凍也に教えて貰ったクローゼットから着替えを一式、手に取る。
 その後、タオルとローションとゴムを取りに、管理人室へと向かった。
 立ち寄ると、俺の代わりに番を任せていた清掃スタッフに声をかけられる。
「あ、終わりました?」
「……悪いけど、もう少しいい?」
「全然いいっすよ。この部屋の掃除も俺の仕事だし。今日はこの部屋を念入りに掃除する日にしちゃうんで」
「隣の部屋は、しなくていいから」
「はいはーい。なにかあったら連絡しますねー」
 真面目とは言い難い少し軽い感じの男だけれど、こういうときには融通が利く。
 ありがたく頼らせてもらい、俺は必要なものを手にして、凍也のいる部屋へと戻った。

「凍也、戻ったよ。タオル置いとくから」
 脱衣所から、シャワーの音がする浴室に向かって声をかける。
「あ……須藤さん? おかえり……ん、きて……」
 ずいぶんいやらしい声で呼びかけられ、服も脱がずにドアを開けてしまう。
「須藤さん……あ、やばいよ、俺……んんっ……シャワー、きもちいい……」
 俺が煽ったせいか。
 いや、煽らなくてもおそらくこうなっていただろう。
 凍也は、シャワーを腹部に当てながら、気持ちよさそうに目を細めていた。
「水、もったいないだろ」
「ん……ごめ……でも、待ってたから……ん……はやく、須藤さ……」
「服、脱いでくる」
 脱衣場で服を脱ぎ、凍也がいる浴室に入る。
「あ……須藤さん……」
「シャワー、貸して」
 イスに座る凍也からシャワーを受け取り、俺は自分の体を軽く濡らした。
「凍也、いつもシャワーで感じるの?」
「か、感じないって。いつもはそんな意識しないし。でも、なんか今日は駄目みたい。腹のあたりに当てたら……お湯が垂れて、気持ちくて……」
 凍也の前にしゃがみ込み、凍也の体にシャワーを向けてみる。
「ん……」
「気持ちいいのは、お腹らへん?」
「う、うん……ちんこに直接あてたら強すぎた……」
「お腹だけで、満足出来そう?」
 凍也は、ふるふると首を横に振った。
「きもちい……けど、足りない……」
 足りないけど、直接は痛い……か。
 それならと、水圧を少し下げ、腹部に当てていたシャワーが性器にあたるように動かす。
「ああっ……んっ! んぅっ」
「痛い?」
「いたくな……あ……いい……はぁ……そのまま……あっ、そのまま、して……」
 気持ちよさそうに凍也が体を反らすと、小さく勃った乳首が視界に飛び込んできた。
 なんだかかわいらしく見えてしまい、顔を寄せ、そこに舌を這わせる。
「んぅんっ! あっ……はぁ……須藤さん……!」
「胸は、あんまり好きじゃない?」
「ん……わかんない……あ……んぅ……」
「じゃあ、続けるよ」
 小さな突起を、尖らせた舌先で撫でてあげていく。
「はぁ……あ、須藤さん……俺の乳首、ペロペロしてんの、やらしぃね……」
 俺の髪を梳きながら、凍也はからかうように呟いた。
 たしかにやらしいことをしているのかもしれない。
 感じている凍也もやらしいけど、俺も――
「……やらしいよ」
 肯定してやると、想定外だったのか、凍也の手がぴたりと止まった。
「ん……はぁ……やらしいんだ? 須藤さん……」
「やらしいこと、していいんだろ」
 顔をあげて、凍也の目を見る。
 凍也は、少し戸惑うように俺を見つめた後、笑みを浮かべて頷いた。
「はぁ……いい。して……やらしいこと……」
「凍也は? されたい?」
「されたい……」
 期待しているのか、もどかしいのか、凍也は大きく足を開く。
 奥まった窄まりをそっと指で触れると、凍也の体がピクリと跳ねあがった。
「あっ……ん、いれる……の?」
「ローション向こうに置いてあるし、いまは入れないよ。ここ……ヒクついてるけど、前に俺として以来、使った?」
「あ……ん……自分で少し……でも、全然、気持ちよくなくて……いけなくて……」
 敏感なくせに、自分の刺激では物足りないらしい。
「そう……」
 指を上へとずらし、蟻の門渡りと呼ばれる部分を優しくなぞっていく。
「ああっ、あっ……あっ……そこぉ……なに……?」
「前立腺。外からでも、感じるだろ」
 少し指に力を入れると、凍也の体がまた跳ねた。
「ああっ! あっ……あっ、きもちい……はぁっ……あっ、そのまま……」
 性器にシャワーをあてたまま、外から前立腺を押さえつけ、もう一度、乳首に舌を絡める。
「あぁっ……あっ、いくっ……あっ、あうっ、あぁああっ!」
 凍也が射精したのを見計らい、シャワーを凍也の体からどかし、水温を下げた。
「はぁ……あ……ん……なんで、シャワー冷たくするの……?」
「精液、詰まると面倒だから。お湯だと固まっちゃうし」
「ん……」
 シャワーをとめた後、凍也はどこか嬉しそうに俺の顔を覗き込む。
「須藤さん、ローションも取ってきてくれたんだ? それにさっき『いまは入れない』って言ったよね? これから入れてくれるってこと?」
 もちろん、そのつもりだ。
「凍也が嫌ならしないけど」
「したいに決まってんじゃん。俺、まだ全然イケるし」
 とはいえ、さすがに連続でとなると、それなりに負担もかかるだろう。
「ゆっくりでいいよ。ベッドでいい?」
「はーい」
 そう素直に返事をしてくれる凍也と、浴室を後にした。


 脱衣場に置いておいたタオルを手に取り、凍也の髪を拭いていく。
「さすがにそれくらい自分で出来るって」
「ああ……そっか。つい……」
「俺、そんなに子供っぽい?」
 凍也は、子供っぽいところもあるけれど、体つきはしっかりしている。
 妙に大人びて見えることもあった。
「……子供扱いしたわけじゃないよ」
「じゃあ須藤さん、大人になってから、髪拭いてもらったことある?」
「あるよ」
 凍也は少し感心した様子で、俺をじっと見た。
「須藤さん、普段、そういうことされちゃうんだ?」
 言わない方がよかったかもしれない。
 なんとか平静を装う。
「大したことじゃないよ」
「ふぅん?」
 凍也は、俺を見て楽しそうに笑っていた。


 髪はまだ少し湿っていたけれど、とくに気にすることなく、裸のまま、ベッドの方へと移動する。
 先にベッドに乗り上がった凍也に続き、俺もベッドに乗った瞬間、凍也が俺の体を押し倒してきた。
「凍也……?」
「須藤さんの、勃ってる……俺で欲情した?」
 凍也の手が俺のモノを軽く撫であげる。
「ん……そうだね」
「須藤さん……もうこれ……入れていい?」
 凍也はベッドに転がっていたローションの蓋を開けると、俺の性器にそれを垂らしてきた。
「はや、く……」
 待ちきれないのか、俺の体に跨ってきたけれど、慣らさないわけにはいかない。
「待って」
「えー……さっき、外から押さえたでしょ。俺の前立腺。次は中からしてよ」
「先に指で慣らすから……」
 指先にローションを絡め、立ち膝状態で待ち構えている凍也の足の間へと手を差し込む。
 俺は寝転がったまま、入り口へと指先についたローションを塗りたくっていく。
「ああっ……ん、んっ……はぁ……はやく……」
「くすぐったい?」
「ん……うん……感じる……ああっ、ん!」
 すでに涙目になっている凍也を見ていたら、さすがに我慢出来なくなってきた。
「入れるよ」
 そう告げながら、極力ゆっくり中へと指を押し込んでいく。
「ああっ! あっ、ああっ……んぅんっ!」
 体を小さく跳ねさせてはいたものの、凍也はイかずに耐えていた。
「んんっ、あっ! んぅ……はぁ……ふぅ……」
 凍也の息が整ったのを見計らい、前立腺の奥をそっと押さえつけてみる。
「あぁっ、あっ……須藤さぁ……んぅ……そこぉ……」
「ここ……なに?」
「あっ……あっ……きもちい……ああっ……ああうっ!! あぁああっ!!」
 凍也のモノの先端から、トロリと精液が溢れてきた。
「あ……ああ……すどうさ……あっ……俺……せーえき、でちゃ……あっ……あん、んっ! やぁっ!」
「ん……出てるね。初めてじゃないだろ。こういうの」
「でも……あっ、やだ……んぅ……ああっ……あっ、勝手に、でる……!」
 勢いよく出る射精とは違い、ナカを刺激されて、こんな風に精液を溢れさせてしまうのは、どうも抵抗があるらしい。
 恥ずかしそうに精液を垂らす凍也はすごくいやらしいし、こっちとしては興奮するんだけど。
 少し緩急をつけて指先で優しくナカを撫でるたび、じわじわと精液が溢れてくる。
「あぁ……あっ、待って……ああっ……とまんなぃ……やっ……すどうさぁ……やぁ……あっ、あんぅ!」
「いや?」
「わかんな……ああっ……あっ! だめ……ぁあっ……んっ! んっ! 知らないの、くる……!」
 いつもだったら、きっとこの辺で指を抜いて、いったん止めていた。
 いや、いまだってそうするべきなのかもしれない。
 凍也の体が……ナカがビクビク震え出す。
 これ以上続けたら、別のイき方をしてしまうだろう。
「あっ……へん……んっ……なに……ああっ、須藤さぁ、教えて……」
「……凍也、ナカで……ドライでイッたことある?」
「ドライ……?」
 俺とするとき、凍也は毎回、必ず射精している。
 いまみたいに、トロトロ精液を零すようなことあるけれど、いわゆるメスイキだとかドライだとかナカイキって言われるイキ方は、これまでしていないのかもしれない。
「あっ……ん……俺……須藤さんの指で……あっ……ドライで……いきそぉになってんの……?」
 知識はなんとなくあるようだ。
「……たぶんね」
「ああっ……ん、んっ……須藤さ……俺……!」
 凍也の目が、不安そうに揺らぐ。
「……怖い?」
「ん……うん」
 本当に、この子はどうしてこんなにも、俺を煽ってくれるんだろう。
「じゃあ、やめておく?」
「ん……や……やだ……やめない……」
「怖いんだろ」
 体を起こすと、凍也は俺の頭を胸に抱えた。
「教えて……」
 怖いくせに、それ以上に好奇心旺盛なのかもしれない。
 思えば、ちゃんと理解していない媚薬を飲んだのだって、好奇心からだろう。
 俺が教えていいんだろうか。
 そう思う気持ちと、教えてしまいたい欲望が交差する。
 どのみち、もうほとんどイきかけてるし。
 さっきからずっと、凍也のナカはビクビクし続けたまま。
「教えるよ」
 少し強めにナカを押さえつけると、凍也は俺の頭に爪を立ててきた。
「ああっ、あんっ! んぅっ、すどうさぁっ……あっ、へんなの……くるっ……ああっ、あっ!」
「いいよ。大丈夫だから」
「んぅんっ! ひぁっ! あっ、あぁあああっ!」
 とうとう絶頂を迎えた凍也に、キツく指を締めつけられる。
「んー……ああ……あ……ん、んぅ……!」
 ナカに入ったままの指は動かさないようにしているけれど、当たっているのか、凍也は喘ぎ続けてくれていた。
「気持ちいい?」
「ん……はぁ……ああっ……ん……」
「教えて、凍也」
「きもちい………だめぇ……あっ……ああ……あん……いい……」
「……だめなの?」
「んんっ……俺……もぉ……きもちぃしか、考えらんない……あぁっ……ん」
 やっぱり、教えない方がよかったかと頭をよぎったけれど、こっちも限界だった。