しまった…。
あーもう、俺って馬鹿っ。
迷った。
もう駄目…。
遅刻して、4時間目が視聴覚室での音楽の授業だから、そこに行こうと思ったんだけど…。
俺って、一人じゃ視聴覚室も行けないのかよ。くそぅ…。
校舎を渡ってどっかに行くってのは覚えてるんだけど…。
地図置けっての。
「…金髪発見…」
「…は…?」
 その声に振り返ると…知らない…人…。  
先輩…?  
まぁいいや。誰でも。
「あの…視聴覚室、どこですかね」  
それとほぼ同時に…
「科学室、どこだっけ…?」  
って…。
「…え…先輩…ですよね…」
「あ…ぁ、俺、4年。西院塔 和奏。生徒会の副会長ね」
 おぉおっ
 副会長っ
 なんか、すげぇ…。
 ってか、4年目のくせに、まだ科学室がどこかって…。
 いいかげん覚えろよって話だよな…。失礼だけど。
「…君は…?」
「あぁっ…俺は…1年の高岡深敦」
「1年…かわいいな。視聴覚室は……あっち…だった気が…」
 かんなり曖昧に、指差して示す。
 あってんのかなぁ…。
 科学室は、たしか俺の1年の教室の近くにあった気がするから…
「…あっちの校舎に科学室、あった…気がする」
「ありがとな。なんか休み時間に職員室行ってる間にみんなに置いてかれちゃってさぁ…。今度、なんかおごるわ。俺のこと、覚えといて」
「…はぁ…」
 お互い様なんだけど…。
 そう言って、和奏先輩は、走りさって言った。
 変な人。



「…なにしてんの? お前」
「え…?」
和奏先輩と別れてすぐ、そう声がまたかかる。
なんだ今日はっ。
って、俺がウロウロしてるからか。
 ちょっと…おっかなそうな…先輩…?
「…いや…ちょっと…迷って…」
 お前こそ、授業中に何してんだ…? って聞きたいけど、なんか恐くて聞けねぇ。
「…そ…っか。じゃ、つれてってやるよ。どこ?」
 おぅ。人は見かけによらぬな。
「ありがとうございます。えっと…視聴覚室に…」
 俺は、その先輩だと思われる人について行った。



 そう……ついて行っちゃったのが間違いだったんだよ。
 俺、馬鹿っ。
「…目立つ金髪…だね…。人目、引いてんの…? 首筋にさ…キスマーク残して…誘ってる…?」
 しくじったっ。
 昨日、啓吾が首、吸ってたっけ…。
 というか、残ってたら誰かの物だとか思わないわけ?
 って、俺は物じゃねぇけどっ。
 誘ってるわけねぇっての。  

俺ってば、階段付近の壁際に腕を押し付けられて、逃げられないでいた。
「…俺……授業、出ないと…」
「…意外と…真面目なんだ…?」
 そう言いつつも、俺を無視して、首筋に口を付ける。
「っ…ン……」
 逃げるように顔をそらすけど…なんか…この人恐くって、思いっきり嫌がれない。
 俺の腕を、一まとめにして片方の手で掴みあげると、あまった手で、ズボンの上から股間を擦りあげた。
…もしかしなくても…やばい…よなぁ…。
「…っ俺…彼氏いるんで……」
 くっ…彼氏じゃないし、そんなの認めたくないけど、そう言って逃げるしかないだろ…。
「…彼氏…? どんな人…?」
 そーゆうこと、聞きますかっ。
 ちゃくちゃくと、ズボンのチャックとか片手でおろして、直に俺のブツを取り上げて…
「ちょ…っ」
「ね…どんな人?」
 言わないと…駄目…?
「……サドっぽくて、絶倫ぽくて、場所構わずやりだしたりするような、変ななまりのあるやつ」
 はい、終了。
 とっとと言い終わって、逃げようとする…けど、一向にそいつは開放する様子はない。
「つまり…君は、そーゆうタイプが好きなんだ…?」
「は…ぃ…?」
 理解するより先に、そいつが俺のモノをギュっと握り締める。
「っイ…つぅ…」
 なにすんだ、こいつ…。
 あぁ…俺が、彼氏のことを、サドっぽいとか言ったから…
 ご丁寧にあわてくれてますか…?
「…あの…見た目がサド…ぽいだけで…実際は…そうでも…」
 ないような気がしないでもないけど…。
「…へぇ…。ずいぶん…その彼氏が好きみたいだな…」
「…好きじゃねぇよっ…」
 って、つい、反抗的に言ってしまう。
 だって、好きとか…よくわかんねぇし。
 というか、こんな今日会ったばっかの奴に、なんで啓吾が好きかどうか言わなきゃなんねぇんだって話だ。
「もう…離せ…って…」
 そいつは、掴みあげた俺のを、そっと擦り上げていくもんだから、嫌でも感じてきちまう。
 やばいって…これじゃぁ…
「っあ…っ…くぅ…」
「…かわいい声…漏らすじゃん…。彼氏に…だいぶかわいがられてんだ…?」
 彼氏彼氏言ってんじゃねぇって。
 全然、かわいがられてなんかねぇっての。
 あー、自分で考えてて、なんか微妙にショッキング。
 啓吾って…全然、俺のこと、かわいがってくれな……
 って、俺は男だから、かわいがられたくないってば。
 もう、わけわかんねぇっ。
 どう考えても、俺はかわいくねぇから、かわいがられてくって当然だから、いいんだよ。
 よし。
 自分の中で、『かわいがられない理由』みたいのが結論づくと、とりあえず一息つく。
 こんなん一息つかせてる場合じゃねぇけどっ。
「ん…っ……やめっ…っ…んぅっ…」
 あぁあ…どうしてこう、気持ちいいかな…。
 抵抗力がなくなっていく。
 ガクっとヒザが折れて、慌てて立ち直した。
「…かわいいね…」
 なんでそう何度もかわいいとかっ
 うれしくないっての。
 ベルトの重みで自然とズボンがずり落ちていく。
 何度も擦りあげられて、絶えられず溢れ出た先走りの液をまとった先輩の指先が、そっと、奥の入口を撫でた。
「っ…や…馬鹿…っ…」
「…だいぶ…経験してんでしょ…」
「っひぁっ……」
 少し乱暴気味に押し入る指の感覚につい大きな声をあげてしまう。
「…授業中なんだから…もうちょっと静かにしろって…」
 出したくて出してんじゃねぇってのっ。
「っふっぁ……っん…抜…けっ…くぅっ…ン」
 中をかき回されると、立っていられずに、ずるずると壁にもたれながら座り込んでしまっていた。
「っはぁっ…あ…っ…やめ……」
 俺に合わせてしゃがみこんだ先輩は、片手でズボンを抜き取って、なおも中を指でかき回していく。
 手を離されても、もう、どかすほどの力はないしで、どうにもならないでいた。
 やばい…って…。
 もう、精神崩壊しかけてる。
 啓吾じゃないのに…
 すっげぇ気持ちいいよぉ……
「っんぅっ……やくぅっ…あっ…」
 痺れるような感覚が駆け巡って、体がピクンと跳ね上がる。
「…ココ…感じるんだ…?」
「…違…っ…ぁ…あ…」 
だって、ソコは駄目だろぉ…?
 相手が誰だろうと感じちまうってば…っ。
「…泣くほど…イイんだろ…?」
「っ違…ぁっ…ぅあンっ…」
 首を横に振る俺に対抗してなのか、何度も俺の感じる所をからかうように指で突く。
「っやぁあっ…っぁくっ…や…あ……っ…あ…」
 …どうしよう…
 感じたくないのに…もう駄目…イキそう。
「っっ…ンっっ…ぁあんっ…やぁっ…あっ…」
 イキそうな感覚に、大きく顔を上げたときだった。
 目を合わせた先輩は、にっこり笑って、俺のモノの根元にきつく指を絡めてしまっていた。
「っやぅ…っ…っくっ…」
「…言えよ…。イイんならイイってさぁ…」
 絡めた指はそのままで、なおも中を刺激されるともう、絶えれそうにない。
「や…だっ…ぁっ…もぉ…っイかせ…っ…」
「…イイ…?」
「っ…んっ…ぃいっ…あっ…あぁあっ…啓…っ」
 …っやば…。
 駄目、ボーっとしてきて、啓吾の名前呼びそうに…。
 ぎりぎりの理性が、それを引き止めてくれていた。
 そうだよ、駄目。
 こんな、会ったばっかの人に、イかされるなんて…。
「や…くっ…離し…っ」


「…あれ……深敦くん…?」
 その声…はさっきの…。
 横を向くとほら、和奏先輩。
「和奏…お前、授業、どうしたんだよ」
 知り合い…? 俺の前の先輩が和奏先輩に言う。
「まぁまぁ…。俺のことはおいといて。お楽しみ中…?」
 俺は、和奏先輩に助けを求めるようにして首を振った。
「…なるほど…。じゃ、その子を開放せよ」
 開放……せよ…?
「…和奏の…彼女…?」
「まぁ…それに近いとこだから…」
違う……って言おうとしちまったけど…
言わない方が…いいよな…。この場合。
「…はぁ…。こんなとこで1年がウロついてんなんて滅多にないチャンスなのにな…」
 そう言いながらも俺から離れてくれていた。
「…なんで…1年って…」
「シャツんとこのラインがね、学年ごとに色、違うだろ…?」
 そうだったのか…。
 さっき、和奏先輩に『1年の…』とか、自己紹介しちまったじゃんか…。
 でも、和奏先輩も言ってたし。うん。
「ほら、1年なら、今度、誰か紹介するから、今日は行きなよ」
 しょうがない風にして、その先輩は、俺と和奏先輩から離れていった。
「…ありがとう…ございます…。すごいんすね…。和奏先輩って…」
「…すごくないよー。人に見られてばつが悪いだけだろ」
 うぅん。すごい。
「…にしても、辛そうだけど、大丈夫…?」
 あぁ…俺、ぎりぎりで止められてたから…。
 ホントは、めちゃくちゃつらいんですけどっ…。
 我慢…っ。
「1回……抜いておこうか……」
「え…」
 和奏先輩は、しゃがみこんで俺の耳もとでやさしくそう言うと、少しだけ治まりかけてた状態の俺のモノを、そっと掴んで擦り上げる。
「っあ…っ…駄目…っ…」
「……彼氏に…操立ててる…? ちょっと手伝うだけだから…ね…? なんなら彼氏の名前、呼びなって…」
 そんな…。
 あぁ…でも、なんていうか、断る理由がない。
 俺が、こうイきそうなのを、和奏先輩は手伝ってくれて…。
 それだけなんだから、なんにも後ろめたいことなんてないはず…。  


 そっと頷くと、和奏先輩は、ゆっくりとさっきまで、あの先輩の指が入っていた場所に指を差し込んでいった。
「…っやくっ…ん……」
「…さっき…後ろ、やられてたよね…。もう、今、後ろ使わずにはイケそうにないんでしょ…」
 そう…。
 普段だったら、前だけでイケるんだけど、今はもう、後ろも使われないと…
 って、俺、やらしいよ…自分で言うのもなんだけど…。
 中を探りながら、和奏先輩は、もう片方の手で、俺のモノを扱きあげてくれる。
「っあっ…やぅっ…」
 俺の感じる所を見つけると、執拗に何度もソコを刺激して、そのたびに俺は体を震わせた。
「ゃン…っ…あっ…あンんっ…和奏……せんぱぃ…っ…」
「…駄目だよ…。俺の名前なんか呼んだら、彼氏に怒られるよ…」
 あまりの気持ちよさで、もうわけわかんねぇ。
 さっきの奴だったら、まだ、無理やりっぽくって、抵抗しなきゃってのがあったんだけど…っ…。
 和奏先輩の優しい対応に、変に酔いしれちゃっていた。
「彼氏……なんて言うの…?」
「っんぅっ…あ…っ…あぁっ…啓吾…っ…」
 付き合ってるってわけじゃねぇけど…っ…。
「…そっか…。啓吾くんね。じゃぁ、イクときは、啓吾くんの名前、呼んであげないと…ね…」
 啓吾の…名前…?
 そんなの恥ずかしい…。
「…っ無…理…っ…ゃだ…ぁっ」
「…駄目だよ。深敦くん…彼氏じゃない奴にやられてんだよ…。気持ちは彼氏のこと考えてるって、ちゃんと…自分に証明しないと…。あとで後ろめたい思い、しちゃうよ……? 俺にも、証明してくれないと…変な気、起こすかもしれないし…」
 最後の方は、少し冗談交じりに笑いながらそう言った。
 そっか…。
 俺…啓吾じゃない人としてて…。
 いくら手伝ってもらってるだけとはいえ、別の人で感じてるわけだから…
 頭の中では啓吾のこと、考えないと、後ろめたいよな…。
 でも、だからって、啓吾の名前、わざわざ呼ばなくっても…。
「…っ…ぁ…ん…っ和……」
「…啓吾…でしょ…」
 俺の言葉を制して出された啓吾の名前にひどく反応してしまっていた。
「…ん…っ啓吾…っ」
「そう…」
もう気が遠くなりそうで、わけがわからなくなりかけてた。
…啓吾…。


そっと、2本に増やされた指で、中をかき回しながら感じる部分を擦りあげる。
「っあんっ…啓吾ぉ…っ…やぁっ…あっ…」
 相手は和奏先輩だってわかってるんだけど、啓吾の名前を呼んでいた。
「…気持ち…いい…?」
「…っ…いい…っ…あっ…気持ち…ぃいよぉ…っっ」
 気持ちよすぎて生理的な涙がポロポロと頬を伝う。
 逆に…こんなこと、啓吾には、恥ずかしくて素直に言えるわけがなかった。
「っあぁンっ…もぉっ…やぁっ…出ちゃう…っ…啓吾ぉ…っ」
「…出してごらん…。かわいいね…」
「っあぁんっ…イっちゃぅっ…やぁっ、あっ…啓吾ぉっ…やぁあああっっ」
 はじけだす欲望を、和奏先輩は、手で受け止めていてくれた。


 あぁあ…。
 俺、何やっちゃってんだろ…。
 別に、ちょっと一人H手伝ってもらったってだけでどうってことないよな…?
 後ろめたいもなにも…啓吾とまだ付き合ってるわけじゃねぇし…。
 それに…俺、啓吾のこと、考えてたし…。
 あながち、和奏先輩の言ってることって正しいな、なんて思っちまったり。
 なんていうか…啓吾の名前よんだおかげで、後ろめたさ減少…。

 それにしても、さっきわかれた和奏先輩が、なんでここにまた…?
「……科学室あっちの校舎って…」
「あはは…それがさ…。渡り廊下、どこだっけ…」
 渡り廊下ってのは、校舎と校舎を結ぶ廊下で…
 各校舎の決まった階にしかないんだよな。
 2階にあるから、階段を使いに来た…のか…?
「…渡り廊下…2階…」
「ありがと…。でもさ…。あと、15分だし…。ついたらあと10分くらい…? 5分でつけるかもわかんないし…。しょうがないけど4時間目はサボるよ…」
 ってか、俺に付き合せちゃったせい…? あちゃぁ…。
「…俺も…サボろうかな…」
 あと、15分じゃなぁ…。
「あ、弁当?」
「俺…? 学食ですまそうと…」
「じゃ、一緒に行こっか」
 なんか、よくわかんねぇけど…
 一人でいてもつまんねぇし、それもいっか。
 俺は、和奏先輩と一緒に学食へと向かった。