「美和……ん、こういうのやだ……」
 濡れた体を美和に拭かれながら、俺は脱力状態で呟く。
「こういうのって、どういうの?」
「だから……もっとちゃんと……」
「ちゃんとって?」
「……お前、わかってんだろ」
「……言って?」
 美和の手が、促すように俺の唇に触れる。
 言ったら、してくれるんだろうか。
 ちゃんと入れて、ナカの手前から奥まで美和のチンコで押さえつけて、擦って。
 いっぱい……。
「はぁ……」
「想像してる?」
「してない……疲れた……」
 美和は耳元で笑うと、俺の手からコードを外す。
「安心して。次はゆっくり……優しいことしかしないから」
 安心出来るはずがない。
「まだすんの……?」
「するよ。玲衣くんだって、したいでしょ」
 疲れたけど、今日はまだ入れてない。
「本当に、優しいことしかしない?」
「本当……って言った方がいい? それとも優しいだけじゃ不満?」
 とりあえず、いまは優しくされたいけど。
 優しくしてって言うのもやだし。
 考えがまとまらなくて、なにも答えないでいると、美和が俺の正面に回り込んできた。
「一応、言っておくけど、俺は別に怒ったりイラついたりしてるわけじゃないからね」
「……別に、そんなこと思ってねぇけど……」
「俺が玲衣くんをいじめるのは、好きだから」
「……どっちだよ。好きって」
「玲衣くんが好きか、いじめるのが好きか? 玲衣くんが好きで、玲衣くんをいじめるのが好きなんだよ。玲衣くんは?」
 なにを聞かれてるのかよくわかんないし。
 そんな俺に気づいてか、美和は改めて問いかけてきた。
「俺にいじめられるの……好き?」
 さんざん、好きだよねって、決めつけてきたくせに。
 むかつく。
 なんなんだよ、こいつ。
 俺は、美和の視線から逃れるように顔を俯かせた。
「……嫌いじゃ……ない」
「ん……よかった」
 顔を覗き込んでくる美和と、唇を重ねる。
「んぅ……」
 舌が絡まって、あれだけ疲れていっぱいいっぱいだったのに、またやらしい気分になっていく。
 俺は思わず、自由になった手で、美和の頭を掴んだ。
「んぅっ……んっ……美和ぁ……んっ」
 何度も口を重ね直して、舌を絡ませたまま、美和は俺をベッドに運ぶ。
 寝かされて上を向く俺の口内に、美和の唾液が流れ込んできた。
 美和は俺の手を頭から外させると、口を離して俺を見下ろした。
「飲んで」
 美和の口調は、命令でも強要でもないけれど、お願いってわけでもない。
 なんていうか指示されてるみたい。
 でも、その指示は、なぜか不快じゃない。
「玲衣くん?」
「ん……ぅん……」
 美和に見られながら、口内に溜まった唾液を飲み込む。
 大したことじゃないのに、飲んでって言われてから飲むと、従わされているようで、変な気分にさせられた。
「膝立てて……足開こうか」
「ん……」
 足を開くくらい、もうあんまり恥ずかしくない。
 それでも、美和に指示されると、すごく興奮する。
 言われた通り膝を立てて足を開く。
「玲衣くんも、ここ舐めて欲しかった?」
 勃起する俺のモノに顔を近づけながら、舌なめずりする美和が視界に入った。
「ん……でも……」
「でも? 言ってくれたら、舐めてあげるよ?」
 さっき漏らしたし。
 潮吹きも……。
「舐めて欲しくないの?」
 そう言いながら、美和は伸ばした舌先を竿に這わす。
「あぁ……!」
 気持ちいい……そう思った瞬間、舌が離れていく。
「なんで……!」
「ん……なに?」
 わかってるくせに。
「美和……ん……そこ……」
 腰を浮かせてももちろん、美和は舐めてはくれない。
 言わないと……。
「舐め……て……」
 消え入りそうな声で伝えると、美和は見せつけるように伸ばした舌先を、先端に絡めてきた。
「んぅんっ……ああっ、あっ……!」
「こっちも……欲しいよね……? 玲衣くん、俺の指舐めて濡らしてくれる?」
 俺の口もとに、美和が手を差し出す。
 舐めて濡らしたら入れてもらえる。
 そう理解した俺は、すぐ美和の指に舌を絡めた。
「ん……んぅ……美和ぁ……」
「うん……ありがとう」
 俺の唾液で濡れた指先が、足の間、奥の窄まりに触れる。
 美和はあいかわらず俺のモノに舌を絡めたまま、ゆっくりと指を挿入させてきた。
「ああっ……ん、んぅ! あっ……あぁあっ!」
 ゆっくりまっすぐ入れられただけなのに、体が震えて、イキかける。
 なにかに掴まっていたくて、俺は近くの枕を抱き寄せた。
「ふぁっ……あっ……ああっ……んぅん……!」
 なんとか我慢して、少しだけど呼吸を整えた直後、美和は容赦なく俺のをパクリと咥え込む。
「あっ……美和っ! それ、だめ……あっ、あっ!」
 たぶん俺がしたフェラとは全然違う。
 美和は俺のチンコに舌を絡めるだけじゃなく、吸い上げたりもして、やらしくしゃぶってくれる。
 ゆっくりするって言ったくせに。
「あっ、ああっ! んっ……んっ……んぅんんんっ!」
 俺はすぐに美和の口のナカで射精していた。
 美和は口を離すと、今度は入れただけで動かしていなかった指を、少しずつゆっくり動かし始める。
「あぁあ……あっ……あっ……美和ぁ……」
「ん……玲衣くん、なんでさっきイクとき声我慢したの? 出してくれていいのに」
「美和だって……はぁっ……あっ、俺にされて……あっ……がまん、してた……」
「俺はもともとそんなに声出す方じゃないから……でも、玲衣くんは、出した方が気持ちいいでしょ」
 美和の言う通り、出した方が気持ちいいけど。
「もう誰とも通話してないし、俺しか聞いてないから、恥ずかしくないよ」
 お前にだって、まだちょっとは恥ずかしいって思うこともある。
 でもそれを伝えたら、余計に恥ずかしくなりそうだから黙っとく。
 黙ってたのに……。
「ああ……玲衣くんは、恥ずかしい方が好きだっけ? だったら恥ずかしがらせてあげた方がいいのかな」
 美和は、なにか企むみたいに、ニヤつきながら俺を見下ろしてくる。
「……恥ずかしい声、たくさん出そうか」
 自覚させやがって。
 それでも、美和の指がナカで折れ曲がると、勝手に腰が浮いて、声が漏れてしまう。
「あぁんっ……んっ……あっ……あ、んっ!」
「我慢したいならしてもいいけど、ここ、トントンってされると、玲衣くん、我慢出来ないよね?」
「あっ、ああっ! ぁんっ、んっ……ああっ、あっ……そこ……!」
「うん……押さえてあげるね」
 美和の指先が、的確に……それでいて優しく、前立腺をトントン押さえつけてくる。
 何回か射精したし、ナカだけを弄られてるせいか、妙な感覚が押し寄せてきた。
「ふぁっ……あっ、あっ……ん、ああっ……」
 いつもはすぐ射精したいって思うし、そのことばっか考えて、チンコ触ったりしちゃうんだけど。
 いまは体全体が蕩けるみたいで、頭がふわふわして。
 ゾクゾクして、なんかもうとにかくたまんない。
「あっ……ああっ……美和ぁ……あっ……ああっ……待って……」
 前にも何度かこの感覚に陥ったことがあった。
 たまんないんだけど、どこかもどかしくて、耐えられなくて。
 いつもみたいにチンコを擦れば、なんとか紛らわせられると思うけど。
 イッたばっかだし、いま触ったら、体ビクつきそうだし。
「はぁ……あっ……んん……ああっ……はぁっ」
 ……でも、やっぱりおかしい。
 このままじゃいけない気がして、右手で自分のモノに触れようとしたけれど、美和の左手が俺の右手を掴んだ。
「あ……美和……」
「そろそろ、受け入れてもいいんじゃない?」
 美和の言ってる意味が、俺にはよく理解出来なかった。
 わからないけど、美和は相変わらず指で、ナカをぐにぐにと押さえつけてくる。
「あっ、あっ……あぁあっ……まって……あっ、あんっ……んっ……からだ……あっ……ちから、はいんなぃ……」
「うん……くたくただね。それで……気持ちよくないの?」
 正直、よくわかんなかった。
 頭がぼーっとして、たぶん気持ちいいけど、いつもと違う。
 なんか押し寄せてきて、このまま受け入れていいのかどうか……。
 ああ、美和が言ってた受け入れたらって、そういうこと……?
「ふぁっ……あ、ん……美和ぁ……あっ……あぁんっ! ああっ、あっ!」
「すごいね……声たくさん出てる……」
 体中、力が入らないと思ってたのに、変に強張っている感じもして、自分の体なのに、さっきからずっとわかんない。
 なにかにしがみついていたくて、でもしがみつくほど手に力が入らない。
「はぁっ、はぁっ……美和ぁっ……ああっ……やめ……あっ、あん……やぁ……これ……やだ……」
「ん……こっち見て」
 言われるがまま、美和に目を向ける。
 だけど涙が溢れて、美和の顔はよく見えなかった。
「やぁ……あっ……ん……やぁっ、やっ……ん、だめ……あっ、あっ……さわって……」
「どこ触って欲しいの?」
「俺の……あっ、ああっ、ちんこ……あっ、さわってくんないと……ああっ……だめんなる……」
「いいよ……玲衣くん……だめになってよ」
 美和の顔が近づいてきて、俺の目元に口づける。
 もう俺の右手から美和の手は離れているのに、俺はなにも出来なくて。
 涙が零れ落ちていく。
「あぁあっ……ぁん……あっ、んっ、んっ……あぁあああっ!」
 腰が……体がビクビク震えて、なにか迎えたんだと理解した。
 いままで受け入れてこなかったやつ。
「あ……はぁ……ん、んぅ……」
 耐えがたい感覚から解放されて。
 なんなのかよくわかんないけど、とにかく気持ちいい。
 気持ちよすぎて、頭が真っ白になりかけていた。