4月を迎え、新しく学園に入ってきた先生たちとの交流もある程度、済んだ頃。
そろそろゴールデンウィークの予定でも立てるかというタイミングで、食事会の誘いが入った。
近くの学校に勤務する養護教諭の集まりで、研修でも顔を合わせることのあるメンバーだ。
新人はともかく、正直、俺はどっちでもいい。
そう思ってたんだけど……。
『柊くん、参加する? するよね?』
男子校で養護教諭をしている佐々木さんから、電話がかかってくる。
「んー、どっちでもいいかなぁって思ってたとこなんだけど」
『男少ないんだから、柊くんいないと寂しいなぁ』
養護教諭は女性が多いこともあって、研修もだけれど、こういった飲み会で男は肩身が狭い。
「佐々ちゃんは、参加決定?」
『今年、新しく男の養護教諭が入ったらしくてさ。男子校じゃないけど共学で、2人養護教諭いるとこみたい。俺も柊くんも行かなかったら……』
「ああ……」
新人ということもあって、とりあえず最初は参加してみようなんて思いそうだし、仮に参加したくなかったとしても、同じ学校の養護教諭に、誘われるかもしれない。
「案外、俺たちいない方が、男1人、ちやほやされて楽しいとか」
『それはわかんないけど、どんな子か見てみたくない? 柊くんと久しぶりにエロい話もしたいしなぁ』
「そこでエロい話はできないでしょ」
『じゃあ二次会でどう? どうせみんな早く帰るだろうし。お店見た? めちゃくちゃお酒の種類が豊富で、評判いいみたい。恋人と行くときの下見と思ってさ』
酔った宮本先生とは、すぐにやりたくなるから、できれば宅飲みしたいんだけど。
お店と家が近ければ、即お持ち帰りするのもありかもしれない。
「まあ、佐々ちゃんとは別の機会に飲んでもいいけど、新しい子も気になるし、とりあえず参加しようかな」
『やったー。どんな子だろうねぇ』
そんな話をした後、改めて店を確認する。
たしかに、良さそうなお店だ。
実際行って、いい店だったら、今度、宮本先生を誘ってみようか。
情報を追っていくと――
「あれ……」
そこが宮本先生の家から、徒歩圏内だと気づく。
「お持ち帰り、できちゃうなぁ」
そうして迎えた当日。
放課後、宮本先生が、保健室まで来てくれる。
「飲み会、今日でしたよね。またどんなお店だったか、教えてください」
飲み会の件は、少し前に話していた。
どうやら、宮本先生も行ったことのないお店らしい。
「お酒の種類が多いみたいです。良さそうだったら、一緒に行きましょう」
「ぜひ。今日は、あまり思うように飲めないかもしれませんしね」
たしかに、飲み会とは言ってるものの、みんなで集まっている間は、それほど飲める雰囲気ではないだろう。
「まあ、二次会で、好きに飲んじゃうかもしれないけど」
「二次会……?」
そういえば、わざわざ二次会をするだとか、そこまでは伝えてなかったと思い出す。
「仲良くしてる先生と、少し予定してるんですけど。男子校で養護教諭やってる男です。……心配?」
「あ、いえ、心配とか……大丈夫です」
少しくらい心配してくれてもいいんだけど、慌てて否定してくれる。
「その人も、同じ学校の教師と付き合ってるんですよね」
「その、男同士……ですか?」
「そう。だから、わりと話が合って」
宮本先生の顔がわずかに綻ぶ。
もしかしたら安心してくれたのか、自分と同じ境遇の人がいて嬉しいのかもしれない。
話が合いそうなら、4人で会ってみるのもいい。
けど、いまはそれより2人で――
「ゴールデンウィークの予定、よければ明日一緒に考えませんか?」
そう俺が提案すると、宮本先生は少し戸惑いを見せた。
「え……」
「もしかして、仕事でした? もう予定埋まってるとか……」
「いえ。俺も、同じこと言おうとしてたところで」
どうやら嬉しいのを、隠してくれているみたい。
そんな姿がかわいらしくて、宮本先生の頬を撫でる。
「あ……」
そのまま引き寄せて、口を重ねても、宮本先生が嫌がる様子はない。
薄く開かれた口の隙間から舌を差し込んで、絡め合わせていく。
「ん……ぅ……」
鼻から漏れる声がやらしくて、このまま襲いたくなったけど、俺はなんとか理性で欲望を抑え込んで、口を離した。
「……宮本先生は、まだ、仕事残ってるんですよね」
「はぁ……はい。でも、そろそろ先生行っちゃうかなって思ったんで……」
「ありがとう。お仕事がんばって」
「はい。それじゃあ、また」
仕事の合間に、わざわざ顔を出してくれた宮本先生を見送る。
手を出すのは明日の楽しみに取っておいて、俺は帰宅の準備に取り掛かった。
飲み会では、自然と男性陣で固まる。
新人の子の人となりもなんとなく理解し、無事、一次会を終えると、俺は予定通り、佐々ちゃんと2人で飲み直すことになった。
「柊くんて、酔ったらどうなんの?」
酒を片手に、佐々ちゃんが尋ねてくる。
「んー……やっぱり、ちょっと理性は揺らいじゃうかなぁ。気が大きくなるのかも」
「ああ、おんなじだ。普段なら、抑えられるんだけどねぇ」
お互い、それほど悪酔いせず飲めるタイプということもあって、どちらかが止めることもなく酒が進む。
酔いを自覚してきたあたりで、佐々ちゃんの携帯にメッセージが届いた。
「……あ、なんか雨降り出したって。名残惜しいけど、そろそろお開きにしよっか」
「このままじゃ、閉店するまで飲んじゃいそうだしね」
ちょうどいいタイミングかもしれない。
会計を済ませて外に出ると、男が1人、こちらに気づいた様子で車から出てきた。
「あの人……」
「ああ、俺の。迎えに来てくれたみたい」
どうやら、佐々ちゃんの恋人らしい。
軽く挨拶を交わした後、車で送るとか、傘を貸すとか提案してくれたけど、俺はそれを断った。
「小雨だし、家、近いんで大丈夫です」
「そうだっけ?」
佐々ちゃんが、首をかしげる。
「俺の家じゃないけど」
「ああ、そういうこと……」
どうやら、すべてを悟ってくれたらしい。
2人を見送った後、俺は雨の中を走って、宮本先生の家に向かった。
もちろん、雨宿りしたかったわけじゃない。
恋人に迎えに来てもらう佐々ちゃんを見て、自分も会いたくなってしまったんだと思う。
別に目の前でいちゃつかれたわけではないけれど、それでも2人が醸し出す雰囲気というのは感じ取っていた。
酒を飲みながらエロトークに花を咲かせたせいか『ああ、この人とそういうことしたんだなぁ』なんてことも頭をよぎる。
俺もそういうことはしているし、明日するつもりだったけど。
「はは……」
気づくと、インターホンを押しながら、軽く笑っていた。
軽く走ったせいか、完全に酔いが回ったのか、楽しみで、楽しくてしかたない。
「柊先生? どうしたんですか?」
玄関のドアを開けながら、宮本先生が驚いた様子で俺を覗き込む。
風呂あがりなのか、いい匂いがして、俺の理性を揺らがしてきた。
「あっ! 雨降ってたんですか?」
「うん。濡れちゃった」
「とりあえず……」
「とりあえず……キスしていい?」
玄関に入ると、すぐさま宮本先生を抱き寄せ、唇を重ねる。
「あっ、ん……」
腰を抱いて、頭を押さえ込んで、差し込んだ舌で口内を味わう。
「ん、んぅ……」
足の間に自身の右足を割り込ませると、宮本先生は、俺の腕の中で、小さく身じろぎした。
部屋着にしているスウェットのズボンの隙間から右手を差し込み、弾力のある尻に指を這わせる。
右足を軽く動かすだけでビクつく体を、押さえ込むように抱きながら、たっぷりと舌を絡めていく。
「ん、ん……んぅん……」
小さく首を横に振る宮本先生に気づきながら、それを無視して、俺は太ももで宮本先生の股間を刺激する。
理解が追いついていないみたいだけど、それでも、宮本先生のソコは、硬く熱を持ち始めていた。
戸惑う顔が見たくて、口を解放してあげる。
「はぁっ……はぁ……はぁ……!」
突然すぎて、鼻で呼吸することも忘れてしまったのか。
宮本先生は、荒くなってしまった呼吸を、必死に整えていた。
「ふっ……かわいい……」
風呂あがりだからか、あたたかくなっている宮本先生の頬を、手のひらで撫でる。
「あ、あの……」
「……勃起しちゃってるね。芳春」
「あ……だって……!」
靴を脱いであがらせてもらうと、今度は宮本先生の体を壁に追いやった。
さっきまで尻を撫でていた手で、ズボンの上から股間のモノに触れる。
「あっ……!」
頬に触れた左手で顔をあげさせたまま、ゆるゆる股間を撫で続けると、宮本先生は、困った顔で俺の目を見てくれた。
「あ……あの……あっ……え……? ちょっと……」
「大丈夫……俺もわかってないから」
「ええ……?」
いつもなら、したいと思っても、していいか頭をよぎって、ワンクッション置くのに。
その工程が、ひとつ飛ばされてるみたい。
たぶん、理性とか、遠慮とか、気づかいとか。
そういうものなんだろうけど。
酔ってるんだろうなぁ。
酔ってるから、酒のせいだからって、言い訳にはしたくないけど。
宮本先生だって、以前、酒を理由にしてきたことはあった。
「あ……ん、ん……ふぅ……待って……あっ、待ってくださ……あっ……んぅ……!」
「見せて。ここ」
「あっ……俺……!」
宮本先生は、本当に、頭が追いついていないのか、完全に戸惑っているみたい。
だから、わかっていない宮本先生に、俺はちゃんと説明してあげる。
「勃起しちゃってる芳春のペニス、見せて欲しいんだけど」
はっきり言葉にすると、宮本先生の顔がみるみるうちに赤くなった。
「あ……だ、め……」
「なんで?」
「だ……って……ん……そんな、いきなり……」
「じゃあ10秒待つ?」
「ええ……?」
「10……9……」
そうゆっくりカウントダウンしていく。
宮本先生は、あいかわらず戸惑いながら、残り5秒くらいで、ズボンに手をかけた。
それを確認して、俺はズボンの上から手を離す。
「あ、あの……」
「4…………3…………ね、もうすぐゼロになっちゃうけど」
別に、絶対見せなきゃいけないわけじゃない。
それでも、秒数が減っていくにつれ、急かされてるみたいな気持ちになってくれているのだろう。
ズボンと下着をゆっくり下にずらしてくれる。
「1…………ゼロ」
ゼロを口にする頃には、大きくなってしまったモノを、俺に晒してくれていた。
「ふっ……そうやって、自分から見せてくれるの、すごくかわいい」
「あの、俺……!」
このまま手でイかせようか。
それとも、口でしゃぶろうか。
宮本先生の視線が、俺の右手をチラリと窺う。
ついさっきまで、ズボンの上から宮本先生のモノに触れていた手だ。
戸惑ってはいるけれど、触れて欲しいみたい。
そんな宮本先生を見て、俺はあえて触れないことにした。
「悪いんだけど、水かなにか一杯もらえる?」
「え……」
思考が停止している様子の宮本先生を眺めながら、もう一度、告げる。
「ちょっと酔っちゃったみたいで。水もらえると嬉しいんだけど」
「ああっ、はい。それはいいんですけど……あの、これ……」
「これ?」
宮本先生は、ズボンをぎゅっと編んだまま。
「うん。見せてくれてありがとう」
「……えっ……と」
煽られて焦らされて、困ってくれる宮本先生は、本当にかわいくてたまらなかった。
「……あと、よければタオルも借りていい? 髪、結構濡れちゃって」
「あ……はい! タオルなら洗面所に……気づかなくてみません」
「借りるね」
ズボンを履き直す宮本先生をしり目に、洗面所へと向かう。
水で軽く顔を洗ってみたけれど、頭も体も、全然すっきりしてくれなかった。
酔ってることを自覚する。
顔や髪をタオルで拭いて、リビングに戻ると、宮本先生が、水に入れたコップを差し出してくれた。
「ありがとう。芳春は、飲まないの?」
「え、俺は……」
「お風呂あがりでしょ。少し飲んでおいた方がいいと思うなぁ」
気を使われたと思ってくれたのか、宮本先生は、もう1つ取り出したコップにペットボトルから水を注ぐ。
たしかに体を気遣ってはいるんだけど。
「喉渇いてるって自覚してからじゃ遅いっていいますもんね」
「うん。脱水状態になっちゃうと危ないから……ね」
このあと、いっぱい出しちゃうかもしれないし。
上着を脱いだ後、促されるようにしてソファに座ると、宮本先生もまた、隣に座る。
腕で、さりげなく隠そうとしているみたいだったけど、さっき煽った場所は、勃ちあがったまま、まだ収まっていない。
コップの水を飲みほした後、俺は左隣りに座る宮本先生の耳に口を寄せた。
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