「…ちょぉっとさぁ、冷たくない?」
俺の部屋に来た水城は、不意にそう言って、冷めた目で俺を見る。
「…なにが?」
「ん…。別にいいけど。俺にはアキがいるし。でも、最近、俺に冷たいなって思っただけ」
俺が…?
「…深敦よりもお前との方が長く一緒にいる気ぃするけど。それにお前だって、アキばっかに付きっきりだろ」
「まぁねー…。でも、そういう相対的なのじゃなくって、前より、冷たくなった気がするってこと」
わけわかんねぇ。
「…なに。寂しいわけ?」
「ちょっとね」
こういうとこ、水城ってなんだかかわいかったりするんだよな。
「じゃ、かわいがってやろうか?」
「いいよ、そんなんじゃねぇって」
そうは言うけど、俺は水城の腕を引っ張って、一緒にベッドへと倒れこんだ。
俺が下。
水城の頬を掴んで、軽くキスをして。
「水城って、もしかして処女? もしかしなくても処女か」
たまには逆も悪くない。
とか、思うんだけど、水城に腕を取られ、そのまま、ベッドに押し付けられる。
「…なに…」
「啓吾には、悪ぃけど、なんか俺、アキの代わりにお前のことやってた奴らの気持ちとかさ…。なんとなく、わかっちゃうんだよな…。どうして、啓吾なのかとか…」
「…わかるって…。なんで…手ごろだからじゃねぇの…?」
俺が、アキの近くにいたから…。
「アキとはまた違うんだけど…。なんつーか、すごい欲情させられるってやつ?」
「…なに言ってんの、おまえ」
「もしかしたらさ…。俺がアキをかばうって考え方、しちゃってんのかもしんないけど、アキの代わりじゃなくって…。なんつーか…啓吾がアキを庇うっての、見込んでたのかもよ?」
俺が目当てで?
俺がアキを庇うの見込んで、アキに、告ったりしたわけ…?
じゃあ、俺の方がアキを巻き込んでたって?
「…んなわけ…。お前だって、アキのこと、かわいいとか思ってんやん?」
「そうだけど。啓吾だってかわいいと思うし」
「っ…」
この際、俺がかわいいとかは、どうでもいいとして。
こいつ、冗談じゃなくて、真面目にこういうこと言うからな…。
「だったら、俺に告りゃいいやんか」
「だから、それじゃぁ、お前にフラれて終わるだろって」
「っ…そうだけど…。でも、アキの方が…なんつーの? かわいいやんか…」
「…それはわかんねぇけど。どっちにしろ、アキに告って、OKならもちろんそのままいいし、フラれても、お前がくるんなら…さ」
はじめから、俺が狙われてたかもしれねぇって?
アキの保険みたいなもん?
どっちが本命かわかんねぇけど…いや、アキが本命で、俺は代わりなんだよ、やっぱ。
だけど、はじめから計算に入ってたってなると、また少し意味が違う。
「啓吾って、どう見ても一筋縄じゃいかねぇっつーの? 普通に告ったんじゃ絶対、無理って感じだし…。だいたい、目的が…」
そこで水城が言い留まる。
「付き合いたいのか、やりたいのかって?」
俺が代わりにそう言うと、そっと頷いた。
「アキは、ほら…こんな子が彼女だったら…ってな感じになるんだけど…。啓吾は、高嶺の花って感じがして…。付き合うっていうより、一度でいいからこいつとやりたいって…思う」
褒められてんのかけなされてんのかわけわかんねぇ。
水城に悪気がないのは、はっきりわかるけど。
大体、褒めるとかけなすとかじゃなくって、ただ、真実を述べてるだけなんだろうし?
「じゃぁ、アキに告ったら相当おいしいわけね。アキと付き合えるかもしれなくって、なおかつ庇った俺とやれるかもしれないって?」

俺が、庇う必要なかった?
庇わなくっても、アキは別に…
でも、あいつらなら、やりかねないだろ?
たんなる俺へのあてつけになるかもしれないけれど。
そうだよ…。
俺が代わりにならなかったら、アキが…。
それって結局、俺のせいなわけ?
俺とやりたいから、アキの名前出してきた…?

混乱してきた。
俺が、でしゃばらなかったら。
アキにフラれて、ちょっとうっとうしく付きまとうだろうけど、やったり…そういうのはしないで済んだかもしれない。
もちろん、俺が、代わりになってたから、やられてないけど。

俺が出てきたから…。
じゃぁ、俺をやろうって?
俺が庇うの見込んで、アキの名前出して。
……もともと、アキをやる気はなかったのかよ。
付き合いたいとかは別として。
だけど、俺が断ったら、アキをやるって脅しをかけて。
もし俺が断ったら、脅しなんかじゃなくって、あてつけで本当にやるんだろ。

結局、アキが俺の代わりになるのを、自分で食い止めただけって話?

「…じゃ、アキは悪くないって?」
「…俺が、はっきり言えることじゃねぇけど…。少なくとも、いきさつはどうあれ、お前とやってる時に、アキの代わりだとか…そういった感情はないと思う…」

俺とやる理由が、アキの代わりだとかであって。
俺とやってる時点では、もう俺自身がやられてるってわけ…?

「…水城…お前なんか、むかつくよ…」
水城に腕を取られ、押さえつけられたまま、顔を背ける。
「…ごめん…」
「謝るのとか、意味わかんねぇし。当事者よりも第三者の目で見た方がよくわかることもあると思うよ、そりゃ。俺は、そんな風に考えられなかったけど、水城の聞いて、結構、納得した。…っ…だけどっ…お前が言うと、ただ、アキを庇ってるようにしか聞こえねぇよ」
「違うって。確かに、これ言ったら、啓吾がアキに対して思ってる嫌な部分とか、取り除けるかもしれないなとは思ったけどっ。でも本当に、そうかもしれないだろ? だとしたら、勘違いで恨まれちゃ、アキだってっ」
「っ勘違いとか言うなよ。恨んでねぇよ、どうでもいいんだってばっ」
「そういう見方もあるって言いたかっただけで、啓吾が初めに思ってたのが違うって言ってるんじゃねぇよ。アキだけを思って言ってるんじゃなくって、啓吾の事も考えて…っ」
どんどん感情が高ぶっていくのがわかる。
意味もわからず涙が溢れそうにさえなっていた。
確かに、俺は、アキに対して必要以上に、嫌悪感とか抱いた時期もあったかもしれないけど。
いまではそんなことないし、小学校のときとかは、仲良かったわけだし。
水城の話聞いて、なおさら、俺が間違ってたんじゃないかとか思えてきた。

アキが俺と同じ考え方をしてるかは知らねぇけど、俺に対して罪悪感とか感じてるんだろうなってのも、わかってた。
それも、無駄な感情なんだろうか。

「俺のことって…なに?」
「え…」
「俺のことも考えてって? つい、つけたしで言っちゃった? どうとれば、俺のこと考えてそういう発言になるんだよ」
「どれが本当かわかんねぇけど、可能性がある考え方を、少しでも知った方が、余裕出来るだろ? なんつーか…心の余裕みたいなもんがさ…。それに…アキの代わりじゃなくって、啓吾自身、好かれる魅力があるっつーか…」
「何言ってんの、お前」
「だから、啓吾がかわいいから、アキの代わりとか次とかじゃなくって、啓吾自身をさぁ」
俺自身?
「…そんなこと言ったって…っ…。結局、水城だって、アキがかわいいと思ってんだろ? 庇いたいだけのくせに」
「なに物分りの悪いガキみたいな事言ってんだよ、らしくねぇなぁ」
自分でも思うけど、混乱してんだよ。
「っ…一緒やんっ…。アキのこと庇って、その次に俺のこと気遣ってっ…。水城だって、俺のこと、アキの次に見てるやんかっ」
そこまで怒鳴るように言ってしまうと、水城は、少し俺を睨んでから、首筋に口を這わせ、キツく吸い上げる。
「っなんやん、やめっ…」
絶対、痕残るんだろうなってくらい、キツく。
水城は起き上がると、俺のズボンを脱がそうと手をかけるもんだから、必死で抵抗を試みる。
だけど、自分の方は寝転がったまま、膝あたりに跨って乗られては、いくら抵抗しようにも負けちまうわけで。
俺から降りながらも、ズボンと下着を全部引き抜かれ、露わになった俺のを右手で何度も擦り上げられた。
「っんっ…やめっ…何してっ…」
俺をとことん無視して、水城は勝手に一人で進めてく。
体を屈めると、俺を手で扱いながらも、舌で絡めとっていった。
「っぁっっ…くっ…ぅんんっ離っっ…」
体がいちいち反応して、水城を押しどけようとする手が鈍る。
「ホントに、俺のこと、一緒だと思うわけ?」
あいつらと?
違うけど、もうわかんねぇって。
「っアキがっ…」
「アキが好きだとそうなるんだ? 確かに、近いとは思うよ。アキは好きだし。お前のことだって、好きだし。だけどアキにフラれたらお前、とかそういう考え方はしてねぇよ。順番なんてねぇしっ。だいたい、そいつらだって、アキの次にお前を見てるとかじゃねぇっつったろ? お前が、かわいいからって…」
「ってめっ…かわいいかわいい言ってんじゃねぇよっ。いい加減にっ…」
俺は、水城の髪の毛を掴んで引っ張るけれど、あまり意味がなかった。
水城は指をなめ上げてから、左手で俺のシャツを捲り上げて、胸の突起を甘噛みする。
「っンっ…くっ…」
右手の指先が俺のをそっと撫でてから、アナルに入り込んできていた。
「っやめっ…こんなんっ…」
「あいつらと一緒? 否定出来ないけど。アキとは付き合いたいと思うし。お前のことだって、一度でいいからやりてぇって思うくらい、すっげぇかっこいいって思った」
「っんっ…なにそれっ…」
「やりてぇってのは…俺はどっちでもよかったんだよ。相手が啓吾なら、俺が男でも女でも。ただ、待ってても、お前はしないだろうし、俺だって誘う性質じゃねぇし。今は、かわいいとも思う」
2本目の指を差し込みながら、水城は、そっと胸元にキスをして吸い上げる。
「っンっんっ…ゃっ」
「声色変わってくのとか、すっごいかわいくて、たまんないんだけど」
水城が、俺のこと思っていろいろ言ってくれんの、すっげぇホントは理解できるから、余計切なくなってくる。
俺が、いままで思ってたことはなんだったんだろうとか。
それと同時に、アキを庇うような発言がなんだか腑に落ちない。
っつーか、俺が、負けず嫌いだから?
誰かの次ってのが嫌なんだろうか。
だけど、水城は、アキと付き合ってんだから、次であっても当たり前なはずだろ。
それなのに、俺、なんか嫉妬みたいな感情があふれて来て、わけわかんねぇ。
「ぁっ水城…っ…もぉ俺っ…やりたくねぇっ…」
「いままで、啓吾に付き合ってやってきたみたいだけど。俺自身だって、啓吾とやりてぇって思うわけ。しょうがなく付き合ってやってたんじゃねぇよ? 誰かの代わりでもねぇし」
ゆっくり奥まで差し込んだ指が、今度は少し引き抜かれ、何度も小刻みに俺の中を出入りする。
引き剥がそうと掴んでいた水城の頭を、今度は自然と抱え込んでしまっていた。
「っあっあっ…ゃめっっあっ…離っっ」
「3本くらい、平気…?」
もちろん、平気だ。
それでも水城は一応そう言ってから、3本目の指を入れて、また中を掻き回す。
「んーっ…ンっぁっあっ」
水城とやるときって、いっつも俺がリードしてたから調子狂う。
主導権をとられるだけで、こんなに違うもんなんだ?
体中が熱くなってきていた。
少し、久しぶりなせいもあって、すっげぇ感じすぎる。
「いつもみたいに…声、出してよ…」
そう言いながら、自然と口を塞いでしまっていた手をどかす。
「っやっぁっあっ…はぁあっ…あっ…やぁあああっっ」
あっという間に、イかされてしまって。
だけれど、放心してる場合じゃなかった。
水城は、指の動きを止めないで、何度も感じる所と強く刺激する。
「もぉっっあっ…やぁあっ」
イった後って、変だ。
体が感じすぎるみたいで。
「入れるよ…」
そう言ったかと思うと、指を引き抜いて、代わりに水城のが中に入り込んでくる。
「ひぁあっ…ゃっ抜っ…あっ変、やめっ…ンっ」
わかんねぇけど、感じすぎる。
別に薬とかが入ってるわけじゃねぇけど。
水城が変なこと言うせいだ。

高ぶった感情に上乗せするみたいに、主導権まで取られて。
イったばっかだし、久しぶりだし、どう制御すればいいのかわかんねぇ。
入れられただけで、もう十分感じすぎる。
「いい? 動くよ?」
「っやっ…動かんでっホント、やべぇってっ」
「無理やりにでも、多少ムチャしてでも、欲しくなるんだよ、啓吾は…」
「っな…んだよ、それ…」
「苛めでもなくって、代わりでもなくって…。好きだったんだよ…」
あいつらのこと…だよな…。
「っそんなことっ…あっ」
俺の言葉には、もう耳を傾けないで、ゆっくり腰を動かして、中を出入りする。
「っあぁあっ…やっやぁあっあっ」
次第にスピードを上げながら、何度も打ち付けられ、体が痺れるようで、力のいれどころがわからない。
口を開けば、ねだるような甘い声が洩れる。
だけどもう、口を閉じてる余裕がなくって。
声を出し惜しみすればするほど、逆に鼻にかかった声がいやらしく聞こえた。
「っあんんっあっ、やんっあっ」
「いい…?」
「ゃっあっやぁあっ…もっ駄目っあっあんんっ、出そうっぁっ…あっ」
「中…イクよ…」
ぐちゃぐちゃに掻き回される感じだった。
刺激に耐えるように、水城の背中に回した手で、キツく爪を立ててしまう。
「っはぁあっ水城ぃっ…ぁっあんっあっ…ゃっあぁあああっっ」

また、イってしまって。
それでも、水城にしがみついたまま、離れれずにいた
水城のが奥の方まで流れ込んでくる。
久しぶりに感覚だった。



「…なにお前、強姦まがいみたいなことしてんの…?」
「ごめん」
「ったく、ごめんじゃねぇよ。別にいーけどさ」
「そうじゃなくって…」
なんなんだろうなぁ、こいつは。
変に強気かと思えば、不意に弱弱しくなったり。
でもまぁ、いっつも正しいこと言ってたりするんだよ…。
少し不安そうな顔で俺を見ながら、そっと髪の毛を絡めとられていた。
「…すっげぇ、知ったような口、きいて…。俺、なんもわかってねぇのに、適当なコト、言ったかもしんねぇ」
俺を見てられなくなったのか、そっと顔を背けて。
言わなきゃよかったと、後悔でもしているようだった。
「…でもっ…」
「いいよ、水城…。お前がアキを庇うのもわかるし…。実際、俺もアキのこと、庇ったことあるしな。それに…真剣に考えてくれたんだってのもわかんだよ…」
水城なりに、いろいろ俺のこと、考えてくれたんだと思う。
そうでなきゃ、この話をあえて俺に振るはずないし。
あぁ、アキを庇うからか?
「…水城は…俺のことも好き?」
「え…あ、うん。好きだけど?」
「…じゃ、しゃーねーから許してやっか」
俺は水城の頭に手を置いて、髪の毛をぐしゃぐしゃにしてやった。
「っ許すってっ…お前を思って言ってるっつってんだろ」
「なにも知らねぇくせに?」
「っそれは…ごめんけどっ…」
こいつ、犬みてぇ。
「冗談…。すっげぇ、知ってくれてるよ…。あいつらの立場になって物事考えることなんてなかったし…お前の意見聞けてよかったと思う」
少し、うれしそうに、ほっとするような表情を見せるのが、妙にかわいく思えた。
「じゃ、水城、今日は脱処女いっとく?」
「は…?」
「忘れてねぇよ? 相手が俺なら、男でも女でも、どっちでもいいんだろ? 望み通りやってやるって」
「っいいっ、それもう昔の話だからっ」
水城は、慌てて俺の腕から逃れようとする。
やっぱり犬みたいだ。
風呂嫌がる犬みてぇ。
「大丈夫だって。俺、ちゃんと心得てるし? 体壊すようなことしねぇから。安心だろ?」
「怖がってるわけじゃねぇよっ。あえてやることないだろっ?」
ちょっとからかってやっただけなんだけど。
あまりに嫌がる姿がかわいくて。
それでも許してやろうと、そっと腕を緩めてやった。
「…かわいいのな…。いいよ、やらねぇけど。とりあえず、このすっげぇ目立つキスマークのお返しくらいはさせろよ?」
勢いでつけやがって。
手元にあった鏡で見ても、すっげぇ目立ちやがる。
胸元のはまぁ脱がなければいいとして。
この首筋、どうしてくれよう?
「っいや、一緒にごまかしてやるから。がんばろう」
「何ががんばろうだ、てめっ。いいよ、ごまかしとかいいから、俺もつける。お前に断る権利はねぇよ?」
無理やり押さえつけ、水城の首筋にも、目立つように痕をつけてやる。
水城にも鏡で見せてやって。
「あぁあ、目立ちすぎっ」
案の定、困ってやがる。
「あはははっ。ま、自業自得ってやつだろ」
道ずれだ、ばーか。
けど、水城はすぐさま、落ち着いた表情で俺を見る。
「…残念だったな、啓吾…。アキは『啓吾につけられた』っつったら、あっさり信じてくれるんだよ」
「…信じてくれるもなにも、真実だがな」
しかし、つまんねぇな。
「いいよ、みんなに見られて恥かきやがれ」
「へーい。啓吾も、どうにかごまかせよ? ま、俺につけられたつってもいいけど、深敦は信じるかなぁ?」
「…少しアキと調子いいからって、いい気になってんじゃねぇよ。俺のおかげだろーがっ」
「だから、感謝してるって。アキといれて楽しいし。やっぱそれは啓吾の助けもあったからだろうし」
そう言うと不意打ちで、口を重ねられた。
「ん…。冷てぇってさびしがってたくせに…」
「そうだよ…。だから、お前に会いに来て、余計なことだろーがでしゃばって言うんじゃんか…。啓吾と会う時間が減ったのを、アキで埋め合わせ出来るわけじゃねぇんだよ」
「よく言うよ」
ベタベタに楽しんでるくせに。
「…水城…。ありがとな。いろいろ考え直してみっから」
「思い出させたりして悪かったけどね」
「…忘れようとして中途半端にトラウマになってるよか、ちゃんとキリつけた方がいいだろ」
水城って、やっぱすっげぇよくわかってくれてるよな。
自信なさそうに言うけど。
俺のこと、考えてくれてるんだと思う。
そういうのって嬉しいんだよ…。
「…この痕はどうにもなんねぇけど…」
冗談とかノリじゃなくって、後先考えずにつけやがったよな…。
「悪ぃって。一緒にごまかそうな」
「…へいよ。ま、どうにでもなるだろ」

結局、俺らは、お互いどうごまかすか、考えふけって。
意外にも、こんなん考えても、なるようにしかならないと思うけど。
だけれど、こうやって2人で考えてる時間が楽しかったりする。
お互いがお互いのことを考えて。
「水城。あったけぇよな」
「…冷たいの反対だと、そうなるんだろうな」
誰にも代わりの出来ない、2人しか出来ない時間なんだろうなとか、思ったりする。
「あったけぇよ、お前」
水城はにっこり笑ってそう言って、俺の首筋にもう一度、キスをした。