『優斗×深敦』
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一応、読みきりですが、本編を読んでいただいてからの方が、 よいかもです。夏休み。啓吾と深敦はすでに付き合ってる設定です。




 せっかくの夏休みだっていうのにな。
 
 どうせ家にいてもゴロゴロするだけだよ。
 でも、たまにはたぶん、中学の友達と遊んだりで。
 
 まぁ、あと1ヶ月もあるからいいんだけど。

 補充。
 とりあえず、7月いっぱいは補充だ。
 わざわざ家に帰って通うのも面倒だし。
 俺は寮に残ってるわけだけど。

 なんか、珠葵も晃も家に帰っちゃうし?
 つまんねぇって。
 誰か、残れよな。
 まぁ、俺だって補充なかったら帰ってるかもしんねぇけど?
 でも、結構、楽しいじゃねぇかよ。
 こう、寮で遊びまくるってのもさぁ。
 
 家の方が、ラクってのもあるけどな…。

ま、晃たちも、俺の補充最後の日には、寮に来てくれるようだし。
 補充終わりでやっと休めるって気分になってから、一緒に遊んでくれる気なんだろう。
 
 まぁ、彼らは彼らなりに気を使ってるようだ。
 なんつーか。
 やっぱ、同じ場所にいて、俺だけが学校行って補充ってのもあれだし。

 啓吾も春耶も、家に帰ってった。
 っつーか。
 なんか、春耶の家に啓吾が泊まるとか言ってたような。
 お前ら、寮でいいじゃんかよ、って思うけど、そんなん俺がさびしがって引き止めるみ
たいだから、とりあえず言わないでおいた。

 なーんか、お泊りとか楽しそうで、ちょっとうらやましいじゃん。

「はぁあ…」
 つい溜息が漏れる。
「……はぁあ…。高岡深敦は今日も別のこと考えてるな?」
 わざとらしく、真似するようにため息をつきながら、俺の頭を指示棒でつついてくるの
は、担任の渡部先生だ。
 補充の担当。


「俺だけ、補充で友達いねぇもん」
 ほかにも補充のやつはいるけどな。
「お前だけ、普段、授業聞いてないからだろ」
 なんてことを…。
「…そんなことねぇよ…。ちゃんと聞いてても、出来ないんだってば。ってか、全然聞い
てないのに出来るやつとかもいんじゃんか。もう、頭の出来が違うんだろうな」
「お前、あんま、やる気ないだろ…。一番の敗因」
 敗因って。
 別に勝負事じゃないんだから。
 でも、そうだろうな。
 頭の出来が違うから。
 俺はもう無理だってなげだしがち。
 
 だって、ホントだろ。
 ホントに、がんばってないのに出来るやつとか、世の中にはいるもんだ。
 
 あぁ。
 思い当たる人が、たくさんいるよ、この学校。
 やっぱ、頭のいい学校は、もともと頭の出来の違うやつが多いのかもしれない。
「ちぇーっ。ってか、先生、俺って、そんなに馬鹿? この学校だから馬鹿に思えるだけ
で、ほかのもっとレベルの普通くらいの学校だったら、普通レベルだったりするのかな」
 渡部先生は少し考えて。
「ま。とりあえずがんばれ」
 と。
 なんだそれ。
 俺は、馬鹿…なんだな…。

 
あまりはかどらないうちにもとりあえず今日の補充は終了。
 午前だけだからいいよな。
 もし、午後だけとかだったら、午前中、時間空いてても弾けて遊べれねぇし。
 

 とはいえ、まだ11時。
 昼にはすこーし早い。
 朝ごはんもばっちり食べちゃったし。

 そういえば。
 拓耶先輩に美術室に呼ばれていたのを思い出した。
 でも、今日じゃなくって。
 ほぼ毎日いるから、いつでも暇なときはおいで〜ってな感じなんだけど。
 あの人も家にはまだ帰らないらしい。
 
 暇だしな。
 俺は美術室に行くことにした。

「失礼しまーっす」
 ドアを空けた先にいたのは部長。
 優斗だ。
「深敦くんやん。どうしたん? 家、帰ってないんだ?」
 はいはい。
 補充ですよって。
「まぁね…。優斗もじゃん」
「たまには中学の友達とも遊びたいけどねー。でも、結構、授業のない日の学校って落ち
着けるし、楽しいし。雰囲気とか好きだから」
 自ら好んで残ってるわけですか。
「ふーん…」
「深敦くんは? 部活とか」
 部活か。
「今日は補充。部活は自由参加だからさぁ。顔出そうとも思ってるけど」

「そっか。ね。どうせだから、モデルになってってや?」
「…まぁ暇だからいいんだけどさぁ。拓耶先輩は?」
 優斗は少し、記憶をたどるようにして考え込む。
「…生物室かなぁ」
「生物室? 生物部と、かけもちしてんの?」
「いや。意外とあいつ、爬虫類系好きみたいで。そういうのの絵、描きたいらしいんだけ
ど、どうにもやっぱそういうの苦手な奴っているやん? だから美術室には持ち込み禁止
っつーか。そうなってるん。出張でお絵描きしに行ってるかも」
 そうなのか。
「ってか、爬虫類とか、俺も見てみたいかも」
「拓耶と居合わせると、無駄に長話になるで」
 俺は、用意されてた3人くらいは座れるんじゃないかってなソファに腰をおろす。
 そのまま、優斗はスケッチブックを構えて
「自然にしとりゃいいでな。しゃべってていいし」
 そう言ってくれた。
「なんかなぁ。爬虫類じゃなくって両生類だとか、変なこだわりあるみたい。なんか、生
物室でペット飼ってるらしいしな」
 
 淡々と語る口調とは裏腹。
 座り込んで、スケッチブックを構えて。
 俺をジっと見ながら、鉛筆をすすめる。
 すっげぇ、真面目な顔。
 
 無意味なメガネを外した状態。
 視力がいいっつっても、そんなすっげぇいいわけでもないらしい。
 なんつーか、とりあえずメガネかけなくても大丈夫なレベル?

 癖なのかわかんねぇけど、ときたま、眉を寄せて、顔をしかめる。
 俺を眩しそうに見るみたいな。
 目を細める仕草が、すっげぇ…なんつーか…。
 啓吾っぽいかも。
 
 やっぱり似てるよな。
 初め会ったときは、全然、似てるとか感じなかったけど。
 それはあまりにも、2人の雰囲気というか、発するオーラが違ったからだ。

 真面目に絵を描く姿とか見てると、やっぱり似てるんだよ。
 

 あ。髪型も結構、似てるんだ?
 少し邪魔そうに掻きあげるのとか。

 ちょっと不機嫌そうなとことか。
 
 やべぇ。
 どきどきする。
 啓吾みたいだ。

 啓吾とはもう1週間以上会ってない。
 自分の中での面影と、ばっちり一致してんじゃん…。

 俺が、ついボーっと優斗の方を見ていると、優斗がいきなりスケッチブックを閉じる。
「な…」
 なに…?
 描き終わった?
 にしても早すぎだろうし、そんないきなり閉じなくてもいいだろ。
 もしや、俺じゃ役不足?
 
「深敦くんさ…」
「なに…」
 優斗は俺の腕を引っ張って立たせると、そのまま寄せて後ろから抱く。
「なっ…」
「今、なに考えてた…?」
 今って…。
「俺通して、啓のコト、見てなかった?」
 図星で心臓がばくばくする。
 否定できない。
 違うって…とか言いたいけど、もうこんな風に抱かれてたら心臓とか伝わっちまう。
「っ…だって…っ」
 俺、言い訳なんてなにもできないのに。
 
 優斗の手が、俺のシャツの中に入り込んで、胸元を探る。
「ほらぁ。図星やん? 心臓速なってるやん?」
「っんっ…」
 やば…。
 優斗はたんなるじゃれあいっつーか、なんでもないみたいに、俺をからかって心臓の音
とか確かめてるだけで。
 そういう行為なのに、俺、なに反応してんだよ。
「ねーねー、そんなに俺って、啓に似てる? イイ感じ?」
 優斗は、俺が変なこと考えてんのに気づいてんのか気づいてないのかわかんねぇけど、
なんでもないみたいに耳元でしゃべりかけるもんだから、体がゾクって、震え上がる。
「…っ…暑いってばっ」
「嘘やーん。ここ、でら冷房効いてるし♪」
「じゃあ、暑苦しいからっ」
「じゃあってなんやんそれ。それとも、こーんな冷房効いてるのに、熱くなってきた?」
 耳元で、最後の方は少し企むような口調で。
 そう言いながら、俺を抱いたまま、片方の手が俺の股間のモノをつかむ。
「っんっ…なにして…っ」
「なにしてるかって? じゃあ俺も聞くねぇ? なに、考えてた…?」
「っ…」
 そんな聞かれ方されるとなにも言えない。
 やっぱ、こいつって口、うまいのかも。
 俺なんかじゃ勝てない。
「硬くなってんやん…?」
 教え込むように、耳元でそう言って、ズボンの上から撫で回す。
「んっ…違…っ…ンっ」
「啓と離れて1週間だっけ…? 初めの1週間くらいがキツいんだよなー。それこすと、
少し慣れちゃうかもだし」
 優斗の手が。
 ズボンのボタンとホックを外して、チャックを下ろしてく。
「っやめろって…っ」
「溜まってんやん?」
「うるさいっ」
「いーやん。啓のこと、考えてていいんよ…? …な…深敦」
 ほら…。
 口調が変わった。
 俺のこと、呼び捨てにして。
「…そん…なん…っ」
 優斗の手が、俺のを擦って体がビクンって反応する。
「んぅっっ…」
「気持ちようしたるでさ」
 たしかに溜まってんだよ…。
 何度も何度も擦られて。
 はじめっから変な気持ちだったのにもう、エロくなってきてる。
「んっ…はぁっ…優斗…っ」
 優斗の片方の手が、胸の突起をつまむように愛撫して。
 もう片方の手が、俺のを弄くってく。
「あっ…んっ」
「なぁんか、前、俺が手、出したときよりエロくなってるねぇ」
 楽しそうにそう言う声。
「うるさぁっ」
 優斗はいったん、俺から手を離し、ソファへと誘導する。
 押されるようにして座り込んで。
 立ち上がろうとする俺の体を制するように、肩を思いっきり押さえこまれた。
「なっ…」
「いいね…。でらかわいいわ。やぁっぱ、啓が選んだだけあるっつーか」
 優斗が、自分のシャツのボタンを上から片手で外してく。
 なんか、すっげぇエロいんですけど。
 どきどきする。
 見入っちまうじゃん…。
 全部外れても、なんとなく優斗の手から目が離せなかった。
 
 その手が。
 ポケットから手錠を取り出す。
「…え…?」
「こういうのは、常備品だったりするわけだよねぇ」
 そう言って、持っていた手錠を俺の両手首にハメる。
 なんか。
 いきなりすぎて、逃げそびれたかも。
「っ…こんなんっ…。別に、俺、逃げねーしっ」
「逃げないんだ?」
 楽しそうにそう言って。
 優斗が俺のズボンと下着を脱がしていく。
「…っ誰か来たらどうすんだよっ」
「そうそう来ないって…。せっかくだで、楽しみゃあいいやん」
 優斗が、俺に覆い被さるようにして、そのまま、口を重ねてくる。
「んーっ…んっ」
 
 やっべぇ。
 俺、別にそんなに飢えてないとか思ってたけど駄目かも。
 久しぶりな感じだし。
 すっげぇ気持ちいいかもしんないし。
 優斗の左手が俺の後頭部を支えるようにして、上を向かせて。
 舌が絡めとられて。
 もう片方の手が、股間のモノを直に優しくなでるもんだから、なんていうか、心地いい。
「んっ…ぅんん…」
 初めはどけようと思ってたのに。
 優斗のシャツを掴んでる手にも力が入らなくなってくる。
 
 口が離れても、あんまり抵抗の言葉が出てこなかった。
 やばい。蕩けてる。
「はぁ…っ…んっ…」
「啓に、口でされたりはする?」
 そう言うと、しゃがみ込んで、俺のに舌を這わす。
「っあっ…んっ…くっ」
 なんていやらしいんだ、俺は。
 もう両足ソファにあげて開脚状態だし。
 狙ってるわけじゃないけど、体がしずんで腰が前に出る。
 座り直す余裕とかもない。
「深敦くん…? 俺は啓じゃないし、啓にも言わないから…。欲しがってくれていいんよ…」
 下から見上げるようにして、真面目にそう言われてしまう。
 なに言ってんのか意味わかんねぇって。
 でも、啓吾よりも、この人相手の方が恥ずかしくないってのはある。
 なんでって聞かれたらそれはわかんねぇけど、そういうのあるじゃん。
 ほら。
 親にエロ本読んでるとこ見られたら恥ずかしいけど、友達ならOKとかそいういうノリに近い。
 啓吾はたぶん、そういう意味で特別で、いろいろと恥ずかしいし、素直になれない部分もある。
 けど、この人だといい。
 っつーか、啓吾以外…なのかもしれないけど。
 
「こういうの、好き…?」
 そう言うと、優斗は持っている筆をペン回しのようにクルっと回して俺に見せて。

 筆先を、俺のモノに近づける。
「…っや…め…」
 期待とか…してんのかよ、俺。
 容易に想像出来る。

 見下ろす俺を下から見上げて、その筆先で俺のをそっと根元から撫で上げた。
「っ…ンんんっ」
 体が震えあげる。
 ゾクゾクする。
 おかしいってこんなの。
 
 顔は啓吾で、声も啓吾で。
 でも、やってることは啓吾とは全然違ってちょっと変態くさくて。
 駄目だ、俺。
 このギャップとか意外にドキドキしてるかも。

 優斗の指が亀頭を撫でながらその横から筆で撫で回す。
「ゃっ…あっ…優斗っ…あっ…あぁあっ」
 
 こんな変なプレイ初めてでおかしいかも。
 俺って、結構、変態じゃん。
 優斗が、筆を離して、その筆に舌を這わす。
 あぁあ。
 その姿もなんか、やらしーし。
 しかも、啓吾っぽいし。

 湿った筆の先が、亀頭から、俺のモノの根元へと一筋の線を描く。
「んっ…んぅんっ」
 足を強く折り曲げられ、奥まった場所までその筆先が移動する。
「わかる…? ちょっとヒクついて、欲しがってるやん…?」
 チョロチョロと蠢く毛先が入り口を撫でながらさ迷っていた。
 焦らされるような感覚に自然と体が捩れる。
「ぁっ…あっ…んっ…やうっ」
「深敦くんは、筆1本で、こんなやらしくなっちゃうんだねぇ…」
「ちがっ…んっ」
「欲しい…? 欲しいんなら、入れてあげるよ」
 毛束を崩して、棒の部分が入り口を押し開く。
「あっ…んっ」
 だけれど、それだけ。
 ホント、1センチ入りましたか? ってな状態で止められて、気持ちいいもなにもあり
ゃしねぇ。
 っつーか、じれったくてたまらない。
「欲しくないんなら、別に入れないし」
 少しだけ入ったソレで、優斗がゆっくり中を掻き回す。
「っんぅっ…やっあっ…」
「嫌…? どうしようか…? もう少し、入れようか…?」
 もう駄目だ。
「ばっかっ…ぁっあっ」
 ゆっくりと掻き回しながら、中に入り込んでくる。
「ひぁっ…あっ…馬鹿っあっ…待っ」
 別にまだ、俺欲しがってねぇのに。
 気持ち的には欲しがってたけど。
 それ以上はやばいって。
「ぁっ…あっ…やぅっ」
「ココ…感じちゃうんだ…?」
 俺の体がビクついたのを逃さないで、その位置で筆の進入を止めると、ゆっくりと大き
く掻き回す。
「ひぁっ…ぁあっ…あっあっ」
「あたる…?」
「もぉっ…やっあっ…あぁんんっ」
「どうしたん…? 涙流して…そんなにイイ…?」
「っひっくっ…ンんっ」
 やば…。
 涙止まんな…。
 優斗の舌が、俺の涙を拭ってく。
「優斗っ…あっ…駄目っっンっ…そこっ、やぁああっっ」
 ビクついて、イってしまいそうな感覚に顔を逸らす。
「もうちょっと、楽しもうな…?」
 そう言って、俺の根元をぎっちりと指で抑える。
「っ…んぅンっ…」
 そのままの状態で、後ろの筆は相変わらず俺の中を掻き回していた。
「はぁっあっっやぁっ…あっ」
「すっげぇねー…。先走りで、ベトベトやん…? わかる…? やらしー」
「あんっ…あっ……はぁンんっ」
「あー…もしかしなくっても、深敦くんってマゾっ気あったんだ?」
 なに…?
 なんで、そんなこと言うわけ…?
「今さぁ。俺に焦らされて、手錠されて。筆なんて突っ込まれて、めちゃくちゃ感じてるやん…?」
 違うだろ…?
 こんな風にされたら、誰だって感じるだろ?
「違っ…アっ」
「誰か来ちゃうかもしれない美術室で。自分の彼氏の兄にやられちゃってぇ。そういうシ
ュチュエーションとか、萌えてる…?」
「違っ…んっ…んぅっ」
「自分で、自分がマゾだって、気づいてなかった…? 声も、すっげぇやらしくなってるし」
 違わないかもしんないとか思えてくる。
 もうわけわかんねぇよ。
 恥ずかしくて、反抗出来なくなってきた。
「っひっくっ…んっ…あっ」
「かわいいねーほんと。かわいいから、特別。イっていいよ…」
 そう言うと、俺の根元に絡まってた指を外してくれる。
「ぁっあっ…んぅっ…優斗ぉっ…あっ…」
 ぐちゅぐちゅと音が響く。
 俺、すっげぇやらしいじゃん。
 優斗の舌がまた、俺のモノを舐め上げてくるし。
「もぉっ…あっ…ぁんっあっ…あぁあああっっ」



 放心状態だった。
 手錠を外されて、ぐったりしてる俺の前。
 立ち上がった優斗は、なんかわかんねぇけど、別の方を見ていた。
 考えことでもしてるんだろうか…。

「……優斗…しねぇの…?」
 つい、聞いてしまう。
「ん?」
「だから…っ、最後まで…」
 優斗はにっこり楽しそうに笑って
「したかった?」
 からかうような口調。
「っそうじゃなくて。ほらっ…やっぱり…俺だけだと、なんか申し訳ない気持ちになるしっ」
 勝手に、優斗が手、出してきたんだけど、それでもなんか申し訳ないから。

「……いい子やね…」
 少し。
 いつもと違った感じ。
 やさしそうな笑顔で、そう言ってくれる。
「なに…それ…」
 からかうっぽく言われたんなら、なんか言い返せたかもしんねぇけど。
 真面目っぽいから、子供扱いすんなとか、言えないし。

「ホントな…。啓の恋人が深敦くんみたいにいい子でよかったって思ってるんよ。俺は、啓のことも大好きだから、心配だし。深敦くんには浮気してほしくないとか思ってる」
 こいつも、啓吾と一緒で、普段、表にはあんまり出さないけど、すっげぇ考えてるやつなんだろう。
 真面目に。
 今。
 それを俺に話してくれてるんだ。
 だから俺も、真剣に聞こうと思った。

「…啓はな。元気で幸せそうな深敦くんが好きなんよ。そりゃ、そんなん、誰だってそうかもしれんよ? 好きな人には元気であって欲しいって思うやろうし。だけど、あいつ、ホント、そういう気持ち、強いんよ」
 苦笑いして、俺を見て。
 俺の隣に座り込む。
「俺だったら、彼女と離れ離れになったときとか、やっぱり、寂しがって欲しいとか思うタイプなんよ。深敦くんは?」
 俺も。
 優斗と同じ。
「…俺だって…俺、結構、嫌なやつだから、みんなが遊んでて、俺だけいなかったときとか、いつもより楽しくなければいいなって思っちゃうし。啓吾だって……寂しがったり、つまらながったりしてくれたらって…思う」
 優斗は、俺の頭をそっと撫でてくれた。
「別に嫌なやつじゃないやん。普通やん。…啓はそこら辺の価値観が違うんかなぁ。自分はさびしくてもかまわないけれど、相手にはさびしい想いして欲しくないって。そう考えるらしいんよ。…ホント、そういうのって、偽善者くさいけど、でも、あいつの場合、本当なんよね…」
 少しため息をついてそう語る。
「だから…もし、深敦くんが浮気したらね。たぶん、そりゃあいつ、怒るよ? だけど、否定はしないと思うんよ。…それで深敦くんがいいと思って、幸せなら、そいつとくっつけばいいって。突き放すわけじゃないけど、そう言うだろうから。そんなん言われたら、深敦くんだったらどうする? ちょっとむかつくやん? もっと、やきもちやいて、引き止めて欲しいとか思わん?」
 思う。
 俺が浮気しても、それを肯定されるなんて、寂しい。
 だけど、啓吾にとって、それは俺のためなんだろう。
「あいつ、ちょっと価値観、ズレてるから。もっともっと、あいつのこと、わかって欲しいんよ。勘違いですれ違ってほしくないから」
 そう言って、俺を抱きしめた。
「っ……」
 なんか、なんとなく。
 あったかくって、引き剥がすことが出来なかった。

「啓のためにもな? 深敦くんには笑顔でいてもらいたいし。深敦くん…俺と最後までやったら、笑顔でいられんやん?」
 耳元で、少し苦笑するような感じ。
「…どうして…」
「いい子やもんね。浮気とか出来ない子でしょ。罪悪感で、いっぱいにならん?」
 たぶん。
 なると思う。
 啓吾がいないからって、飢えてるからって、そうやって他の人とやってしまうのは、いけないことだって思うから。
「でも…俺だけ、一人、気持ち良くイクのも、よくねぇよ」
「あはは♪俺のことはいいって。それに、深敦くんと最後までやったら啓にも悪いし」
「…うん…」
 そう頷くものの、少しだけ、申し訳ない気持ちがなかなか離れなかった。

 そんな俺を見てなのか。
「…ホントさ…。啓の彼女じゃなかったら、好きになってたかもしれんな…」
 小さな声だけど、確かにそう言った。
 なに…それ。
 すっげぇ、恥ずかしいけれど、なんか信じられないのと気になるのとで、少しだけ顔をあげる。
 ちょうどいいタイミングで、そっと口を重ねられた。
「ん…っ」
 なんだか、いつもの優斗とするのとは、少し違う感じだった。
 
 熱くて、ボーっとしてしまう。
 口が離れても、なんか、ちゃんとした態度取れないっつーか。
 停止状態。
「…啓と、仲良くしたってな」
 俺の頭を、子供を撫でるみたいに撫でて。
 ソファから立ち上がる。

「拓耶のこと、捜してたんやん? 早いとこ、生物室、行っておいで」
 にっこり笑って、俺にバイバイと手を振る。
 なんか、そう言われると、立ち去らざるえない感じなんだけど…。
 立ち上がったものの、どうにも躊躇してしまう。

「…深敦くーん。早く行ってくれんと、ホント、犯すよ?」
 笑いながらそう言って。
 俺は、しょうがなく美術室を後にした。

 なんか。
 いつもと違って、ものすごくどきどきしたかもしれない。
 優斗のこと。
初めの方は啓吾に似てるからって、どきどきしたし、前、されたときとかもそうだったけど。
 
 でも、すごく、俺と啓吾のこと考えてくれてるし。
 …好きになってたかもしれん…って言われて…。
 すっげぇ、どきどきした。
 優斗のこと、初めてかもしれないけれど、ちゃんと優斗っていう存在として感じた気がする。

 だからかな。
 最後のキスは、なんかいつもと違う感じがした。

 あったかくて。
 決して、啓吾の代わりだとかそんなんじゃないのに。
 それなのに、まるで、好きな人とするみたいな。
 そんな感覚に近かった。


『優斗×深敦』
コンテンツカウンター111144番
系統についてですが、なにかを指定されてこのカプで書く自信がなかったので、聞かずに書き始めてしまったのですが(殴)このようになりました(?)
なんだか書いてる最中で、優啓くさかったり、やはり啓深くさかったりしましたが、世界観を崩さずにいかに、優深らしくするかが今回のポイントでした(笑)
最後あたり優深らしさをだしつつ…。
やってない上、よくわからんプレイですみません…。
まゆさんへささぐvvリクエストどうもありがとうございましたvvvv