「光流さんっ…俺、光流さんのこと、好きなんですけどっ」


……結構唐突に。
後輩のノゾムがそう俺に。
かわいいなぁ。
「ありがとう」
「いえ、そうじゃなくて。仕事中はかっこいいのに、それ以外の時は、なんかかわいくて、本当にっ…」
そう言い続けるノゾムの頭を後ろから、ペシっと軽くツバサが叩く。
ツバサも俺の後輩だが、少ししか時期が変わらない、ほぼ同期に近いような存在だった。
「お前、光流さん相手に何言ってんだよ、ばか」
「だってっ」
「お前はまだ掃除残ってるだろ」

そんなやりとりをしながら去っていく。
なんか微笑ましいな。

少しして、ツバサだけが俺のところへ。
「光流さん、どうしました? ノゾムのヤツが気になるとか?」
「…いや…。まあ、気にしてないってわけでもないんだけど。…かわいいな」
「なんか、寂しそうな顔してますよ。…アキラのこと、忘れられないんすか」
ツバサはため息をついて俺にそう聞く。
アキラ。
以前、俺の家に居候してて、飛んだ俺の後輩だ。
そんな表情に出てたか。

「まぁ…それはしょうがないことだから。忘れるつもりないし、大丈夫だよ。ただ……少しだけ今は、寂しいかなぁ」
「なにかあったんすか」
「…息子が、一人暮らし始めて、一人になっちゃってさ。まぁ、息子の友達が結構遊びに来てくれるからいいんだけど」
ツバサは、にっこり笑って。
「言ってくれれば、俺も遊びに行ったのに」
そう言ってくれる。
「え……あ……ありがとう」
「いつでも言ってください。じゃあ…」
そう言って、背を向けるもんだから。
「ツバサっ」
つい引き止めてしまう。
「はい」
「今日は? …俺ん家、来れない?」
「はい。よろこんで」
営業スマイルのような笑顔でそう答えてくれたツバサと一緒に、家に向かった。


「ツバサは、今、フリー?」
「そうですよ」
「じゃあ、ちょっとヤりにくいな。俺のこと、恋愛対象に見るなよ?」
「あはは。変わってませんね。それはもう承知してますよ。もしそうなら、相手してくれないわけでしょ」
「そういうこと」
「ホント、奥さん一筋ですねぇ。でも、他に本命で好きな人いるんで、安心してください」
「へぇ、誰? 俺の知ってる人? 誰?」
つい浮かれて聞いてしまう俺に、ツバサは、軽く笑って、
「あとでにしましょう? 知ったら気が気じゃなくなるでしょう」
そう言って教えてくれなかった。
「逆に気になって、駄目だなぁ」
「しょうがないですねぇ。…ノゾムですよ。俺、ノゾムが好きなんです」
「ノゾムか。お前、可愛がってるもんな」
「これ以上は、あとにしましょう。もう家ですし」
「はいはい」


家に着き、寝室に入ると、自然と口が重なった。
さすが、切り替え早いな。
さっきまで楽しく話してたのが嘘のように、一気に雰囲気を作り上げられる。
少しだけ俺より背の高いツバサは、俺の髪を撫でながら、優しく舌を絡めていった。
「ん……っ」

ツバサとこういう行為をするのは初めてではない。
アキラが家に来る前までは、しょっちゅうあった。

アキラが家に来て、息子の深雪が中学生になり進路のことを考える時期になるとそれどころではなくなっていたから。

何年かぶりの懐かしい行為だ。
そっと口が離れるとお互い目が合って。
あぁ、ツバサも懐かしいって感じてるのかなぁ。

ベッドに座り、シャツのボタンを自ら外すと、ツバサはその隙間から手を滑り込ませ、胸元を撫でながら俺をベッドに押し倒した。

体を全部ベッドへと乗り上げて。
俺の足の間、体を屈めながら胸元に舌を這わせるツバサを感じながら、自分のズボンのベルトを外し、チャックを下ろす。
と、それがわかってなのか、ツバサは俺の手をそっとどかすように、下着の上から俺のを撫で上げた。
「んっ…ぅんっ…」
胸の突起に絡まる舌先と、撫で回すような手の動きに体が熱くなる。
優しく吸い上げられるだけで、体が軽くビクついた。
「っく…んっ…あっ…」
執拗に胸元を音を立ててしゃぶられながら、下着の中へと入り込んだツバサの手が直に俺のをなでていく。
「んっ…ぅんっ…はぁっ…あっ」
「やっぱり…光流さんの声って、色っぽいですね」
「はぁ…なに言ってんだか」
ズボンと下着をツバサに剥ぎ取られ、大きく足を開かされる。
膝を立てさせられて、いやらしい箇所をツバサに晒していた。

ツバサはなんのためらいもなく、足の付け根、奥の蕾へと舌を這わす。
「んっ…くっ」
ちゅくちゅくと音を立てながら、唾液を絡め吸ったり舐めたりされて、そこがヒクついてしまうのが自分でも解る。
「はぁっ…あっ…んっ…」
ゆっくりと差し込まれる舌先に体が大きくビクつく。
「あっ…あっ…んっ」
太ももを優しく撫でながら、何度も、唾液を塗りこむように舌を差し込まれて、ツバサの手につい爪を立てる。
「はぁっ…ぁあっ…んっ…あんっ…」
つい出てしまういやらしい声に気づきながらも、恥ずかしさに耐えながら、顔を背けるが、腰がくねるのを止められなかった。
「あっ…あっ…んっ…ぁあっ…奥っあっ…」
「はい…」
口を離して、今度は指先をゆっくり挿入していく。
「んっんぅんっ」
舌が届かなかった奥の方へと指が入り込んで、その感覚に体が大きくビクついた。
「はぁっ…あっ…んーっ」
「久しぶりなんですか…? こっち、使うの」
「んっ…はぁっ…んっ」
頷いてそれを示すと、ツバサは俺の股間のモノを優しく舐めあげながら、そっと2本目の指を差し込んでいった。
「んぅっ…あっ…はぁっ…」
「アキラとは…?」
「…別れ際に…1回だけ…っ」
「1回だけなんすか…」
2本の指が、中をゆっくりほぐすように広げてく。
その間にも、舌が俺のに絡まっていくし、指先がかすかに前立腺を掠めていくもんだから、ものすごく感じて腰が揺れる。
震える手でベッドのシーツを掴んでいた。
「はぁっあっあんっ…んっっぅんっ…はぁっ…あっ…」
熱い。
熱くてクラクラした。
もう、欲しい。
ツバサの、太くて硬くて。
指なんかじゃ届かないところまで突いて欲しい。
「ツバサっあっ…もぅっ…んっ」

そう言う俺を見て、ツバサは指を引き抜き、ズボンのチャックと下ろす。
取り出されたツバサのモノをつい眺めてしまう自分がいた。
ゴクリと喉が鳴る。

光る金属質のモノが目に入った。
「…ツバサ、それ…」
「死ぬほど痛かったですよ」
企むように笑って、ツバサは自分のソコの上部についているリングのピアスを指ではじく。
「そのまま入れて、ツバサ、痛くない?」
「俺は大丈夫です。中で当たると思いますけど。……入れますよ」
「えっ…あっ」
「どうしたんですか。急に不安そうな顔して…」
「いや、俺、そういうのハメたヤツ、相手にすんの初めてで…」
「じゃあ、指だけでイかせましょうか?」
指なんかじゃ物足りなくなってるって、気付いてるだろうに。
「…ゆっくり…」
「はい」

ゆっくりと入り口を押し開いて、亀頭が入り込む。
「あっ…んっ…んっ」
きつい。
おっきい。
一気に体温が上昇してる。
ピアスの部分が。
少しだけ、初め冷たく感じた突起物が入り込んでいく。

「ぁあっ…んっ…やっ…」
「光流さんらしくないっすねぇ。もっと余裕見せてくださいよ」
企むようにそう言って、奥の奥まで差し込むとやっと一息つかせてくれた。
「はぁっ…ツバサ…んっ…」
「えぇ。ゴリゴリ擦ってあげますよ」
その言葉だけで、期待に体がビクついた。

まずは、掻き回すように奥に突っ込んだまま、腰を回されて、内壁を押し広げていく。
「はぁっあっ…んっ…ぅんっ」
心地いいくらいの刺激に、ついボーっとしてしまっていた。
「ぁっあっ…んっ」
「もっと、いやらしい声、聞かせて…?」
「え…あっ」
すると、軽く抜き差しをして、俺の内壁が擦られる。
「んっぁあっ…あっあんっ…」
さっきまでの心地いい…なんてのとは違って、たまらなくいい。
熱くて、いっぱいいっぱいになっていた。
「はぁっあっ…んっ…ぁああっ…つばさぁっ…やっあっ…」
次第に、大きく腰を動かして、ツバサは深く突いては、ギリギリまで引き抜いて。
何度も何度も突き上げられる。
そのたびに、前立腺の辺りを、硬いツバサの先っぽで突かれて、ピアスで強く擦られていく。
「はぁっあっ…やっ……だめっ…あっすごいっ…」
自分も腰が砕けそうになりながらも、体を揺らす。
「光流さん…すごい、やらしい顔で…かわいい声で、たまんなくイイですよ。体も、エロいです」
視線から逃れるように、顔を背けるが、腰は止められなくて、いやらしく求めてしまいながら、ツバサの腕に手を絡めた。
「あんっ…あっっ…あっっ…ぁああっ…」
「気持ちイイですか…?」
「いいっ…だめぇっあっっ…やっやぁあっ…当たってっ…」
「ピアス、当たってます?」
そう言いながら、言葉通りに、ピアスで内壁を擦りながら、腰の動きをヒートアップさせる。
「ぅんっあっ…あぁあっ…やっあっぁあっ…ぃくっやっ…」
「いいですよ…イって?」
「はぁっあっ…つばさっ…あっいくっ…あっあぁああっっ」



久しぶりの感覚に脱力状態だった。
「気持ちよかったですか…」
「ぅん……」
「またいつでも呼んでくださいね」
そうにっこり笑ってくれるけど。
なんか、利用してるみたいで申し訳ないな。
「ツバサも、寂しいときは、来いよ。俺に合わせるだけでなくさ」
「俺は大丈夫ですよ。…でも、ありがとうございます」
にしても、ノゾムのことが気になってしまう。
「ツバサはノゾムのかわいいとこが好きなんだ?」
「またそれですか。…なんか、俺、あいつ相手にならハメられたいって思うんすよね」
「え…?」
ノゾムにハメられたいって?

ツバサとは確かそんなに歳も違わない…か?
思えば、ノゾムも攻め気質だよな…。
逆かと思ったんだけど。

「俺、この歳で処女だから、いろいろ不安なんすけど…応援してくれます?」
「…そりゃするけど…」
ノゾム相手に受側に回るツバサがいまいち、想像できなかった。
「ノゾムは、光流さんが好きなんですよ」
「あはは。俺は誰とも付き合わないし、恋愛感情で好きって言ってくれるやつとは、そうそうヤらないから。ってか、お前、ネコでいいわけ?」
「なんか、俺、あいつ抱くって気にはなれなくて」
俺だったら、まぁノゾム相手ならやっぱりどっちでもいいんだろうけど。
ツバサは、やられたことないわけだし、なぁ…。
「ツバサは初をノゾムにあげちゃうわけですか」
「そうですねぇ。というか、俺、あいつに光流さんのことは諦めろって言っちゃってもいいっすか」
「あぁ、いいよいいよ。…別にノゾムが嫌いなわけじゃないしかわいいけど。結婚してるし、妻一筋で他は考えられないからって。言えばいいよ」

そう言っても、なんだか浮かない表情。
「どうした、ツバサ」
「…いえ。俺、アキラは本当に光流さんのこと好きだったと思うんですよね。光流さんも、それがわかってたから、ずっと一緒にいたのに全然ヤらなかったんでしょう?」
こいつも、アキラと結構、仲よかったからなぁ。
「そうだな」
「そんなアキラを、家に居候させるって、余計にアキラは光流さんを好きになっちゃうじゃないですか。どうして泊めてたのかわからなくて。…やっぱ、光流さんも好きだったんですか」
職場では、ただの後輩で通ってたし。
でも、それなら確かに、俺はアキラのことかわいがりすぎだ。
「…まぁ…それなりに」
「妻一筋じゃないんすか…?」
「俺が、ノゾムを好きにならないか心配?」
ツバサは、少し視線を逸らしてみせる。
かわいいよなあ、こいつ。
こいつには、言ってもいいか。
もうアキラもいないし。

「アキラは、義理の弟なんだよ。妻の弟。だから、普通とはちょっと違うと思う」
「あ……そうだったんすか…」
「ノゾムのことは、取らないから、安心しろって」
「なんか、すいませ…」
「いえいえ。あーでもなんか、寂しくなってきたなぁ」

そう言う俺に、ツバサは優しくキスしてくれていた。

「ノゾムとなんか進展あったら、教えろよ」
「はい。なんか今日、光流さんに聞いてもらったら、いろいろ勇気出てきたんで。がんばりますよ」
「まぁ、肉体的な相談にも乗るし」
「よろしくお願いします」

人を好きになってるツバサがなんだかうらやましく思えた。
妻を忘れることなんてもちろんないから、俺はもう誰かを好きになろうだなんて思わないけれど。
寂しさを紛らわしてくれる相手は欲しいなぁなんて考えてしまう。
たまにはツバサに頼るけど、ツバサだってノゾムと付き合いだしたりしたらそうもいかないだろうし。
アキラとは、連絡取らないでいようと思うし。

そう考えたとき、なんとなく頭に浮かぶのは、たまに家に遊びに来てくれるなっちゃんだった。
俺もずいぶん若い子に頼るようになったなぁ。
傷ついた者同士だし。

またなっちゃんに、連絡取ってみようかなぁなんて、考えてしまっていた。








>