『啓吾×深敦』
カウンター毒樹園4000番v
リクエストテーマは、最後、読み終わった後で 照らし合わせてください(笑)
設定⇒深敦2年生です






 プールについて。
「おー。高岡深敦じゃーん。俺の彼女の友達の弟の彼女じゃん?」
 …なにを遠まわしに言ってるんだ、この人は。
『俺の彼女の友達の弟の彼女』だから、俺から言うと、
「俺の彼氏の兄の友達の彼氏…か」
 わかりにく…。
 ってか、わからん。
 俺の彼氏が啓吾で。
 啓吾の兄が優斗で。
 優斗の友達の彼氏か。
「…桐生先生、誰と付き合ってるわけ?」
「卒業するまでは一応、隠してたしなー。工藤雪之丞っすよ」
 そう教えてくれる。
 工藤先輩といえば、今年卒業した応援団の団長。
 美人でかっこよくって、結構あこがれてる人もいたと思う。
 その先輩と桐生先生が…?
「うそだろ」
「ほんと」
「うそだって」
「…おいおいおい、これでも一応、俺、モテるんですけど?」
 そりゃ、俺も好きな先生だけど?
 かっこいいし、おもしろいし。
「だけど、工藤先輩はさぁ…」
「真面目に見えて淫乱ですから」
「イメージ崩すようなこと、言わないでくださいよ」
「いや、イメージ崩れるっつったらさ。雪之はまぁいいんだけど、智巳ちゃんの彼女だろ。一度、居合
わせたとき、すごかったっての」
 智巳ちゃんって、智巳先生か。
 桐生先生と同じ数学教師で、どうやらこの2人、とっても仲良しらしいけど。
「居合わせたんだ?」
「もうSM状態。あのお堅い委員長様が、智巳ちゃんの足とか跪いて舐めてるわけよ? ゾクゾクした
ね」
 うわ…。
「…すごいっすね」
 智巳先生の彼女が元委員長だってのは知ってたけど。
 すっごい堅くて真面目な先輩なのに。
 もうホント、人って見た目じゃわかんねぇよな。
 中には見た目どおりのやつもいるけど。
 っつーか、それやらせる智巳先生もすげぇよ…。
 もしかしてもしかしたら、委員長が勝手にやりだしたかもしれないけど。
 性欲は、人柄さえも変えてしまうもんなんだよ、きっと。

 
「……工藤先輩も大変っすね…」
「おい…」


 去年まで、水泳部の顧問だった先生は、転勤してしまったから、今年からは経験のある桐生先生が顧
問になった。
 経験あるだけあって、これがまぁ意外とちゃんと教えてくれたりするわけだよ。
 真面目な生徒には真面目に対応するし。
 俺は大好きだな、こういう雰囲気の部活。


「ってか、桐生先生って、今年、1年担当だっけ?」
 前までは4年生担当の数学教師だったから。4年生が卒業した今、次は1年になるのだろう。
「そうそう。もう1年って初々しくてかわいいのな。やばいね」
 やばいってあんたおい。
 でも、初々しいのもいまのうちだけかもしれないよな。
「…1年の中で、なんか先輩が人気なのとか知ってますか?」
 つい無駄に聞いてしまう。
 俺ってミーハーだな。ミーハーって言い方も古いけど。
「あー…。なんか今年はすげぇよな。ミーハーな子が多いっつーか。そういう雰囲気の学年だよな」
 この人も使っちゃってるよ、ミーハーって。
 なんかほかにたとえようがないよな。今年の1年。俺もだけど。
 なんつーかもう、ミーハーなんだよ。
 意味わからんが、やっぱり先輩人気はあるのだろう。
「お宅の彼氏さんも、大人気じゃありませんか」
 からかうわけでもなくそう言ってくる。
「…らしいね。さっき知ったんだけど」
「…もうひとつ、教えとくと、おまえもそれなりに人気だけどな」
 そう言って、俺の頭をポンっとたたいた。
「は? 冗談…」
「冗談はよしこさんとか昔言わなかった?」
「…言ってねぇよ。時代錯誤だろ」
「……冷たいねー。ま、そういう対応は智巳ちゃんで慣れてるけどさ。お前、目立つじゃん。金髪で」
 金髪って言われても。
 1年の初めのころは、俺だけだったけど、いまとなってはそれなりに明るい色のやつもいるし。
「目立つか?」
「自分じゃわかんねぇかもしんねぇけど。よし、じゃあ俺が教えてやろう。お前の人気の真髄を」
 大丈夫か、この人。
「…うかれてねぇ?」
「だって、1年、かわいいから。少しは味見したいし」
 そう。
 今日から、水泳部はプール開き。
 だからってなぁ。
 かなりうかれてると思うんですけど。
 まぁそれはさておき。
「で。真髄って?」
「…啓吾が人気なのはわかる?」
 そりゃ、一応、かっこいいし、勉強できるし、運動できるし。
 まぁ納得がいく。
「OKです」
「で、その彼女だからって、七光りだとかそういうわけじゃないから。そこんとこはまずよろしくな」
「了解」
 そんな七光り、むかつくしな。
「お前、その両極端な位置だから」
 両極端…?
「…は?」
「長身、黒髪、真面目そうで眼鏡、スポーツ万能、勉強ばっちり」
 啓吾のことだろ?
「…そんなイメージなわけ? 理解は出来るけど。俺、初めて会ったときとか、サドな感じしかしなか
ったけど」
 真面目そうか…? 実際、勉強は出来るやつだけど。
「で、お前な。ちっこくて、金髪、視力だけはやたらいくて、勉強が、だめ」
「…すっげぇ、嫌」
 反論させていただきますよ、ここは。
「俺の身長は平均的だし、スポーツだって、それなりに…出来るし、泳ぐのだったら啓吾より速ぇんだ
よ、たぶん」
「うーん。両極端は言いすぎだけど、なんつーか1年生のイメージだからな。ファンの層が違うんだよ。
まぁ言うなら、どっち派? って言う代表者がお前と啓吾みたいな?」
 わかりにく。
「啓吾はかっこいいなってあこがれるタイプで、お前はかわいがりたいタイプ。つまりネコ。受」
 ズバズバと。
 サドだろ、この先生。だんだんと楽しそうになってきてやがる。

「ま、もうしばらくしたら、お前のイメージも変わるだろ。意外と、スポーツ出来んじゃん? みたい
に。それに、お前が完全に、受側タイプではないからな。そういうのはもっと女の子っぽいタイプの子
だし。だからこそ、お前、男心変にくすぐるっつーか、やばい奴に好かれやすいんだろうけど」
 ドジっぽいイメージなのか、俺は。
 でもって、なんだそれは。
 うれしくないけど、的確な指摘かもしれない。

「っつーわけで。プール開きにつき、俺も解禁だから。お前も早く着替えてこいよ」
 解禁って…。
 桐生先生は1年の方へと寄っていく。
 あぁぁああ、工藤先輩が卒業したから自由ですってか。
 

 そんなことより。
 俺もそれなりに人気があったのか。
 まぁ、悪い気はしない。
 思い起こせば、啓吾みたいにファンっぽい子がついてるわけではないけど、いろんな部活、行きまく
ってるからそれなりにたくさんの後輩とは仲良しだけど。


 更衣室へと向かうと珠葵の姿。
「あ、深敦くん。さっき大輔がメールで啓吾くんの彼女って誰か聞いてきてさ。しかも深敦くんが俺に
聞けって言ったらしいじゃん? これは言ってよかったの?」
 大輔も行動が早いな。
「別にいいけど、口止め、軽くしといてな」
「りょうかーい。啓吾くんが深敦くんにベタ惚れなんだよっと」
「…変なメールは送るなよ…」
 俺が啓吾にベタ惚れって送られるよりはだいぶいいけど。
「了解☆」



 
 
 
 
 
 そんなこんなで、1日が過ぎて。
 火曜日。
 今日は大輔と約束したから、体育館へ行く日だ。
 なんつーか、啓吾見に行くとか、すっげぇ恥ずかしいんだけど。
 ま、大輔の付き添いってことでいっか。
 しかも、いい具合に雨降ってるから泳ぐ気分も減少だしな。
 
 
 こっそり見るだけだし。
 
 体育館で待ち合わせなんだけど、俺が大輔より先に着くのもなんかやだし。
 少し教室で時間つぶしてから行くかな。
 
「珠葵、今日もここで宿題やってく?」
「うん。そのつもりー。あ、深敦くん、今日はどこ行く?」
「あー、昨日、大輔と約束してさ。体育館にちょっと…」
「え、体育館? 俺も行きたい。行っていいかなぁ?」
 珠葵ってこう首かしげながら聞くのとか、すっげぇかわいいよなー。
 って、んなこと考えてる場合じゃない。
「いいよ。行こう。いくら大輔がいるとはいえさ、一人であそこまで行くのもなんだかなって思ってた
とこだし」
 珠葵がいるなら、心強いしな。

 俺は、珠葵と一緒に宿題を始める。

「じゃあな」
 啓吾が、俺らに声をかけて教室を出て行く。
 またあとで再会するけどな。
 珠葵はそれを知らないだろうから、今、指摘はしないんだろう。
 俺も、なんとなく恥ずかしいから、黙っておくことにした。
 

 晃と春耶はあいかわらず、2人でなんかトークしてっから、そっとしておこう。


「終わったー♪15分。なかなかいい記録だね。深敦くんは?」
 …速ぇな、珠葵…。さすが、普段からスピーディに宿題済ませてるだけのことあるな。
「…あと少しー…。もうちょっと待って」
「うん。待つよー。ってか、携帯、さっき光ってたよ」
 学校では、マナーモードでバイブも切ってたから、気づかなかった。
 大輔かな。
 
 確認するとやっぱり大輔だ。
「体育館、来れそうですかーって。大輔だ」
 俺は、もう少ししたら行くとメールを返し、宿題の続きに取り掛かった。



 結局、珠葵よりも10分ほど、余分に時間をかけて、宿題を終わらせて。
 その後、体育館へと向かった。


「あ、深敦せんぱーい」
 大輔だ。
 …あんま大きな声で呼ばれると、啓吾にすぐにでもばれそうで痛いんですけど。
 案の定、啓吾が一瞬、こっちをチラっと見るのがわかった。
 だけれど、すぐさま視線を元に戻す。
 そりゃ、練習中、余所見なんかしてられないだろう。

 でも、確実に気づかれたのは確かだ。
 少しだけ、バレーコートとは離れた位置。
 大輔に合わせて腰を下ろす。

 っつーか、1年の視線、突き刺さるんですけど。
「…おい、大輔…」
 と、俺が沈黙に耐え切れずなにか話そうとしたときだった。
「珠葵先輩と深敦先輩ですよねっ?」
 一人の子が、代表者のように聞いてくる。
 きょとんとしてしまう俺をおいて、珠葵が、
「そうだけど?」
 また、首をかしげてそう答える。
「あ、やっぱりっ。俺、珠葵先輩の写真持ってて…。直接は初めてなんですけど、やっぱりかわいいで
すね」
 …って、めちゃくちゃ引くんですけど。
 ここ、男子校だよ? おい。
 まあ、珠葵はかわいーけどさー。
 写真部でモデルになってるけどさ。
「あはは、ありがとー」
 引いるかどうかはわかんねぇけど、珠葵は笑顔でそう答える。
 珠葵の場合は、引いてないかもな。
 ってか、俺の名前も知られてなかったか?
 そう疑問に思って顔を向ける。
「っ…深敦先輩…お噂はかねがね…」
 どんな噂だよ、おい…。
「なに、聞いてるわけ?」
「入学当初から金髪で、男らしいんだけどなぜかかわいくて、すごく人気があるって…」
 だれだ、その発信源は。
「でも、噂どおり、かわいい人ですね」
「なっ…かわいーとか言ってんじゃねぇよ」
 俺は珠葵みたいにありがとーなんて言わないからな。
 そりゃ、好意を持たれるのはありがたいことだけど。

 そんなやり取りがしばらく続いて。
 やっと落ち着いて、大輔と珠葵と俺だけに。

と、大輔が口を開いた。
「…深敦先輩だったんですねー」
 それだけで伝わる。
 啓吾の彼女のことだろう。
「……似合わないとか思ってんだろ」
 つい批判的になっちまう自分もなんか嫌だけどな。
「そんなこと思ってませんよ。お似合いです。深敦先輩、人気あるんですよー?」
 そうは言われてもな。
 散々、啓吾と自分が合わないんじゃないかって思ったことあるし。
 割り切ってるけど、やっぱりふとした瞬間にさ、考えることもあるわけだよ。
 
 テスト後とか。
 啓吾がかっこよく思える瞬間に、自分の欠点が目立つ気がする。

「でもでも、啓吾先輩、深敦先輩に見られてると、やっぱり緊張とか意識とかしちゃうんですかねー」
 バレー部内の練習試合を眺めながら、大輔がそう言う。
「…なんで?」
「だって、好きな人に見られてると、緊張しません? ま、余計がんばれるからいいかもしれないです
けどね」
 俺だったら。
 緊張するよなー…。
 啓吾もしてたりするのかな。
 
 にしても、やっぱり、助っ人に選ばれただけあって、すっげぇ上手いじゃん…。
 かっこいいよなー…。
 ってのは、なんつーか、同じ男として、うらやましいって気持ちもある。
 背、高いし、運動も勉強も出来て、顔だっていいし、性格も、楽しませてくれるし、まぁいいやつだ
し。
 俺が、啓吾を好きだからってわけじゃなくって、一般的に誰が見ても、すごいいい男なんだろうなっ
て俺は思う。
 ちぇ…。

 
 次の日、啓吾はこれといって、俺と珠葵が体育館に行った事に関しては触れてこなかった。
 俺も、なんか恥ずかしいから、あえて話題に出そうとは思わないし。
 珠葵も話題には出さなかったけれど、もしかしたら、俺がいない間に啓吾とそういう話をしたかもし
れない。
 ま、俺がいるときにはしてなかった。