「はぁっ…あっ…ぁんっ…」
ほのぼのしたいとか。
いつものサドっぽいプレイがいやだとか。

間接的にそう言ったせいだろう。
昔みたいに、やたら甘ったるいじれったい愛撫。
優しく良介が、俺の胸元に舌を這わす。

「今日は、悟の好きなようにしてあげるから。我侭言って…?」

そう始めに言われた。
気を使ってなにも言わなかったりしたら、すぐにバレてしまうんだろう。

だからといって、なにか無理やり考えて、自分の思うことを言うわけでなく。
今日は、本当に、気を使わずに、無心で出来たら…。
そんな風に思うわけだけれど。

こんなの、もう1年以上してない気がする。
いつも、俺のこと見下してるような良介が。
こんな風に、ベッドの上で、俺のシャツの前を開き、乳首を舌で転がして。
もう片方の突起も、指で優しく撫でていく。
「んぅっ…んっ…はぁっ…ぅんんっ」
だんだんと、気を使うだとか、なにも考えられなくなる。

いやらしい声…。
良介に指摘されなくても自分で分かる。
「やっ…ぅンっ…っ良…介ぇっ…」
軽く歯を立てられ、体が大きくビクついた。
「あっ…ぅんんっ…あ…んっ…やっ良介っっ…やめっ」
「ん…?」
「歯ぁっ…やっ…ぅンっ…はぁっ…んやっ…」
なんでこんな…。
体がくねる。
良介は、歯を立てるのをやめて、舌と指先で丹念に胸元を愛撫していく。
「んっ…ぅんっ…あっ…あっ」

いつもより、ずいぶんヌルいことしてるはずなのに。
自分が望んでこうしていると思うと恥ずかしくてたまらない。

涙が溢れてくる。
口を両手で押さえ、顔を横に向けて視線を逸らす。
「んっ…んっ…ぅんんっ」

良介は口を離して、指先だけで両方の胸元をあいかわらず優しく愛撫する。
「はぁっ…んっ…」
つい、良介を見ると目があってしまう。
「舐めて欲しいの…?」
優しく、図星を突かれ、顔が熱くなる。
「っンっ…」
顔を逸らしたまま頷くと、耳元に軽く音を立てキスをして。

俺のズボンに手をかけ、ゆっくりと脱がしていく。
「っ良…介っ」
ズボンと下着を引き抜かれて。
膝を立てさせられ、中心の硬くなっている俺のモノに舌を這わされる。

「あっあっ…やっぱ…っあっやっ…」
体がしびれる。
良介が、こんな風に、俺の言うように俺のを舐めるなんて。
いつぶりだろう?
こんなの。
「やっ…あっやめっ…はぁっ…らめぇっ…ぃくっあっ…やっっ…」
「ん…イきたくないの?」
言葉を挟んで、また指先と舌を絡めて、愛撫していく。
「気持ちよく…なりたいでしょう…?」
「はぁっ…やあっ…んっはぁっ…良介ぇっ…ぃくっやっあっ…あぁああっっ」

すぐにイかされて、体が脱力状態。
「満足しちゃった…?」
気持ちよくって、頷くけれども、やっぱり良介のこともイかせたいし、なにより、こんな風に、俺に付き合ってやってくれただけみたいな、そんな行為は寂しくて。

「良介…」
「ん…? どうして欲しいですか?」
「……口で…しようか?」
「悟が? いいですよ。どうせなら、下、使わせて? …かわいがってあげますね…」

良介が、手にしたローションを俺の腹あたりに塗りたくっていく。
「んっ…」
「冷たい…?」
「はぁっ…んっ」
そのままヌメった手が、俺の股間に絡んで、奥の蕾を割り開くように指が入り込む。
「んっ…んーっやっやあっ」
「ゆっくり…でしょ…?」
「あっ…ぅんっ」
本当は、俺のこと、知り尽くしてるんだろう。
いつもいつも、焦らすのだって、全部わざとだ。
ゆっくりと、俺が望むように、指を奥の方まで差し込んでいく。
「はぁっあっ…」
じっくりと、探るように指先が中をそっと動いた。
「やっ…ぅんんっ…やぁっあっ…」
「気持ちいい?」
「んっ…やんっ…やっ…あっんっ…ぁンっ…」
刺激が強すぎないように、生ぬるいくらいの指の動きを続けられ、だんだんボーっとしてきて。
慣れてくると、少しだけ、物足りないようなじれったい感覚。
「はぁっあんっ…良介ぇっ…」
自分から腰がくねるのがわかる。
求めるように、良介の指へと摺り寄せてしまう。
「ンっ…はぁっもっとっ…あんっ…良介っ…あっぁあっ」
「もっと?」
「そこっ…ぁあっ…突いてっ…あんんっっ…もっとっ…」
わかってるくせに。
焦らされる。
いつもみたいに意地悪なセリフは吐かないけれど、優しいフリしてやっぱり良介は良介のままだ。
根がサドなのにかわりはない。
だけれど、いつもと違うのは、俺自身。
良介のためじゃなく、自分のために、こんな恥ずかしいセリフ、口走ってるんだろう。
自分が気持ちよくなりたいから。
気を使ってない…という部分では、クリアしているけれど。
おかしくなる。
俺って、良介に言わされてたんじゃないのかっての。
焦らされれば、自分から、こんな風に求めちゃうわけ?

耐えられない。
欲しくて体がくねって。
いやらしいのはわかってる。
「ねっ…あっ…良介っ…あっお願いっ…んっ…もっとっ」
「なぁに?」
「もぉっ…あっ…我慢できなっ…ぁあっ…ぃかせてっ…いきたいっ…んやっ…やあっ」
「どうすれば、イけるのかなぁ、悟は」
わかってて、俺がイけないような刺激を送ってるくせに。
優しいフリして、俺の頬を伝う涙を舌で拭う。
「教えて…?」
「あっんっそこっ…」
「ここ?」
「はぁっ…んっ…指、曲げてぇっ…もっと、強くっぁあっ」
「ふぅん。こういうの好きなの?」
「ぁんっ…ぃいっ…もっとっ…ぁあっ…やぁっぃくあっ…いくっ…やっあっあぁあああっっ」

死にそうだ。
イってしまって、気持ちよくて。
頭がボーっとする。
「どうする? 終わろうか?」
俺の性格も、全部わかりきってそんなことを聞くのだろう。
終われるわけがない。

ここまできたら、良介のが欲しい。
肉体的にも精神的にもだ。

「…良介…して…」
「どうやってして欲しい?」
「……ん…後ろからっ…」
「そう。後ろから突かれるの好きだもんねぇ。悟は。いいよ。後ろ向いて?」
「良介っ…」
「どうしました?」
「あ…」
「言って?」
「ん……舐めて…」
「いいですよ」
快く引き受けてくれて、背を向け四つんばいになる俺の太ももへと舌を這わす。
「んっ…ぅんっ」
ゆっくりと、足の付け根へ移動し、すでにヒクついてしまっている中心部へと舌が到達。
「はぁっあっ」
腕に力が入らず、ベッドにしがみついた。
腰だけを突き上げるような格好。

「ぁあっ…んっ…はぁっ…」
入りそうで入らない舌先が、入り口の襞を丹念に舐め上げていく。

こんなにも我侭言って、あとからどうなることかわからない。
だけれど、今日なら俺の言う通りにしてくれそうだから。
そりゃ、いくら今日が俺の言うことを聞いてくれる日とはいえ、それなりに焦らしたりしてくるけれど、言ったことに関してはしてくれそうで。
つい頼みたくなる。
いましか、我侭言えない気がして、自分が自分じゃないみたいに求めてしまう。
「んっ良介っ…前も、あっ触ってっ」
「ん…」
舌を這わしたまま、俺の足の間から伸ばした手で、俺の股間のモノも擦りあげてくれる。
「はぁっあっ…んっ…ぃいよぉっ…はぁっあっ、中もっ…ぁんっっ」
俺に従って、ゆっくりと舌先が入り込んでいく。
「あっぁんんっ」
ぬめった感触がたまらない。
いやらしい音が響き、羞恥心を煽られたが、精神的余裕はなかった。
「ぅんんっあっあんっあっ…」
このままじゃまたイってしまいそうで。
良介に申し訳ない。
「あっもうっ…入れてっんっ良介のっ」
「わかりました」
良介の舌先が離れて、熱いなじみのある良介のモノが押し当てられた。
ゆっくりと、刺激が少ないように奥へと入り込んでいく。

「ひぁっあっ…ぁああっ…やっやあっ」
良介のが、俺の望んだように。
そう思うとゾクゾクしてたまらない。
まだ、入れられただけなのに、イってしまいそうで。
どうしよう。
動くなとも言えないし。
「奥まで入りましたね」
「あっっ…良介…っ…」
「どうしました? …動いていい?」
「っ…んっ…待っっ」
動かれてもいないのに。
「っだっめ…良介っ…」
「なんですか? 抜きましょうか?」
動かれるのを想像してしまい、なおかつ少し退かれると、もう限界。
「ぁあっ…やっ…んーーーっっ」

ベッドにしがみつくようにして欲望をはじけだしてしまう。
最悪だ。
もういろんな自分を良介に見られてきているけれど、恥ずかしすぎてたまらない。

良介はイったばっかの俺の股間をそっと撫でながら
「…やめます?」
そう問う。

やめますだなんてこの状況で言えるわけないだろう。
「…やめ…ないで…」
「悟の顔、見たいなぁ。駄目?」
珍しく俺にそうお願いをする。
拒む事なんて出来るわけがない。
いつもと違って罪悪感やら羞恥心のせいだ。

「いい…」
そう言うと、一旦引き抜いて、俺を仰向けにする。

「…顔真っ赤にして、そんなに泣いて、どうしたの?」
優しくそう聞きながら、またゆっくりと入り込んでくる。
「んっあっ…ぁあああっ…」
「どっか行っちゃってる感じだけど。大丈夫? やめなくてもいいの?」
頷くと、良介のが軽く抜き差しされて、体が大きくビクついた。
「あっっ…ぁんっ…あぁあっ」
「何回もイっちゃったのに、やめないんだ?」
俺の問題じゃなく、こんな状態でやめるのはさすがに良介に悪いだろう。
「ひぁあっっ…あっ…良介っ…やっやぁあっ」
「嫌なの?」
「んっ…違っ…もぉっ…あっ変っっ…ぁあっ…やぁあっ」
「変になっても別にいいですよ」
「やっあっ…あんっあぁあんんっ…」
「かわいいですねぇ、悟…」
耳元で。
「…ビデオ撮ってるかいがあるってもんです」
そう言い放つ。
「な…っ」
「いやらしく悟から求める姿、ばっちり撮ってますから。なにをして欲しいのか言ってるのも全部ね…」
ビデオに音声が残らないようにか、耳元で小さな声で教え込んで、腰を揺らされる。
「やっあっぁああっ良介っっ…」
「後で再確認しましょう? たくさん喘いでやらしかったですよ」
「やっ…あっやめっ…やっ」
「いまさらやめろとか言っても遅いんですよ。やめなくていいのかもうさっき確認したでしょう? ほら、僕のこともイかせて? 騎乗位で自分で動いてさ」
「やっ…」
 俺を無視して。
 良介は俺の体を起し、代わりに自分が寝転がる。
 無理やり騎乗位にさせられて。

 下から笑顔を向ける良介は、無言の圧力があった。
「っ…無理…っ」
 良介は起き上がり、
「…散々、僕にやらせておいて。自分はなにも出来ないの?」
 耳元でそう告げる。
「…も…動けな…っ」
「……これは貸しですよ…」
 冷たくそう告げると、良介はまた寝転がり、下から突き上げる。
「あっぁあっ…やっ…あぁあっ」
 衝撃で倒れ、前屈みになる体を、ベッドに手をつき必死で支えた。
 容赦ない突き上げ。
 遠慮してくれない、優しくもない。
 激しくて感じすぎて、おかしくて、狂いそう。
「やめっ…んーっ!! あっやっ…やぁっぁあっっ」
「もう、僕もイっちゃいますよ?」
こんな状態で中出されたら、駄目…。
「だめっあっ…はぁんっ…やっあっ…やぁあああっっ」

良介のが流れ込んで。
俺もわけもわからずイっちゃって。
そのまま、倒れこんでしまっていた。
ぐったりした状態。
良介のが引き抜かれて、力尽きる俺の隣で良介は、ただ頭をなでてくれるもんだから。
俺も、そのままつい、疲れて眠ってしまっていた。



目が覚めると、目の前に良介の顔。
「…なにか不満そうですね。悟」
「…別に…」
「少しは楽しめました?」
確かに、途中までは、ものすごくよかった。
決して良介に合わせてるというだけでなく、自分自身も求めてるんだなって理解できた。

「良介は…どうしてそんなに俺のこと……虐めるんだよ…」
目もあわせられずにそう言うと、良介は優しく俺の頭を撫でる。
「…悟は虐められてると思ってるの?」
「……俺が、嫌がることばっかり…」
そう言うと、今度はギュっと抱きしめてくれた。

「好きだから、悟の笑顔が見たいだなんて、そんな人間じゃないんですよ、僕は。だって、悟は友達もたくさんいるし、幸せそうで、よく笑うでしょ。僕は誰も見たことない悟が見たいの。嫌がる姿も泣く姿も、僕だけ。ねぇ、独り占めしたいんだよ。好きなんです。
……受け入れて…?」

なんで。
なんだか泣きそうになった。
嬉しいのか。
もちろん、嫌じゃない。
虐められるのはどうかと思うけれど、良介にそう思われるのは、ものすごく嬉しいし。
「良介は、本当にそう思ってんの?」
虐めたいだけじゃない…?
「大好きです。でも……悟がどうしてもこんな僕を受け入れられないのなら…しょうがないですね」
しょうがない。
その言葉に、緊張が走った。
しょうがないって?
しょうがないから、別れる?
それとも、しょうがないから、虐めないようにするって?
別れるのも嫌だし、俺に合わせるみたいな良介にも罪悪感を感じて気が気じゃない。
目が涙でぼやける。
「しょうがないって、どういう意味?」
「うん……まぁ、調教しなおしましょうか?」
冗談っぽく笑顔を向けてそう言ってくれる。

「なにそれ…」
「ん? しょうがないから見捨てるだとか諦めるとでも言うと思いました? 駄目ですよ。
もう僕のモノなんですから」

少しだけ強がりのようにも思えたけれど、それはとても嬉しい言葉だった。 やっぱり、虐められてもかまわないだとか思ってしまう。
「良介……好き…」
「……ありがとうございます。…なに泣いてんですか。これからもっと虐めるんで、これくらい耐えてもらわないと困ります」

うれし泣きだって、わかってるだろうに。
でも、そんな良介が、好きで好きでたまらなかった。