なんか、すっげぇ恥ずかしいんですけど…。

 啓吾は、ベッドから降りていくから、俺はなにか間違ったことを言ってしまったんじゃないかとか、変に不安になった。
 が、それもつかの間で。
 ドアの方へと向かうと、鍵を閉める音が響き渡る。

 なんで閉めるんだよとか、聞けないし。
 っつーか、変に緊張するじゃん。  
やる気だよなぁ…。

 また、ベッドに乗りあがる啓吾に上から見下ろされて。
首筋に啓吾が口付ける。
「んっ…」
 変に押しのけれないし。
 啓吾の手が、俺のズボンのチャックを下ろして、直に俺のを掴み取る。
「ぁっくっ…」
 俺はその刺激に耐えようと、ベッドのシーツを掴んだ。
 啓吾は淡々と俺のを擦り上げていく。
「はぁっ…あっ…んぅっ」
 熱いってば…。
 熱くて死にそう。
「なぁに、苦しそうな表情してんの。気持ちイイわけ?」
「うるさ…っ…んっ…くっ」
 

 啓吾が、軽く耳元で笑ってみせると、俺の股間へと顔を近づけ舌を這わす。
「っばっかっ…ゃめっ…」
 俺のに丁寧に舌を這わして。
 静かな部屋にピチャピチャと音が響き渡る。
「っんっ…やめ…っあっ…ゃめろってばぁっ…」
「なんで…?」
 目を向けると、啓吾の舌がチロチロ動いてるのが見えて、気が狂いそうで。
「ぁんんっ…もぉっ…やっっ…」
「へぇえ…」
 やばい。
 最近、こいつがサドだってのすっかり忘れてた。

 電気消せってば。  
こんな明るいとこでそんなんされたら、恥ずかしすぎて駄目だろ。
「ゃだってっ…あっ…離し…んっ…」
 いきそう…。
 こんな至近距離で、明るい場所でイくのとか、すっげぇ恥ずかしいってば。
「っやだっ…あっ…やっやあっ…啓吾っ…」
 啓吾は、そっと俺のから舌を離していく。
「な…あ…」
「嫌なんだろ?」
 久しぶりに、やらしい笑みだな…。
 啓吾が、俺のズボンと下着を剥ぎ取っていく。
「っ…啓吾…っ」
 だから、先に電気消せって。
 ってか、俺、やることは同意なんだよな、今回。
 
 だって、付き合うのOKだしといて、このタイミングでこの行為、断るわけにいかないっつーか。

 電気消してだなんて、言えるわけねぇし…。
 
 なんか、俺、すっげぇ意識しちゃってるかも。
 啓吾が、彼氏になったから?

 啓吾は俺の右足を持ち上げると、あろうことか右足の甲に舌を這わす。
「……っ!」
 キツく吸い上げられ、全身が震えあがった。
「っンんんっ…っやあっ…」
「んー…どうした…?」
 なにこいつ、なにこいつ。
 啓吾じゃねぇみたいだ。
 こんなの。
 こんなことして。
 舌が絡みつくみたいで。
「ンっ・・・あっ…啓……」
 体中が熱い。
 俺の右足を支えていない手が、俺のモノにそっと触れて。
 指先が亀頭を撫でていく。
「ぁあっ…」
 やだって、こんなの。
 いつもと違ぇじゃん。
 すっげぇ恥ずかしいってば。  
啓吾の指がヌル…ってすべるのがわかる。  
俺が、感じてるからだろ。  

ぬめりをまとった指先が、ゆっくりと中へと入り込む。
「んーっ…」
 なんか、すっげぇ恥ずかしいんですけど。
 なんでかなぁ。
 立場上、断りにくいから、拒めないのか。
 なんつーか、いままでだったら、付き合ってないんだし、拒もうと思えば拒めたよ。
 そりゃ、好意を持ってくれてる人を拒むのも難しかったけど。
 
 なんか、変。
 どうしよう。
「だっめ…っあっ…啓っ…ぃく…からぁっ」
 まだ大して動かされてもいないのに。
「もう、イっちゃうんだ?」
 いやみらしいな、おいっ。でも、ホント、俺、やばいって、早いだろ。
 啓吾の指が蠢いて、反射的に俺の体もビクついた。
 俺は、啓吾から見られないように腕で自分の顔を隠す。
「ぁんんっ…やっあっ…んっんんーっ」」

 早々とイかされて。
 なんか、無性に恥ずかしくてたまらなかった。


 腕をどかして啓吾を見てみる。
 啓吾は、また、少し企むように笑ってみせる。
「な…んだよ…っ」
「深敦、すっげぇ顔赤いんだけど。そんなに恥ずかしいんだ?」
「なっ…」
 そう言われると、顔が熱くなっていくのがわかる。

「上に乗れよ」
 唐突に啓吾にそう言われ、一瞬、なんのことか考え込む。
「なに…それ」
 俺の隣に啓吾が寝転がって、
「騎乗位」
 そう答える。
「な…無理…だろっ」
「どうして」
「だってっ……そんなことっ」
 恥ずかくて出来ないって言うのもなんか恥ずかしいし。
「っ自分で動けねぇし」
「俺が下から突いてやるよ」
「…やだ…って」
 無理だろ。
 でも、啓吾に見られて少し沈黙が続くと、どうも耐えられない。
「っ…あーもぉ、やりゃいいんだろ。電気消すからっ」
 俺は、起き上がって電気を消す。

 けど、ホント、こんなんしたことねぇし、どうすりゃいいのか。
 啓吾に聞くのもなんかやだし。
 もっと、リードしてくれりゃいいのに。

 しょうがなく、とりあえず、啓吾のズボンとかを脱がしていく。
 なんで俺がこんなことまでしなきゃならんのだ。
 
 啓吾は無言のまま、俺の行動見守ってくるし。

「……わかんない……」
 むかつくけど素直にそう答える。
「は?」
「だからっ………どうすりゃいいのか、わかんないって…」
 啓吾は、俺の手を取って
「俺の体、跨いで…」
 そう言ってくれる。
 わかんないって言った手前、教えてくれたら従わないといけない気になるし。
 跨いでもなんか、座り込むことが出来ず、跨ったまま。

 
 啓吾は、俺にローションを手渡した。
「な…に…」
「つけて」
 そう手を出すから、とりあえず、従って俺は啓吾の手に、そのローションを垂らした。

 たち膝状態の俺の太ももにローションをまとった啓吾の手が触れる。
 
 ゆっくりと這い上がったその手の指が、また俺の中に入り込んできていた。
「っ…んっ!! …はぁっ…啓吾…」
 下からそんな風にされると、なんか、恥ずかしいし。
 2本だろうか。
 入り込んだ指が、中をじっくりと探るように押し広げていく。
「くっ…ぁあっ…やめっ…啓吾、ゃ…だっ」
「なにが嫌なん?」
 ぬるぬるする感触で。
 押し広げられて。
 イったばっかなのに、おかしくなる。
「っだってっ…」
 だから、なにが『だって』なのか、意味わかんねぇって。
 って、自分にツッコミ入れてる場合でもねぇ。

「…そのまま、ゆっくり腰下ろして」
 指が引き抜かれると同時にそう言われてしまう。
「っ……無理…だろっ…」
「無理じゃねぇよ」
 可能なのはわかってるけど、精神的に自分から入れるなんて無理なんだってば。
「はやく…な?」
 そう言われ、しょうがなく、ゆっくりと腰の位置を下げていくと、啓吾のが当たる。
「っ…やだっ」
「やだとか言うなって」
 冗談っぽく笑われるけど、こっちはすっげぇ恥ずかしいんだよ。
「無理だって、言ってるだろっ?」
「手伝ってやるから」
 啓吾が、俺の入り口を押さえるようにしながら、そっと腰を浮かすから、少しだけ入り込んでしまう。
「っんっ…」
「ほら、そのまま腰下ろしてけばいいから」
 いいからって、理解は出来るけど。

 俺は、恥ずかしいながらも、ゆっくり腰を下ろしていった。
「っんーっ…ひぁっ」
「力抜けよ」
「ぁああっ…やだっ…やっ…」
 ゆっくりと、入り込んでくる感覚が、自分からしているからかいつもと違っていた。
 ローションに薬でも入ってんのか?
「…っ…やっあっ…変っ…啓吾っ」
 啓吾に助け求めてどうすんだよ。
 俺、もう駄目かも。  
 
ゆっくりと全部入り込んで、そっと一息ついた。
「…啓吾…なにこれ…なんか…薬入って…」
「ローション? 入ってねぇよ。お前が勝手に感じてんだろ」
「うそ……」
「嘘じゃねぇよ」
それを自覚したら、恥ずかしくてたまらなくなった。
 啓吾は、俺の腰を掴むと、そっと前後に揺さぶっていく。
 そうされると、体中が熱くなって、たまらなくなってきていた。
「ぁあっあんんっ…やめっやっ…あっあっ」
 上から見下ろす感じがものすごく恥ずかしくって。
 電気がついてないせいで、薄暗いのだけが救いだった。  

「すっげぇ、音」
 ローションのせいか、クチュクチュと響く音を啓吾に指摘され、俺のせいじゃないのに、俺が出してる音みたいで羞恥心を煽られていた。
「やっあっ…んっぁんっあっ…」
 声も止まんないし。
 腰も止まんない。
 もう、俺、自分で動いてるよな。  
それがわかってなのか、啓吾も俺の腰から手を離すと、俺の股間を弄りだす。
「あっ…あぁあっ…啓…っ…だめっ…もぉっ…やだっ」
 そんな俺も無視で。
 あろうことか、啓吾は手元のスイッチで電気をつけた。
「っ…やっ…やめろってっ」  
そういう俺はまったく無視だし。
「深敦…イっていい?」
 なに、了承得ようとしてんだよ。
「もぉっ…あっ、ぃいからぁっ…やっあっん」
 俺のモノを擦り上げてくれる手が、激しくなって、意識が飛びかけていた。
「ぁああっ…やっやだっ…やだぁっ…だめっあっ…あぁあんんっ……」

 
もう、なんだか恥ずかしくてたまらない。

 力尽きるように、啓吾へと倒れこんで、二人でベッドに横になった。




「啓吾……俺…」
「なに」
 なに…言おうとしてんだろ、俺。
 わけわかんねぇ。

「付き合いだしたのとか……あんまり、そのさ……」
「……おおやけにしたくない?」
 そうなんだよなぁ。
 なんか、恥ずかしいし、男同士だし。
 俯く俺の頭をそっと撫でてくれる。
「わかったよ…」
 そう言ってくれた。  
申し訳ないような気がするけど、普通…だよな…?

 なんだか、恥ずかしいけれど、そのまま、俺は眠りについた。




起きると、啓吾はまだ眠ったまま。
俺はそっと起き上がり、一人でお風呂にはいった。


なんか。
変な感じだ。
明日とか、どうやって啓吾と顔合わせりゃいいんだよ。
っつーか、今、風呂から出た時点で啓吾が起きてたら?
寝てたとしても、俺って、啓吾おいて自分の部屋戻ったりしていいんだろうか。
わざわざ起すのもあれだけど、なにも言わずに出てくのもなぁ…。

湯船には浸からず、シャワーだけで済ませて、俺は啓吾のいる部屋まで戻った。


っと、思いかけず、啓吾がベッドに座ってる。
つまり起きてるわけで……。

「……ちょっと、風呂借りてた」
「あぁ」
…なんかすっげぇ気まずいじゃんかよ。
大していつもとかわんねぇ会話のはずなのに。

なんとなく、俺は啓吾の隣に座り込む。
少しだけ続いた沈黙を破ったのは、啓吾だった。

「あのさ。さっき、お前、あんまおおやけにしたくないとか言ってたやん?」
「あ…うん…」
「もし『付き合ってる奴いるか』って聞かれたらどうすりゃいい?」
「…それは…嘘つくのもあれだし、いるって言っていいけど…。誰か、言わなければいいだろ…」
「じゃあ、深敦と付き合ってるのかって聞かれ方したら…?」
  いくらこの学校とはいえ、男同士だろ。
  おおやけにするのって、絶対、おかしいって…。
「…相手にもよるけど…春耶とか、晃とか、仲のいい奴ならともかく、全然、関係ないやつだったら、出来れば、それとなく流して欲しいかも……」
 そう言うと、少し啓吾がため息をつくのがわかった。


 怒ってる…?
「啓吾…っ俺…」
「わかった。わかってるから。……とりあえず、今日はもう戻れよ…。一応、テスト週間だし」
 なんで。
 なぁんで、こう悪い雰囲気になってしまうんだろう。
「…怒ってんのかよ」
「怒ってねぇって」
 あんまり言い合うのも嫌だから、俺もそれ以上、言わなかった。

 啓吾って、付き合いだしたのとか、結構、人に言っちゃいたいタイプなのか…?
 俺だって、相手が女だったら、彼女が出来たって自慢するかもしれないよ。
 あ、でもおんなじクラスだったら、ちょっと恥ずかしいから無理かなぁ。
 でも、きっと言っちゃう。
 嬉しいから。

 でも、啓吾は?
 男だもん。  
世間体みたいなもん、考えちゃうんだろうな、俺。
 まだまだ、ノーマルなんだよなぁ。
 
凍也先輩が言ってたっけ。  
男好きになってる時点で、アウトだとかなんとか。

 周り気にしすぎるのもよくないと思う。
 だけど、お互いがよければ秘密にしててもいいだろう?
 仲のいい友達だけが知ってんの。  
あえておおやけにする必要ないと思う。
 
なんか。
 よくわかんないや。

 付き合うって答えを出したのは、間違いじゃなかったって思えてる。
 今、後悔とかしてねぇし。

 しばらくは。
 様子見じゃないけど、いままでどおり、すごしてみればいいかなぁ。
気にしすぎて気まずいのもやだし。
 
なんか、雰囲気悪いんだけど。

「…じゃあ、戻るから」
「あぁ」  
いっつも、たくさん言い合ったりしてんじゃん?  
どうってことないのになぁ。  
なんか、すっげぇやな感じ。

 立ち上がる前に、啓吾が俺の腕を取って、引き寄せる。  

 軽くだけど、そっとキスされて。
 それだけでなんだか、少しだけ幸せな気分になっていた。
だけど、なんとなく不安な気持ちは拭い去れないでいた。