「っ……ん……っっ」
秀一と付き合いだしたのは、高校生の頃。
俺が2年のとき、先輩である秀一に声をかけられた。
なんだかんだでもう10年になる。
いまは同棲していて、秀一は普通の会社員。
俺は、秀一と俺の家で、小さな玩具屋を開いていた。
いわゆる大人の玩具だけれど。
趣味みたいなもんで、生活費は大部分、秀一が出してくれる。
だから家事も俺の仕事だ。
この人のことはだいぶわかってて。
嫌われたくないし、俺も好きだから、出来る限りのことはしようと思う。
思うんだけど。
今日は、緩やかな振動を送り続けるローターを後ろに突っ込んだまま、喫茶店へと連れて来られていた。
入れたのは自分。
出かける前に、指示された。
なんとか席に着くものの、頭がボーっとする。
テーブルを挟んで向かい側に座った秀一は、当然のように、足で俺の股間を踏みつけた。
「んんっ……」
靴のままグリグリと。
「なに飲む?」
にっこり笑いかけられているのだろうということは予測できたが、顔を上げることも出来ずテーブルに爪を立てる。
「……聞いてる? 雅紀」
強めに踏みつけられ体がビクついた。
俺は頷いて、メニューを受け取る。
「……コーヒーで」
「そうだねぇ。コーヒーなんて飲んじゃったら後でトイレ行きたくなっちゃうかもね」
違うのを頼んだところで、コーヒーか紅茶に変えられるだろう。
後で、そういうプレイを楽しむつもりなんだということくらいわかっている。
「っ……ぃた……、秀一……っ」
「んー。靴の上からだからよくわからないなぁ。教えて?」
「強……ぃっ」
「で?」
「弱く……」
「……弱くしたら、感じちゃうでしょう?」
そう言いつつも、少しだけ踏む強さを弱めてくれながら呼び鈴を押す。
店員さんが来てくれ、秀一が自分の紅茶を頼み、俺に目を向ける。
「……ブレンドコーヒー。ホットで」
緩やかに踏みつけられながら、ボーっとしてしまう頭のまま、なんとかそう告げることが出来た。
店員さんが向こうへ行ってしまうと、秀一はまた強めに踏みつけ、俺は耐えるよう、自分の胸元にシャツの上から爪を立てた。
「はぁ……っんっ」
「痛い?」
二度ほど頷いて示すが、秀一は笑顔を向けるだけ。
つま先を動かされ、えぐるような刺激に体がビクついた。
「っ…ぁっ……っ秀一…っ」
「なに」
「っ……トイレ……行かせっ」
「そういうプレイはまだ後で」
「違っ」
「ん? 漏らしちゃいそうならまあしょうがないから行かせてあげてもいいけど。ただイくだけならここでいいでしょ。少し間あけたから、濃度濃いんじゃないかなー。そんな垂れないって」
痛い。
痛いのに。
正面から秀一は、俺をジっと見つめてくれる。
いやらしい視線で。
「……ぃく………」
「どうして? ちゃんと説明して?」
「秀一の……っ足がっ……気持ちよくてっ」
「足りない」
「……ご主人様の……っ足が……俺の、グリグリってっ…あっ…ぁっ」
「で、言いながら感じてるの?」
「は…ぃっ…。ぁっ…ん、ぃたぁっ」
「痛いの大好きだもんねぇ」
「好きっ…ぃくっ…っ」
「……やーめた」
そう言ってしまう秀一に焦らされて。
何も出来ずにいると、店員さんが注文の品を持ってきてくれた。
ギリギリで止められた欲望が辛くて。
いますぐにでも自分で擦りあげたくてしょうがない。
「雅紀さ。ちょっと今、羞恥心飛んでたから」
やめた理由か?
「っ……そんなことっ」
「ここが喫茶店だって自覚してくれなきゃ、羞恥プレイの意味ないし。それに、あのままじゃ、大きな声出しそうだったし。久しぶりだから、いつもより感じてんの?」
秀一の言う通り。
いつもなら、こういう場でやられてもなんとかある程度声は我慢する。
いや、今だって出来なかったわけじゃないだろう。
うっかり、忘れて気持ちいいことに没頭しかけた。
他の客は少ないし、店員からも直接視界に入る位置ではないにしろ、公共の場だ。
秀一が止めてくれなきゃ、どれくらいの声をあげていたことか。
けれども、イきたくてたまらない。
「聞いてるんだけど」
「……っ……はい。いつもより……」
「すごい、エッチな顔してる。かわいいね」
にっこり笑いかけられ、体がゾクっと震え上がる。
「んっ……っ」
「……踏んでいい?」
「は……い」
また、秀一の足が。
いや、違う。
今度は靴を脱いでくれて、少し柔らかな足の裏の感触。
「んんっ!! んぅ……っ」
つい、腰を寄せるよう体が沈む。
「はぁっ……秀一ぃ……出るっ」
「恥ずかしい?」
「は……ぃっ……っんぅっぃくっ」
「いいよ」
俺は両手で口を塞ぐ。
それを確認してか、秀一は少し強めに俺のをぐにぐにと踏みつけてくれた。
「んぅっ……んっ……んぅ〜〜〜〜〜っっ!!!」
体がビクついて、イってしまう。
わかっているだろうに秀一は、俺のを踏み続ける。
「んぅっんっ!! んぅっ」
「気持ちイイ?」
頷くとやっと、足を離してくれた。
「はぁ……っぁ……」
「ホント、雅紀はえっちな顔するよね。たまらなく好きだよ」
突然、好きだと言われドキっとしてしまう。
「っ……そんな顔……」
「してるよ、今も。ローター気持ちいい?」
「……はい……」
「そう。よかったね」
にっこり笑顔を向けられ、秀一が紅茶を飲む。
それにあわせるみたく、俺もコーヒーを口にした。
あいかわらず頭がボーっとして体が熱い。
秀一の視線は、まるで俺を視姦しているように感じた。
昔は、視線だけで感じるはずがないと思っていたのだけれど、それは間違いで。
見られるだけで体が震え上がってしまいそうになる。
「……秀一」
「なに?」
「……んっ……」
「教えて?」
机の上に左手を置くと、そっと撫でてくれる。
いやらしい手つきで、指に指を絡めて、擦ってくれて。
その指で、俺のも……そんな風に一度思ってしまうと、直接触られているわけでもないのにソコが熱くてたまらなくなる。
我慢出来なくて、とうとうズボンのチャックを下ろした。
秀一がしてくれるみたいに、直に取り出したモノに指を絡めていく。
さっき自分が出したせいもあって、そこはぬるぬるになっていた。
「んっ……んっ」
「泣いてちゃわからないよ」
秀一が言うように、涙が溢れてくる。
「ぁ……んっ……秀一……っ」
秀一が俺の手を引いて、指先をペロリと舐め上げる。
また体がビクついて、涙でぼやける視界の中、秀一と目が合った。
「俺っ……んっ……はぁっ」
「説明出来ないの?」
秀一が、俺の手を離しかける。
今度は、俺の方から握り返していた。
「はぁっあっ……っ……我慢できなっ」
「で? 右手で遊んでるの?」
「んっ……ぅんっ……ぃくっまたっ……」
「ホント、悪い子だね。ちゃんと、俺が言うように1週間、我慢出来てた?」
その言いつけにはちゃんと守った。
頷くと、秀一が空いた手で、俺の頭を撫でてくれる。
「ローター入れるときも、我慢した?」
もう一度、頷いて我慢したと示す。
「じゃあ、いいよ。ちゃんと声、抑えてね」
頭を撫でていた手が、頬を撫で唇を撫でた。
唇に触れた親指へと、舌を絡める。
「かわいいねぇ。しゃぶらせてあげる」
秀一の親指が口の中に入り込み、俺はそれにしゃぶりついた。
秀一の味がする。
その指が、舌を撫でてくれる。
「ぅんっんっ!! んぅっ……んぅんんんっっ!!!」
喫茶店の床に、精液を放ってしまう。
なんとか、声は抑えたし、秀一の指に歯も立てなかった。
「……スイッチが入ると雅紀はすぐこうだ」
軽く笑われるが、褒められているような気がした。
こんなことは駄目だとわかっているのに。
「じゃあ、イイ子だからついでに、ここでローター抜いてごらん」
「……ぁ……」
「もうテーブルの下で、丸出しなんでしょ? コード引っ張るくらい平気だよね」
「……また、したくなるかも」
「かも? もうずっとしたいって顔してるけど。それとも、出すとこじっくり見てて欲しい?」
秀一が、じっくり見ててくれる?
「……う……ん」
「そうだねぇ、久しぶりに見ようかな。俺も一週間、いやらしい雅紀を見るの我慢してたわけだしね」
ただほっといたってわけでなく、秀一も、我慢してたのか。
そりゃ、俺と違って秀一は一人で抜いてるかもしれないけれど。
でも、俺を見るの我慢してたって。
そんなの聞かされたらますます我慢出来そうにない。
つい、掴んだままの自分のモノをまたそっと撫でてしまう。
「っ……秀一……したい」
「1週間しないだけで、そんなに耐えられない?」
秀一とは、一緒に暮らしているし、結構頻繁にHなことをしていた。
一週間も空けられたら、耐えられない。
しかもいま、こんな風に煽られて、体が収まらない。
「ぅん……」
「なにがしたいの?」
「んっ……」
「言えないならしないよ」
, 「……えっちなこと」
「……してあげるから、そろそろ右手休めなよ」
「っんっ……んっ……俺っ」
「んー、止まんないの? しょうがないねぇ」
そう言って、秀一は俺の隣へと移動する。
俺の右側。
少し身を乗り出すと、俺の右手をどけるようにして、代わりに掴んでくれる。
「ンっ! んぅっ!!」
「これイったら、少しは我慢するんだよ」
そう耳元で言われ、コクコクと頷いた。
「振動、無くてもイけるよね」
ローターの振動。
秀一が手でしてくれるのなら、物足りないなどということはない。
頷くと、ポケットにしまっていたローターのスイッチをオフにされる。
秀一の指先が、ぬるぬるの亀頭を撫でてくれ、すぐにでもイってしまいそうになった。
けれど今イってしまったらもったいない気がして、我慢をすると、竿にぬめりを塗りつけながら、撫でて擦ってくれる。
自分でするより何倍も気持ちがいい。
「はぁっ……ぁっ……ぁんっ」
「雅紀、声ちゃんと殺して」
「んっ……ぅんっ……ンっ! んぅっ」
「そう。いい子。あとでたっぷり声出させてあげるからね」
秀一の名前を呼んで、気持ちいいって、もっとって言いたいのを必死で我慢し頷く。
「んぅっンっ……んっ! んっ」
「そんなに腰くねらせて……あんま変な動きすると目立つよ」
そんなことを言われても、つい腰が動いてしまう。
「んっ……ぅんっ! ……ぃくっ」
「……声、抑えてね」
もう一度、念押しされ頷くと、秀一が体をかがめ、俺のに口付けた。
まるで落ちたスプーンでも拾うかのような体勢で、俺のを咥え込んで舌を絡められてしまう。
「んっ!!! んぅっ……んぅんんーーーーーーっ!!」
思ってもいない行動で、咥えられてすぐにイってしまっていた。
そんな俺のを秀一が飲み込んでくれる。
俺はよく秀一のを飲むけれど、逆は滅多にない。
「ぁ……秀一……」
「ん……。やっぱり1週間溜めると3回目とはいえ濃いねぇ」
そんなことを言いながら、何事もなかったかのようにまた正面の席へと戻った。
「雅紀、声出しそうになってたよね」
「……あれは」
「昔から変わらないね、そういうとこ」
昔から。
10年前から。
あの頃は、秀一とこんな風に同棲まですることになるとは思っていなかった。
俺は本気で好きだったけれど、いつかフラれるんじゃないかって、ビクビクしてて。
年月を重ねるごとにその不安は解消されていったけれど。
「でも、雅紀はいいお嫁さんになってくれたよね」
「なっ……お嫁さんて」
「違うの?」
同棲する前。
まるでプロポーズのように、一緒に暮らそうって言ってくれた。
秀一が働いて。
俺は家で少しだけ稼ぎながら家事をしている。
やっていることは嫁みたいなもんなのかもしれないけど。
「……そんな風に、思っていいの?」
「ん? どういう意味?」
「秀一の嫁とか……自惚れてるみたいで」
「いまさら……。いいよ。っていうか、これからも俺のお嫁さんでいて?」
あまりに恥ずかしい言い方をされ、顔が熱くなる。
そんな俺を見てか、秀一が軽く笑う。
からかわれているのかもしれない。
「雅紀、返事は?」
「っ……はい」
「はい、じゃわからないよ」
あいかわらず、秀一は恥ずかしいことを言わせたがる。
「……秀一の、お嫁さんでいます……」
「よく出来ました。じゃあ、一緒に家、帰ろうか」
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