自分のモノを引き抜くと、俺はポケットに入れておいたローターを尋臣の手に握らせた。
「ん……」
「痴漢で感じちゃうようなエッチな尋臣くんには、我慢ってもんを覚えてもらわないと?」
 嫌な予感でもしたのか、振り返って俺を見る尋臣の目は、かなり動揺して見える。
「が、我慢ならもうしましたよね? 智巳に助けて貰った後……智巳は触ってくれなくて……」
「それは尋臣が我慢したんじゃなくて、俺が約束守っただけなんだけど? 結局、射精してたし。もう4回も出しちゃった尋臣くんなら、さすがに玩具くらい我慢できるよな? ただの無機物だし? だいたいなんか突っ込んでねぇと、俺の精液零れんだろ」
「う……その……動かさないで、くれますか?」
「お前次第かな。早く、入れるとこ見せて欲しいんだけど」
 尋臣は、少し迷っているようだったが、待っていると俺に尻を向けたまま、ローターの先を窄まりに押し当てた。
「ん……あ……」
 半分ほど押し込まれたローターが、ずるりと中に呑み込まれていく。
「んぅ、んんん……!」
「我慢する自信ねぇなら根元縛っとくけど」
「はぁ……やぁ……」
「そ。じゃあちゃんと我慢しろよ」
 頷くだけで、壁に手を着いたままの尋臣の身なりを整えてやる。
 床に放たれた精液を掃除した後、ドアに手をかけた。
「お前、先行けよ。後ろから見てるから。駐車場な」
「ん……」
 尋臣は、少し戸惑うように視線をさ迷わせていたけれど、俺の言う通り歩き出す。
 ゆっくりした速度で、ぎこちなく。
 動いていないとはいえ、ローターを入れたまま歩くなんて、尋臣にとっては初めてのこと。
 おそらくもう生徒は残っていないだろうけど、会わないとは限らない。
 俺がついて来ているか確認するように、尋臣は何度もこちらを振り返った。
「見てるよ」
「ん……」
 尋臣と俺が階段を降りたところで、少し先に柊の姿を確認する。
 柊は俺を見て、なにか悟ったらしく、わかりやすく口元を緩めた。
「お疲れ。尋臣まだ残ってたんだ?」
 柊に声をかけられて、尋臣はやむを得ず足を止める。
「えっと、はい……」
 取り繕う尋臣の横に並んで、俺はさりげなく腰に手を這わす。
「……ん」
「体調良くないの? ぼんやりしちゃってるね」
「あ、いえ……大丈夫です」
「そう? じゃあその顔は、かわいがられてる顔かな……?」
 尋臣の体がわずかに跳ね上がる。
「なに、言って……」
 腰に回していた手で尻を軽く撫でてやると、尋臣は戸惑うように俺を見た。
「あの……」
「文化祭で疲れたみたい」
 なにも言えなくなっている尋臣に変わって応える。
「ふぅん。お大事にね」
 柊は笑みを漏らしながら、俺達の横を通り過ぎていく。
 尋臣の顔を覗き込むと、思った以上にエロい表情になっていた。
「なに柊にエロい顔見せてんの」
「……だって」
「玩具が入ってるから?」
「……ん……智巳が触る、から……」
「そう」
 一応、言葉を選んでいるらしい。
 
 尋臣はぼんやりしたまま、それでもなんとか駐車場へと辿り着く。
 助手席でシートベルトを締めた尋臣を確認すると、俺は尋臣のポケットからローターのスイッチを取り出した。
「電源入れるけど。イくなよ」
「え……あっ……んぅんんっ!」
 戸惑う尋臣を無視する形で電源を入れる。
 その後、俺はエンジンをかけて車を動かした。
「あの……あっ……俺……こんな、されたら……我慢できな……」
「簡単に我慢できることさせても意味ねぇだろ。ちゃんとお前がうちまで我慢出来たら、イかせてやる。つーか、俺じゃねぇんだから、我慢しろ?」
「はぁ……ん……んぅ……」
 こんな玩具で感じて貰っちゃ困る。
 こんなんで感じているようじゃ、痴漢にだってすぐ流される。
 実際、流されかけてたし。
 もしあのとき、俺があのタイミングで行かなかったら、確実にヤられていただろう。
 もちろん、相手の方が悪いのは百も承知だが。

 その後、とくに会話もなく10分ほど走らせる。
 尋臣は、隣で常に熱っぽい吐息を漏らしていた。
 心地よさそうに目を蕩けさせている。
「はぁ……ぁ……ん……はぁ……」
「……気持ちいい?」
 俺が話しかけてやると、ぼんやりしていた尋臣の体がピクリと反応した。
「ん……はぁ……ぁ……はい……」
 コクコク頷きながら、尋臣は俺の指をぎゅっと掴む。
「ぁ……ん……はぁ……きもちぃ……あっ……ん」
 俺は尋臣の視線を感じながら、片手で運転を続ける。
 だが俺が話しかけたせいで、尋臣の中に甘えた感情が生まれてしまったらしい。
「はぁ……智巳……あっ……あっ、イッて、いいですか……」
 さっきまで我慢してたくせに。
 本当は、我慢出来るくせに。
「なんで?」
「はぁっ……イキたい……です……あっ……んっ」
 熱っぽく喘ぎながら、尋臣は、いやらしく俺の指に自分の指を絡ませる。
 素直に言えばどうにかなると思っているのかもしれない。
 これまで、だいたいどうにかしてやっていたため、たぶん俺にも原因はあるんだろうけれど。
「家まで我慢っつったろ」
「ん……あっ……でもっ」
「イッたらもう今日はセックスしないから」
 そう告げると、尋臣はひとつ息を飲むようにして、俺の左手をぎゅっと掴み直した。
「や……あっ……やぁ……」
「したい? セックス」
「はぁっ……したい……あっ……セックス、したい、れす」
 だいぶ頭が働いていないようで、尋臣は普段なら口にしないようなことを口にする。
「それじゃあ我慢な。あと5分くらいか」
 俺の手に爪を立てながら、尋臣は頷くように俯いた。
 
 それからというもの、尋臣はなんとか耐えていた。
 駐車場に車を停め、運転席から降りると、外から助手席のドアを開け尋臣を降ろさせる。
「ん……智巳……んぅ……んっ!」
「イきそう?」
 尋臣は、俺に縋りつきながら、ゆっくり頷いた。
「ん……あとちょっとな」
「はぁ……はぃ……あっ、ふぁっ……歩けな……」
 甘える尋臣を抱きかかえ、自室に向かう。
 耳元で甘い声を漏らされ、すぐにでもハメたい衝動にかられるが、俺はなんとか感情を押し殺した。

 部屋に辿り着くなり、そのまま尋臣をベッドに降ろす。
「靴、脱がせるぞ」
「んっ……はぁっ……あ、ん……あっ」
 脱がせた靴を玄関に持って行き、ベッドに戻る。
 尋臣は自らベルトを外し、自身の性器に指を絡めていた。
「なにしてんの」
「んっ……はぁっ……あんぅっ……いくっ……」
「その前に、玩具取り出すから」
「んぅ、やぁっ……智巳っ……もぉっ、我慢した……のにぃ」
「なに。ずっと玩具入れてたいの?」
「ちが……あっ……あっ、でも……あぁ、んっ」
 尋臣の言葉を流し、ズボンと下着を引き抜く。
 足を開かせ膝を立たせると、ローターのコードをゆっくり引っ張った。
「ひぁっ! あんっ、あっ……やぁっ! やぁああっ!」
 ローターが抜け落ちると同時に、尋臣は我慢しきれず射精してしまう。
「はぁっ……ん……」
「一応確認なんだけど。お前、痴漢に乳首弄られて、オナニー見せつけたんだよな?」
 イッた直後であまり頭が働いていないようだが、尋臣は呼吸を整えながら口を開く。
「見せつけたわけじゃ……その……焦らされて……」
「焦らされたってなに? それって『して欲しかった人』の言い分じゃねぇ?」
 尋臣は、自分の言葉の意味に気づいたらしく、申し訳なさそうに視線を逸らした。