時は金なり……
刻一刻と過ぎていく時間はとても大切なのです。

まぁ、そんなことはどうでもいいんだけど、もう7月になっていたのです。
入学して早くも2月半以上たっちゃったわけ。
クラス代表になっちゃった俺も、なんとかさまになってきたかなぁとか自分でも思うのです。
別になりたくてなったクラス代表じゃないんだけど、こうも頑張って続けてられるのはあなたのおかげだと思うのです。
「伊集院先輩…今日はなんの話、するんですか…?」
そう、生徒会長の伊集院総一郎先輩。
彼が、クラス代表の全員をまとめて仕切っている。
とってもすごいお方なのです。
俺の理想の人。
どこが理想かって?
語れば長くなっちゃうよ。
容姿もよければ勉強も運動も出来て、やさしくってとにかく素敵な人なのです。
俺の理想の人…。
「あいかわらず…憂くんは来るの早いね…。今日は、夏休みについてだよ。ちょっと早いけどね」
そう……ホームルームが終わってからダッシュでココに来る。
伊集院先輩は4年生だから生徒会室と教室が近いんだ。
だから、伊集院先輩もすごく早くにココに来ている。
少しだけ、2人でいられる時間。
少しだけだけど、大切な時間。
毎週月曜日に、クラス代表の集まりがある。
その時だけ…。
4年生と関わるなんて滅多にないことだしね。
集まりの後も少し、一緒にいられるけれど…ね…。

「中学校のころはさ…七夕…とか言って、学校でも短冊飾ったりしたよね」
伊集院先輩が、不意に思い出したかのように言った。
「…俺の中学校ではなかったです…けど…」
「そう…?七夕…で、笹に短冊とか、結構好きなんだけどな。子供っぽいかな」
軽く笑ってそう言った。
「そんなことないですっ。俺も好きです。笹に短冊っ」
普段七夕なんてまったく意識してなかった。
普段どころか、毎年、7月7日が来ても、大して思い入れなどもなかった。
むしろ興味があるのは、7月の後半あたりに遅れてある、地方の七夕祭りの方。
「そう?今年は、7日は……日曜日か…。うん。そういえば、天文部が屋上で観測とかするらしいよ」
「観測…?」
「そ…。夏近くになると、やるんだ。ホントは冬の方が奇麗だったりもするけどね。毛布とか持ち込んで……」
楽しそう……だな……。
でも、俺、天文部じゃないし……。
「……行く…?」
「え……」
「天文部のね……部長の堀早彗人って、俺の友達なんだ。きっと混ぜてくれるよ」
「…伊集院先輩は…行きますか…?」
伊集院先輩が行くなら行きたいな…なんて…。
だって、知らない人ばっかの中に混じれないよ。
「…行こうかな…」
そう言ったときだった。
別のクラス代表の人が来て、俺らの短い時間は終わってしまったのです。
伊集院先輩は真面目だから、クラス代表の人が来たら、それをおいておいてまで、俺と話すようなことはなかった。
少し寂しいような気もするけれど、俺はそんな伊集院先輩が好きだから…なんて思うのです…。



「……憂く〜ん、なんだか考え込んでるでしょう?」
会議中、俺に声をかけてきたのはクラス代表のこの集まりで、声をかけてもらってから仲良くなった2年生の先輩、真綾先輩だ。
「…そんなん…わかります…か…?」
「ふふ…わかるね。…なに?また会長のこととか」
そう、真綾先輩は、伊集院先輩が俺の理想だって知ってるのです。
そんでもって、真綾先輩は、伊集院先輩のこともさりげによく知ってるからいろいろ教えてもらったりしちゃったり…。
というか…伊集院先輩に限ったことじゃなくってなんでも知ってる感じ…。
「伊集院先輩のこと…でもないわけじゃないんだけど…。真綾先輩って何部ですか…?」
「んー…一応、弓道部」
「……一応……?…じゃぁ、天文部が…天体観測とかするの…知ってますか?」
もちろん…という表情を見せて真綾先輩は頷くと、俺の次の言葉を待った。
「…俺、天文部じゃないけど…行きたいんです…。でも知らない人ばっかだろうし…」
「へぇ…星好きなの?でもそうなら、天文部入ってるかな…」
なんか、裏があるでしょう?みたいな、含みのある表情をされる。
うん…あるんだけど…
「伊集院先輩が…行くかも…しれなくて…」
行かないかもしれないけど…。
「じゃぁ、知らない人ばっかりってわけでもないじゃない?」
「…でも…伊集院先輩は…天文部の友達と仲良くしてるかもだし…そうしたら俺、一人だし…。もしかしたら行かないかもしれないし…」
「……心配性だねぇ…。じゃ、俺も行こうか…?」
真綾先輩も……?
それは嬉しいけど…でも…
「伊集院先輩がさ……もしも…俺と一緒にいてくれたらさ…俺、真綾先輩と…」
一緒にいられないかも…そう思うとなんだか悪い気がする。
「そんなことは気にしなくていいよ。一緒に行ってあげる。俺だって別に天文部に友達いるしね…。それに楽しそうだし?」
そう言ってくれた。
楽しそうってのは…天体観測が…だよね…。
俺と伊集院先輩の関係が…じゃないよね…。


そのまま、会議は終わって、いつものとおり片付けをわざと遅らしていた。
「憂くん。さっきの続き…行く?」
さっきの続き…天文部のことだ。
俺はもう会議中もずっとそのことばかり考えてたけど…。
頷くと、伊集院先輩は俺の頭に手をやって、『楽しみだね』って…。
「天文部ってわりと、開放された感じの部だからね。安心していいよ。7月6日の土曜から朝にかけてだから…寮にある毛布もって、土曜の夜9時に屋上だってさ」
そう教えてくれた。

なんとなく、会話も途切れて、俺はそこに居にくくなったので、帰ることにした。

一度…会議の後の時間に、手を出されたことがある。
俺が会議のこと忘れちゃってて、後から行ったトキだった。
理想である伊集院先輩が、思いもかけず、俺の体を触ってきて、なんていうかその…やられちゃったわけなのです。
ホント…あの時はドキドキした。
今でも…会議後、2人きりになるとすっごくドキドキする。
鮮明に思い出される。
また…遅刻しちゃおうとか…何度も邪なことを考えちゃったりもした。
そのたびに、自分で自分が恥ずかしくなって、こんなんじゃ駄目だって思うのです。
ホント…駄目すぎる……。


土曜日…。
それでも一人で行くのはなんだかドキドキする。
それに屋上なんて行ったことないし…。
真綾先輩に一緒に行ってもらおうと、俺は8時頃、真綾先輩の部屋を訪ねた。
インターホンを鳴らしても全然反応がないから、俺はゆっくりとドアを開けた。
「はぁっ…ぁああぁっ…」
いやらしい声が…AVでも見てるのかと思ったけど、すぐに違うと分かった。
ベットで真綾先輩が、その…やっちゃってる…。
まだ俺には気付いてないみたい。
そのまま、ゆっくりとドアを閉める。
「……」
どうしよう…。
一人で行くのや嫌だけど…真綾先輩を中断させる事も出来ないし…。
まだ8時だし…少し、廊下で待ってみようか…そう思い、座り込んでいた。


「……ごめんね〜、憂くん。お待たせ」
あれから20分くらいたっただろうか。
ガチャっとドアから真綾先輩が出てくる。
「え…っと…」
お待たせって…。気付いてた…?
「…急に来ちゃって…すみませ…」
そんなん全然OKみたいな感じで笑って、俺らは寮を出て学校に向かった。
とぼとぼと歩く道のりがやたら長く感じられる。
だって…あんなん見ちゃってさ…
真綾先輩にどう対すればいいのか……
それに気付いてか、屋上についてから、真綾先輩は
「憂くんもしたことあるんでしょ…?」
って…。
「え…?」
「会長とかとさ…」
「とかってっ…」
伊集院先輩としかやってないです…とか言えないけど…。
「あるでしょ〜。ほら、会長、わりと手、出しちゃう人だし」
「でもっ」
一回しかしたことないもの…。
真綾先輩は、伊集院先輩のこと、『手、出しちゃう人』って言うけど、そんなに…出さないよ。
俺に興味ないのかな…。
確かに、俺の理想の伊集院先輩は、軽く手を出しちゃう人じゃなかったんだけどっ。
でも、出しちゃっても別にいいんだ。
それならそうで…どうして…俺には手、出さないのかな…なんて…。
やだ…俺、すごくやられたがってるみたいで…。
顔が熱くなる。
「……う〜ん……」
俺の表情から何かを読み取ったのか、真綾先輩は、少し考え込んでいるようだった。
その後、不意に思いついたのか、屋上の貯水タンクの上に登りだす。
「ちょっ…真綾先輩っ、危ないですよぉ…」
まだ、屋上には少しの人しか来てなくて、真綾先輩の行動に気付いてるのは幸い……なのかな……??俺だけだと思う。
真綾先輩は、俺の言うことは無視で、そのまま登りきってしまうと、そこに自分の持ってきた毛布を置いて、降りてきた。
「…ふふ…」
得意げに…子供っぽく笑っていた。
「…危ないじゃないですか…」
というか…
「毛布…どうするんですか…冷えちゃうよ。毛布も…真綾先輩も…」
「それは大丈夫。それよりさぁ、憂くんって星のことなんか知ってる?」
話を無理に切り替えられた気がした。
それでもあま突っ込む事ができないから、『あまり知らない』と答える。
星…こうゆう行事みたいなのは好きだけど…星はよくわからない。
話し込んでると、次第に他の人も来て、伊集院先輩も別の人と来た。
言っていた、天文部の友達かな…。
「憂くん。よく来たね」
また…頭を撫でてくれる。
子ども扱いされてる。
子供だけどさ……。
でも嬉しかったりしちゃうのです…。
「真綾くんも来たんだ?」
伊集院先輩がそう言って、真綾先輩の方に視線をやる。
「まぁ…ね…」
そう……伊集院先輩の視線が真綾先輩に行ってるときだった。
「…毛布忘れちゃった…」
にっこりと、伊集院先輩の方を見て言うと、俺から毛布を強奪する。
「えっ…えっ!?」
伊集院先輩の方を見てる真綾先輩を見てたから、もう自分の手元なんて全然気にしてなくって…。
あっさり毛布が奪われる。
というか…真綾先輩がそんなことするとは思ってなかったからっ。
「真綾先輩っ、何…」
「貸してよ…。俺、友達いないし…。憂くんは伊集院先輩と仲いいから、入れてもらえばいいでしょう?」
って……俺の言葉を制して言う。
友達いるって言ってたのにっ。
うぅん、そんな問題じゃない。
だって、わざとだってわかってるし。
でも…伊集院先輩は…どう思う…?
真綾先輩と俺が毛布を一緒に使えば済む話だもの…。
おそるおそる伊集院先輩の方を見上げた。
「…真綾くん…駄目だろ?憂くんの毛布なんだから…」
小さな子供をしかるように言う。
「……借りるだけだよ…。それとも…会長、嫌なの?憂くんと毛布半分っての」
俺が聞きたかったことを代わりに聞いてくれていた。
「…そうじゃなくって……おかしいだろう?忘れたのは真綾くんなのに、憂くんが半分で真綾くんが毛布1つ使うなんて……。俺のを貸すから…憂くんに返すんだ」
言い聞かすように言うと、伊集院先輩は真綾先輩の持っている俺の毛布に手をかけた。
「で、結局、会長は憂くんに入れてもらうんでしょう??一緒じゃない…?」
一緒のようでもちょっと違うかな…。
なんていうか…俺が伊集院先輩の毛布に入れてもらうってのと、俺が伊集院先輩を入れてあげるってのと…。
俺が入れてあげるってのの方が、なんかいいな。
『入れて』って頼みづらいし…。そう考えていたときだった。
「…俺は…堀早に入れてもらうから…」
伊集院先輩は、呆れたようにそう言って、堀早って人だと思われる先輩の方に軽く了承を得るかのように目をやっていた。

伊集院先輩が、俺のために毛布を取り返そうと、言ってくれたのは嬉しいよ…。
でも…伊集院先輩は、俺と一緒に毛布使いたいとか…思ってくれないのかな…。
俺は、一緒に使いたい…よ…。恥ずかしいけど、そう思っちゃう。
『憂くん、入れてくれる?』そう言って欲しかったな…なんて……。
俺は…全然、半分でも平気…。
自分から、伊集院先輩に『入れて』って言うのは恥ずかしいけど…。
真綾先輩は、自分の筋書き通りに物事がすすまなかったのが不満なのか、少し目を細めて考え込んでいるようだった。

「……堀早先輩……早季が毛布忘れたって。もちろん、部員の面倒は部長のあなたが見ますよね」
少し考え込んでから、にっこりそう言った。
早季って…思うに天文部の部員で、真綾先輩の友達なのだろう。
「…早季は…忘れ物なんてするような奴じゃないけど……まぁ、そうゆうことにしといてやるよ」
ククっと、笑いを堪えて喉を鳴らし、堀早先輩が真綾先輩と俺の間に近寄って、『策士だねぇ』っておもしろがるように言った。
「じゃぁ、俺は早季のとこ、行こうか…」
『行った方がいいよね?』って耳打ちして、堀早先輩はスタスタと行ってしまった。
「…憂くん、俺、毛布借りてもいい?」
「え…ぁ…うん…」
そう言うと、『ほらね。会長には聞いてないからね』って、伊集院先輩に有無を言わせず、逃げるように走り去っていった。
「っ真綾くんっ」
伊集院先輩が呼びとめても無駄だった。
わざわざ追いかけるまでのことは伊集院先輩はしなかった。
「……困ったね、真綾くんは」
苦笑いして、伊集院先輩は、俺に自分の毛布を渡す。
「…俺は、いいよ。寒さには強いからね。毛布なくてももうこの季節だし、平気」
そう言われるけど……
『はい』って…『ありがとうございます』って、言えない。
だって…真綾先輩は、俺と伊集院先輩が一緒に毛布を使うようわざわざ仕組んでくれたんだ。
伊集院先輩が、俺に毛布を譲ってくれたのは嬉しいけど…。
真綾先輩がせっかくくれたチャンスを無駄にしたら…真綾先輩に悪いし、俺も…嫌だしで……。
「……でも…夜中は寒いかも…です…」
受け取った毛布を少しだけ前に差し出して言った。
「……一緒に…使いませんか……」
伊集院先輩の顔も見れず言うと、俺の頭に手を置かれるのがわかる。
その手で俺の頭を撫でると、背の高い先輩は俺の耳元に少し屈んで顔を近づけた。
「……そう言われると…我慢できなくなりそうなんだけどね…」
軽く笑うのが分かった。
「我慢……」
って……?
「…憂くんの理想でいられなくなりそうだけど…」
そう…伊集院先輩自身も、俺が伊集院先輩のことを理想にしてるってのは知っていた。

「…いい…?」
いい…ってのは…
また…手、出されちゃう…?
恥ずかしいけど…俺はそのまま、頷いた。


天体観測の時間中も、はっきりいって星にさほど興味がなっから、どうでもよかったりもした…。
そんなことより、天体観測を終えた後のことを考えてたり…。
「見飽きたら、先に休んでていいよ」
って、堀早先輩が言っていた。
俺は、屋上の隅で、先に毛布に包まって休憩していた。
次第に観測を止めて毛布に包まりながら眠る人も増えてきた。
俺も、毛布の暖かい感触と、涼しく吹く風が心地よくて、眠りかけていた。
「憂くん…寝てる…?」
小さな声…。
その声の主は伊集院先輩。
「…いえ…起きて…ました…」
半分…寝てたけど…。
「起こしちゃった?大丈夫…?」
隣に座る先輩に、俺は自分の毛布をゆっくりとかけた。
というか…半分眠りかけてたから、いちいち行動がのろくなりがちだった。
「ありがとう」
伊集院先輩と同じ毛布で……ドキドキするんだけど、心地よくって…
どうしよう…本当に眠くって…
眠りそう……
頭がカクンって、何度か落ちる。
起きてないと…せっかく伊集院先輩といる、貴重な大切な時間…。
俺の理想でいられなくなりそうなこと…してくれるって…。

「伊集院せんぱ……俺…」
「…眠いみたいだね……憂くんのこと、眠らせてあげたいけどね…。でも本当は、眠らせてくないんだ…」
うん…と、頷くものの、よく意味がわからない。
「ねぇ…俺がさ…手、出しちゃうかもしれないって時でも、憂くんは隣で寝れるんだ…?」
「え…」
だって…安心するんです。
伊集院先輩の傍はあったかくって…

そう考え込んでるときだった。
隣から顔を覗かせて、伊集院先輩が俺の口を口で塞いだ。
「…っん…」
唇を舌で割り開かれ、ゆっくりと唇の裏や、歯茎を嘗め回す。
「っんぅ…んっ…」
「口…開いて…」
一瞬、口を離して、伊集院先輩がそう言った。
「せん…ぱ…っ」
言葉を発するために開いた口に、強く唇を押さえつけるようにして、伊集院先輩が口づけると、そのまま、舌を侵入させて俺の舌を絡め取る。
「ん…っ…んっ…」
口内を這い回る伊集院先輩の舌に応えるかのように、自分からも舌を絡めてみる。
頭が…くらくらした。
眠気とは違う感覚で、気が遠くなりそうになる。

腕を引っ張られ、伊集院先輩と向かい合わせにさせられ、もう片方の手で、後頭部を押さえつけられる。
これじゃぁ…口を離そうとしても離せれないよ…。
「んっ…んぅっ…」
離そうとなんて……しないけどさ……。


「…目…覚めた?」
「……ん……」
口を離されて、ボーっとしたまま、頷いた。
目は…覚めたけど…夢見心地……。

あぁっ!!俺ってば、伊集院先輩の上に乗っかっちゃってるっ!?
慌てて、立ち膝になって伊集院先輩に体重をかけないようにする。
「ごめんなさ……」
「軽いからいいよ」
軽く笑ってそう言った。
「ね…跨いで…」
「…え…」
「俺の事…」
伊集院先輩が『して』と目で訴えるから俺は逆らえず、座り込んだ伊集院先輩の体を跨ぐ。
「…かわいい…」
そう言って、俺の髪の毛を指で絡め取る。
伊集院先輩の手が、股間の方に持ってかれたかと思うと、そのままパジャマ代わりに着ていたジャージのズボンと下着をゆっくりと引き下ろす。
「…っっ…伊集院…先輩…見られ…」
誰かに…見られたら…
屋上ではそれはもうそこら辺で毛布に包まっている人がたくさんだった。
「じゃぁ、後ろから、毛布、羽織ってるといいよ…」
言われるように、ずり落ちている毛布を被って後ろからは見られないようにする。
正面は、伊集院先輩で、そのさらに前はもう屋上の隅だった。

伊集院先輩の手が、シャツの中にもぐりこんでゆっくりと這い回る。
探るようにして胸の突起を見つけると、円を描くようにして執拗にソコを撫でるもんだからゾクっと震えあがっちゃう…。
「はぁっ……んっ…ぁっ…」
それが気持ちよくってフワフワと浮遊感が漂った。
背中に回された手で引き寄せられると、空いた手でシャツを捲し上げられ、そこから覗く乳首を舐め上げられる。
それに連動するかのように、ドクドクと俺自身が熱くなっていくのがわかった。
「ンっ…ぁっ…」
「すごくココ、固く尖っちゃってるね…」
舌で乳首を示すと、乳首とその周りのほんの少しだけ肉のついた部分とを、口に含むかのようにすると、ちゅっって…いやらしい音をたてて吸い上げられる。
「やっ…ぁくっ…」
ビクンと体が仰け反って、ギュっと毛布を掴む手に力が入る。
「…じゃ…自分で拡げれるかな…」
そう言って、毛布を掴んでいた俺の手を片方取ると、指を丹念に舐め上げられて……
「っ…拡げ…?」
『そう…』って言って、伊集院先輩は濡らされた俺の手を俺の背中の方からアナルに持ってかせる。
伊集院先輩に誘われるようにして、そのまま、俺は指を中にゆっくりと入れてしまっていた。
「ぁっ…んぅっ…」
俺が指で中を拡げている間にも伊集院先輩が俺のペニスを手に取って擦り上げる。
「ぁあっ…あっ…せんぱっ…」
「もう少し…静かにしないと、誰か起きちゃうよ」
軽く笑ってそう言うけれど声を殺せない。
それをわかってか、
「口…ふさごうか…」
そう言って、俺のペニスから手を離し、伊集院先輩が立ち上がる。
立ち膝状態の俺の目の前に伊集院先輩のペニスが現れた。
…とか、考えてる隙もほとんどなく、いきなり頬を掴まれて、軽く空いた口の隙間からソレが入り込んできて……
「んぅっ…んんっ…」
「舐めて…濡らしてくれた方が憂くんに負担をかけなくてすむんだよ」
そう言って、頭を撫でてくれる。
俺は伊集院先輩をはやく受け入れれるように、後ろの指を増やしていく。
自分の指だってのに、体が変にビクビクしちゃってた。
もうわけがわからなくなってきて……
自分の唾液で伊集院先輩のペニスがどんどん濡れていく。
それとともに、俺のペニスもいやらしく蜜を垂らしてゆっくりと竿を伝った液体が後ろへの潤滑材となっていた。

「…いい子だね…もう充分濡れたよ」
そう言って、頭にやった手でゆっくりと俺の口から伊集院先輩のペニスが引き抜かれる。
しゃがみこんで俺と同じ目線にあわせると、伊集院先輩は『今日は、自分から入れてみようか』って…。
「…そんな…の…出来な…」
「ゆっくりでいいよ…。俺の上に乗って…」
俺は指を引き抜くと、また座り込んだ伊集院先輩を跨いで、伊集院先輩のペニスを手にとる。
「そ…そのままゆっくり…腰を下ろしながら入れてくんだよ…」
「…は…ぃ…」
入れようと、アナルの入り口まで持ってってはみるものの、伊集院先輩のペニスの亀頭が襞を押しひろげる感覚につい、ソコを締めてしまってなかなか先に進まない。
「…っ…せんぱっ…出来なっ…」
「…ん…なにも泣くことはないよ…。じゃぁね…手伝ってあげるから…」
「……ごめ…なさ…っ」
自然と涙が溢れてた。
だって…伊集院先輩の期待を裏切っちゃうようで……。

伊集院先輩は俺のペニスを取って軽く愛撫しはじめる。
「ぁっ…あっ…せんぱっ…」
「前に…意識を集中させてごらん…。そう、そのまま、後ろはあまり神経質にならないようにして、ゆっくり…」
言われるように、伊集院先輩に愛撫されてるペニスの方に意識を集中させる。
というか、もう無意識にそっちばかりに意識がいく。
指でアナルを押しひろげながらゆっくりと伊集院先輩のペニスを中へと導いていった。
「ぁっあっ…ぅ…ンっ…」
今度は上手くいったようで、先が入ってしまうと後はもう、割とラクだった。
それでもすごい圧迫感がある。
ゆっくりと腰を下ろしながら、どんどんと入り込んで来る異物感が堪らなく変な感じ。
「ひぁっ…あ…ぁっ…」
奥の奥まで入ってってしまい、俺は伊集院先輩の上に完全に乗っかるような体勢になっていた。
「ん…全部入ったね…。動ける?」
頭を撫でて『いい子いい子』してくれる。
出来るかもわからないのに、俺は頷いていた。
言われるがままに、ゆっくりと腰を動かしてみる。
なんともぎこちない動きでその未熟さが恥ずかしくなってくる。
それでも伊集院先輩は『いいよ』って言ってくれるから、俺は一生懸命出し入れを繰り返す。
「ぁっ…あっ…ふぁあっ…せんぱっ…」
「かわいらしい声だね…聞いていたいけど…他の奴らには聞かせたくないな」
苦笑いすると伊集院先輩は俺の腰に手をあてる。
「っ…なっ…」
「…口…手で抑えて…」
「ん…」
頷いたのを確認すると伊集院先輩は、俺を抱くようにさらに引き寄せて、俺の体を揺さぶっていく。
「ぁっ…んぅっ…んっ…んーっ…」
激しく突き上げては退かれ、俺の感じる一番弱いところを擦られ、ビクンと体がしなった。
「はぁっ…んっ…くっ…んっ…んぅっ…はぁ…ぁあンっっ」
もう…すぐにあっさりイかされてしまっていた。


「どんどんと…君の理想から離れていってしまね…」
違う違う…。
「そんなこと…ないです…。理想…です…」
理想って言葉は思いのほかラクに言えてしまう。
本当はもう、『理想』から『好き』に変わってしまってるってわかってるんだけど…。
俺は駄目な人間だから……。
「今日もまた、浮かない顔をしているね…」
心配そうに覗き込んだ。
「…星…とか…伊集院先輩、好きです…か…」
「うん。好きだな」
俺は…好きじゃないんです…。
よく分からないんです…。
伊集院先輩が行くから来ただけの、駄目な人間なんです。
しかも、真綾先輩を悪者みたいにしてしまいました。

伊集院先輩との…貴重な時間がもっと欲しかったのです。

自分の駄目さ加減に涙が溢れた。
「俺…これから星、好きになりますっ」
「え…憂くん、好きじゃなかったの…?…それは…誘って悪かったね…」
違うんです…。
俺は横に首を振る。
「…伊集院先輩と…いたかったんです……」
俺は…伊集院先輩の傍にいられるだけで幸せなのです。
「…ありがとう…」
にっこり笑って、頭をまた撫でてくれた。
「憂くんはいい子だからね…自分を追い詰めすぎだよ。もっと…わがままに生きていいんだよ…」
そう言って、『なにかわがまま言ってごらん』って…。
いきなりは思いつかないものなのです…。
少し考え込んで…
「……7月8日の月曜日…俺、誕生日なんです…。委員会…遅れて行ってもいいですか…?」
そう聞いてみる。
誕生日だから遅刻して会議の時間を減らしたいわけじゃない。
そんな自ら伊集院先輩との時間を減らすようなことはするわけがない。
ただ…後から指導して欲しい…そう…思ってしまった邪な自分がいるのです。
…なに…言ってるんだろう、俺っ
「…っごめんなさっ…いいです、今の聞かなかったことにしてくださいっ」
言ってしまってから、慌てて取り消そうとしても無理である。
「…いいよ…。遅れても…後で指導してあげるからね」
それでも伊集院先輩はそう言ってくれた。
「…ごめんなさ…俺…。やっぱ、伊集院先輩は…いい人ですね…」
ソレに対して軽く笑って、
『憂くんだけだよ』
耳元で囁いた。
甘くてとろけそうな一言だった。
こんな時間が…もっと続けばいいのにな…。



時は金なり……
刻一刻と過ぎていく時間はとても大切なのです。