「……そういえばさ、日曜日って予定あんの?」
 俺の部屋まで辞書を借りに来た水城が、帰り際、振り返り確認するよう俺に聞く。
「なにその聞き方。ある? じゃなくてあんの? なんだ? 誰かに聞いた?」
「直接的には聞いてねぇけど」
 日曜日か。
 靜先輩の作ってくれたゲームの中では、日曜日、中華の達人が料理を振舞うことになっている。
 深敦が取ってきてくれた食材でな。
それ通りに深敦が動いてくれるのなら、日曜日、来るかもしんねぇ。
 ゲームはゲーム、現実とは別って考えてるのなら、関係ないんだけど。
 そういえば、俺って金曜日までにクリアうんぬんは伝えたけれど、日曜日空けておけってのは言い忘れてたような。
 まあ、予定があったとしても丸一日いないってことは少ないか。
 どっちにしろ、わかんねぇ。
「わかんねぇけど、とりあえず空けておく」
「なにそれ」
「一応。深敦と会うかもしんねぇ」
「ふーん、やっぱりそうなんだ。たまにはみんなで遊びに行こうかって話してたんだけど深敦がさ。たぶん空いてないとかわけのわかんねぇこと言うから」
 やっぱり深敦も考えてくれてんだな。
「で、たぶん空いてないの原因は俺だって予測したわけ?」
「そ。でもなんでお前ら2人とも、わかんねぇとかたぶんとかなんだよ」
「ちゃんとした約束してねぇし。けど、来る気がするから待ってるってこと」
 水城は納得したのか、軽く頷いてくれていた。
「あ、泰時のことさ。最近仲いいんだなーって聞いたんだけど。話が合うとか、同じバカ仲間みたく言ってたよ」
 バカ仲間。
 バカなことが出来る仲間ってことか?
「じゃ、恋愛感情とかは無さそうなんだ?」
「それは無さそう。全然、お前のこと話すときと泰時のこと話すときとじゃ態度違ぇし」
 俺のことと泰時のこと。
「っつーか、俺のこととか話すのかよ」
「ま、些細な話題だけどね。啓吾にノート借りたとかさ。じゃ、そろそろ戻るから」
 部屋でアキでも待ってんのかな。
「ああ。またな」
 俺は水城を見送って、一人またベッドに寝転がった。

 今日、体育の時間に、少しだけだが話が出来て、だいぶ落ち着けた。
 泰時のことはただの友達なんだろうし、気にするほどじゃないんだろう。
 今日、誰と遊んでるのかってのは気になったりもするけれど。

いちいち指摘すんのってたぶんうざいし。
 俺のために日曜日空けててくれるのならそれでいい。
 そうだろ。



 あいかわらず、俺と深敦が学校で話す機会は少ない。
 それとは逆に深敦と泰時はたくさん話しているようだった。
 俺は水城とつるむことが多いしな。 
 よくはないが、現状維持。
 そんな感じだろう。

 金曜日の夜になって、深敦の方から俺の部屋に来た。
 めずらしいな。
「どうした?」
 ドアにつったったままの深敦の方へ行きそう聞いてやる。
「あのさ。一応、ゲームクリアできたんだけど」
「……ああ」
「お前、金曜日までにクリアしろって」
 とはいえ普通のゲームだし。
 現実でそれを再現だなんて、思ってもいないだろ。
 でも、水城には日曜日たぶん空いてないって言ってくれてたらしいし。
 それって俺のためだよな。
直接誘うか。
「深敦、日曜日来れる?」
「……うん」
「じゃあ、来いよ」
「昼でいい?」
「いいよ」
「あのさ。……お前作れるの?」
「なにが」
「……冷やし中華」
 あまり気にしてなかったけど、なんか俺が手料理作って振舞うってことだろ。
 いや、元からわかってたけど、妙な感じだな。
「食材があればな」
「……他のやつも呼ぶの?」
「お前が呼びたいなら呼んでもいいけど。たまには2人でよくね?」
 深敦は頷いて、俯いたまま、顔をあげないもんだから気になって覗き込む。
「深敦?」
「ばっか、見んなよ」
 少し顔が赤くて、恥ずかしいのだとわかった。  

 俺がただ、お前パシらせて冷やし中華作るってだけなのにすっげぇ意識してくれてるわけ?
 無性にかわいくて、思わず少し強引に顔を上げさせると、そのまま口を重ねた。
 こいつの舌って、なんか熱いんだよな。
 体温高いのか。
 軽く吸い上げてやりながら体を抱くと、深敦の方もそっと俺の背中に手を回す。
「ん……深敦くん、今日はいやに素直じゃん?」
「っ…違ぇよ」
 そう言いつつも、俺の背中に回された手はそのままなんですけど。
「なんかあった?」
「ねぇけど。……啓吾、こないだの体育んとき縛るとか言ってたけど、あんま変わってねぇし」
「縛って欲しいわけ?」
「違ぇけど……っ」
 束縛しちゃうかもって言って。
 それでも構わないって言われた時点で嬉しかったもんだから。
 結局、束縛する気ってのは少し薄れてた。
 けれど、深敦からしたら束縛するよって言われたのにも関わらず放置じゃ、気になるってことか?

「じゃあ、久しぶりに縛らせてもらおうか?」
「っホントに縛るとかじゃ……」
「どっちもイイって言ってたもんな」
「いいけど、それはしょうがなくで」
「じゃあ、しょうがなく今回も、受け入れろよ」
 ドアの鍵を閉め、深敦の体を強引にベッドまで連れて行き押し倒す。
「っなんでイキナリ…っ」
 上から見下ろすと少し不安そうな面持ちだった。
「……深敦。どっち? 縛ってもいいわけ?」
「っ……駄目ではねぇけど。縛って楽しいかよ」
「あぁ、すっげぇ楽しい」
「……ホントかよ」

 付き合いだした手前、俺に抵抗することに抵抗があるのか。
 深敦はしょうがなくながらも、手首にコードを巻かれてくれていた。
「縛ったままどっか行くとかは無しだからな」
「はいはい」
 両手首を縛りベッドの端へと縛り付け固定する。

「縛るのって何が楽しいんだよ」
「なんで」
「なんでって。……わかんねぇし」
 なにが楽しいかって?
 だって、お前のことこういう風に縛れるのって俺だけなんだろとか。
 そういうこといろいろ考えちゃうわけ。
「深敦は? 楽しくね?」
「楽しくはねぇよ」
「楽しくねぇけど、感じるの?」
 そっとすでに勃ち上がっている深敦の股間に触れると、慌てるよう顔を逸らされた。
「それは、溜まってるからっ」
 なにこいつ、堂々と溜まってるとか言ってんだろ。
「溜まってんだ? だから、抜いて欲しくてココに来て甘えてくれたわけ?」
「甘えてねぇよっ」
「俺に抱きついて離れなかったくせに」
「っだからっ…それは」
「いいよ。たっぷりしてやるから」
 さっそくズボンと下着を引き摺り下ろして、股間のモノへと口付ける。
 深敦は体をビクつかせ、それでも俺の行動を見守っているようだった。
 舌を絡めていくと次第にソレは硬さを増す。
「っんっ……ぅんっ!」
 膝を立て足を開いてはいやらしく腰を浮かせて。
 誘ってるとしか思えない。
 俺の口の中に、押し込んできやがる。
「ぁっ…啓吾…っんっ…んっ」
 口を離して、唾液を指に絡め取りゆっくりと指を後ろに挿入していくと体を大きくビクつかせ、泣きそうな顔で俺を見た。
「ぁあっ…ひぁあっ…んぅっ!!」
「んー…なに?」
後ろを弄りながら、前も空いた手で擦ってやると、嫌だと言うように顔を横に振った。
「すげぇ、音。溜まってんなら先1回、イけよ」
「はぁっあっぁあっ…んっ…やっだ、啓吾っ」
「イきたくねぇの? もうイきそうだろ? まだ始めたばっかなのに」
「やっ、ぃくっ…あっぁあっ…やっ…あぁああっっ!!!」

 一度イってしまい少しぐったりする深敦をよそに、もう1本指を増やしていく。
「なっ! ぁっあっ…啓吾っ」
 広げながら前立腺付近を押さえてやると、すぐにまた深敦の股間が勃ちあがった。

「元気だねぇ、深敦」
「っうるさっ…んっ! ぁっもう、いいからっ」
「もういいって? 入れていいの?」
「っ……ぃい…っ」
 切羽詰ったような様子の深敦がかわいくて、俺の方がもう入れたくてたまんなくなっていた。
 一応、先に指先で中をほぐしていく。
「あっ!! んっ…啓吾っ…あっ…ぁあっんっ」
「すげ、声出てるし、音も出てるし。2度目もうイくとか言うなよ」
 指を引き抜きその代わりに自分のを押し当てると、深敦の視線がソコへと注がれた。
「見てぇの?」
「っ違ぇよっ。ただっ……見てただけでっ」
「あぁ、入れんぞ」
「っ……ん」
 ゆっくりとした速度で深敦の中に入り込む。
「ぁあっ! んっ…啓吾っ…あっ」
 こいつまたイくんじゃないかって。
 そんな風にすら思えるくらいに体をビクつかせ、気持ち良さそうに中を締め付ける。
 動くなって言われてもたぶんもう無理だな。
 そっと重なるよう体を寄せ中を出入りすると、深敦の内壁が絡み付いて、一気にもっていかれそうだった。
 気持ちよすぎだろって。
「啓っんっ! あっ…ぁんっ、ぁあっあっ!」
 俺が腰を打ち付けるタイミングに合わせるみたく声が響く。
 俺、深敦の声も相当好きかもしんねぇ。
 すっげぇ、その声聞くたび腰にクる。
「な…。中でいい?」
「っひぁっあっ…わかっな…っぁあっ」
「わかんねぇなら、出すよ」
「やっぅんんっ!! ぁあっ…もっ…」
「後で…掻き出してやるから……」
 反発する余裕がないのか、深敦はコクコクと頷いてくれていた。
「深敦…」
 首筋にキスをして。
 耳元にも舌を這わして。
 中を抉りながら、手で前も弄ってやると限界なのかぎゅうぎゅうに締め付けられた。
「ひぁあっあっぁあっ…ぃくっ…啓吾っ、あっ…あぁああっっ!!」

 俺もまた深敦にあわせるようなタイミングで深敦の中に達していた。


 コードを外してやってもまだ、深敦はぐったりしていたが、右手が俺の服をそっと掴んでいた。
 なんかそんなことですらかわいいとか思っちまうし。



「啓吾……」
「なに」
「俺が、避けてるっぽいから避けてんの?」
 俺が避けてる? どういうことだ?
 深敦が俺のこと避けてるみたいだなってのは、感じていた。
 付き合いだして、意識しすぎてるせいだろうって前向きに勝手に捕らえてはいたけれど。
 そういう態度を取る深敦に、俺自身、そこまでつっかかることはやめようって思っていて。
 けれど、避けてるつもりはない。
「……そういうわけじゃねぇけど。お前、人前でべたべたすんの嫌いそうだし。付き合いだしたせいで余計意識してそうだから、ウザがられないようにとは考えてたよ」
「……前は、散々うざいくらいにつっかかってきたくせに」
「……なに。俺につっかかって貰えなくて寂しいの?」
「っちが……っ」
 んな赤い顔で否定されても説得力ねぇけど。
「別に、そんなウザくねぇってことだよ」
「じゃ、深敦は? 俺はむしろ歓迎するからつっかかってこいよ」
「……なんか…。緊張する」
 ……なに言ってんだ、こいつ。
 深敦はベッドにあった布団を手繰り寄せ勝手に頭から被ってしまう。
 顔だけは出してやがるけど。
「あのさ。でも、避けてるとかじゃなくてっ。だから、別にお前まで俺に合わせて避けるとかする必要ねぇしっ」
 意識しすぎちまってるってのは、深敦も自覚しているんだろう。
 けれどそれはどうにもならないこと?
 それに俺は合わせて少し離れるってわけじゃなく。
 いままで通りに?
「いや、そこまで変わってねぇだろ。休み時間はもともと水城といることの方が多かったし」
「……そっか」
 そっか?
「そっかって?」
「なんとなく、啓吾があんまり俺んとこ来なくなった気がしてたけど、そうでもなかったかって」
「……それって俺が足りてねぇから?」
 俺はいつもとほとんど変わらない。
 けれど深敦は、来なくなった気がしてるってことはさ。
 求めてる量が多くなったから、足りなく感じるようになったんじゃねぇの?
「足りてないって……」
「俺はほとんど変わってねぇから。ただお前が俺不足でもっと来て欲しいって思ってくれてんじゃねぇの?」
「っ……そうじゃ…。ちょっと前はもっと来てたかもって思っただけだってばっ」
「ほとんど変わってねぇよ」
「だからわかったって。俺の勘違いだからっ」
 怒ってんのかあせってんのか。
 
「いいよ。もっと来てたかもって思うんなら、もっと行ってやるから」
「そういうんじゃ…っ」
「行かせろって。いいから。……ホントは行きてぇの抑えてるだけだから」
 やっと深敦は反発することをやめて、俺の服をさらにもう少し引っ張った。

「……別に抑える必要ねぇし」
 ぶっちゃけ、んなこと言われるとマジでとまんねぇんだけど。
 布団を引き剥がし、俺はもう一度、深敦に口を重ねた。

 どうすっかな。
 なんつーか、やっぱりかなり愛しいわけで。
 俺って重症だ。

「深敦、部活はどうなん? 部員集まりそう?」
 本当はさほど心配していないことを口先だけで聞いてしまう。
「うん、まあ集まったよ。元々3人他のクラスでいてさ。あ、俺の同中のやつが作ったんじゃなくってそいつの友達が作り出したみたい」
「そうなんだ?」
 そんなことじゃなくて。
 泰時なんだよな。
 ただの友達だって、思ってるしわかってるのに、どうもチラつくし。 
 ほとんど落ち着いてはいんだけど、やっぱりどうせだから聞いておくか。
 この雰囲気ならなんとなくいけそう。

「こないだ深敦に、泰時のこと気になるかって聞かれて。多少とか言っちまったけど、結構気になってる」
 そうは言いつつも、大した問題にはなっていないと思わせるよう軽い口調で聞いた。
「……前の体育のとき俺が他の男と仲いいとイラつくって言ってたやつ?」
 泰時の名前は出さずとも伝わっていたか。
「それ。別に友達だってわかってっけど。泰時が……」
 そうだ。
 最大の原因はそれだ。
 泰時が深敦のことを好きだから。
 そうじゃければ、普通に仲がいい友達が増えたってだけ。
そう気にならないはずなんだよ。

 深敦のことを好きだって言ってるやつが、深敦に近づいてたら、気にして当然だろ。
 ウザいに入らないよな。
けれど、泰時は深敦のことが好きなんだって今言って変に意識されても困るし。  

 俺の服を掴んでいた深敦の手に力が入るのがわかった。
「……泰時とはなんもねぇよ」
 先に深敦の方からそう言われてしまう。
「……悪ぃ。別に疑ってるとかじゃねぇよ」
 ああ。ただの友達に対してこんだけ突っ込まれたらやっぱウザいよな。
 だから言わせてもらう?
 あいつは、ただの友達ってわけじゃないだろ。
「泰時がお前のこと……」
 好きって。
 いや、だからそれは、今の友情崩すだろって。
 どうすんだよ。
「知ってる」
「は……?」
 少し言いとどまってるすきに、逆に深敦に突っ込まれた。
 知ってるって。
 なにが。
「なに、知ってんの?」
「……啓吾はなに知ってんの?」
「いや、俺が聞いてんだけど」
「だから、泰時が俺のこと……」
 好きだって。
 深敦と目を合わせると、お互い理解した気がした。

「知ってて、深敦はどうすんの?」
「どうすんのもねぇだろ。俺は別にそういう風に泰時のこと好きじゃないし、普通に友達として接してっから」
 なんだよ。
 警戒心ゼロのバカってわけじゃなく。
 わかった上で流してたってのか?
 いや、バカとまでは思ってねぇけど。
「啓吾が知ってるとは思ってなかったから、別にあえて言うことじゃないと思って黙ってたんだけど」
「……ああ」
 確かに、いちいち言うってのもおかしいよな。
 けれど、いまいち腑に落ちない。
「お前のこと好きってやつが、お前の周りうろうろしてんのってどうなの」
「俺だって、啓吾の周りに楓がうろついてたとき、すっげぇやだったからわかるよ」
 楓は、俺のこと好きじゃないけどな。
 そう思われてたんだろう。

「けど、俺は男に対してそんな好きとかって。啓吾はあるけど、他の男とかねぇよって思うし。まぁ、朔耶みたいなのならともかくだけどっ」
……こいつホント、水城弟大好きだな。
「深敦がそう言っても、泰時は深敦のこと好きなんだろうし。……お前、流されそうなとこあるから、一応、気をつけてくれたらなって思うだけ」
 浮気すんなとか、強く言えるわけでもねぇしな。
 感情抜きでならともかく、相手が深敦のこと好きでやっちゃうとかってなると、少々問題だ。

「ってか、啓吾、どこまで知ってんだよ」
「なにが」
「だから。流されそうとか。もう終わったから大丈夫だよ」
「終わった?」
「……泰時が、前、俺のこと好きだったから、気になるとかじゃねぇの?」
「前っつーか、現在進行中だと思ってたんだけど」
 今は違うってのか?
 そんな過去に深敦を好きだった相手にまで口出してたらキリねぇ気がするし。
 それはウザいだろうから、そこまでつっかかるつもりはねぇんだけど。
「それなら、俺、ちゃんと断ってるから」
 断ってる?
「……断ってるって? っつーか、お前はどうして泰時がお前のこと好きだって知ってるわけ?」
「……直接、言われたからだけど。啓吾は?」
 直接って。
 告られたってこと?
 あ、もしかして榛くんとピーチパイ作ってた日か。
 深敦と泰時が会ってたって、楓が言ってたよな。
「俺は人づてに聞いただけ。深敦、直接言われて、断ったのかよ」
「だから、それもいちいち報告するほどでもないかなって思って。あいつ、別に彼氏持ちのやつには興味ないって言ってたし。あ、そうだ。ごめん。俺また……付き合ってるって言っちゃって」
 断るのに、有効的だったのだろう。
 
 なに。
 ちゃんと断ってくれて。
 俺っていう恋人がいるんだって。
 そう伝えてくれてるわけか。

 そりゃ、過去とはいえ好きだって言ってきた相手をずっと傍に置いておくのとか、あまり言わないで置こうって言ってたくせに付き合ってるって言っちゃうのとか。
 少しおかしく思うところもあるけれど。
 あいつはクラスメートだから避けるのは難しいし。
 それに、今回は言ってくれてよかったかもしんねぇし。
 むしろ、言いたくないって言ってたくせに、それでも言ってくれたんだよな。

 俺が心配する必要なんて別になかった?
こいつはちゃんと、断ってくれてるし、俺のこと選んでくれてんだよな。  

 つい、その体を引き寄せ抱きしめた。
「っちょ、イキナリなんだよっ」
「いいから黙って抱かれろよ」
「なに、お前っ」
「お前が、泰時と仲いいからいままで気になってたんだよ」
「なっ……。……今はもういいの?」
 今は。
 深敦から事情を聞いて落ち着けた。
 泰時も、恋人がいるほうが燃える……なんてバカなタイプではないのだろう。
「お前が断ってくれたから、安心してる」
「別に他行かねぇし」
「ん。……じゃ、泰時は俺たちのこと知ってるってわけね」
「一応、口止めしといたけど」
「了解」
 深敦は俺の腕の中から顔をあげ俺を見上げる。  

 よかった。
 元々は、深敦が幸せならなんでもいいって思ってたんだけどな。
 趣味は完全、泰時との方が合うだろうに。
「深敦、俺でいいんだ?」
「なんだよ、それ」
「いや。別に」
「……ちゃんと考えてオッケーしてるし」
 告白のことだよな。
 こいつ、あんま男同士で付き合うとか、考えられないってタイプだっただろうし。
 そうだな。
 これからはたとえ深敦の周りにどんなやつが来ようが、もうなるべく気にしないようにしよう。  

 俺は深敦のこと、信じていく。