冬休みだってのに、赤点は補習授業なんだと。
「じゃあ、このプリントやってくるように。明日、答え合わせします」
50分授業の最後、配られた課題プリント。
まぁ1枚だけなんだけど、俺は英語が苦手で英語の補習受けてるんですよ。
そうすんなり出来るかっての。
「深敦、ここでやってく?」
同じく補習を受けてたクラスメートの泰時がそう声をかけてくれるけれど。
このまま泰時とやってもかなり時間かかりそうだしなぁ。
「…俺、寮で珠葵か誰かに教えてもらおうかなって」
「そっか。じゃあ俺も寮でやるかなー」
そんなわけで、一人、珠葵の部屋を訪ねてみるが、鍵がかかって開かない。
…あぁ。
そういえば珠葵、数学で赤点取ってたっけ。
カバンから取り出した補習授業の時間割を確認すると、数学は英語の後。
いまは学校ってことか。
しょうがない、啓吾に聞くかなぁ。
なーんか、啓吾だとあまりにも馬鹿にされそうで。
いや、珠葵にだってちょっと馬鹿にされるかもしれないけど?
啓吾は頭良すぎて、俺がどこをどう理解してないのかわかってくれそうにないんだよな。
『なんでわかんねぇの?』って本気で疑問みたく聞いてきそう。
春耶……に聞くとなんか、『なんで、啓吾に聞かないの?』って変に詮索されそうだし。
そもそも、冬休みの課題を晃と一緒にやってるだろうから、ちょっと俺はお邪魔虫状態になるだろう。
…うん…まぁ啓吾でいっか。
そう思い、啓吾の部屋を訪ねると、いるにはいるんだけど…爆睡してますね。
ドア開けても全然気づかないくらいなら、鍵を閉めて寝たらどうなんだ。
こいつ寝起き悪いしなぁ。
起こす気にはならないんだけど。
どうにか自然に起きてくれないだろうか。
というか、少しくらいは自分で考えるか。
しょうがなく、啓吾の机を借りて、プリントを眺めてみる。
…わかんない単語とか、たくさんあるし。
電子辞書、引き出しん中かな。
でもさすがに人の引き出し勝手に探るのも。
英和辞典、立ってるか?
机の前を少し探ったときだった。
積み上げられていた教科書に腕がぶつかって、その教科書の上に乗っていた筆箱やらペットボトルやらが落ちていく。
……やべぇ。
そう思ったときには遅かった。
ペットボトルの落ちるゴンって音と、ボールペンの散らばる音が辺りに響く。
「ん……」
啓吾が、ゆっくりと顔をこちらへ向ける。
起きた…か。
目を細めるのは、見にくいからか、にらんでるのか。
「……深敦?」
「あ…うん。起こすつもりはなかったんだけど」
「ふーん……」
ベッドから起き上がり、少しボーっとした様子。
俺はとりあえず、落ちてしまった筆箱やらを拾って。
さて、どうしよう。
このタイミングで帰るのもやらしいし。
「…机、借りてていい?」
「ん…」
「…お前、眠いなら、寝とけよ」
「……いいよ。起きた」
むしろ寝てろよ。
起こしちまった俺が言うのもなんだけど。
座ったままの俺の背後から、机の上の課題を覗き込む。
「聞きにきたん?」
「あ…まぁそうなんだけど。もう少し、自分の力でやってみようかなって思ってたとこだし」
「…ふーん」
っつっても、いっこうにどいてくれる気配がない。
俺を挟むようにして、後ろから机に手をついて。
こんな状態じゃやりにくいんだけど。
どけとも言いにくいし。
「電子辞書借りたいんだけど、いい?」
「うん」
いや、うんじゃなくて。
どこにあるかとか。
…うーん。
少しだけ沈黙が続いたかと思うと、俺の頭になにかぶつかる。
「痛って」
「…あぁ…。悪ぃ」
…啓吾?
啓吾の頭か。
ちょ、そんな頭カックンカックンした状態で、頭上にいられても。
このまま俺の上で寝るんじゃないかこいつ。
振り返って、啓吾を見上げると、やっぱりボーっとしてる。
っつーか。
なんか気だるそうで、色っぽく見えた。
髪の毛ちょっとぐちゃぐちゃだ。
つい手を伸ばして、髪を整えるように手でとかしてやると、くすぐったいのかピクンと顔を軽く避ける仕草が、妙にエロい。
寝起きの啓吾って、不機嫌そうなイメージあったけど……。
こうやってボーっとしてる分には、無害か?
「…眠…」
だろうな、眠そうだよ。
「寝てろって。お前がもう一度、起きたら聞くから」
俺の言葉を確認してか、顔を寄せる。
…キス…ですか。
しょうがなく、軽く口を重ねると、やっとおとなしくベッドに戻って寝転がった。
ったく、これだからお兄ちゃんに甘やかされて育った子は…っ。
…にしても。
寝起きとか、寝てる啓吾って、結構ツボっていうか。
無防備だし。なんとなくエロい。
写真撮っても起きねぇかな。
いや、ほらだって、珍しいし。
啓吾の寝顔じっくり見れる機会って少ないし。
一枚、携帯で撮影。
やっぱり携帯のシャッター音くらいじゃビクともしねぇな、こいつ。
画像を確認するけれど、さっきの方がエロかった。
俺と頭ぶつかったとき。
痛かったから?
無理矢理起きてたから?
啓吾って少しくらいなら手とか出しても起きねぇよなー…なんて考えてしまう。
さっきは、ペットボトルやら筆箱が落ちたくらいで起きたけど、あれはちょうど運悪く眠りが浅いときだったんだろ。
意外と音でかかったし。
俺もベッドの方へと近づいて、啓吾をじっと覗き見る。
やっぱり、寝てるとかわいいな。
また、髪を軽く手でとかしてやると、それに反応するように、顔を俺の方へと向かせた。
啓吾って、やってるときとかそりゃ色っぽい感じするけど、やっぱりかっこいいから。
こう無防備な状態で、感じたりしたらどんな顔すんのかとか。
…気になるんですけど、いいだろうか。
そっとズボンの上から股間に触れてやると、少し足が動いた。
啓吾のことだから、目が覚めてもボーっとした状態で『なにしてるん?』とか言うだけで。
俺がなんでもないって言ったら、夢だと勘違いしてそのまま済みそうな気もするし。
ズボン越しに、手で擦っていくと、啓吾が俺とは反対方向に顔をそらした。
くそう、見えないじゃんかよ。
……ってか、俺も、自分以外の男の股間を自らの意思で擦るなんて、重症だ。
だから、これは啓吾が悪いんだよ。
俺だって別に思いっきりごっつい男の股間なんて触ろうと思わないわけでさ。
啓吾だからなんだよ。
何度も擦ると、次第にそこが硬くなっていく。
「…はぁ…っ…」
あ…啓吾の息、少し荒くなってきてるよな。
もうちょっとしたら、もしかしてエロい声とか出すんじゃ…?
…出来心。
という言葉が頭ん中に浮かんだ。
ズボンのチャックを下ろして、啓吾のを取り出す。
亀頭を、指先で押さえてみると、ピクンと体を震わせて、啓吾がこっちを向いてくれた。
「ンっ…!」
あ…。啓吾の感じてる顔。
妙に恥ずかしくなってくるし。
エロい。
少し眉を寄せて、軽く開かれた口から、声…にはまだなっていない息を漏らす。
直接擦りあげると、啓吾が自分の手の指を噛む。
癖かな。
エロいから写真に撮ってしまおう。
自分の変態さを思い知る。
写真に撮ったはいいけど、俺まで興奮してきたし。
…啓吾の、このままほっといていいかな。
いや、良心が痛むなぁ。
そもそも、こう啓吾を目の前にして、啓吾おかずに一人Hとか。
俺、ものすごい欲求不満なやつみたいじゃん。
でもなんかもう、我慢できそうにないっていうか…。
啓吾がエロいからいけないんだっての。
散々、迷ったあげく欲望に負け、自分のズボンのチャックを下ろしかけたときだった。
「啓吾―? 電子辞書貸してー」
ドアをノックする音の直後、春耶の声が響く。
「―――っ!!」
あわてて、おろしかけたチャックを上げ、何事もなかったかのように、椅子に座って机に向かう。
セーフか。
「あぁあああ、春耶? 電子辞書、俺も探してて。でも啓吾寝てっからさぁ」
「…ふーん。…ってか、なんで啓吾は股間丸出しで寝てんの?」
股間丸出し…。
やっべ。
自分のことでいっぱいいっぱいで忘れてた。
「…さ…さぁっ?」
「…深敦、脱がしたの?」
「っ…いや、脱がしたとかじゃなくって!」
「しかも勃ってるし」
「そうなんだよっ! 朝立ち? 朝じゃねぇけどっ。キツそうだったから」
「あぁ、やっぱり深敦が出したんだ」
「違っ…! 違うんだよ。啓吾がっ」
そう目を向けると、不機嫌そうな目で俺を見上げる啓吾と目があう。
「ひぃっ!」
うわ、情けない声出た。
「あぁ、啓吾起きたんだ? 電子辞書借りたくてさー」
あせる俺と、不機嫌そうな啓吾を無視するようにして春耶がしゃべりかける。
あれですね。
啓吾の不機嫌ターゲットが俺にロックオンされてるからですね。
「どこ? 引き出しあけていい?」
「…いいよ」
あの、啓吾さん、俺の方見たまんまなんすけど。
これは寝ぼけてボーっとしてるっていうより、なんか不機嫌だ。
そりゃ、俺だって知らないうちに股間丸出しで寝てたら嫌だしっ。
それをまた別の友達に見られたら最悪だし。
その元凶が目の前にいたら、腹立つと思う。
「夢っ…夢だよ、啓吾、また寝るんだ」
ダメだ、俺、変なこと口走ってる。
「…お前の声で起きた」
ちくしょう。
春耶に、つい大きな声で反論しちまったせいだ。
「じゃあ、これ、借りてくからー」
電子辞書を見つけた春耶がなんでもないみたいに、電子辞書で啓吾に手を振りこの場を去ろうとする。
「いやいやいや、春耶っ」
つい春耶の服を掴み引き止めた。
「ん? どうした、深敦」
頼むから、この状態で2人きりとか。
怖ぇしっ。
「ちょっとっ。もうちょっと落ち着くまで待とうっ」
「はは。いいよ」
春耶…いいやつだ、お前っ。
「でもさ、深敦。部屋にアキ待たせてるんだ。それなりに代償は高いよ?」
にっこり笑顔を向けられる。
代償?
なにそれ。
って、俺が理解しようとする前に、フっと鼻で笑う啓吾。
「春耶くんは、俺と同じでドエスですからねー」
楽しそうに笑いながらそう言うと、たくらむようなアイコンタクトを二人が取る。
怖ぇ。
かといって、春耶がどっか行って二人きりも怖い。
「で。啓吾は結局、なんでそんな状態で寝てたんだっけ?」
「んー? 深敦くんが、どうしてもやりたくて、俺が起きるの待てなかったみたい」
「違っ…違うんだってっ」
「じゃあ、なに?」
やっぱり不機嫌か、こいつ。
「…なんていうか…」
「俺が勝手に、寝ながら勃起してチャック下ろしてたんだ?」
それだったら、ちょっと間抜けだな。
そうですよーって言いづらいのは、さっき春耶とのやりとりで、俺がチャックおろしたってのはどうにも肯定しちまったようなもんだし。
大きくなっててキツそうだったから…みたく言いましたけど、結局、啓吾はいつから起きてたんだか。
夢うつつではあったけれど、一応、されたこと覚えてるとか…。
携帯に撮ったなんてバレたらやばすぎるだろ。
ちょっと下手に出るべきか?
そうこう考えてると、ベッドから立ち上がった啓吾が、俺の右手首を掴む。
あ、右手っ。
右手になんか匂いとか残ってたら…っ。
「深敦…素直に言ってくれたら、別に痛いことはしねぇよ」
…え、言わなかったら拷問か?
拷問受けて結局、口割られるくらいなら、はじめっから言った方がいいかもしれないな。
ずーっと黙ってるってやっぱり厳しいだろうし。
右手だって……証拠になったりする…かも。
「…別に…ちょっと触ったら、勃ってきたんで、出してみただけです」
「ふーん…出して、どうしたかったんだよ」
啓吾が、俺の右手を引っ張って、無理矢理、出したままだった啓吾のを触らせる。
「っ…んなの、触らせんなよ…っ」
「触ったんだろ? 俺の寝てるうちに。なんとなーく、夢かと思ってたけど、覚えてるし」
それが『夢ですよ』で、済まされる状態じゃなくなってるってことか。
「お前、俺の触ってどうしたかったわけ?」
啓吾の感じてる顔を拝もうとしてました…とはさすがに言えませんけど。
「…別…に…」
「自分の中に、入れようとしてた?」
「なっ…そんなんじゃねぇよ」
ただ、おかずにはしかけましたが。
「水城が来なかったら、お前はどうしてた…?」
春耶が来なかったら…。
たぶん、啓吾をおかずに、一人で……。
やっべぇ。考えたら妙に顔が熱くなってきた。
顔をあげると、しれっとした啓吾と目が合った。
「っ…違…」
「なにが違うって? 顔、すっげぇ赤いんだけど。なに想像した?」
やばいやばい。
なんか啓吾のペースだ。
腕を思いっきり引っ張られて、体ごとベッドへとダイブしてしまう。
起き上がる間もなく、のしかかった啓吾に上から見下ろされた。
抵抗とかしていいのかよくわかんねぇし。
デコの髪をかきあげられて、それに合わせるよう上を向いてしまうと、思いっきり口を重ねられる。
「っ! …っんっ…」
うそだろ。
だって、そこに春耶、いるんだろ?
舌入り込んでくるし。
ヌルって。
「っゃ…めっ」
顔を思いっきり反らして、啓吾のキスから逃れて。
それなのに、今度は啓吾の右手が俺の股間を掴みにかかる。
「啓吾っ!」
春耶もいるし、やばいよそれは、ってオーラを送ってみせるが、無理なのか。
啓吾の腕、剥がしたいのにそれに反発するよう、俺のをズボンの上から揉みしだく。
「んっ…ぅんっ!!」
やばい。
感じてきたし。
俺の手の力が緩んできたのがわかってか、強引に掴んでいたソコを、今度は擦って愛撫していく。
「っ…ん…っんっ…」
啓吾…の手、気持ちいい。
のに、じれったい。
つい目を向けると、たくらむ視線とぶつかった。
最悪だ。
チャックが下ろされて、俺のが取り出されてしまう。
「や…めっ…」
「直接、触って欲しかったんじゃねぇの?」
少し久しぶりに聞いた、サドっぽい口調に、背筋がゾクっとした。
その隙にも、ズボンと下着が引き抜かれていく。
「ちょっ…待っ…!!」
いやいや、さすがに待てよ、おい。
いきなりすぎると、抵抗って出来ないもんだ。
反応が遅れ、あっさりと下半身を外気にさらす。
俺がまだ混乱しているうちにも、啓吾が俺のを直接擦り上げていく。
「っっ! んっ…ぅんっ! んぅっ」
「…指、入れようか」
俺のを擦りあげたまま、もう片方の手の指が、後ろの入り口付近を撫で示す。
「…え…だってっ…」
春耶がそこにいるわけで。
とか、いろいろ言おうと思うんだけど、パニック状態。
啓吾は俺のから手を離すと、指に舌を這わしていた。
…このチャンスに逃げればいいのか…?
いや、どうすれば。
つい、横を見ると、椅子に座った春耶と目が合った。
うわ、思いっきり見てるし。
「ちょっ、啓吾っ! 春耶が…っ」
「二人きりがいい?」
いや、そういういう言われ方をされるとなんか、恥ずかしいんですけどっ。
俺の答えなんて聞く気もないようで。
なにも待たずに、ゆっくりと指先が押し込まれていく。
「っ! んっ! んーーーっ」
ベッドのシーツに爪を立て、なんとか挿入の刺激に耐えるけれども、奥まで入った啓吾の指が、今度は少し退いて。
軽い出入りを繰り返す。
「っんっ…ンっ! はぁっ」
やばい。
上半身をひねらせ、春耶の視界から逃れる。
頭上にあった枕を引き寄せて、抱きながら刺激に耐えようと思った。
それなのに、啓吾の指が的確に気持ちイイところを何度も何度も掠めていく。
「んっ…ゃあっ…ぁっ…んっ!」
息苦しくて、声も殺せない。
「深敦…。ココ…気持ちよさそうだな」
耳元で聞く啓吾の声は反則だ。
お前だって、興奮してんだろうが。
そんな熱っぽい声で、言われたらたまんなくなる。
「ぁあっ! んっ…んぅ!」
「あんま、声殺してると苦しいだろ…。もっと出しなって」
「だってっ…ぁっ…んぅっ…春耶がっっ」
「大丈夫…そんなに聞いてねぇよ」
くそう。
嫌に優しくて気持ち悪いのにドキドキするし。
「…どうせ、声、我慢出来ないんやん?」
そう言うと、指先が敏感な部分を突いてきた。
「ひぁっ!! あっっ…やっやめっ…っ!! 啓吾っ」
「なに…?」
俺の話を聞いてくれるのか、耳を傾けてくれる。
それを引き寄せ、啓吾に耳打ちを試みた。
「んっ…あっ、…ぁっ…ぃきそ…っ」
「いいよ」
「っゃっあっんっっ…春耶がっ」
「見ない方がいい?」
春耶の声。
俺の声、聞こえてんだ?
聞こえてるし、見られてる。
「や…っ…め、見っ」
啓吾はやっぱりやめてくれそうにない。
俺も、もう我慢できそうにないってば…っ。
「やっ…ゃあっ…あっ…んぅんーーーーっ!!!」
春耶がそこにいるのに、啓吾が突くから…っ。
……なんとか、ある程度声は殺したものの、イクの見られた。絶対。
春耶の方、怖くて見れねぇし。
恥ずかしい。
そっと、枕から目だけ覗かせ、様子を伺うと、意外と近くにいた春耶が俺の頭を撫でた。
「イイもの見させてもらっちゃったな。アキ、待たせてるし、これくらい見なきゃ分が悪いよね」
晃を待たせた代償って、こういうことか。
そんなんいいから、とっとと晃んとこ行けばいいのに。
って、引き止めたのは元々俺だけど。
じゃあねって、春耶が去っていくのを今度は引き止めなかった。
啓吾と二人きり。
啓吾に対して怒っていいのかもなんかわかんねぇし。
春耶がいるのになんであんなことすんだよって。
怒る気力もねぇよ。
ただ恥ずかしい。
あいかわらず抱いたままの枕から、目だけ出して啓吾を見ると、楽しそうな笑みを見せていた。
怖。
やっぱちょっとむかつく。
「…啓吾…なんで、こんな…」
「股間丸出しの勃起状態を先に深敦のせいで、水城に見られたのは俺なんですけど」
うぉお、あくまで被害者ぶりますか。
…被害者ですけど。
「…あれは…春耶が急にくるから隠し損ねたんだよ」
「深敦のせいだってのは、否定しないんだ?」
…もういまさら、否定する気もねぇけど。
「悪かったと思ってるよ」
「…結局、なにがしたかったんだ、深敦は」
…不機嫌なのは直ったのかな。
「別に。ホント、啓吾がどういう反応すんのか、見てみたかっただけ」
「ふーん…」
「怒ってんの?」
「怒ってねぇよ」
ホントかよ。
つい不信げに目をむけてしまう。
「怒ってねぇし。深敦が自分から俺の触るなんて初めてじゃね?」
そ…っか。
やっぱそうだよな。
自分の意思で、こんな風に触ろうとするなんて、いままでなかったんだ。
「…うん」
「なんかしてぇことあんなら、俺が起きてるときにしてくれりゃいいよ。別に、あまりに変なことでもない限り嫌がるつもりねぇから」
変なこと以外なら…。
……彼女の特権…ってやつでしょうか。
ちょっとドキドキするし。
頷いて目を向けると、そこにはやっぱなんていうかっこいい感じの啓吾がいて。
寝てるときとはちょっと違うんだよ。
妙にしてやられた気分。
まぁいいや。
「啓吾、俺、補習で出た課題、教えて欲しくて…」
「…深敦、人のモン勃てといて、自分だけイって終わる気なん?」
いや、ちょっといかにも終わりましたってな雰囲気出すもんだからつい忘れてたし。
……まだまだ終わりそうにないな。
にしても。
感じてる顔を写真に撮るのは『変なこと』ですかね。
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