権力。
だなんて言えるほどの力があるわけではない。
たかが生徒会長。
それでも俺に歯向かうヤツがいないのは、生徒会という組織自体がすごく大きな存在になっていて。
喧嘩っ早い役員も多くいる。
まぁガラも悪いだろう。
不良集団と言われれば否定もしづらい。
誰もあえて敵に回そうだなんて考えないんだろう。
だから。
桐生を呼び出してセックスするくらい簡単なことだった。
それでもそうしてこなかった理由は、自分の女みたいな名を呼ばせたくない桐生にとって、そういった行為は苦痛だろうと。
力で無理にモノにしても意味がないだとか。
本当は嫌だろうに、それでも従う桐生を見たくはない。
そういう想いが入り混じっていた。
それで構わなかった。
けれども、樋口智巳が入学してきて、いろいろと事情が変わった。
桐生は後輩相手にセックスをして。
自分も少しだけ手を出してしまっていた。
バランスが崩れたような気がして。
もう桐生のことは忘れようと思った。
この件には関与しない。
けれど色気を増す桐生を見て。
俺は力を使った。
こんなので従わせたら嫌われるだろうって思うのに。
どうせ離れるのならと邪心がよぎる。
「んっ……っ」
生徒会長に呼び出した桐生が用件を聞こうとするのを制し、口を重ねていく。
ビクついて、一歩後ずさった先のドアへと桐生を押し付けて、舌を絡め取った。
右手でズボン越しに桐生の股間を揉み上げていくと、体を軽くビクつかせ、俺の肩に手を置いた。
押し退けたいのかもしれない。
力はこめられないのか、それでも口を離すと、俺の視線から逃れるよう顔を背けた。
「っ…なん…ですか…っ呼び出しといて…っ」
「これが用件って言ったら、どうする?」
「ん…っ…っ…な…んでっ…いままで…っ」
やっぱり、いままでやってこなかったのに、いまさら…とは思っているのだろう。
「したくなった。…いい?」
桐生のソコは硬くなっていて。
それでも答えを待ちながらも、擦りあげていく。
薄目がちに俺を見て、そっと頷いた。
左手をシャツの中へと忍ばせて、指先で胸の突起を軽く擦るとすぐさまソコも硬くなっていく。
指の腹で転がすと、感じるのか連動するように、股間を俺の手に擦り付ける。
意識的にしているわけではないのだろう。
布越しのじれったい愛撫に、我慢が出来ないのか。
俺は、片手でベルトを外し、ズボンのチャックを下ろしていく。
直接取り出した桐生のモノを掴み擦りあげると、荒い息遣いと、小さく喘ぐ声が耳に響いた。
「んっ……はぁっ…ぁっ! んぅ…っ」
ときどき体をピクンと跳ねさせて、俺の腕を掴む。
気持ちいいのか、亀頭に触れると指がぬるっとすべった。
「ひぅっ…んっ!」
その感触に驚くように、俺の腕に爪を立てる。
何度も指の腹で先を撫でてやると、その度に液が溢れ出てきていた。
「んっ…ぅンっ……んっ…先ぱぃ…っ……」
「なに…。言っていいから」
恐がらせないよう優しい口調で聞いてやる。
桐生は潤んだ目で俺を見た。
「っそんなっ…あ…そんなっしたらっ…っっ」
「すごい溢れて、ベトベトになってきた…。イヤ…?」
桐生は俯いて、自分の股間に目を向けた。
俺は示すよう、液を纏った指の腹をゆっくり離し、糸を引かせた。
ズボンと下着を引き摺り下ろして、ぬめりをまとった指先で奥の入り口を擦っていく。
「ぁっ…ん…っ」
ソコばヒク付いて欲しがっているのがわかる。
快楽を知っている体に、嫉妬心が生まれた。
桐生の中へと指をゆっくりと押し込んでいく。
「あっっ!…んっんーーっ!!」
指を圧迫する内壁が心地いい。
ゆっくりと指を抜き差しし感じる部分を探っていくと、俺のシャツの胸元を引っ張る。
「っんっ…ぅんっ…あっ…やっ…」
「いや…?」
嫌がられればやめるつもりだ。
そうは思いつつも、確認するよう内壁の一部を指先で擦る。
「ひぁっ!!…んっ」
桐生の体が大きくビクついた。
「イヤなら嫌がってくれて構わない。無理に付き合ってくれる必要もないし、桐生が罪悪感を感じる必要もない」
桐生は俺を見ないまま首を横に振り、違うと示してくれているようだった。
「…もっ…ぁっ…立てなっ…あっ…」
「気持ちいい…?」
「ぁあっ!んっ…ぃいっ…あっ…ひぅっ…んっ…!」
本当に、立っていられなかったのか、体が沈みその場に座り込む。
指が抜け、息を荒げ続ける桐生を見下ろした。
しゃがみ込んで、キスをすると、俺の舌へと積極的に舌を絡めてくれていた。
そこに愛がないことくらい理解出来ている。
それが快楽のみを求められている行為だとしても、桐生が望んでくれているのなら、嬉しいとすら思ってしまう。
「んっ…はぁっ…もぉっ…」
「なに」
「っ…んっ…」
欲しがってるのはわかってる。
けれど、桐生が戸惑っているのもわかった。
別に言わせたいわけじゃない。
桐生も、恥ずかしいだとか思っているわけではないだろう。
ただ、俺の気持ちに応えられないもんだから。
だから、欲しがっちゃいけないんだって、思ってくれている。
そう考えるのは前向きすぎか。
「…欲しがってくれて構わない」
「…っん…」
「わかってる。お前が俺を好きじゃないことも、応えられないことも。この行為で、勘違いするつもりもないから」
桐生は、俺を見て、涙を溢れさせた。
「すいません……っ。俺…っ」
シャツを掴んで、桐生は俺を引き寄せた。
「っ…欲しい…です…っ」
別に俺のことくらい利用してくれて構わないのに。
俺の気持ちに応えられないからって、謝る必要などないのに。
そんな風に泣かれたら、ますます好きになる。
「お前が悪いんじゃないよ」
好かれていないとわかっていながら手を出す俺が悪いんだ。
体だけが目当てだとか。
そんな風には思ってない。
好きだという気持ちに偽りはない。
伝わってる…?
伝わってるから、やらせてくれるんだよな。
ただ、やりたいだけの男にやすやすと体を出すような人間じゃないよな…。
床にそっと桐生を押し倒し、指で慣らしたソコへと自分のモノを押し込んでいく。
桐生は、やっぱり俺の腕を掴んでくれて。
そういった行動の一つ一つがかわいくてたまんないんだけど。
「んーっ…あっぁっんっ…!!」
「桐生の中、すっげぇ熱いな」
「ぁあっ…んっ…っ熱ぃっ…せんぱぁっ」
「動いていい?」
コクコクと頷くのを確認して、そっと小刻みに出入りを繰り返すと、桐生は体をビクつかせ反応してくれる。
「やぁあっ! んっ…ぁんっっ…あっあっ! ぅんっ」
俺の動きに連動して洩らす声とか。
愛おしくて、頬を撫でた。
いまだけは、俺のこと考えてくれてるだろうか。
「桐生…イって…?」
俺ので気持ちよくなってくれたら。
それでいい。
「ひぁっあっ! んっぃくっ…あっあぁああっっ!!」
欲望をはじけだすと、桐生はぐったりした様子で、なんとなくこちらを見ていた。
セクハラだとか強姦だとか思ってるだろうか。
後味はあまりよくない。
罪悪感だけが残る。
こいつは俺に付き合ってくれただけ。
「先輩…。泣きそうですよ」
冗談っぽく桐生が笑って、俺の頬を撫でた。
「あぁ…」
泣きたい気分だ。
「泣かないでください」
そう言った桐生の笑顔が偽者だってことくらい俺にもわかる。
さっきまで泣いていた。
いまにも泣きそうなのはお前の方だろう。
ごめんだなんて言葉は言わないほうがいい。
お互いがそうわかってるはず。
だから俺は、必死で涙を飲んだ。
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