良介先輩と最後までやってしまったあの日から。
なんとなくエスカレートしていくように思えた。

以前は、家でしかこういうことはしたことなかったのに。

朝、俺のクラスまで来て。
「1時間目。サボろ?」
そう笑顔で言う。
別にサボるくらいなんてことなかったから、ついて行くことにしたんだけれど。

ついて行った屋上の入り口の壁へと俺を押し付ける。
「…良介…先輩…?」
「…ズボン、脱いで…?」
「なっ……え?」
「ズボンを脱いでって言ったの」
聞き返す俺に、笑顔でもう一度、教えてくれる。
わけがわからず、どうにも出来ないでいると、今度は、勝手に俺のズボンを脱がしていく。
「ちょっ……と…っ…」
ズボンと下着を下ろされて。
下半身が外気に触れる。
「良介…?」
良介は、しゃがみこむと、俺のモノに舌を這わしてしまうもんだから、俺は慌てるようにして口を押さえた。
「んっ…ぅんっ…」
こんな場所で。
まさかされると思ってなかったから。
周りを見渡すと、一応誰もいないようで。
でも、いつ誰がサボりにやってくるかわかったもんじゃない。
「んーっ…ぅんっ…ンっ…」
思えば、立った状態でされるのも初めてかもしれない。
思った以上に、足元がフラつく。
というより、バランス感覚を失うようで。
見下ろしてみると、良介の舌が俺のに絡まるのが視界に入る。
見慣れない光景に、体中が熱くなった。

舌が離れて、やっと開放されたかと思うと、良介が立ち上がり、俺の手首を掴んで壁へと押し付ける。
「…口、手で押さえないで?」

まだ、なにが起こっているのか、理解に苦しむ。

「……良…介…」
「どうしました? そんなに不安そうな顔して…」
「なに…する…」
心臓がものすごくドクドしていた。
まさか。
こんな場所でするはずない。
その常識が俺の頭の中にあって。
それが裏切られそうで。
鼓動が高鳴る。

「指、入れるから。濡らしておこう?」
良介が指に舌を絡めて。
唾液で濡らしていくのが目に入る。

「冗談…」
「冗談じゃないですよ」
良介が本気だと分かり、俺は押さえられた手を力強く引く。
が、反発するように痛いくらいに壁にさらに押さえつけられ、逃れられない。
「…どうして逃げようとするわけ?」
「っ…やだって…っ」
俺は空いている手で、良介の手を無理やり引き剥がし、逃げようとした。
が、引き剥がせて自由になったのもつかの間。
すぐにまた、手を取られ、逃げる俺の足に良介先輩が足を引っ掛ける。
もともと、半分くらいまで降ろされていたズボンのせいで歩幅が合わなかった俺は、あっけなく地面へとひざまずいていた。
取られた左手首を背中側へとひねられ、体がきしむよな痛みが走った。
「っ…」
「…下手に動くと筋、切れますよ…?」
耳元でそう言われ、空いている右手で体を支えながらも、動けずにいた。


少しの間、動かないでいる俺を見てか、そっと左手を開放してくれる。
俺は、しびれる左腕を地面につけた。
「おとなしくしてくださいよ…」
呆れるように上から声を被せられ、むき出しのままだった俺の尻をゆるやかに良介が撫でていく。
「んっ…」
手が自由になった安心感もつかの間で。
本来、感じていた不安を思い出す。
「っやめ…っやっ」
良介は、無理やり俺の足を片方、ズボンと下着から抜き取っていく。
その隙に逃げてしまおうと、体を少し前進させるが、不安感からか、立ち上がれないでいた。
「おとなしくしてくれていたら、こんな手荒な真似はしなくてすんだのに…」
そう言いながら、ゆっくりと、俺の中へと指を押し込んでいく。
「ぁっっ…んんーーーっ」
腕で体を支えてられず、腰だけを突き上げるような格好で、地面にすがりつく。
「やっ…やぁっっ」
「ん…もうちょっとで、全部、奥まで指入るかな…」
耳元で俺に教え込みながら、ゆっくりと中へと進入を続ける。
「っんっ…ぁあっ…」
「…体、ビクついちゃったね…」
前立腺を指先が擦っていく感覚に、大きく体が震えて。
それを指摘しながらも、良介は奥へと指を挿し込んでいった。

「…っもぉ…やめて…くださ…っ」
「…そうやって、丁寧に頼んだら、僕がやめるんだって思ってるの…?」

いつも。
やめて欲しいと言えば、最後まではしなかった。

でもこのあいだは、違った。
俺が初めに『どうせ言ってもやめないだろう?』と思っていることを告げてしまったからだ。
今日は…?

「あのね、悟。僕がいままで、悟が言うように最後までしなかったのは、悟を気遣っていたからだよ。悟がやめて欲しいと思うのなら無理にはしなかった。だけど、コレは無理なことじゃないでしょ。いつもしてるだけのことだし。本当に無理でやめて欲しいって言うのと、わがままや甘えを一緒にしちゃ駄目だよ」

そう教え込むと、その指を中で掻き回していく。

「やぁっあっ…んーっ…ぅんんっ」
近くに差し出された良介の左手に自分の手を重ねる。
なにかを掴んでいないと耐えれなくて。
良介の左手に、爪を立てていた。

「やっぁあっ…やぁあっ」
「…いつもより、感じてる…? こういう場所でするの好き?」
「っっいやっ…や…だっ…ぁあっ…やぁうっ」
「嫌なの?」
俺は頷いて、示していた。
「ふぅん…そっかぁ」
なにかを学んだようにそう言って。
避けるようにしていた前立腺の部分を、中で指を折り曲げるようにして突く。
「やぁあっ…あぁあああっ」

体が大きくビクついて。
散々、感じてしまっていた体は、前立腺を直接突かれた刺激でイかされてしまう。
「…もうイっちゃったの…?」

ゆっくりと、指が引き抜かれた。
体に力が入らなくって。
そのまま横に転がる。
良介の手を取ったまま。

良介の手に、血がにじんでいた。
俺が、爪を立てたせいだ。


「悟…。好きです」
「良介…」
「早くもうちょっとうまく感じれるようになるといいですね」
そう言いながら俺を抱き起こした。

いまはまだ、無理やりイかされているような感じがするから。
それが良介にも伝わってしまっているようで、申し訳ない気持ちになった。

イイときはイイって。
やっぱり伝えてあげるべきなんだろうなって思うし。
それでもいまはまだ、拒んでしまうから。
いつになったら慣れるのかわかんないけど。

「…優しくしてあげるから…。おいで…?」
そう言って。
壁にもたれるような良介に手を差し伸べられる。
俺は、体を進めて良介の方へと向かった。

体を跨いで。
抱きしめられる。

「良介…」
「…恐いですか…?」
恐がってしまうのが申し訳なくて。
俺はなにも応えなかった。

抱きしめてくれる良介先輩の腕の力が入るのがわかった。

後ろから、ゆっくりと俺の中へ良介が指を挿し込んでいく。
「っんっ…ぁあっ」
俺は良介にしがみ付いてそれに耐える。

「悟…大丈夫。なにも恐いことはしないから…」
俺の頭を撫でながら良介は耳元でそう教えてくれる。

ゆっくりと、その指が出入りを繰り返していく。
「ぁっあっ…んぅっ…やぁあっ…」
「悟…」
耳元で何度も俺の名前を呼んでくれて。
ここが屋上だという意識が飛ぶ。

緩やかに焦らすくらいに、生ぬるい刺激を贈られて、体に力が入らなくなる。
「あっ…んっ…ぁんっ…良介ぇ…っ」
「どうしました…?」
「はぁっあんっ…ぁあっ…もぉっ…」
「入れようか」
「…ん……ゆっくり…」
「うん。ゆっくりね…」
指を引き抜かれて、代わりにゆっくりと良介のモノが入り込んでくる。
「ぁっあっ…んーっ…」
「大丈夫…ね。ほら…。僕は動かないから」
全部入り込んでしまって一息ついて。
しがみ付いていた体を少しだけ離して良介を確認する。

「自分で動いてごらん…?」
「良介…急に動いたり…っ」
「うん。しないから」

俺は、もう一度、良介に抱きついて。
少しだけ腰を動かす。
「んっ…ぁっ…ぁあっ…」
自分のタイミングで送られる刺激が上手く感じられる。
「はぁっぁんっ…ぁあっあっ…」
気持ちよくて。
体が熱くって。
良介が、俺の頭を撫でてくれる。
「ぁんんっ…良介…っ…はぁっぁンっ」
「ん…悟、かわいいね」
「ぁんっあっ…あぁんっ…良介ぇっ…気持ちぃいっ…」
「…悟…。悟の体、動かしてもいいですか…?」
もう大丈夫そう…。
「んっ…ぃい…っ」
そう言うと、俺の腰を掴んで、良介は揺さぶってくる。
「ひぁっあぁあっ…はぁっあっ」
俺はまた、良介の背中に爪を立てていた。

「もうちょっと、力抜いて…?」
「はぁあっんっ…やっぁあっ…良介ぇっ…ぃくっあっ…ん、もぉっ」
「悟…かわいい。イっていいよ…?」
「やっぁあっあっ…んっやぁあっ…あっあぁあああっっ」

イってしまうともう、頭がくらくらして、なにも考えられなくなっていた。
良介にぐったりと体を預けてしまう。

力が入らない。
良介が、下着とズボンを履かせてくれるが、うまく頭が働かなくって。
そのまま、眠ってしまっていた。


「悟…」
耳元で、優しく呼ばれる声で目が覚める。
「ん……良介…?」
暑い。
昼…だろうか。
お腹もすいてきていたし。

1、2時間は寝てたんだろう。
「…こういう場所では…どぉ?」
どうか聞かれても。
「…普通…やらないだろ…」
「僕は普通じゃないのかもしれませんね」
そこを肯定されると、どうにも一般論を唱えられなくなる。

「そんなにいや?」
「…嫌っつったのに…」
「でも、最終的には、求めてくれたでしょう?」
そりゃ、気分が乗りさえすれば、今度はやめれなくなるわけで。
どうにも、いいように扱われてる気がしないでもないけど。

「…ね。嫌がる悟もかわいいけど。…早くちゃんと調教しないとね?」
笑顔でそう言われ、なにも答えられずに俺は顔を背けた。
けれど、やっぱり良介が俺を好きでいてくれるのは充分伝わっているから。
そのまま、顔も合わせずに、頷いておいた。