満員電車の中。
立ったままついうとうとしていると、後ろから尻を撫でられる感触。
まぁ満員だし、少し当たっただけだろうと気にしていなかったのに、次第にその手の動きは意図的だとわかった。

ったく、触るなら女の尻でも触ればいいものを。
勘違いでもしてんのか。
さりげなく体を横にずらそうとしてみるが、うまくいかない。

このまま触らせ続けるのもしゃくだし、かといって、男の俺が大声だすのも。
捕まえて万が一、触ってませんなんて言われてみろ。
俺の方が被害妄想の強い勘違いヤローとして痴漢みたいな扱いうけかねなかったり?

そうこう考えていると、前からも。
見上げると、なんでもない風に笑って見せる長身の男。
俺と同じ制服。

って、後ろもあいかわらず触られてるわけで、前のやつの手というわけではなさそうだ。
2人…に挟まれてんのか、俺。
俺の股間をズボンの上から何度もいやらしい手つきで擦られていく。
「っ…」
勘弁しろって…。
そいつの手に爪を立てると、その手を後ろのヤツが掴んだ。
もう片方の空いた手は前のヤツがしっかりと掴んでしまう。
「…ってめぇ…」
前にいた奴を睨むと、その間にも後ろのやつが、俺の手を掴んでいない方の手で、ゆっくりと俺のズボンのチャックを下ろしていく。
「っ……な…っ…」
すかさず前のやつが取り出した俺のを直に握った。
「っ……てめぇ…俺のこと、知ってんの…?」
一応、同じ制服なわけで、俺のことを知って狙ってきてる気がして。
「…この学校でさぁ、君のこと知らない人っているの?」

やっぱり。
狙われてんのか。
っつーことは、良介が仕向けてるやつらか。もしくは良介を良く思っていないやつら。

どっちだ?

「抵抗すると、あとでお仕置きされるよ…? 良介さんに」
…良介絡みか。
マジで抵抗しづらい。

そこを捕まれ、擦られて。
イライラ感が募っていく。
しかも気持ちいいとか感じてる自分がいてやるせない。
「っ…んっ…ぅんっ……はぁ…っ」

手が離れて、ほっとすると、前のやつが俺の両手を持った。
見上げると、後ろのヤツに目配せする姿。
振り返るスペースもなく、どうにも動けないでいると、後ろのやつが下着の中へと手を突っ込んで、後ろの窪みをそっと撫でた。
「っ!!!」
ひやりとした感触。
ジェルでも付けているのか、ゆっくりとなにかを押しこまれていく。
「な…っ…あ…っ!!??」
「玩具だけど?」
後ろのやつが愉しそうにそう言って。
奥の方まで。
「ん…っ……っ」
「結構、すんなり入ってくね…」
やばいだろ、さすがに。
入り込んでしまうと、また何事もなかったみたいに下着から手を抜いて、チャックも閉められる。
けれども、ゆっくりと中にあるローターだろう玩具が、振動しはじめた。
「っ!! んっ…くっ…」
人混みに紛れるようにして、前のヤツへと体を預けた。

「はぁ…っ…」
駄目だろ、っつーかありえねぇっての。
前のやつの足が、俺の足の間に割り込んで。
股間の辺りをそいつの太ももが擦れて煽られる。
「っ…んっ…ぅんっ…」
中途半端な中での振動に、頭がボーっとした。
イきそうというより、心地いいような、なにもかも忘れてしまいそうな。
「ぅんっ…んっ…」
「次…降りようか」
前のやつが耳元で言うが応える気はなかった。

「あっ…んっ…」
声を殺せない俺がわかってか、長身のそいつは、俺の頭を自分の胸元へと押さえつけた。
息苦しい。
「っんっ…ンっ…!」
駄目だとわかっているのに、俺はそいつ服にしがみつく。
立ってられない。

満員じゃなければ確実に俺はしゃがんでしまっていただろう。
前と後ろに挟まれるようにして、なんとか立ってられるだけ。
後ろのやつは、緩やかに俺の尻をズボンの上から撫で上げた。
「っんっ…ぅんっ…んっ」
やばい。
いく。
いや、駄目だろ、ここで。
もうすぐ駅だし。
せめて駅まで。
「っぁっ…んぅっ…!!」
「我慢しなよ」
耳元でそう言うくせに、中のローターの刺激は強くなる。
「んっ…〜〜〜〜っ!!」
体がビクついてイってしまうと、それがわかってかローターの動きは止まった。

もう最悪だ。

駅に着き、ホームに下りると良介がいた。

「…イっちゃった…?」
俺の様子を見てか、にっこり笑いかけて。

近くの公園へと引っ張られる。
「…良介…先輩、なに考えて…」
電車の2人がついてくるから、一応先輩と後輩の態度を取りつつ、公園の木が生い茂った箇所へと連れて行かれる。
「悟、足に力入らないんでしょう。座って」
実際、立ってるのが辛かった俺は座ってしまうと、良介に押し倒されて、シャツの中に手を入れられる。
「っ…な…っ…良介っ」
「抵抗しないでよ…?」
 耳元でそう告げると、指先が胸の突起を撫で、体が大きくビクついた。
「んっ!…ぅんっ…」
「あぁ。いい感じに今日も敏感ですね…。悟が犯されるとこ、見たいんですよ。いいでしょう」
にっこり笑って。
ついてきたやつのうち1人が、俺の両腕を取り、もう一人がズボンと下着を脱がし、ついでに入り込んだままだったローターも抜き取ってていく。
「んぅんっ!!! …良介…っなに考えて…っ」
「今、言ったじゃないですか。犯されるとこが見たいって。ね。見たことない悟が見たいんです」
 良介はあいかわらず俺の隣に座り込み、胸元を探る。
 両腕は頭の上で、一人の男にがっちりとつかまれていた。
 もう一人の男が、俺の足の間に体を割り込ませて。
 イってしまってぐちゃぐちゃの俺の股間から液を拭うと、その指先をゆっくりと奥の窪みへ押し込んでいく。
「あっっ…んーっっっ!!」
「悟は、敏感なので、あんまり強くすると、すぐにイっちゃいますよ?」
 俺の攻め方を良介が伝えて。
 抵抗しようとバタつくが、意味を成さなくて。
 指が、感じるところを掠めていく。
「っっ…んぅっ…んーっ…」
 慌てて口を塞ごうにも手を取られている。
 たぶん、良介のことが。
 他の男で感じたりなんかしたら、怒るに決まっている。
けれども中を指でかき回されて、気持ちよくて。
いやらしい声が洩れる。
誰かはわからないが同じ学校のやつに聞かれ、恥ずかしくてたまらない。
「っ…んっ…ぁっっ…やっ…んっ…」
「悟…。いいですよ。もっと感じて? いやらしい声、たくさん出して聞いて貰おう?」
そう言いながら、良介の手が俺の股間を擦り上げていく。
嘘だろ。
感じたら怒るくせに。
「んっ…やっ…あっ」
「…悟…。ほら、もっと声出して…」
「やめっっ…あっ…良介ぇっ…ぃくっ…」
「いつも言ってるでしょう…? 敬語だって。許可もちゃんと取って」
こいつらの前で、そんなこと。
それでも良介の視線が突き刺さる。
「っはぁっ…んっ…ぃって…いいですかぁっ…」
「だめ」
「っひぅっ…んっ…あっ…だめっ…もぉっ」
 良介だけじゃない。
 後ろに突っ込まれた指が、容赦なく刺激を続けて、耐えれそうにない。
「ぃくっやあっ…あぁあっ…」
 イくと思ったのに、良介は俺の根元にがっちりと指を絡めてイかせてくれなくて。
 涙が溢れた。

「やめ…っ」
「あ、そろそろ入れちゃっていいですよ」
 そう言われた男は、指を引き抜くと、自分のモノを取り出しソコへ押し当てる。
「良介っ…? っ…やっ…だっ……」
「結構、かわいいですね。悟。頭、撫でててあげますよ」
 俺の頬を撫で、頭を撫でてくれて。
 その間にも、中へと良介じゃない男のモノが入り込んできた。
「ひぁっ!! やっやあっ…」
「恐い? 大丈夫…見ててあげるから」
良介は目配せをして、俺の腕を片方だけ解放させてくれた。
しっかりと、良介の手を掴む。
「ぁっんっ…ぁあっ」
「…俺以外でイク…?」
そう耳元でこっそりと言われてから、俺の股間を掴んでいた良介の手が離される。
いま離されたら、イきそうなのに。
良介以外で?

中まで入り込んでいる男のモノが、軽く中で動かされるだけで、背筋がゾクゾクしてたまらなくなった。
「ひぁっ…! あっ…良介ぇ…っやっ…あぁああっっ」

良介じゃないのに、イってしまって。
「っ…良…介…っ」
「続けていいですよ?」
その言葉に、腰の動きを止めかけていたやつが、俺の中を突き上げてかき回していく。
「ひぁっっんーっ…だめっ…もぉ…っ…ゃあっ良介ぇっ」
内壁が擦れて。
でも、良介の指が優しく俺の胸元を撫でて。
そんなことをされたら気持ちいいから。
「良介ぇっ…おねがぃっ…やっっぃや…」
「ね…。たっぷり乱れて見せてください」
良介の言葉に合わせるようにして、激しく中を突き上げられると、そいつは限界だったのか、一気に引き抜かれ、俺の腹辺りに、精液をかけられた。
「っんぅんっ…!!」

上で片方の手を掴んでいたヤツもまた、俺の顔へと欲望を放つ。
脱力状態で、それでも俺はタイミングが合わずイけれなかったから、体は熱いままだった。


良介が2人になにか言っているが、耳に入らない。
帰るよう促していたのか、2人はどこかへ行ってしまい、俺と良介だけが残る。

良介が、いまだ熱い俺の股間をそっと指先で撫で上げた。
「っ!! あっ…」
「声、我慢してたね…」
「っ…ん…」
「返事は?」
「…はぃ…っ」
「なんで?」
焦らすように、指が竿を這う感触に体が震えた。
「ぁっ…良介…じゃないし…っ外、だし…っ」
「…じゃあ、今はちゃんと声出せる?」
外だっつってんのに。
躊躇する俺を見て、
「出来る?」
優しい口調で俺に聞く。
 
出来ないとは言いがたい、威圧感を感じた。
期待を裏切れないという気持ちもあるのだろう。
「はい…」
「じゃあ、たっぷり声出してください」

そう言うと、良介の指が、ゆっくりと俺の中へと押し込まれていく。
「ひぁあっ…んっ…んーっ」
「声、わかってる?」
「はぁっ…あっ…はぃっ…」
「それに、イっちゃ駄目って言ったのに、さっきはイっちゃったしねぇ」
「ぁっ…んぅっ…ごめ…なさっ」
2本の指が奥まで入り込んで、内壁を優しく擦る。
気持ちよくて、体が震えた。
「ぁっあんっ…あっ…ゃあっ」
「そ…。悟は女の子みたいにあんあん言ってるのがかわいいんですよ」
恥ずかしい喘ぎ方だと自分でも思うから、我慢したいのに。
すればすぐ良介にはバレる。
それに良介はコレが好きだと言う。
聞くのが好きなのか、俺が恥ずかしがるからイイのかはわからないが。
少しも聞き逃してくれず指摘され、羞恥心が高まる。
恥ずかしくてたまらなくて、涙が溢れた。

感じすぎて、絶叫せざる得ない状態になる前の、ものすごく心地いい、この声が出てしまう最高の加減をわかって良介は与えてくる。
だからこそ、俺が声を抑えたりすれば、怒るのだろう。
それでも、俺は羞恥心から逃れられない。
良介がいちいち指摘するから。
「はぁっんっ…あンっっ…ンっ…良介ぇっ…あっ…ぃっちゃうっ」
「気持ちいい?」
「あんっ…ぃいっ…ぃくっっ…やんっ…もぉ出るっ」
「すごい腰、動いちゃってますね。…恥ずかしい?」
恥ずかしい。
慣れることはあるのだろうか。
「はぃっ…あっ…ぃやっ…」
「いや? どうしよう? 悟が見て欲しくないなら、見ないし?」
 見るなといえば、この人は本当に、俺からあからさまに目を逸らしてしまうだろう。
 そんな寂しい行為は耐え難い。

 聞かずとも答えなどわかっているだろうに、言わせたいらしい。
 少し躊躇するとわざとらしく、やはり顔を横に背け、俺から視線を逸らした。
 ボーっと別の方向を見て、指だけはただ機械的に刺激を送り続ける。

このまま、見られずにイクなんて。
もちろん、見て欲しいというわけでもないのだが、ほっとかれているようで。
ただ、良介の手で抜かれただけの行為みたいなイキ方は辛い。

「あっんっ…良介っ…んぅっ…見てっ」
「なにを?」
「ぃくとこっ…あっ…見てぇっ…ぉねがっ…あんっ…もぉ、いく…っ」
「見て欲しいの? 悟、やらしいね」
「あっ…はぃっ…ぁんっ…あっっ…あっ…いい…っですかぁ」
良介が俺を見て、笑って頷いてくれたのが、涙でぼやけた視界の中、理解出来た。
「あんっ…あっ…やっっ…ぃくっ…ぁっ良介ぇっ…あぁああっっ!!」

良介がイかせてくれて。
頭がボーっとした。
よく出来ましたと言わんばかりに良介は俺の頭を撫でた。

俺の中で、なにかが切れて、次々と涙が溢れた。
「…どうしました? 悟」
「良介…っ…。欲しぃ…」

他の男とやるくらい、本当はどうでもないことだと思っている。
良介の知らないところで浮気するのなら問題だが、こうやって良介に仕組まれて。
ただ、別の人の物が入っただけ。
それは、良介に玩具を入れられるのと、変わりないとすら思うから。
けれど、今、それだけで終わらされて、良介のが欲しくてたまらない自分に気付いた。
イきたいだけじゃない。

俺が欲しいのは良介なんだ。
だから、この涙は他の人にやられたからではなく、良介のモノが貰えない辛さから来るものだと自分でもわかっていた。
他の人はしてくれたのに、良介はなぜくれないのだろうって。

いつのまに俺はこんなにも良介自身を求めてしまうようになったのか。


良介は泣く俺の体を起こすと、ギュっと抱きしめてくれた。
「あげますよ。当たり前じゃないですか。むしろ、欲しがらなければ怒るところでした」

たぶん、良介は、弱いんだろうなと思う。
俺が良介を本当に好きかどうか、何度でも、俺に確認をするから。

「良介……」
言葉に出来ず、名前を呼ぶと、理解してくれたのか良介は俺の髪を撫で、口づけてくれた。