「とりあえず……玲衣くん、取り出してくれる?」
 美和は、まるで構えるみたいにベッドに座り込む。
「えー……それも俺がすんのかよ」
 まあ取り出すくらいなら、出来るけど。
 美和の前に座り込んで、美和が部屋着にしているジャージの前を下着ごと少しだけ下げてみる。
「なんでもう勃ってんだよ」
「そりゃあ、玲衣くんに舐めてもらえるって思ったら、期待でこうなっちゃうよね」
「まだ舐めるって決まったわけじゃねぇだろ」
「してくれないの?」
 一応、するつもりではいるけど。
「やり方とかよくわかんねぇし……」
 やっぱり無理かも……そう思ったんだけど。
「じゃあ、教えてあげる。舌、出せる?」
「やだって……」
「出せるよね?」
 出せないわけじゃない。
 しかたなく舌を出してみると、美和の右手が俺の後頭部を支えて、引き寄せてきた。
 このままじゃ、当たるんだけど。
「ん……待って……」
 俺は慌てて舌を引っ込める。
「自分で出来る?」
 どうせやるなら俺のタイミングでしたい。
 けど、出来るかどうかわかんないし。
 なんか違うとか言われてもやだし。
「いきなりつっこんだりしないよな?」
「いきなりはしないよ。もう一回、舌出して?」
 ちょっと気に食わないけど、ここは従っておく。
「もっと出せる?」
「んぅ……」
 うるさいって言いたかったけど、舌出してるせいでうまくしゃべれないし。
 とりあえずもう少しだけ舌を伸ばしてやる。
 目の前には美和のがあって、あと少しで触れちゃいそう。
 そう思っていると、美和の方から、左手で掴んだ性器を、俺の舌先にあててきた。
「ん……」
 ああ……俺の舌、美和のチンコにあたっちゃったし。
「舌、引っ込めないで」
 引っ込めようとした瞬間、指摘されるし。
「そのまま……舌出したまま、もう少し口開けて」
「ん……んぅ……」
「まだ入れないから……ね」
 いずれ入れんのかよ。
 まあ、いまは入れないみたいだし、もう少し口を開いてみる。
「そう……舌動かさないで」
 美和は俺の頭を固定したまま、掴んでいた性器を動かして、俺の舌先を亀頭で撫でてきた。
 左右に撫でた後、今度は腰を浮かせて、前後に……。
 口に入りそうな位置まで近づいたかと思うと退いていく。
「んっ……んぅ……」
 舌の先が擦れてむずむずする。
 くすぐったいような、痒いような。
 てか、マジで入りそうなんだけど。
 ちらっと、美和の顔を確認すると、ばっちり目が合った。
 美和は俺を見下ろして……ちょっと見下すみたいに笑みを漏らす。
 それを見た瞬間、俺は美和のいいようにやらされていることを実感した。
 なんだか見ていられなくて、美和からそっと目を外す。
「ん……う……」
「それじゃあ……少しずつ、入れるよ」
 その言葉を理解するより早く、小さく開いた唇に亀頭がぶつかった。
「んんっ!」
 ぶつかったら退いて、またぶつかって……。
「玲衣くん……かわいいね。俺のにキスしてるみたい」
「んっ……んんっ!」
 キスなんてしてない。
 そう反論でもしてやろうとした瞬間、大きく開いてしまった口の中に、亀頭が入り込む。
「んぅん……!」
 さっきまで動かしてたくせに、口の中に先端が入った状態で、美和は動きを止めてしまう。
 俺は思わず、見ないようにしていた美和の顔をまた見てしまった。
「先っぽ、入っちゃった」
 笑う美和がいやらしく見えたせいか、自分が美和の性器を咥え込んでいる事実を突きつけられたせいか、一気に顔が熱くなる。
「どうしたの? 玲衣くん……顔、真っ赤……それに泣きそうな顔してる」
 慌ててまた俯くと、美和が俺の頭を両手で掴んで、揺らしてきた。
「んんっ……んっ、んっ……あっ!」
 舌の上を、美和ので擦られていく。
 舌先だったのが、少しずつ、舌の中心まで擦られて体がぞわぞわする。
 苦しいし、恥ずかしいし。
 俺はベッドに爪を立てながら、美和にされるがまま頭を揺らし続ける。
「んんっ、んっ……んんっ……はぁっ……んっ、んぅっ! んぅん、ん!」
「すごいエッチな声出てるけど……まさか感じてないよね?」
 感じてない。
 感じるはずがない。
「んぅ! ん!」
「俺は玲衣くんにされて気持ちいいけど、玲衣くんはしてる方だもんね。舐めてるだけで感じるとか、さすがにないか」
 さすがにない。
 そう思いたいのに、なぜかさっきから、体が熱くて仕方ない。
「でも一応、確認しようか」
 美和はそう言うと、俺の口から性器を抜いて、ベッドを降りてきた。
 もうズボンの上からでも、丸わかりなくらい完全に勃起してるんだけど。
 はいていたスウェットのズボンと下着をずらされて、性器が外気に晒されてしまう。
 触られる。
 擦られる。
 そう思ったけれど、美和の手が俺のモノに触れることはなかった。
「玲衣くん、俺の舐めて感じたの?」
「これは……ちょっとやらしいこと考えただけで、別に感じたとかじゃ……」
「やらしいこと、考えたんだ?」
 つい変なことを口走ってしまったけど、もうなんでもいい。
 2人きりだし、こんなことしてるし、考えない方がおかしい。
「イきたい?」
「ん……わかってんなら、はやく……」
「ダメだよ。ちゃんと玲衣くんがフェラ出来るまで、お預け」
「なんで!」
「なんでって、逆になんで? 口でしてくれることになったのに、なんで先にイかせてもらえると思ったの?」
 そんなこと言いながらも、美和はズボンと下着を俺の足から引き抜いていく。
 つい自分のモノに右手が伸びかけたけど、美和が俺の手を掴んで止めてしまった。
「このままだと、自分で擦ってイッちゃいそうだね。どうにかしないと」
 近くに転がっていたイヤホンのコードを美和が掴み取る。
 もしかして……。
 俺がそう思う間もなく、コードが右手首に絡まってきた。
「やだって。待って、触んねぇから!」
「触んないなら、縛っておいてもいいよね?」
「えー……」
 ……いいのか?
 縛られるのはこれが初めてじゃない。
 いつもちゃんと解いてくれるし、そんなにキツく縛らないでいてくれる。
 本当に絶対、嫌かというとそういうわけでもないけど。
「玲衣くんが、ちゃんとフェラ出来たら取ってあげる」
「ちゃんと、出来なかったら……? 出来るかわかんねぇし」
「……これ以上は無理だって判断したら、外してあげるよ」
 なんか、イかせられないってのもやだけど。
「……わかった」
 仕方なく条件を飲み、美和に促されるがまま、後ろに手を回す。
 左手にもコードが絡まって、両手を後ろで固定させられる。
「それじゃあ、続きするよ。もう1回、ちゃんと口開けて」
「ん……」
 またベッドに座る美和の前で口を開けてみたけれど――
「ああ……さっきのとこまで、玲衣くん自分で出来る? 自分から咥え込んでみて」
「えー……」
 面倒な提案。
「さっき出来たんだし、出来るよね?」
 一応、出来ないわけじゃない。
 さっき、実際、入っちゃってたわけだし。
「ほら……」
 美和が性器を掴んで、こっちに向けてくる。
 さっきまで舐めてた美和の。
 中断したってのに、すごい勃ったままだし。
 もしかして、俺を縛って興奮とかしてんだろうか。
 そう思ったら、なんか俺まで、興奮してきたし。
 いや、もう前から興奮してたけど。
 顔を近づけて、そっと自分から亀頭を咥え込んでみる。
「ん……」
「その先は? 出来そう?」
 この先……どうすんだ?
 小さく首を振ると、美和がまたさっきみたいに両手で俺の頭を掴んだ。
 頭を引き寄せられて、舌が擦られる。
 美和は、ゆっくり前後に俺の頭を動かしながら、少しずつ、奥の方まで入り込んできた。
「んっ……んんっ! んっ、んっ!」
 ちょっと苦しいかもって思うとこまで美和のが入ってきて、じんわりと涙が溢れてくる。
「んぅっ……ん、ンッ! ぅんんっ!」
「ああ……歯は立てないで欲しいな。初めてだし、仕方ないと思うけど」
 なんか、下に見られてるみたいでムカつくし。
 こんなん下手でも別にいいし、うまくなりたいわけじゃないし。
 あえて少し歯を立てたままでいると、美和が口の隙間から指を突っ込んできた。
「んぅんん!!」
「歯立てずに出来ないなら、指で押さえてあげるよ」
 ただでさえ、咥えるモンとしてはちょっと大きいのに、指まで入れるなんてどうかしてる。
 駄目だと小さく首を横に振ると、美和のもう片方の手が、俺の頭を優しく撫でた。
「それじゃあ、もう一回、挑戦してみようか。歯、立てないように……ね?」
 そっと指だけが引き抜かれていく。
 仕方ない。
 なんとか歯が当たらないように、舌で下の歯をガードしてみたり、大きく口を開いて美和のを受け入れる。
「うん……上手……」
 褒められても嬉しくないし。
 美和はもう一度、両方の手で掴み直した俺の頭を、これまでより大きく揺らす。
「んぅっ、んっ……んぅん、んっ!」
「力抜いてて……」
 駄目だ……なんか、すごい奥まできてる。
「んっ……ん! あっ、ん……ああ……あぅ……!」
 声にならない声を漏らしながら、俺はただ、美和にされるがまま。
 フェラって、俺がするもんじゃなかったっけ。
 俺の口……美和に、いいように使われてるみたい。
「はぁ……玲衣くんのナカ……すごく熱いね。奥、突かれるの好き?」
 わざとだろう。
 まるでセックスしてるときみたいな言葉遣いで、恥ずかしくなってくる。
 苦しいし、好きなはずがない。
 でも、先端だけちょっと咥えさせられるのとは違って、たくさん舌の上を擦られるのとか、美和の手が俺の頭を包み込むみたいに掴んでるのとか、それは、なんか気持ちいい。
 そう思ったのに、美和の手が、片方離れていく。
「ん……」
「……さっきの話だけど、俺が玲衣くんと付き合ってるって言っても、信じてもらえないかもしれないんだよね」
 なんでいま、そんなこと言うんだろう。
 頭が回らない。
 だけどなんとなく嫌な予感がする。
「はぁっ……んっ……んぅっ……あっ……」
「前、付き合ってるって証明するために、後輩の前で、俺が玲衣くんの舐めてあげたことあったよね?」
 そういえばそんなこともあったっけ。
「今度はその逆。さすがに縛ってフェラさせてる姿なんて見たら、少なくとも、俺は玲衣くんにいじめられるような子じゃないって、わかってくれるよ」
 縛ってフェラさせてる姿なんて見たら……?
 なにそれ。
 見せるってこと?
「やあっ……ん!」
「ほら……おとなくして? 顔は映さないようにするから」
 美和は片手で俺の頭を固定したまま、俺に見えるようにして、もう片方の手でスマホを操作し始めた。
「隣のクラスの子……話したいことがあるから連絡先交換して欲しいって言ったら、快く教えてくれてね。俺がいじめの相談でもすると思ったのかな。通話、繋ぐよ」
「やっ…んんっ!」
 こんなの駄目なのに。
「……出てくれるかな」
 出ないで欲しい。
 でも、出るに決まってる。
 いじめの相談をされるかもしれないって思ってるタイミングだし、美和のことだから、どうせ夜電話するって相手に伝え済みだろう。
「あっ……ん、んっ……」
「大丈夫……気持ちいいことは、ちゃんと続けてあげるよ」
 美和は片方の手で俺の頭を撫でながら、腰を揺らして舌を撫で続ける。
「んぅん……ん、う……!」
 そうこうしているうちに、スマホの向こうから声が聞こえてきた。
『もしもし?』
「あ……ごめんね、金曜日の夜なのに、電話しちゃって……」
『ううん、大丈夫だよ。それより話って……』
 スピーカーモードにしているのか、相手の声がよく届く。
 ってことは、下手に声を出せば向こうに俺の声も聞こえてしまう。
「んぅっ、んっ……んっ……んっ!」
 我慢したいのに、鼻から漏れる声が殺せない。
 手も縛られてるし、美和に押さえられてて頭も離せないし、俺は美和のを咥え込んだまま。
「今日、俺がいじめられてるんじゃないか、心配してくれたでしょ。玲衣くんのこと、誤解して欲しくないから、ちゃんと伝えようと思って」
『誤解? いじめられてないってこと?』
「そう……かばってるとかでもなく、本当に、そういうんじゃないんだ。ビデオ通話にしていい?」
『いいよ』
「んんっ!」
 駄目だと言うように、なんとか頭を横に振る。
「ああ……玲衣くん、おとなしくしてくれないと……エッチな顔、見られちゃうよ」
 美和はそう言いながら、宥めるみたいに俺の髪を指で梳く。
 その感触がくすぐったくて、ゾクゾクして、変な気分になってくる。
「はぁ……ん、んぅ……」
「わかるよね?」
 頭をあげたら顔を映すって、言われているみたいだった。
 俺の顔なんて映したら、お前のチンコだって映るし、そんなことするはずない。
 でも、口を離したら?
 咥えてる間は安心ってこと?
 咥えすぎて酸欠だからか、いきなりわけわかんない状況にさせられたせいか、頭がうまく働かない。
 美和に撫でられてる頭も、舌も気持ちいいし。
「ふぅ……ん、んぅ……ん……」
 美和に頭を撫でられながら、引き寄せられるがまま、顔を下に向ける。
「ん……いい子だね……」
『美和くん?』
「ああ、ごめんね。見えるかな。コードで手、固定されてるの」
 どうやらいま、俺の手を映しているらしい。
『……え? 誰?』
「玲衣くんだよ。最初はちょっと嫌がったんだけど、俺が頼んだら縛らせてくれたんだ」
 美和のことだから、俺が縛って欲しいって言ったとか、おかしな嘘つくんじゃないかと思ったけど、本当のことを話してくれて、少しほっとする。
 でも、本当のことならいいってわけでもない。
 シャツは着てるけど、ズボンと下着は履いてないし、縛られてるとこ見られるとか。
 美和は会話を続けながら、腰を揺らして亀頭で舌を擦っていく。
「んぅんっ……んっ!」
「……こういう話、平気?」
『えっと……うん……大丈夫……』
「それで……玲衣くん、いまは俺の一生懸命、しゃぶってくれてるんだよね。玲衣くんの頭、俺の足の間にあるでしょ。なにをしゃぶってるかは……わかるよね」
 たぶん、俺の頭とか後ろ姿を映してるんだろう。
「俺がいじめられてるんじゃなくて、本当は、俺が玲衣くんのこと、いじめてるって話なんだけど」
『玲衣、くん……いじめられてるの?』
 その子の言葉は、美和に向けてじゃなく、俺に聞いているみたいだった。
 見られてる……俺だって認識されてる。
 ありえなすぎて、なにがなんだか理解出来なかった。
「あっ……ん……はぁっ……美和……」
 わからなくて。
 どうしようもできなくて。
 そんな俺に気づいてか、美和が口から性器を引き抜いてくれた隙に、つい美和の名を口にしてしまう。
 こんな状況にしてるのは美和なのに。
 でも、だからこそ、美和しか俺を助けてくれない。
「んー……玲衣くん、お口開けて。もっかいしゃぶろうか」
「まって……美和……!」
「はい、あーんして」
 口を閉じた方がいいだとか、考えられなくて、半開きになっている俺の口の中へと、また美和のが入り込んでくる。
「んぅんっ……んっ、んぅっ!」
『あの……俺……!』
「もう少しだけ付き合って、聞いててくれる?」
 相手が遠慮してるのに、美和がそれを引き留めてしまう。
 なんでだよ、もう。
「んぅっ……ん、んっ……んぅっ!」
 何度も何度も、口ん中、美和のが出入りして。
 たくさん唾液が溜まっていく。
 めちゃくちゃ垂れてるかもしれない。
 ぐちゅぐちゅ濡れた音が響いて、なんかよくわかんないけど、すごくやらしい。
 やらしいって思ったら感じるし。
「んぅんーっ! ああっ、ん、んくっ!!」
「んー……? どうしたの、玲衣くん。俺にしゃぶらされて、イきそうになってんの?」
 イきそう。
 美和に言われて自覚する。
 そっか、俺、イキそうなんだ。
 なんで?
 目を上に向けると、美和と目が合った……気がした。
 もう涙で視界が歪んでよく分からない。
「舌……気持ちいいでしょ」
「ん……んぅ、ん……」
 気持ちいい。
「頭撫でられるのも、気持ちいいね」
 気持ちいい。
 でも……それだけじゃ……。
「それだけじゃないよね?」
 俺が考えるより早く、美和が言葉を投げかける。
「縛られて……人に聞かれて……見られながら、俺にいいように口ん中犯されて……たまんないね」
 そっか……そういうことか。
 俺が美和のをしてるんじゃないんだ。
 やっぱり、美和にいいように……犯されて……。
 聞かれて……見られて?
 どこまで見られてるんだろう。
 わけわかんないけど、美和の言う通り……たまんない。
 洗脳か?
 だいたいこんなことされてたら、頭なんて働かないし。
「んぅっ! んっ……あっ、んぅんっ! んんっ!」
「ん−……玲衣くん、イきそう? たくさん先走りの液出ちゃってるね……もう床まで垂れてるよ」
 美和が頭を掴んでるせいで、そんなの見えないし、美和からだって、見えるのか?
 嘘かもしれないけど、本当かもしれない。
 なんでもいいけど、もう、イきそう。
 イッたら絶対、バカにされる。
 触ってもいないのにって。
 嫌なのに、俺の口ん中、美和が何度も突いて、掻き回して、セックスみたいなことするから……!
 ああもう、セックスしたい。
 口じゃなくて、ナカ……美和ので突いてくれたら……。
「んっ、んぅっ! んぅんんんっ!!」
 我慢しきれず、美和のを咥えたままイッてしまう。
「ん、んぅっ……んっ!」
 体はスッキリしてるはずなのに、また涙が溢れてきてしまう。
「あーあ……イッちゃったね」
 美和はそう言うと、俺の口から性器を引き抜く。
 俺がだけがイッて、美和はまだ射精してない。
 ぼやけた視界の隅にスマホが映る。
「はぁ……い……いって、ない……」
 気づくと俺は、咄嗟に嘘をついていた。
 フェラしてるだけでイッたなんて、美和以外にバレたくないって思ったのかもしれない。
「じゃあ……そういうことにしておこうか」
 よく見えないけど、美和が企むように笑っているのだけは何となく理解した。
「もう一度、誤解がないように伝えておくけど。玲衣くんは俺をいじめてるんじゃなくて、どっちかっていうと、俺にいじめられてる方だから……」
『う……うん……』
「ああ、でも心配してくれるようないじめとはちょっと違うかな。ちゃんと気持ちよくなってくれてるし……付き合ってるんだよね。玲衣くんが俺をバカにしたりパシらせたり、ボールぶつけたりしてくるのも、俺は愛おしくて仕方ないんだ」
 不意打ちで愛おしいなんて言われて、顔が熱くなる。
 なんなんだ、こいつ。
 恥ずかしげもなくなに言ってんだ。
「そういうわけだから……心配してくれるのはすごくありがたいんだけど、玲衣くんのこと、いじめっ子と思わないでくれるかな」
『う、うん……わかった』
「あと、このことは一応、秘密にしておいてくれる? 俺も、いじめられてるっぽい態度、取らないようにするから」
『うん……』
「それじゃあ、ありがとう」
 そう言うと、美和はやっと通話を切ってくれた。