俺が教師になって1年ほどたったころ。

大学時代、ナツとの関係をやめて。
それから。
ナツが、なにをしているのか、よくわからなくて。

気になった俺は、ナツの家を訪ねようかと迷っていた。
なんとなく会いづらくて。

連休。
実家へと戻ったものの、ナツとは連絡が取れずにいた。

「仕事はどぉ?」
夕飯を父親と食べながら、そんな話題に。
「うん…。まぁ、順調」
「そ。よかった」
「父さんは?」
「うーん。まぁまぁかなぁ」
今はホストクラブの経営者として働いているらしい。

ナツのこと。
聞いてしまいたい衝動にかられた。
俺の家に泊まることが多かったナツは、父親ともわりと仲がいいからだ。

俺がいなくなってから、この2人は交流があったりするんだろうか。
…もしそうだとしたら、父さんの方から言うか…。

しばらくして、父さんは仕事場へ。
俺は、まだ、自分の気持ちが整理できてなくて。
ナツのこと、気になったまま、なにも出来ずにいた。

夜、9時頃。
散歩がてら外をぶらついて。
ナツと連絡を取ろうか、迷いながら、公園で少し休んでいた。
と、目の前に3人。
いかにもガラの悪いやつら。

こなければよかったなどと、いまさら思っても無駄だった。

「かわいー子がこんなとこ、一人で来たら危ないよ?」
「女の子かとかと思った」
「男?」
別に俺の容姿は中性的なわけじゃない。
確かに、まだ十代に見られることもあるけれど。
からかわれてるんだろう。
年下か、こいつら。
だけれど、俺が年下と思われてそうだ。


絡んできたうちの一人。
一番近くにいた男を蹴りあげる。
「ってめっ」
あと2人も、なんとか蹴り上げて、殴って。
囲んできた3人すべてが体を地面へと伏せたと思った。

一息ついて、そいつらをよそに俺は帰ろうと、そう背を向けた。
それが間違いだった。

足を掴まれて、体勢を崩す俺を、別のやつが殴る。
「おとなしくしてろよっ」
そう言いながら、何度も殴られて。

よろめく俺の腕を後ろに回ったやつが、しっかりと握って。
前にいる奴は、俺へとナイフをチラつかせた。

「…はじめっから、おとなしくしてればいいのになぁ?」
そのナイフが、俺の着ていたシャツの止めていたボタンの糸を切っていく。

すべてのボタンが外れ、はだけるシャツの間から割り込んだナイフが、俺の胸元に触れ、その冷たさに体がビクついた。
「んー…? 冷たいの?」
ナイフを反対の手に持ち替えたそいつは、指先で、俺の胸元をそっと撫でていく。
「っ!!」
「…冷たいんじゃなくって、感じてんの?」
耳元で、そう言うと、その指が乳首を撫でる。
俺はそいつとは反対方向へと顔を背けた。
「んっ…っ」
「だぁんだん、硬くなってきてるし」
「乳首、感じるわけ?」
「っ…っんっ…っンっ!!」
仰け反る体を後ろのやつが羽交い絞めにする。
「なぁに、こいつ。こんなとこ感じてんの?」
いやらしい口調でそう言うと、前のやつが、あろうことか乳首へと舌を這わす。
「っんっ…ンっ」
何度も、舌が乳首を転がして、軽く歯を立てられると、耐えれず体がビクついた。
「あっ…」
「へぇ…かわいい声、出んじゃん…」
後ろで羽交い絞めにしてた男がそう耳元で言う。
何度も舐めあげられたソコを指でも摘まみあげられ、爪ではじかれて。
久しぶりの感覚に体が熱くなる。
「ぁっ…んぅっ…やめっ」
前の奴をガンつけると、空いているもう一人のやつが、俺の髪を掴む。
「やめて欲しいようには見えねぇよ」

乳首をなでていた奴は、しゃがみこむと、今度はズボンを脱がしていく。
「ってめっ…いい加減にっ…」
「なぁんで勃ってるんですかー?」
そう言うと、股間のモノを掴んで擦りあげる。
「んっ…んっ…あっ…」
「やぁらしー。先走り出てんじゃねぇの?」
「はぁっ…んぅっ…離しっ…」
「見ろよ、こいつ。すっげぇヌルヌルしてんの。ココ」
亀頭の辺りを撫でながら、もう一人の奴へとそう教える。
それが、恥ずかしくって、だけれどどうにも出来なくて。
「んーっ…やっ…んっ」
「なに…すっげぇ感じて来てる?」
何度も亀頭を撫でて、ヌルヌルと先走る液を2人が凝視して。
羞恥心から、涙が溢れる。
「やっ…あっ…」
「すっげぇ俺の手、濡れてきたし」
そう言って、俺の前に濡れた指先を見せつけた。
その指が、俺の股間からもう一度、先走りの液を取ると、後ろの入り口を撫でる。
「っ…やめ…っ」
「うそぉー、ヒクついてんじゃん? やめて欲しくないくせに」
ゆっくり、その指先が入り込んで、体が大きくビクついた。
「んっんーーーっ!!」
目を瞑った瞬間、涙が頬を伝った。
「あっ…抜っ…」
「なになに? 感じんの?」
「すっげぇ、こいつのここ、カチカチ」
空いてる奴が、俺の股間を撫で上げてそう言う。
中を指が探るように掻き回していく。
「はぁっあっ…ぁあっ」
抵抗できなくなった俺に気づいたのか、後ろの奴も乳首を掴み上げて愛撫する。
「なぁ、お前初めてじゃねぇんだ?」
「やめっ…やっ…ぁあっ」
「先走り、タラタラ溢れてんぞー。後ろまで滴ってんの」
「あー、ホントだ。やらしー」
「すっげぇ、エロい体―」
直接言われてるのか、3人で会話してるのか。
俺に言うでもなく、3人で話してるのを聞かされると、いつもと違う恥ずかしさ感じた。
「ぁっあっ…んっ…ぁんっ」
「聞いた? あんってさぁ。女じゃあるまいし」
「ココ? ここが気持ちよくて、あんとか言っちゃうわけ?」
指が、何度も感じる所を突いてくる。
「ぁっやっっ…ぁんっあっんぅっ…やぁあああっ」

こんな奴らにやられているというのに、欲望を出してしまった俺は、力つきて、3人から逃れるように地面へと座り込んでいた。

が、もちろん、それで終わるわけがない。
うつ伏せにさせられ、腰を引き寄せられ。
さっきまで指が入っていた箇所に、男根を押し当てられる。
「っ…やめ…っ」
「自分だけ気持ちよくなるなんて最低―」
馬鹿っぽくそう言うと、そいつは勢いよくソレを突っ込んだ。
「ぁあああーっ」
俺も馬鹿みたいに大きな声をあげて、地面に爪を立てた。
久しぶりのその物量に、少し痛みを感じる。
「ひぁっあっ…あっ…んーっ」
ガクガクと体を揺さぶられ、気が遠くなりそうだった。

「はぁっあっ…ぁんっ…やっ」
「無理ヤリやられてんだぜ? お前。感じてんの?」
「ぁっあっ…やぁあっ…」
嫌なのに。
気持ちイイ。
「やっぁっ…あんっ…やぁあっ」
ナツ。
こんなやつらにヤラれるくらいなら、ナツとしたいのに。

「やっ…ぁあっ…ナツっ…」
「誰それ、彼氏?」
「やっべ、すげぇ気持ちいいんだけど。もうイきそ」
「俺、口借りるわ」
口の中にも性器を挿し込まれ。
後ろからと前からと。
意識が朦朧とする。
「どっちか早く代われよ」
「俺、もういく」
腰を早く動かされ、中へと男が欲望をはじけだす。
「んーっ…ぅんんんっ」
口をふさがれたまま、その刺激に耐えるが息つく間もなく別の男のが入り込んでいた。

ちゃんとした口での愛撫など求めていないようで。
ただ、俺の顔を掴んで、乱暴に口内を肉棒がつく。
嗚咽と、喘ぎがまぎれて。
それを男のモノで塞がれて。
何度も何度も、突かれると、その男は俺の口内に精液を出す。
「っゲホっ…ぅくっ」
ひとしきり咳き込んで。
後ろから、突き上げられる感覚に、周りの音が聞こえなくなっていた。

「ぁあっあっ…んっ…あぁあっ」
自分の声だけが、頭の中に響く。
もう嫌だ。
逃げたいのに。
すごく気持ちよかった。やばいな。俺、変態じゃん…。
その男が欲望を放つと、俺はその場で、寝転がった。
真っ暗なその場所で、目が慣れていたはずなのに、視界がはっきりしなかった。




しばらくして目が覚めると、俺は誰かに後ろから抱かれていた。

懐かしいような。
馴染みのある腕。
ナツだ。
涙が溢れ、その腕に自分の手を重ねた。

地面に座り込んで、木を背もたれに、優しく俺を抱いてくれている。

「おはよう」
いつもみたいに優しい声で、ナツは言ってくれた。
俺が、輪姦されたって、わかってるだろうに。
「ん…」
「どうしたの? 深雪ちゃん。泣かないで…?」
「っっ…んっ…」
ナツは俺の顔を自分の方へと向かせ、口を重ねてくれた。
「んっ…」
口が離れ、やっとナツの顔を見る。
「なっちゃ…」
「久しぶりだね」
「あ…」
「おかえり」
優しい声だけれど、泣きつく俺を、ナツは力強く抱いてくれた。

「なっちゃん…っ俺っ」
「…なにも言わなくていいよ…」

ナツには会いづらいと思っていた。
俺は、ナツと別れたからだ。
こういう関係はやめようと。
そう言い出したのは俺で。
ナツも納得してくれた。

そんな俺を、優しく抱いてくれる。

あのときの俺はナツが傍にいてくれることに慣れすぎて、その存在の大きさに気づかなかった。
というか忘れていた。
だからあんな風に、別れようだなんて思えたんだ。
もちろん、その方がよかったかもしれないと、そのときは思ったけれど。

ナツはやっぱり、俺にとって救いだ。
いつもそう。
ナツがいるから、俺は救われる。
ナツだけは裏切らないでいてくれる。
そんな気がした。


「ナツ…どうしてここに…?」
「んー? 深雪ちゃんのお父さんが、深雪ちゃんは実家に戻って来てるって教えてくれたんだよね。で、家、行ったの。インターホン押したんだけど返事ないもんだから。ちょーっとウロついてたんだよねぇ」
会いに…来てくれたんだ…?
「そっか…」
ふと顔を上げ前を見ると、俺をやった奴らが倒れているのに気づき体がこわばる。
「…なっ…」
「ん? なぁに?」
「……帰りたい…」
「うん…。じゃあ、行こうか…」
ナツは俺をおぶってくれた。
夜遅く、人気がなかったせいもあり、恥ずかしさは感じない。
あの倒れていた人たちは、ナツがやったんだろうか…。
だけれど、いまはもうそんなことはどうでもよかった。

「お風呂行こうか…」
「うん…」
散々、俺の家に泊まっていたナツは、自宅のように慣れていて。
俺を風呂場に連れて行った。
俺だけ全裸で。
ナツは、靴下だけ脱いでいた。

「いいよ、辛いなら座って?」
ナツに言われるがままに、風呂場のタイルの上に座り込み、壁へともたれた。
ナツは自分の手にボディソープを乗せ、その手で俺の体を洗っていく。
背中や腕、足の至る所にナツの手が這う。
その感触が気持ちよくて、体がゾクゾクしていた。
「足…拡げて」
「ん…」
内腿にも、ぬるぬるした手が這っていく。
「んっ…ぅんっ…ナツ…」
「ん? なに…」
ナツは体を洗ってくれてるだけで。
俺の方が、もうやらないでおこうって、言い出したのに。
また、ナツとしたいって思ってる。

すごく感じる。
「ぁっ…んっ…」
胸元を手が触れると、軽く体がビクついた。
熱い。

すでに勃ちあがってしまっている俺のに、ナツが指を絡ませる。
「あ…っ」
だけれど、その行為はまるで、洗うことが目的のようで。
愛撫なんてもんじゃない。
優しく触るだけ。
じれったくて、腰が動きそうになる。
「んっ…ぅんっ…」
俺が感じてるって、気づいてるくせに…。
それでも、なんとなく言い出せなくて。
欲しがれなくて。
ただ、俺は黙っていた。
「はぁっ…あっ…」
ボディソープの絡まる音と、俺の息遣いがいやらしく響く。

「っナツ…っ」
「んー…? 綺麗になったかな?」
「もぉっ…んっ…」
俺は、大股を開いた状態で、ナツのシャツを掴む。
「なに?」
「っ…あっ…洗ってよ…中もっ…」
ナツは体を俺に寄せ、ゆっくりと指を中に押し入れていく。
「んっぅんっ…ぁああっ」
入れられるだけで、体中がゾクゾクしていた。
さっきのやつらとは全然違う。
わざとなんだろうけれど、ナツの指は、あいかわらず洗うという行為に専念していた。
イイ所を刺激したりはしてくれない。
それでも、さっきのやつらよりも、感じるのは相手がナツだからなんだろう。
「はぁっあっ…ナツっ…んっ」
自然と動く腰。
ナツに抱きつく。
「んっ…なっちゃぁっ…もっとっ…」
汚れを落とすかのように、ナツの指が内壁を擦っていく。
「はぁっ…あんっ…なっちゃっ…やぁあっ」
ナツとは1年ぶりの行為だ。
別れを告げたとき、結局、ナツとは最後までしていなかったし。
たまらなく感じてしまっていた。
「もう、大丈夫?」
本当に。
洗うだけのつもりなんだろうか。
して欲しいとは、言いづらくて。
「…奥…っ…」
そういう言い方しか出来なかった。
「後ろ向いて…? 腰、上げてよ」
ナツは指を引き抜くと、あいかわらず優しい口調でそう言ってくれた。
だけれど、怒ってるのかなんなのかよくわからないままだった。
「ん…」
恥ずかしいけれど、頼んだのはこっちなわけで。
俺は、壁から少し離れると、床に這い蹲るようにして、腰だけ突き上げた。
ナツは、ゆっくりとまた指を挿し込んで。
数えるように2本目を挿入する。
「あっ…ぁあっ…んーっ」
絶対に、わざとだろう?
感じる所を避けるようにして、ナツの指が中を探る。
「ぁあっやっ…なっちゃぁっ…やっやぁっ」
「もっと、腰上げて」
高く突き上げたソコを、ナツは指で拡げ、ひやりとした液体が流れ込む。
「あっ…んっ」
ボディソープだろうか。
中に入り込んだソレを、塗りこんでいく。
「はぁっあっ…んーっ…なっちゃぁあっ…」
「シャワーで奥まで流そうか?」
そう言うと、シャワーの音。
指で押し広げられたソコへとお湯が当たる。
お湯の入り込むソコを、指が掻き混ぜていく。

「ぁっあっ…んっ…あぁあっ」
もう。
限界。
欲しくてたまらない。
焦らされて、焦らされて。
わかってるくせに。
「なっちゃぁっ…なっちゃんっ…やぁっ…もぉっ…やぁあっ」
「なぁに? もう大丈夫なの?」
「違ぁっ…そこっ…あんっ…もぉっ…突いてっっ…」
ナツは、シャワーを止め、指を引き抜いて、俺の体を半転させる。
仰向けで寝転がる俺を見下ろして。
「どうして欲しいの…?」
企むような笑み。
怒ってない…?
「入れて…ナツの…っ…」
そこまで言うと、すぐナツは自分のモノをゆっくりと、押し込んでくる。
「ひぁっあっ…あっっ」
突発的なタイミングで、体が大きくビクついた。
「熱っ…なっちゃあっ…」
「どぉ…?」
焦らすように、ゆっくりと奥の方へと移動していく。
「はぁっあつっ…おっきぃよぉっ…なっちゃっ…」
やばい。
その物量、熱さ、速度、角度、もうなにもかもがピンポイントで俺を攻める。
「ぁあっ…なんか…あっ…変っ…だめっ…」
「駄目なの?」
「奥っ…ぁああっ…いくっ…あっいっちゃうっ、ナツっやっあぁあああっっ」
入れられただけなのに。
散々焦らされたせいもあって、それだけで俺はイってしまう。

「満足した?」
そう聞かれても、もちろん満足なんてしていない。
というのも、気持ちはよかったが、ナツになにもしてもらえてない気がして。

俺は、ナツの腕を掴んだ。
「なっちゃん…して…」
「ふぅん…」
ナツは、ゆっくりと腰を動かして、出入りを繰り返す。
「はぁっぁんっあっ…あぁっ…なっちゃぁんっ…そこっ…あっそこぉっ…」
「んー…わかってる」
俺の頭をなでてくれて。
ほら…ナツは、やっぱり全部、わかってる。
言わなくても、なにを俺がして欲しいと思ってるのか、全部。
「ぁんっあっ…やんっぁあっんっ…いいよぉっ」
次第に速くなる腰の動きに合わせるように、自分も動いてしまい、声が絶えず洩れていた。
「はぁっあんっあっ…ぁあっ…なっちゃぁっ中っ…ぁっ出してっ」
「せっかく、洗ったのに?」
「違っ…ぁっ…ナツのがっ…っいいよぉっ…っ」
「そぉ…? じゃあ、たぁっぷり、中出してあげるね?」
「んっ…来てっあんっ…なっちゃぁっあっぁあっ…あぁあああああっっ」

流れ込むナツのを体で受け止めながら。
ナツは俺にキスしてくれた。
久しぶり。

やっぱり。
ナツから離れられないような気がした。



今日は久しぶりにナツと一緒のベッドで寝転がる。
「…ナツ…なんか…ごめん…」
別れを告げて。
それなのに俺から欲しがって。
すごい、俺ってナツのこと利用してるよなぁって思うから。
どう言えばいいのかわからず、謝ることしかできなかった。
「なんで謝るの?」
利用してるからだなんて、言えるわけもなく言いとどまる。
だけれど、伝わったのか、そっと優しく俺にキスをして。
「いいんだよ。利用してくれて」
そう言ってくれた。
「深雪ちゃんの好きにして? 俺だって、好きなように行動してるから。いやだったら断るし」
「…うん…」

ナツのことが好きだ。
だけれど、違う。
恋愛とは違って。
兄弟愛に近いんだろうか。
絶対、離れることはないんだと、そう思えた。

たとえ、お互いに恋人が出来たとしても。
ずっと一緒にいられるような。
そんな気がした。
が、そう思うのは俺だけなのだろうか。
「ナツ…俺に、彼女が出来ても、傍にいてくれる…?」
「深雪ちゃんが望むのなら」
「…じゃあ……ナツに彼女が出来たら…?」
ナツは俺の頬を優しくなでてくれた。
「…それでも、俺は変わらないよ…」

たとえ、それが嘘だとしても。
実際彼女が出来てどう変わってしまうのかわからないけれど。
いまだけだとしても、そう答えてくれたことが嬉しかった。

今の関係が、セフレだとか周りに思われようが構わない。
ただやってただけじゃないってのは、俺とナツが一番わかってることだから。

「…なっちゃん…一緒に寝て…」
いつも一人で寝てて、寂しさなんて感じないのに。
いま、ナツが帰ってしまったら。
そう思うと、ナツの手が離せなかった。
「いるから。深雪ちゃんが寝て。起きても、ちゃんといるから」
不意に、アキラさんのことを思い出した。
俺の知らないうちに、どこかへ行ってしまった。
戻って説明してくれたけれど。
俺の知らないところで、ナツが消えようと考えていたら。
そんな不安がよぎる。
「……行かないで」
「行かないよ」
泣く俺の体をナツは優しく引き寄せてくれた。
「疲れてるんでしょ。寝ていいよ? 傍にいるから」
俺は、ナツにしがみついたまま、目を瞑った。




少しだけ軽く寝て、目を覚ますと、俺はまだナツの腕の中。
ナツを見ると、眠っているようで。
寝た状態でも俺の体を離さないでいてくれたことが、なんとなく上っ面だけの言葉じゃなかったんだとそう思えた。
嬉しくて。
俺はナツにしがみつく。
「ん…? 深雪ちゃん…?」
「ごめん、起しちゃった」
「ん。いいけど。早いね。まだ少ししか寝てないじゃん?」
「…うん…もっかい、一緒に寝よ…」
「うん」
俺は、やっと落ち着いて、ナツに抱かれながら、もう一度、眠りについた。