「深敦、まだ3面かよ」
「こんなもんだろ。お前どんだけスピーディーなんだよ」
 一旦停止し、振り返る。
 そこには、パジャマ代わりのラフなズボンで、上半身裸の啓吾。
 ……髪は濡れたまま、タオルで拭いている。
 なんかエロい。
 風呂あがりの啓吾ってこんなんだっけ……?
 初めてではなかったと思うんだけど。
 あ、眼鏡が無いからちょっと違う感じすんのか。

「……上、着ねーの?」
「後で着るよ」
「眼鏡は?」
「曇るし」
「……髪、乾かしてこいって」
「時間掛かるし。水垂れない程度には拭いたし乾かした」
 そうなんだ。
 まあ俺も結構、自然乾燥しちゃうけど。
 でも、啓吾は駄目だ。
 少し長めの髪が、首筋に張り付いてる感じとか、前髪あがってんのとか、なんかエロい。
 そもそも上半身裸だし。
 ……俺、なんで男の上半身見てエロいとか思ってんだろ。

「貸せって。7面まで進めてやる」
 俺の隣に座り込んで、コントローラーを奪う。
 シャンプーのいい匂いがした。
「俺がやるってば。啓吾は見てろよ」
「じゃあさくっとやれよ」
 まったくうるさいなー。
 俺的には、結構なスピードでやってんだよ、これでも。
 コントローラーを奪い返し、ゲームを進める。

 すると、右側に座っていた啓吾の左手が俺の髪を撫でて来た。
「……なに」
「いや、暇だし」
「ゲーム見てろよ」
「見てるよ」
 気にしないようにしようと思うのに、啓吾の手が俺の髪を梳かしてくれて、なんだかゾクっとした。
 ちょっと気持ちいいかも。
「深敦?」
「ん……なに。耳元でしゃべんな」
「なんで顔赤いん?」
「っ……赤くねーしっ」
 つい、啓吾の方を見てしまう。
 赤くなんてなってないよな、俺っ。
 そう思ったのに、啓吾と目が合って、ジっと見つめられるとなんだか恥ずかしくなってきた。
 なんで、そんなジっと見てんだよ。
 ああ、眼鏡なくて見にくい?
 だったら、俺が顔赤いかどうかだって、見えないんじゃねーの?
 ……俺、引っかかった?

 そのまま、頭を引き寄せられる。
「なっ……」
 俺が、なにか言う前に、啓吾の口で塞がれた。
 なにこれ。
 なんか、恥ずかしいし。
 押しのけようと、コントローラーから離した手で啓吾の体に触れる。
 そうだ、こいつ、服着てなかった。
 ゆっくりと舌を差し込まれ、俺の舌を絡め取っていく。
 熱い。
 こいつの体温、風呂で熱くなってんじゃねーの?
 あいかわらず啓吾のキスはエロい。
 っつーか、なんかもう啓吾の存在自体、エロいんだけど。

 舌で舌を舐められて、撫でられて。
 体がゾクゾクした。
「んっ……んっ」
 俺はゲームを7面まで進めて、なんでもない会話して、息抜きに偽物の23時過ぎに菓子食べるっていう計画があるのに。
 いつもなら、掴んでたかもしれない啓吾のシャツの代わりに、啓吾の肌へと爪を立ててしまう。
 啓吾が、息苦しいくらいに激しいキスするせいだ。
 何度も、舌を絡めて、吸われて。
 頭がおかしくなりそうで。
 たまに口を離してくれるけど、すぐまた重ねられるし。
 上手く呼吸出来ない。
「ぁっんっ! んぅっ」
 もう苦しいってば。
 小さく胸を叩くと、やっと口を解放してくれる。
 けれど、耳元で軽く笑われた。
「っ……なに」
「別に……。深敦は? なにキスだけで勃起しちゃってんの」
 その言葉を示すよう、啓吾の右手が俺の股間をぎゅっと掴む。
 ズボンの上からだけど、びっくりして体が小さく跳ねた。
「っしてなっ」
「してるだろ」
 してたっけ、俺。
 わからないけど、少し揉まれて完全に勃起した。
 そのまま、啓吾は布越しに俺のを擦る。
「んっ! んぅっ……啓っ」
「……かわいいよ、深敦」
「……っんっ!!」
 なに言ってんだ、こいつ。
 実は、啓吾に見せかけた優斗じゃないよな?
 普段、あんまそんなこと言わねーじゃんっ。
 なんだよ、俺のことからかってんの?
 だって、全然かわいいことなんてした覚えねーし。
 1人でゲームしてて、キス嫌がっただけじゃねーかよ。
 
 言われ慣れなくて、顔が熱くなる。
 耳元でんなこと言うな。
「ぁあっ……んっ」
「なに。もしかして言葉で感じてる? ……かわいいって言われて感じるようになったん? 深敦は」
「違っ……んっ!」
 くっそ。
 やだもう、これ、なんか恥ずかしい。
「んっ! んぅっぁっ……あっ」
 お前が、いやらしい手付きで触るからっ。
「布越しに触られただけで、そんな声出ちゃうんだ?」
 声……。
 抑えないと。
 そう思った矢先だ。
「もっと聞かせろよ」
 また耳元で啓吾が言う。
 だからその耳の近くでしゃべるのやめろって。
 その上、ズボンと下着の中に、啓吾の手が入り込む。
「ぁっ……啓吾っ」
「……んー……。すっげ、濡れてんだけど」
 濡れてるとか言うな。
 自分でもわかってるけど。
 なんかもう、先走ってる。
 ホントはイっちゃいたいくらい気持ちいいの、すっげぇ我慢してるし。
 ヌルヌルと、啓吾の指先が俺の亀頭を撫でる。
「んぅっ! あっあっ……ふぁっ……んっ!」

 もうイくとか。
 駄目だって。
「なぁ。なんで風呂入って来いとか言うわけ?」
 え、時間ずらすためですけど。
 なに。
 あれか。
 恋人がH前に、先にシャワー浴びてきて、みたいなことしちゃってた? 俺。
「違っぁっ」
「なにが、違うん? なんかあった?」
 むしろこれからホワイトデーがある。
 でも、それには気付かなくていいから。
 そうだ。
 せっかくのホワイトデーだし、なんつーか、いっつも啓吾より俺の方がイっちゃってるから、そういうの我慢してみるとか。
 なんて思うけれども、キツい。
 啓吾は俺のこと知り尽くしてて、俺が気持ちいいことばっかしてくる。
「見ていい?」
 唐突にそう言われ、理解出来ずにいると、啓吾は一旦、手を話してしまう。
 少し名残惜しい。
 けれど、俺の体を押し倒すとすぐさま、ズボンと下着を引き抜いた。
「なっ……おい、ちょっと」
「見ていいか聞いただろ」
「答えてねーだろっ」
「駄目とも言わなかっただろ」
 くっそ。
 むかつく。
 その上、啓吾は俺の足を深く折りたたむ。
「啓吾っ」
「なに……」
 なにじゃなくて。
 でもそのちょっとかったるい感じで言う「なに」、嫌いじゃない。
 体をかがませた啓吾が、先走りで濡れてしまっている俺の先端に舌を這わす。
「んっ……」
 てか見るどころか舐めてんじゃん。
 エロいなこいつ。
 色っぽい。
 つい見入ってしまう。
 啓吾の舌が俺の亀頭に絡まって、溢れ出た液を舐め取っていく。
「ぁあっ……んっ! んぅっ! あっ」
 いく。
 も、やばいってば。
「はぁっ……啓……ぁあっんっ! んぅっ」
「……我慢してんの?」
 見破られた。
 体を捻り、床に爪を立てる。
 さっき思いついた自分の考えが頭から離れない。
 たまには、自分よりも啓吾にイってもらおうだとか。
 いつも、俺ばっか。
 何度もイって、啓吾は1回とか。
 そういうのちょっとは悪いと思ってるし。
 啓吾が勝手にイかせてくるからしょうがないんだけど。

「んぅっ! あっあっ……ゃっあっゃああっ」
「お前、我慢するとすっげーいやらしい声出るよな」
 ふざけんな、バカ。
 目を瞑って、イかないよう意識してみる。
 けれど、ぬるぬるとした啓吾の舌の感触はたまらなくて、体がビクついた。
「ぁんっ! あっ……んーっ、ぁあっあっ」
「イけって」
「やっぁっゃあっ……ゃあんっ、あっあっ」
「自覚無い? お前、すっげぇ声出てるけど」
「ひぁっぁんっあっ、ゃあっやっあぁああっっ!!」

 イってしまい、出した精液を啓吾が口で受け止めてくれる。
 それをなんとなくボーっと眺めた。
 口から、俺の精液を手に出す啓吾はすごくいやらしい。
「はぁ……」
「なに脱力してんだよ。無駄な我慢しやがって」
「無駄とか言うな」
「なにこの精液。濃すぎだろ」
「っ……最近、抜いてなかったし」
「だったら我慢しなくていいやん。いまさら恥ずかしいとかねーだろ」
 恥ずかしい。
 何度やったってイくのを見られるのはそれなりに恥ずかしい。  

 啓吾は俺の精液を纏った指先で、後ろの窪みを撫でる。
「ぁっ……」
 イったばっかだからか、それだけで体がゾクっとした。
「啓……吾……」
 今入れられたら俺、またすぐイっちゃうんじゃ……。
 そんな不安をよそに、啓吾の指先は容赦なく入り込む。
「んぅんんっ……」
 見上げると、啓吾の裸が目に入った。
 なんだか恥ずかしくて顔を逸らす。

 啓吾の指先は的確に、俺の気持ちいいところを撫でて押してくる。
「ぁっあっ……ぁあっ」
 あまりに的確すぎて、すぐにでもイかされるような気がした。
 駄目だって。
 こう何度もイくのは。
 それが通じたのかなんなのか、啓吾は空いた手で、きゅっと俺の根元を掴む。
「ぁっ……啓吾っ」
「なぁんか我慢してるみたいだし? どうせなら心置きなく我慢させてやるよ」
 なんだ、それ。
 意味わかんねぇ。
 それでも、ぎゅっと根元を掴んだまま、啓吾はもう1本指を差し込んだ。
 2本の指が、ぐちゃぐちゃと中を掻き回していく。
 それ、絶対我慢させようとしてるやつの愛撫じゃねぇっての。
 イかせる気満々なくせに。
「ひぅっ! あっあっ、ぁあっ、ゃだっ」
 少し激しい指での愛撫に考えがまとまらない。
 痛くは無い。
 けれど、中でグニグニと前立腺を押され、擦られて、おかしなくらいに体が震えた。
「ぁああっ! ぃくっあっいくっ」
「イけねーくせに。っつーかまだ指入れたばっかだろ」
「ひぁっあっあっ! 啓吾ぉっ……駄目っ」
「なにが?」
 頭おかしくなる。
 イきたい。
 さっきまで我慢したいと思ってたけど。
 もうイきたくてたまらない。
 指入れられてちょっと弄られただけなのに。
 啓吾の指が気持ちよすぎるせいだ。
 啓吾が、エロいせい。
「いくっ……あっあっ、ゃだっあっ……ぁんっ! あっ」
「なんで我慢してた? 言ってみ」
 今言う余裕ないってば。
「はぁっあっあっ……無理っぁっやだっぃくっ」
「駄目」
「ゃあっあっ! 啓……っはぁっあっぁんんっ! いくっ」
「いくいく言いすぎ」
 だってそれ以外言いようないし。
 熱い。
 いきそうでいけない。
「はぁっあっ、ぅんっ! イかせっ」
 涙で視界がぼやける。
 啓吾が笑ってんのか真顔なのかもよくわからない。
 ただ、あいかわらずぐちゃぐちゃと俺の中をかき回す。
「駄目っ、ぁあっあっぁんっあっ、いかせてっ」
「……ったくしょうがねーな」
 何様だよ、こいつは。
 それでも、指を外し、愛撫を続けてくれる。
 ものすごく気持ちよくて、恥じらいが飛ぶ。
「あぁああっ、あっあっ、いくっ……やぁっやぁああっっ!!」



「なぁに立て続けに2回もイっちゃってんの」
 立て続けってほどでもないだろ。
 こう、口でされて。
 指でされて。
 ……順当な回数だ。
 たぶん。
「はぁ……はぁっ」
 体が落ち着かない。
 息を整えるのにいっぱいいっぱいだ。
 それなのに、啓吾は、指を引き抜いて、俺の右足を抱え込む。
「啓吾……? 入れ……んの?」
「お前、1人で疲れてんじゃねーよ」
 そりゃ、俺だけ二度も……とは思ってるけど。
「啓吾が、無駄に止めるから」
 だから疲れたんだ。
「お前が我慢してたんだろ」
「それは、最初だけ」
「なんで、最初我慢しようとか思ったん」
「……別に。たまにはそういう日も……」
「意味わかんねーし」
 わからなくていいんだよ。
「ん、もうちょっと、休憩……」
「お前は鬼か」
「お前が鬼だ」
「じゃあ、俺が鬼でいいよ」
 意味わかんねーよ。
 啓吾は、自分の昂ぶりを俺の奥まった部分へあてがう。
 鬼畜め。
「まだ、待っ」
「待てるわけねーだろ」
 
 指よりも熱くて、大きい啓吾のが、ゆっくりと俺の中に入り込んでくる。
「んぅうっんっ!」
「息吐けって」
「はぁっ……キツっ」
「ああ……キツくてたまんない」
 たまんないとか言うな。
 恥ずかしい。
 奥の方までずるずると入り込んで、啓吾と完全に繋がってしまう。
 啓吾のが、全部、俺ん中に……。
「んっ! んぅっ」
「ああ、腰揺れてる」
「ふざけ……なっ」
「早く動いて欲しい?」
 動けばか。
 早く、啓吾ので、俺ん中、掻き回して。
「啓吾……はぁっんっ」
「エロいよ、お前……」
 エロいのはお前だろ。
 奥まで入り込んだまま、ゆっくりと掻き回される。
 ゾクゾクして、体がまたビクついて、啓吾の腕を掴む。
「はぁあっ、あっあっ!」
「気持ちいい?」
 気持ちいい。
 イった直後だし、こういう少しぬるいかもしれない愛撫がたまんなく心地いい。
「ぁああっあっ! あっぁあっ」
「声出しすぎ」
 小さく笑われるが、それどころじゃない。
 気持ちいい。
 とまんない。
 俺からも少し腰が揺れてしまう。
「ひぁっあっんぅっ! ぁあっあっ啓吾ぉっ」
「なんで今日、そんな感じてるん?」
 そんなのわかんねーってば。
 啓吾がいきなり風呂上りに上半身裸で出てくっから。
 ホワイトデー前夜だし意識しちゃうし。
 かわいいとか言うし。
 全部、お前のせい。
「ぁんっ! あっあっ……啓吾ぉっあんっあっ」
「こういう甘ったるいの好きだったんだ?」
 そうだ。
 甘ったるい。
 イっちゃって朦朧としてるのに、ゆっくりじわじわと、溶かすような愛撫。
 考えがまとまらない。
 啓吾が、俺の腕を引っ張って、抱き上げてくれる。
 恥ずかしい。
 けれど、気持ちいい。
 俺の体を抱きしめくれて、髪も撫でてくれる。
「はぁっ……啓吾?」
「どうしような……。かわいくてたまんない」  

 啓吾がとうとうおかしくなった。
 俺なんかをかわいいって、また言いやがって。
 なんのつもりだよ。
 からかうなら、そういう感じで言えばいいのに、マジなトーンで言いやがって。
 反発したいのに、なんだか出来ないし。
 恥ずかしいし。  

 腰を掴まれ軽めに突き上げられる。
「ぁあっんっ! んっ!」
 俺も、しょうがなく啓吾にしがみついた。
 なにかに捕まってないとそのまま倒れそうで。

 あいかわらずシャンプーのいい匂いがする。
 自分のモノが、啓吾の腹に当たって擦られて。
 中も啓吾ので擦られて。
 やばいくらいに気持ちいいし。
「啓……っぁあっあっ……んぅっ!」
 やっぱり俺、啓吾のことすごく好きだ。
 だからこうして、ホワイトデーに合わせて来てんだよ。
 なにかあげるなんて無理だって思ったけど、それはただ恥ずかしいからだし。
 本当は、好きだから、なにかしたいとは思う。
 なにすればいいのかわかんねーけど。  

 こっそり、啓吾の体を強めに抱きしめる。
 なにかにしがみついてないと、刺激に耐えられない……フリ。
 もちろん、しがみついてないと苦しいんだけどさ。
 ……ただ抱きつきたいだけ。
「はぁっあっあっ……啓吾っんぅっ」
 啓吾も俺の体を抱きしめてくれて、そのまま俺の体を揺さぶる。
 なんだかやらしい音が響く。
 俺ら今、すっごい密着してるし。
 恥ずかしい。
 けどたまんない。
 少し顔をあげると目が合った。
「あっ……んっ!」
 お互い引き寄せられるように口を重ねる。
 なにこれ。
 バカップルじゃないんだから。
 こんなこと……。
 そう思うのに、舌を絡め取られ、もうなにも考えたくなくなった。
 ただ、好きな人とHして、Hしながらキスして抱き合って。
 ……ああ、なにこれ、恥ずかしい。
 でも、すごいなんか幸せだし、気持ちいい。
「あっんっ! ぃくっあっ! あっ、ぁあっ」
「イきまくりやん……。いいよ」
「はぁっあっぁあっ、啓吾、はっ?」
「ん……俺も、イきそう」
「ぅんっ! あっぁんっっ……ぁあっいくっ……ゃあっあぁああっっ!!」

 

 ……駄目だ、俺。
 結局3回もイっちゃってるし。
 啓吾のが流れ込んでくる。
 体がゾクゾクした。
 中で出してんじゃねーよって思うのに、反発する余裕ないかも。
 なんつーか、連発しすぎた。
 体もたないって。
「はぁ……啓吾、ん……休憩……」
「休憩ってなに。お前、まだする気?」
「そうじゃな……はぁ……とりあえず、も……」
「わかったよ」

 啓吾が俺の体を抱きかかえてベッドへと連れてってくれる。
 引き抜かれた瞬間、啓吾のが流れ落ちた。
 ……恥ずかしい。

 横たわる俺の頭を啓吾はそっと撫でてくれた。
「……疲れたんなら少し寝ろよ」
 そう言うと、汚した床をタオルで拭き始める。
「うん……」
 なんだか、たかだか1メートルくらいしか離れてないのに、もっと傍にいて欲しいって思う。
 重症だ。

「俺が、7面まで進めとくし」
「……それは自分でやる」
「じゃ、なんでやってデータ持って来なかったんだよ」
 ゲームはいいわけだし。
「啓吾……」
 名前を呼ぶと、啓吾は小さくため息をついた。
「お前それ無自覚?」
「なに……? なにが?」
「いや、まあいいけど。俺もちょっと横になるから。ベッド詰めろよ」
「狭いじゃん」
「お前が来て欲しそうにするからだろ」
「してねーし」
「じゃあ、来て欲しくないって?」
「……そうとは言ってねーけどさー」
 ちょっと寄ると、啓吾は俺の隣に寝転がってくれた。
 近い。
 また、頭を撫でられる。
 なんかこれ、すっげー子ども扱いされてる感じなんだけど。
 でも、疲れたし、眠くなってきた。

 あ……そうだ、菓子食べないと。
 いや、食べなくてもいいんだけど、あげないと……。
 駄目だ、まだ23時過ぎてないし。
 あと少しなんだけど。
「菓子……」
「なに」



 ……駄目だ。
 いつのまにか寝てた。
 でもって寝すぎた。
 時計を確認すると、1時。
 あれは偽物の時計だから本当は2時。
 なんにしろ、もうばっちりホワイトデー。
 まあ、恥ずかしいってだけだからいいんだけど、俺の計画が台無しだ。
 
 啓吾は俺の隣でぐっすり眠ってる。
 起きる様子は無い。
 ……ああ、このままサンタクロース的に枕元に置いてってやろうか。  
 
 そうだ、寝ぼけてる啓吾に、あげちまおう。
 
 俺はベッドから降り、クッキーの入った包みを取り出す。
 また、ベッドに寝転がり、啓吾が寝てるのを確認した。
「……啓吾」
 って、呼んだくらいじゃ起きませんよね。
 わかってる。
 少し体を揺さぶった。
「啓吾ってば」
「ん……深敦?」
「うまそうなクッキー売ってたから。お前にやろうと思って」
「……いま?」
「今食べなくてもいいけど。まあ、いま」
「うん……サンキュー」
 寝ぼけたまま、啓吾は俺からクッキーを受け取る。
 覚えててくれるかな、こいつ。
 さすがに朝、ちゃんと目が覚めて、クッキー見たら思い出すよな。
 それ、ただのクッキーじゃないんだぜ。
 ホワイトデーで、すごく意味のあるやつなんだ。

 よし、このまま俺は退散。
 ……すれば、一番恥ずかしくないのかもしれない。
 いや、あとでぶり返されるのも恥ずかしいか?
 なんにしろ、なんだかもう少しこの場にいたい。

 ……もう1回寝るか。
「啓吾、おやすみ」
「ん……ゃすみ……」
 こいつ、ただの条件反射だな。
 ああもう、朝のことは、朝になったら考えよう。


『啓吾×深敦』
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啓吾×深敦、ホワイトデー、ラブラブぶり(R有り)をリクエストしていただきました。
べったり甘々ではありませんが、彼らなりのラブラブさを出してみたつもりです。 深敦がちょっとだけ甘えることに慣れてきてます。

こぐまさんへささぐvvリクエストどうもありがとうございました♪