『啓吾×深敦』
カウンター88000番v
リクエストテーマは、最後、読み終わった後で 照らし合わせてください(笑)




「寒いー…。すっげぇ寒いんですけど」
「……俺だって、寒ぃんだよ」
教壇から俺の机を見下ろすようにしてそう答えるのは英語担当の渡部先生。
俺ら1年4組の担任でもあった。
「暖房、つけようってば」
「つけるとお前、寝るだろ」
「寝ないから。寒くて出来ない」
「……ったく、しゃーねぇな。時間外に暖房つけると、電気代がどうとかで、駄目だっつー規則になってんだぞ…?」

時間外。
そうなんだよなぁ。
こないだの中間テストで、ちょーっとばかし点数が低くって。
英語の補充を受けざる得ない状態に。

他にも数名、俺と同じく補充受けてたやつもいたんだけど、今は俺一人。
みんな与えられた課題を終えて帰っちゃったってわけだ。

「…わかんねぇっての」
聞こえないくらいの小さな声でぼやいてみる。
ホント。
さっぱりだ。
もらったプリントを自力で調べて解けばとりあえず今日はOKなんだけど。
こんなん、出来るくらいなら補充になってねぇって。
調べるのとか、面倒だし。

「あのさー。寮でやって、明日、持ってくるとかじゃ駄目?」
「お前、誰かほかのやつに聞くだろ?」
「……自分でやるってば」
「今、やる気出してとっとと済ませればいいだろって」
…そうなんだけどなぁ。
そりゃ、寮に戻ってやるってのも面倒だけど。
このあと、みんなでボーリングに行く約束しちゃってたりするわけなんだよ。

今日の補充が、プリント1枚解くだけだって聞いて、啓吾とか春耶とか『それなら、すぐ終わるよな』なぁんて言って。
俺が終わり次第、みんなで行くってことになってたんだけど。
全然、終わらない。
とりあえず、先に行ってもらうようにメールして。
俺は、あとから合流するつもりだったんだけど…。
いつ合流できるんだ…。


もう嫌だ。
英語なんて、俺、必要ねぇし。
ずっと日本で暮らすから。
海外行くことになったら英語の出来る友達連れてくから。
だからいいんだよ。

「…まぁ、せっかく付き合ってやってんだから、がんばれって」
でも、そう渡部先生に言われるとな。
がんばらざるえないっつーか。
やっぱ、付き合わせちゃってるんだよなぁ。
俺が終われば先生も終われるわけだし。



暖房つけてからもうどれだけたったか。
やっぱりというかなんというか。
問題はわからないし、気温は心地いいしで、眠気が襲ってくる。

机に肘をついて、ついうたたね状態。


「…やべ…寝ちまった」
渡部先生のその声に、ハっと目が覚める。
俺が寝てしまっていたのと同じように、渡部先生も寝てたのか。
時計を確認すると、8時半…!?
「…あーもう、渡部先生−っ」
「なに? 終わった?」
「っ……終わってねぇけど…。もうこんな時間だよ…」
「…あぁ。お前、問題見てるフリして爆睡してたからな」
「起こしてよ」
気づいてるんならさ。
「…2時間くらいは見守ったんだけどな…。俺もつられた」
つられたとか、そういう問題か?

いまから寮戻っても、確実に課題やれねぇよな…。
やる気しねぇもん。
の前にボーリング行くけど。

「まぁいいや。高ちゃん、それ宿題な」
「…へーい…」
ここでいまからはやれないだろうしな。
時間も時間だし。
なんか、逆にこんな時間だとやらなきゃって気にはなるけど。
「ったくもう、だから暖房は駄目なんだよ。電気代、すげぇだろーな。眠―…。おー? 雪降ってんぞ?」
渡部先生の言葉に、窓の外を見ると、雪。
「ホントだ…。寒そー」
出てく気、減少。
でも、積もったらちょっと遊びたかったりするけど。
「じゃあな。俺は用事があるのでとっとと帰るから。お前も早く帰れよ」
俺の頭をポンっと撫でて、教室を出て行く。
ちゃんと、暖房のスイッチを消していって。
というか。
用事あったのか。
それなのに、俺に付き合ってくれてたわけ?
いい人だよな。
というか、俺、悪いやつだな。
「っありがとうございました」
慌てて、背中に向かってそう声をかける。
渡部先生は振り返って楽しそうに笑って。
俺に手を振った。


にしても、すっげぇ寝てたんだな、俺。
まだ、ボーリングやってたりするんだろうか。

珠葵にでも聞いてみるか?
一番、携帯の着信に気づきそうだもんな。
晃はたぶん、マナーモードのままカバンに入れてるし。

俺は、自分の携帯を取り出すと、珠葵へと電話をかけた。


『深敦くん? もー、2人が来ないからさ、俺、甘々カップルのお邪魔虫状態だよー。2人が来てもなんか、俺だけ一人だけどね』
「悪ぃ…。全然、課題終わんなくって。2人って? 啓吾もいねぇの?」
甘々カップルといえば、晃と春耶のことだろう。
その2人と珠葵を抜けば、あとは啓吾しかいない。
2人が来ないって、俺と啓吾?
『まだ課題やってたの? てっきり啓吾くんと二人で遊んでるのかと思ってたんだけど』
「違うって」
『啓吾くん、深敦くん待って、一緒に来るって言ってたからさぁ。連絡なかった?』
「連絡なんてねぇよ。行き違ったらどうするつもりなんだか」
『だよねぇ。下駄箱とかで待ってたりして。行き違わないように』
下駄箱?
そこならまぁ、絶対、通るしな。
あいつって、馬鹿だから。
一緒に行こうとか、寮で待ってるから終わったら連絡くれとか。
まぁ、あいつなら、寮で待つほど、時間かからないとか思ってんのかもしれないけど。

そういう甘いメールは送れないやつなんだ。
それなのに、変に、待ってくれたりしちゃって。

……ってかかなり、待たせてるよな…?
「あのさ。ホントに俺のこと待つとか言ってたわけ?」
『うん。どうせすぐ終わるだろうし、待ってから行くって。でも、全然2人来ないから、2人で遊んでるのかなーって。まぁ、それならそれで邪魔しちゃうのも悪いし、あえて連絡しなかったんだけど…まだ課題してたんだねぇ』
…まだしてた…というか。
寝ちゃってたんだけどな。
「もうボーリング、終わった?」
『うーん。ボーリングはね。2ゲームやって2人来ないから、とりあえず隣のゲーセンで遊んでるけど』
「そっか…」
『深敦くんは、とりあえず啓吾くんと落ち合いなよ』
「うん…。捜してみる」

啓吾か…。
下駄箱にいんのか…?
さすがにこの時間まで待ってるってこたないだろ。
あ、電話すりゃいいのか。
そう思って、携帯で電話をかけてみるけれど…。
「あぁあもうっ」
思ったとおり、出ないしな。
あいつって、ホント、気づかないことが多いのか。
マナー状態なのか?
なかなか出ないんだよなぁ。

しょうがなく俺は下駄箱へと向かった。
まぁ、啓吾がどうとかじゃなくっても、下駄箱は通るんだけど。

「啓吾―?」
荷物を持って、下駄箱へ。
遠めに啓吾らしき人が見えたから、そう声をかけてみるけれど…。
思えば、こんなに遅くまで課題かかっちまってるし?
馬鹿にされそう。
まだ、解けてねぇのかよとか。
しょうがねーじゃん。
というか、別にこんな時間まで課題が解けなかったわけじゃないし。
寝ちまったからだもん。
それはそれで悪いから、どうにも言えないんだけど。
どう言えばいいかなあ。

啓吾は、下駄箱の俺らのクラスの下あたりに座り込んでいた。
「おーい…」
一応、小声で呼んでみるけど。
寝てる…?

しゃがみこんで啓吾の顔を見てみると、やっぱり目、瞑ってるし。
どうも寝てるくさい。

でも、俺が教室あったかくて寝ちまうのはわかるけど、こんな寒いとこで、寝付くか? 普通。

そういえば。
前、眠ってる啓吾にキスしたことがあったっけ。
くそぉ…。変なこと思い出しちまったじゃんかよ。
無駄にどきどきしてきた。
「…起きろってばっ」
このままじゃ、キスしかねないぞ。
あぁあ、でもこいつ、起きても困るかも。
すっげぇ、寝起き悪いし。
かといって、このままこいつをここに放置しておくわけにもいかねぇしなぁ。

「…しゃぁねえなぁ…」
一人でぼやいてから、靴に履き替えて、啓吾の体を抱え上げる。
「重いんだよ、ばーか」
引きずりながら、寮へと移動。
マジで重…。
しかも雪だよ。
寒―…。
なにやってんだろうな、俺…。


なんとか、部屋までたどり着く。
眠ってる奴って、ホント、運びにくいよな…。
啓吾の部屋は…。
ルームメイト、ちゃんといるかな。
いなかったら、カギねぇし。
啓吾起こしてカギもらうの嫌だし。

俺の部屋でいっかな。
とりあえずは。
「ただいまーっと…」
「あれ? 遊んでくるんじゃなかったっけ? 早いね」
ルームメイトの悠貴先輩だ。
しかも彼女と一緒にベッドの上で。
2人とも、半裸でいかにもな感じだし。
「ずいぶんと、積極的に男、連れ込んでくるんだねぇ、深敦くん」
楽しそうに悠貴先輩の彼女に言われてしまう。
「…そんなんじゃねぇよ」
とりあえず、俺のベッドに寝かして…と。
「まぁいいけどぉ? 深敦くんがいないって言うから今日は自由にここ使うつもりだったのにな」
まぁ、いやみらしい。
「はーい。お邪魔ですみませんー…」
「いいけど。どうせこれから二人で風呂入ろうかって言ってたとこだし」
そう言うと、2人は風呂場の方へ。
仲良しですな、あいかわらず。


にしても。
ドア、開けてます?
わざとらしく声、でかくしてません?
あえぎ声、聞こえてくるんですけど。
やっぱりドキドキしちゃうじゃん?
っつーか、ムラムラ?
あぁ。俺って変態じゃん。
啓吾は啓吾ですやすや眠るし。

寝顔の啓吾ってなんかかわいいんだよなぁ。
そっと、啓吾の唇に指をあてる。

しても…いいかなぁ…?
バレないよな。
こいつ、ホント、起きないやつだし。

「…っ…」
俺が口を重ねて、舌を差し込むと、きまって啓吾は眠ったままでも、舌を絡めてくれる。
「っんっ…ぅん…」
やば…。
かなり気持ちいいかも。
すっげぇ、欲情してきた……って言い方はおかしいのかなぁ。
BGMに喘ぎ声がガンガン聞こえるのが悪いんだよ。
止まんな…。

キスしたまま、自分の股間に手を伸ばす。
駄目だって、わかってるんだけど。
取り出した自分のを直に、撫で上げる。

キスしてるから。
啓吾が目に前にいるから?
ただ、いつも一人でするのとは、全然違う。
「っんぅっ…ンっんっ…」

息苦しくて、口を離すけど。
自分の手はもう止めれない状態。
「っぁっ…んっ…」
なに、声出してんだよ、俺。
だからもう、BGMのせい。
あまってる左手で、つい啓吾の手を取ると、無意識な状態でか、指を絡めてくれる。
「っはぁっ…んっ…くっ…」
やめなきゃって、思うんだけど、こんなん。
啓吾だって、いくら寝起き悪いとはいえ、ずっと寝てるわけじゃないし。
起きるかもしれないのに。
「っんーっ…」
つい、左手にも力が入って、爪を立ててしまう。
「っ…なんやん…」
啓吾が、まぶしそうに、俺を見上げるのがわかった。
「っあっ…」
俺は、慌てて啓吾から飛びのいて。

寝ぼけてるのか、俺が、ズボンからブツを出してたのは視界に入らなかったようで。
セーフ…。

にしても、あいかわらず、喘ぎ声が、風呂場の方から聞こえてくる。
啓吾はゆっくり体を起こして俺を見た。
「…深敦の部屋…?」
「うん…。お前、寝てたから…」
「そっか。サンキューな…。もうちょっとここで寝てていい…?」
そう言われれば、もちろんいいんだけど。
…違うだろ?
流れ的に。
俺のベッドに啓吾がいて。
俺も、そのすぐそばにいるのに。

ここはほら…。
普通さぁ、付き合ってるんだし。
そりゃ、眠いのはわかるけど。

ちょっとむかついた。
けど、そんなにやりたがってる自分をさらけ出すのもいやだし。
「…いいけど」
そうとだけ言って、俺はベッドから降りた。

自分は中途半端に消化不良だし。
啓吾は、すぐに爆睡状態だし。
どうせ、起きても、いまのこと覚えてるかもわからない。
そういうやつだから。
今度は、自分のベッドにもたれかかって、半立ち状態の自分のをそっと掴む。
「っんっ…」
もういいよ。

先輩たちも、実はいい人だから、気を使ってくれて、長時間、風呂場の方から出ないでいてくれるだろうし。
啓吾に見られたら見られたで、それは構わない。
手を出されてもかまわないし。

それよりも、俺の体がもう我慢出来ないって感じだからな…。
少し、惨めな気がしないでもないけど、何度も擦りあげる。
「っんっ…ぅんんっ…くっ」
馬鹿だよ、もう。
啓吾め。
早く、起きて気づいて、からかって。
手、出せばいいのに。
このままじゃ、俺、1人でイっちゃうじゃんか。
「ぁっ…んくっ…ぅんっ…はぁっ…」
止まんないってば。
もうだめだってのに。
すやすや寝てんじゃねぇっての。
「ばっか…ぁっあっ…んっ…んーーっ」

あーあ。
イっちゃって。
体はすっきりするものの、心はもやもやだよ。
馬鹿啓吾め。
ずっとずっと眠っちまえ。



9時か…。
いまからボーリング場行くと9時10分くらいか。
行こっと。
啓吾はそのまま、寝ちゃえ。

俺はカバンを持って、ドアに手をかける。
が、やっぱり少しだけ気になる。
俺を待っててくれたやつを置いてくのもな。

「あーもう」
しょうがなく、啓吾に布団をかけてやって。
「啓吾―。俺、ボーリング場、行くから」
そう声をかけると、
「ん…いってらっしゃい…」
とは答えてくれるが…。
絶対、無意識だ。
覚えてないに決まってる。
あとで、夢だと思ったとか言うだろう。

だめだ。
心苦しくて行けそうにない。
「だーもうっ、馬鹿、起きろっ。いまから行くぞ、おい」
大きく体を揺らしまくって無理に起こす。
「…ん…なんやん…」
「ボーリング場、行くっつってんの」
「…あぁ。俺、お前待ってたんだけど」
「だから、終わったから行くぞっつってんの」
啓吾が自分の携帯で時間を確かめる。
「もう9時やん。いつまでかかってるん」
「こんな時間までかかってねぇよ。お前、寝てたし」
「あぁ…悪ぃ」
啓吾が寝てたせいでこんな遅い時間になっちゃったとか思ったかな。
それは違う。
だけど、それをバラすのもな。
実際、30分は啓吾が寝てたせいでロスったし。

たぶん、もう動きたくないんだろうけど、俺に付き合ってか、啓吾がのろのろ起き上がる。
俺のあとをついてくるようにして、啓吾が少し遅れた速度で。
2人で外へと出た。


「おー…」
雪。
別に吹雪いてるってわけじゃないけれど。
ちょっと積もってる。
視界悪いな。
俺は下を見ながら、雪を踏みつつ歩いてく。
明日はもっと積もるかなー。
手袋してきてよかった。
完全防備だぜ。
寒くなんてないもんな。

「深敦―…」
後ろからそう呼ぶ声。
啓吾だ。
振り返ると、5メートルくらいは後ろ。
「遅いなー、お前」
「…俺、帰るわ」
そう言う声が響く。
「…は…?」
暗くてよく見えないけど。
「何言ってんだよ」
俺が足を止めて啓吾が追いついてくるのを待つけれど、啓吾は俺の方に来ようとしないし。
俺から少しだけ近づく。
「…悪ぃな。ちょっと、寝る…。水城たちによろしく」
そう言うと、俺が啓吾の近くに行く前に、啓吾が背を向けた。
「なんだよ、それっ」
付き合い悪すぎ。
俺、一人になっちまうって、わかってるくせに。
そりゃ、ボーリング場ついたらみんないるけど。

いくら寝起きが悪いからって、そんなの。
散々、待たせちまったけどさ。
それは悪いと思うけど。

「…馬鹿…。知らない」
一人でそうつぶやいてから、俺はまた、進行方向へと体を向けた。