういうわけじゃ…」
もっと強く否定すりゃいいものの。
「っつーか、お前、そんなんじゃあれだな。ますます危ないな。他の奴にヤラれんなよ」

「智巳相手にしか、Mじゃ…」
「はいはい。ありがとな。ガンガン、虐めますよ」
「え…」
「いや、マジで不安がられてもあれなんですけど。ちゃんと、わきまえて、優しくすっから」
最近、俺、『あれ』とか増えたな。

…あからさまにテレられると、こっちもなんかすっげぇ恥ずかしいこと口にした気になるし。

鍵閉まってないのは秘密にしておくか。
いや、もしかしたら、柊、鍵、閉めてくれてるかもしれないけど?

もう少しだけこのまま。

照れる尋臣にもう一度口を重ねて、力強く抱きしめた。