「啓吾……学校…」
昨日、あんなことがあって…。
行く気がしない。
ずっとずっと、家にいたい。
「…透兄………今日、休む…」
「…何かあったん…? 昨日も休んで…」
「…体調悪いだけだで…」
そのまま、ベットで俺は寝転がっていた。
兄貴も了解したのか、俺の頭を軽く撫でて、部屋を出ていった。


昨日はいつもより念入りに体を洗った。
洗っても洗っても、感触までは洗い流せなくって…。
中に放たれた精液を、自分の指で掻き出す作業は、なんとも惨めだった。


休んでも…意味がないのかもしれない。
どうせ、家に来るかもしれないけれど、学校へ行く気にはならなかった。


「…誰か来ても……家、入れんといて…」
そうとだけ、母に告げると、俺はベットでまた寝転がって、痛い体を休ませた。

それがよかったのか、今日という日が何事もなく過ぎていく。
平凡でつまらなかった日々…。
平凡だということがこれほどまでに幸せだと、初めて思った。


「今日は、母さんが学校行けって言ってるよ」
兄貴がまたそう伝える。
昨日が何事もなく過ぎたせいか、すっかり気分がよくなってしまっていた俺は、学校へ行く事に決めた。
「…今日は行くよ…」
それでも、イヤなことに変わりはなかった。



「啓ちゃん。2日間も休んでめずらしかったね」
アキだ。
もう…誰にもつきまとわれてないんだろうか。
アキは、表情に出さないで隠すことが多いからイマイチわからない。
「ん…。ちょっと風邪? やべぇな」
春…。
季節外れの風邪でごまかしているのが、なんとも馬鹿らしかったりもした。
「…あぁ…佐渡。今日は来たんだ…?」
一昨日のやつらが、いやらしい笑みを浮かべながら俺の方に来る。
「…じゃぁ、今日は、教室で?」
「…ベットあるから、保健室にする…?」
からかうように、そっと俺の耳元で話す。
あえて聞こえないフリをして、席についた。


授業中も、ずっとずっと、気が気じゃなかった。
やっぱ…学校、休めばよかったなんて思ったり。
「業後、残ってろよ」
そう言われ、俺は、アキには適当に言って先に帰ってもらい、一人ポツンと教室で待っていた。


「ちゃんと待ってんじゃん? えらいねー」
そう言ってきたのは、先輩らしき人。
「…な…」
誰なのか分からず戸惑う俺に、先輩は少し笑って見せた。
「…君だろ? 啓吾ってさ。やらせてくれるって聞いたんだけど…?」
「違……」
「そぉ? でも教室で待ってたってことは、心当たりあるんだろ…。今さら違うとか言われてもこっちはその気なんだから、やらせてよ」
何も言えずに、逃げようと席を立った俺の腕を力強く掴んで手錠をかける。
何事かと、躊躇するのを見逃さず、もう片方の腕をも取られ、後ろで余った手錠をかけられてしまっていた。
「…そのまま…言う事聞いてくれたらさ…解いてやるから…」
このまま、先輩がどっかに言ってしまったら、手錠がはめられた状態で、非常に困ることになる。
言う事…聞くしかないのだろうか…。
正面から、そっと首筋を先輩が手で撫でていく。
「…跡、残ってるね…。やらしいなぁ…」
「…うるさいって…。とっとと済ませろや」
むかついて、そう答えると、逆ギレしたのか、舌打ちして、俺を睨む。
「…じゃぁ…とっととやらせてもらおっか…」

制服のボタンを全部外され、露わになった胸の突起を指で撫で上げられる。
それだけで自分の体が嫌にびくついてしまっていて、羞恥心が高まった。
撫でられていくうちに膨らんだ胸の突起を、口に含まれ、今度は甘噛みされてしまう。
「ンっ…ぁっ…」
あんだけ、勢いよく受けてたったくせに、少し乳首を弄られたくらいで声を出してしまった自分が恥かしくてたまらない。
そっと、顔を背けて目をあわせないようにした。


ズボンに手をかけられ、思わず数歩下がった先はもう壁で、あっけなく脱がされてしまっていた。
「合意じゃないセックスでも、こんな勃っちゃうわけ…?」
くすくす笑われても、もうなにも言い返せず、ただ、怒りやら屈辱感がこみ上げていく。
「悦くしてやっから、気楽にしなって」
含みのある笑いをして、先輩は俺のモノを口に含んでしまっていた。
「っン…あ…っ…」
舌が、絡まりつく感覚に、体がときたまビクンと震える。
それがもう、恥かしくてたまらなかった。
「はぁ…っ…あ…っや……ぅンっ…」
前に気を取られているときだった。
いつ濡らしたのかも理解出来なかったが、そっと指がアナルに挿しこまれていく。
「痛っ…や…めっ…」
「…まだ、ちょっとしか入ってねぇって。ローション使ってっからそれほど痛くねぇだろ」
舌先で、ペニスを愛撫しながらもそう言って奥へと指を押し込もうとする。
「ンくっっ…ふぁっ…あっ…ぃ…やぁっ」
無理やり奥まで入ってしまった指先が、そっと中を掻き回すと、堪え切れなくなったのか、自然と涙が溢れて、その場にズルズルと座り込んでしまっていた。
一緒に、しゃがみこんだそいつは、なおも指で中を掻き回す。
「ひっくっ…ぅくっ…ンっ…ぁっあっ…や…」
「今さら、泣いて嫌って言われてもねぇ?」
クチュクチュといやらしい音が響いた。
一昨日、無理やり大きく広げられたせいか、ソコは少したつとすぐにほぐれてきていた。
「や…っ…ぃやぁ…っ…」
「…気持ちイイんだろ?」
先輩に、前立腺を探り当てられると、痺れるような快楽が駆け巡る。
「やぁあっ…ぁっ…かん…っ…ぃやっ」
直接的な刺激が強すぎて、体がおかしくなりそうだった。
「ぁくっ…ソコ…やっ…やめっ…ぁあっ…やぁっ…もぉ…」
「へぇ…嫌なんだ…?」
そう言うと、指をずらして、イイ所を避けてしまう。
イきそうだった快楽が一気に静まり返る感覚。
焦らされて消化不良で堪らなく嫌な感じになっていた。
「んっ…ふぁ…あっ…」
「…物足りないんだろって…」
そっと抱き寄せられて、先輩の体を跨がされる。
「…やらしいな…。すぐ、ほぐれてくるし…」
そんなの…。
つい最近、やっちまったから…。
抱き寄せながら背中に回した手で、そっと双丘を掴みとる。
「ん…せんぱ…」
ゆっくりと、2本の指が挿入されて、中を拡げていく。
その行為は、別に俺を気持ちよくさせようだとか、そうゆう考えはまったくないのか、あえて焦らそうとしているのか…。
入り口あたりを、ゆっくりとほぐしていった。
「はぁっ…あっ…くぅ…ンっ…や…先輩…」
焦らさないで欲しい…とか、思ってしまう自分に、悲しくなる。
なに、してほしがってんだっての。
中途半端に止められた刺激が辛くてたまらなかった。
「そろそろ…いい…?」
駄目と言ってもどうにもならないんだろう。
なにも言えずにいると、耳元でクスっと笑う声が響いた。
屈辱感だけがつきまとう。
ゆっくりと、押し入れられる熱い肉棒を拒めないでいる自分が嫌だった。
「ふぁあっ…ンくぅっ…っやぁあっ」
「もうちょっとさぁ、声抑えろって。ココ、教室よ?」
「ン…っ…ぁっ…ひ…っく…っ」
殺そうとしても殺せない声が、漏れてしまうのが恥かしくって、顔が熱くなる。

先輩の物が全て、俺の中に収まりきったときだった。
「…自分で、動けよ…」
「な…ぁ……」
「出来るだろ…?」
出来るかどうかなんて、したこともないのだからわからない。
しかし、断わることも出来ずに、俺はゆっくりと腰を上げて、先輩の物を入り口付近まで引き抜いていった。
「ンっ…はぁっ」
ソレをまた飲み込もうと試みるが、どうしても締め付けてしまって体が拒む。
「おいおい、意識しすぎだろ。早くしろって」
笑いながらもせかされて、出し入れする行為が出来ないでいる自分にもなぜか劣等感を感じていた。
「ぁ…ンっ…やぁっ」
ゆっくりと、また飲み込んでいき、奥まで入り込むとホっと一息ついてしまう。
ものすごくノロい速度で、出し入れを繰り返しながら、先輩に自分のモノを手で扱われて、次第に快楽だけを感じるようになってきてしまっていた。
「ぁっ…ンっ…ゃンっ…っあ…んっ…せんぱぁ…ぃ…ぁっあっ」
「イイ顔すんじゃん…? すっげぇ、やらしい…」
すごくむかつくことを言われている気がするのに、もうどうにもならなくって、溢れてくる涙が止まらなくなっていた。
「ぁっ…やっ…駄目…ぁっあっ…やぁああっ」
我慢出来なくって、欲望を弾け出すと、全身の力が抜けて先輩の方にもたれ掛かる。

「おい…自分だけイってんなって…」
手に取られた俺のモノに、先輩が軽く爪をたてながら、こっちを睨む。
「っイ……っんぅ…」
「ほら、もう一度、動きな」
そう言われて、体を動かそうとするけれど、イったばっかの体への刺激が強すぎて出し入れすることなんて出来そうにない。
少し、動かされただけで、体中に電流が走るような感覚。
「…ぁ…出来な…」
「……なに…? 動けねぇの…?」
わかっててあえて言っているのだろう。
笑いながらそう言うと、繋がったままの俺を床に押し倒した。
「っんっ…やっ…待…っ」
「待てるかっての。お前はイったからいいかもしんねぇけどさー」
後手に取られた手が、床と背中に挟まれて、痛いけれども、そんなことを考えてる状態ではない。
大きく足を広げさせられ、引き抜きかけたモノを、一気に奥まで突き上げる。
「あぁあっっ…やぁっ…あっ」
さっきと同じところまでしか、到達していないはずなのに、すごく奥まで犯されていくような感覚に気が遠くなりそうになる。
それでも、その刺激の強さに、体が震えて意識を失うどころでもない。
引き抜かれ、また突かれるだけで、体がおかしくなってしまいそうだった。
「やぅっ…やめっ…ぁっあっ…んっ…やっ…動か…っ」
「イったばっかなのにさぁ…結構、たまってる?」
先輩の視線の先にある自分のモノは、勃ち上がってしまっていて、先輩からの刺激を快感と受け取っていた。
「ぁっ…嘘…っ…かんっ…ぃやっ…」
「そう、口では言われてもね……体と口がバラバラ…」
先輩は笑いを止めると、体を動かすことに専念する。
「ぁっ…やめ…っ…やっ…やぁあっ…ぃやっ」
「うるさいって…っ」
「やっ…ぁっ…んくっ…やぁっ…ぁっ…やぁあっっ」
2度目の射精に、気が遠くなりかける中、自分の体の中に先輩の精液が流れ込んでくるのがわかった。



「おい…起きろって」
頬を叩かれる感覚に、目を覚ますと、俺を犯した先輩がしゃがんで俺を見下ろしていた。
「…なんだよ、その不満そうな顔はさ。ホントはお前置いて帰ろうかと思ったけど、起きるまで待っててやったんだぜ?」
俺がこうやって、眠ってしまったのか気を失ったのか…
どっちにしろ、それは先輩のせいなのだから、待っててくれたことにありがたさを感じるわけがなかった。
むしろ、恩着せがましい言い方にむかついていた。

「はい。3000円」
目の前に差し出された3000円を意味もわからずとりあえず、受け取る。
「…な…んやん……これ…」
「…なにって、おまえ、啓吾だろ? 今さら違うとか言わねぇよな」
そりゃ、俺は啓吾だけど…。
「だとなんなん? なんで金渡すん?」
「3000円で一発、やらせてくれるって聞いたから」
安い……とか、値段の問題じゃない。
驚きから、声も出なかった。
「のわりにはさ、なんつーか、慣れてなかったよな」
金払ってくれれば誰とでもやるって…?
違うっつーの。
慣れてないなんて、当たり前だろ。
金でやるほど、上級者じゃない。

「俺以外にもやりたがってる奴、絶対いると思うぜ。ガンガン金、稼げるんじゃねぇの?」
別に金なんかいらないっての…。
ただ、やられるよりもなんだか、金を貰う方がショックが大きかった。
「俺…別に金目当てじゃ…」
「じゃ、返してくれるわけ?」
3000円を受け取ったら結局肯定するみたいだったし、むかついたから力の入らない手で3000円をつき返す。
「いらねぇの?」
「いらんわ」
「じゃ、タダでやらしてくれるんだ?」
「違ぇって。なんなん、お前。全然、違ぇよ」
「まぁ、もらえるもんは貰っとけって」
先輩は、まだ座り込んでいる俺の上から3000円を降らせて教室を後にした。