「…うちの高校、生徒会の権力みたいなもんが強くってさ。なんていうか、たぶん普通の高校と違って、真面目な奴が取り仕切ってるっつーよりは、少しガラの悪い連中が上に立ってるんだよ。
…今の生徒会長は2年のときから選抜されてて、今も続けてるから、2年連続になるな。
その生徒会長が、俺のこと気に入ってくれてて…。
そのせいで、俺自体、わりと有名になっちゃってるのね。

会長は、俺に嫌われないためにだろうけど、手を出すこともなかったし、俺が名前に対して嫌悪感抱くのを少し話したら、全校生徒に名前を呼ばないよう、指令を出してくれたよ。
逆に、そこまでしてくれてるから、俺もなにかあったらあんまり逆らえないってのはあったけどな。
もっとも、なにもされてなくっても、会長に歯向かう勇気はあんまねぇけど」

 浩ちゃんは、不安そうな顔のまま、ただ、俺の方をジっとみて、話を聞いていてくれていた。

「……だけど、今年入った1年が、そういった事情も知らずに俺の事『深雪』って呼んで。それは構わなかったんだけど、俺が呼ぶなって言ってからも呼び続けるもんだから、生徒会に目、つけられてね。
それどころか、部活後に、俺に手を出してるのを、運悪く生徒会の役員に見られて。

俺は生徒会に呼び出されたわけ。
あの人も負けず嫌いなんだろうな。
後から入ってきた1年に先越されたのが悔しかったのかなんなのか。
手、出してきて。

……拒むことなんて、出来なかったよ」

軽くなんでもないことのように伝えたかったのに。
俺自身、悔しい気持ちが強くて、涙が溢れそうだった。

「……深雪ちゃん…じゃあ、会長と…」
「途中までしかしてないよ。
 途中でその1年が生徒会室に入ってきたんだ。
 もちろん、会長はいろんなとこに手が回るから、その1年を生徒会室に来させないよう役員たちに指令を出してたはずなんだよ。
 そいつら、その1年にやられちゃって。
 ……それで、会長は悔しがるかと思いきや、逆にそいつの腕っ節を買っちゃって。
 どう話し込んだのかは聞いてなかったけど、会長の前で1年に最後までやられたわけ。会長にも少し、手は出されたけどね。


 なんかさ。
 もうよくわかんねぇんだよな。
 
 俺って、それなりにモテたのか、会長が目をつけてるからみんな気にしてるだけなのかわかんねぇけど。
 1年が会長に楯突いたって話が出回ってから、生徒会の反逆者…ってわけじゃねぇけど、今まで黙ってた奴らが、俺に寄ってきてさ。
 でも、もちろんそんなの生徒会が黙ってないから、俺の知らないところで、俺を訪ねてきた奴らが、殴られたりしてんの。

 そういうの知っちゃったら、どうすりゃいいのか、わかんなくってさぁ。
 やっぱり、俺に会いに来ただけで殴られたりすんのって、かわいそうだとか思うし、俺のせいなんだろうし。
 …会長に、止めて貰った方がいいのかなとか」

 別に、浩ちゃんに答えを期待しているわけではない。
 ただ、全部、思っていることを聞いてもらえるだけで十分、気がラクになった。


「あー、すっきりした」
 そう言いながら、俺は浩ちゃんの頭を撫でた。
「浩ちゃん、別に考えこまなくっていいよ。聞いてくれただけで満足だから」

「…ごめんね。うまくアドバイスできなくて…」
「全然いいって」
「…でも…。今日、生徒会室につれてかれたとき、会長と少し話したけど、深雪ちゃんのこと、ホントに好きみたいだったよ。優しかったし」
「お前は、俺の幼馴染だから、大事に扱われたんだよ」

 浩ちゃんは、少し難しい顔をしていた。
「…深雪ちゃんは、会長が嫌いなの?」
「嫌いじゃないよ。俺もイイ人だと思ってる。やり方はちょっと強引なところもあるけれど、そこまで俺の事、想ってくれてんのかなって考えると、ありがたい気持ちにもなるし。でも他のやつらも巻き込んで申し訳ない気持ちにもなるよ」  

 俺がゲームの準備をし始めると、それが合図だったかのように、その話は終わり。

 俺は一旦、学校のことを忘れて浩ちゃんとの時間を楽しんだ。
 もっとも、浩ちゃんは、どういう気持ちだったか定かではないが。
 浩ちゃんのことだ。
 たぶん、いろいろと考えこんでしまっているだろう。
 自分が、ラクになるとはいえ、いきなり変な相談を持ちかけてしまい、俺はなんだか、申し訳ない気持ちでいっぱいになっていた。
 翌日、俺らは同じくらいの時間に家を出た。
 浩ちゃんは電車で通ってる高校へ。
 俺は、自転車で学校へ向かった。

「おはようございます」
 あいかわらず、樋口智巳が俺を校門で待ち受ける。
「…はよ」
「昨日は、途中で帰ってしまってましたね」
「気分悪かったからな」
 そういえば、こいつ。
 すっげぇ綺麗な泳ぎしてたよな。
 
 中学時代のお前のこと思い出した……ってのは、しばらく黙っておこう。

 教室でも、雅紀が心配をしてくれた。
「大丈夫だって」
 そうは言ってみても、いろいろ噂話を聞いてる雅紀のことだ。
 なにも言わないが気にしてくれているのだろう。

 
 今日が何事もなく過ぎていくのは、裏で役員が動いているせいかもしれない。
 誰も俺を訪ねてこないように思えたし、呼び出されることもなかった。

 もっとも、本当に、何事もないのかもしれないけれど。
 昨日の雅紀の話を聞いた後だ。
 そうは思えなかった。




 業後、部室でちょうど、悟先輩と一緒になった。
 とはいえ、他の生徒も一緒だったし、特になにか話すこともなかったが、つい視線がそっちへと向いていた。
 

 悟先輩が服を脱いだ時だ。
「っ…!?」
 背中側しか見れなかったが、たくさん赤紫の筋が走っている。
 ミミズ腫れみたいな。

 なにか、棒とか、ムチで叩かれたんじゃないかと思ってしまうような痕だった。

 すぐに、部活用のシャツを着てしまい、俺は悟先輩に気づかれないよう視線を外した。
 

 思い浮かんでしまうのは、会長の顔だった。
 
 昨日のことがバレたとしたら、やりかねない。
 だけど、バレるだろうか?
 水泳部には役員は悟先輩しかいないはず。
 隠れて悟先輩の知らないところでいたのかもしないけれど、役員同士で売るみたいなことするんだろうか。
 逆に、一般の奴が、生徒会にわざわざ告げ口しに行く勇気があるとも思いがたい。
 なるべくなら関わりたくない所だからな。
 けれど、水泳部の誰かが、脅されて言わざる得なかったとしたら、考えられる。
 俺と仲のいい雅紀に会長が目をつけて、脅して聞きだしたとか…?  

 けれど、そんなことがバレたら、今度は、雅紀が悟先輩にどうされるかわからない。
 悟先輩は、俺らの主将だし、雅紀なら、先輩にも会長にも差し障りないように、なにも気づかなかったフリをするだろう。

 だとしたら?
 樋口智巳か?
 あいつならやりかねない。
 変に度胸も据わってるし、なぜか、会長にもそれなりに気に入られてる。
 悟先輩にだって『ホントのことを言っただけです』なんて言いそうだ。

 昨日は俺に近づいて来なかったのも、気づいててあえて、傍観していたのかもしれない。

 いてもたってもいられず、俺は部室を出て校舎へと向かった。
「あれ、桐生?」
 途中で、部室へと向かう雅紀とすれ違う。
「雅紀……。ちょっと、生徒会寄ってくっから、少し遅れる」
「……了解」
 あえてなにも聞かないでいてくれるのだろう。
 俺は急いで生徒会室へと足を運んだ。

 途中、数人が俺に目を向けるのは、役員だったのかもしれない。
 
 急ぎ足で来たというのに、生徒会室の前に立つと、つい物怖じしてしまう。

 入ろうか少し迷っているときだった。

「どうかしました?」
 その声に振り返ると、俺より背も低くかわいらしい感じの生徒。
「…ちょっと…会長に用があって…」
「会長なら、まだですよ。今日は補習の後、来るみたいですから」
 少しだけほっとしてしまう。
 だけれど、会長がいないんじゃ話しにならなかった。
 が、薦められるがままに、中へと入ってしまっていた。

 
「……役員…ですか」
 沈黙が耐えれずそう聞いてみると、笑顔で笑いかけてくれる。
「そう。3年1組、安藤良介。僕は教育係です」
「教育?」
「役員たるものどういった姿勢で会長に尽くしていくか。ちゃんと出来た子にはご褒美を、もちろん、お仕置きだってときにはします。……今日は君が来るんじゃないかと思ってましたが、やはり……思った通りでしたね」
 変に心臓がバクバク言ってやがる。
 つい後ずさりしてしまう俺を見てか
「なにもしませんよ。桐生くんが悪いことをしていなければ」
 笑顔でそう言うと、俺の頬をそっと撫でる。
「っ…なに…して」
「見たんでしょう…? 悟の体。だからココへ来たんだ?」
 さっきまでかわいらしく思えていた笑顔も今は恐くてたまらない。
 良介先輩の手が、優しく俺の髪を撫でて、それだけなのに、一歩後ろへ下がると、ちょうどソファがあって、そこへと座り込む。
「そぉそぉ。ちゃぁんと座っててください」
 なんとなく立ち上がれずに、俺はそのまま先輩を見上げていた。

「……少し聞いてもいいですか。僕も明確なことはわからないので。悟になにをされたか、はっきり教えてくれます?」
「…どう聞いてるんすか…?」
「………質問を質問で返すのはあまりよくないですね。つまりそれは、僕が知っている以上のことはなるべく言わないでおこうという策に過ぎない」
 そう言ったかと思うと、制服の内側に潜ませていたのか、ゴム製に見えるムチを取り出す。
「まぁいいですけど。悟が更衣室で手を出していたようだ…との連絡があったので、悟本人に聞きました。が、もちろん彼は否定しましたよ。どうしても吐かないので少しお仕置きさせていただきましたが、口の堅い男ですね」
「…ホントに…してないんで」
 俺がそう言うと、一瞬、考え込むように目を細める。
「…そうですか」
 そう言うものの、ムチの先が俺の股間に触れる。
「っ…」
「だとしたら、さきほど僕が悟になにをされたか聞いたとき、どう聞いてるのか、わざわざ聞き返してきた意味がわかりませんけど。『なにもされてない』と即答すればよかったのに。もしくはなんのことだかわからないと言ってくれればよかったものの。なにかあったと肯定してるようなもんですよ」
 ため息交じりにそう言って。
 ムチの先がズボンの上から股間を撫でていく。
「っんっ…っ」
「別に、悟も素直に言えばよかったものの。したのでしょう?」
「っ…してな…っ」
 ムチを左手に持ち替えて、良介先輩は空いた右手で俺の股間のモノをズボンの上から掴み上げる。
「っっなっ」
 そのままやんわりと撫で上げられて、体がつい熱くなってしまうのがわかった。
「そう…。してないんですか。でもそれは所詮、最後まではしてない…とかいうオチでしょう? 嘘はついてない…と言い訳するつもりですか」
 尋問に焦って、拒むことが出来なかった。
 ズボンのチャックを下ろされて、直に取り出されてしまう。
「…少しくらいはしてしまったのでしょう…?」
 そう言って、俺の前にしゃがみこむと上目で俺を見てから、手にした俺のにねっとりと舌を這わす。
「んぅっ…」
「あなたのことはあまり虐めたくないんです。立場的にね。早く言ってくれないと、歯止めが利かなくなりそうですよ」
 舌先が裏筋を何度も行き来する感覚に、体がびくついてしまって、つい引き剥がすように良介先輩の頭に手を回す。
「ゃめっ…ぁっ…んぅンっ」
「…先に、その手、固定しときましょうか」
 そう言って立ち上がると、取り出した手錠を俺の右手にかけ、抱きつかれたかと思いきや、左腕をとられ、後ろ手に止められてしまっていた。
「素直でイイですよ。この先の尋問は会長が来てからにしましょう」
 笑顔でそう言うと、そのままなんでもないみたいに俺の隣に座る。  

 口で少しだけだが愛撫されたソコは、すでに立ち上がって脈打っている。
 良介先輩を盗み見ると、ただ、ドアの方へと視線を向けて、会長を待っているようだった。

 昨日、悟先輩にされたことをつい思い出してしまう。
 入り込む指の感触を思い出すだけで、感じてしまいそうで。
 
 焦らされる感覚に耐えられない。
「っ…ぁっ…良介せんぱぃ…」
「…なんですか」
 俺の表情を覗き込んでから、視線を股間に落として、指先がそっと俺のを撫でる。
「っんぅっ…あっ」
「なんですか…と聞いているのですが、呼んだからには理由があるのでしょう?」
 やさしい口調でそう聞きながら、掴んだ俺のを上下に擦り上げてく。
「ひぁっ…んぅっ…ンっ…ぁあっ…」
 良介先輩は、ソファから下りて俺のズボンと下着を引き抜いていく。
 その両足をソファの上にあげられてしまい、開脚で丸見え状態にされていた。

 指先が、奥の入り口をためらうようにさ迷って、入りそうで入らないギリギリの所を撫でていく。
「っ…やめっ…せんぱ…っんっ…」
「ココに、なにか入れて欲しくて、呼んだんじゃないんですか?」
「違…っ」
 あまりの恥ずかしさに肯定することも出来ず、かといって否定も出来ない。
 して欲しい。
 けれど、この先までいったら、やめられずに狂ってしまいそう。
 そんなことを考えてる間にも、良介先輩は舐め上げた指先をそっと中へと入り込ませた。
「ぁっああっ…やんんっ…!!」
 体が大きくびくついて、顔を良介先輩から逸らした。
 ゆっくりと指が前後されて、ギリギリまで抜いては奥まで入り込む感覚に、何度も体がビクついてしまっていた。
「やぅっ…だっめ…ぁっ…ゃくっあっ…」
「どうしてですか」
「もぉ…とまんな…っ」
「いいですよ。僕が調節しますから」
 ピストンの動きに合わせて、何度か前立腺を指先が掠めていく。
 頭がボーっとするような感覚に、うまく物事が考えられなくなっていた。
「はぁっ…あんっ…やっやぁっ…もっとっ…おねがっ」
「じゃあ、2本、入れちゃいますね」
 2本目の指が入りこんで中を広げられると、声を殺すことすら忘れていた。
「はぁっ…あぁあっ…ンぅっ…やぁっ」
「どうしちゃったんですか。桐生くんらしくないです。腰が動いてますね」
「あっ…いい…よぉっ…ぁあっあんっ…」
「……悟ともしたんでしょう?」
 ホントのことを言った方がいいのか、隠した方がいいのかわからなくなってきていた。
「やぁうっ…あっ…ぁああんんっ…だめっ…やぁあああっ…」

 イクと思ったときだった。
 良介先輩は指の動きを止めてしまう。
「っ…な…んで…」
「そんな顔しないで下さい。もうすぐ会長が来ます。それまであなたをイかせるわけにはいきませんので」
 そのまま、ゆっくりと指を引き抜かれ、焦らされる感覚に涙すら溢れていた。
「…個人的にそういう表情は好きですが、少なからず罪悪感を感じます」
 そう言うと、布で目隠しをされてしまう。
 が、どう拒めばいいのかわからず、そのままなにも言えずにされるがままだった。


「…っ良介先輩…」
「あと少し待っててください」
「っそん…なのっ…」
 我慢出来ないってわかってるだろうに。
 苦しいのに、なにもしてくれない。

 5分もたってないだろううちに、ドアが開く。
 だが、俺にとってはものすごく長い時間に感じた。

「会長…。思った通り、桐生くんは自らココへ来ましたので、言われたとおりに引き止めておきました。……据え膳状態まで仕上げてありますよ」
 笑顔でそう言う姿が目に浮かぶ。
 なに俺。
 こいつらの思うツボ?
「では、僕はこれで」
 ドアから良介先輩が出て行くのが、なんとなくわかった。


「…桐生。どうした? 俺に用があって来たんだろう?」
 会長の声が響く。
 俺、なにしに来たんだっけ。
 そうそう。
 悟先輩の体に痕があって。
 でも申し訳ないけど、今はもうそんなことどうでもいい。
「桐生…」
 耳元で会長の声がしたかと思うと、少し前まで良介先輩の指が入り込んでいた箇所に、会長の指が触れる。
「っあっ…」
「こんなに足開けて…」
 指が入り口を行き来して、腰が動きかけているのが自分でもわかった。
 ゆっくりと、指が入り込んでいくと体がビクついてしまう。
「んぅっ…」
「どうしたんだ…?」
 聞きながら、じんわりと指を動かされ、体中が熱くって耐えられない。
「はぁっ…ぁっ…あんっ…あんんっ…」
「目隠し、取ろうか」
 片手で器用に取り外してくれる。
 目を見られると、無償に恥ずかしくて顔を逸らした。
「そんなに泣くことないだろう。気持ちイイ?」
「ぁあっんっ…あっ…はゃくっ…もぉっ…」
「そんなに焦るなって。お前にはもっと狂って貰いたいからな」
 2本目の指が入り込む。
 拡げられて蠢く感覚に、すでにもう狂っていた。
「ひぁあっ…はぁっあっ…あンっ…あっぁあっ」
「すごい…やらしい声、出てんな…。入れてもいい?」
 なんで、この人は毎回、許可を得ようとするのか。
 俺に嫌われたくないから?
 樋口智巳はなにも言わずに突っ込んできたよなぁなんて。

 もういい。
 この人に入れられても、大丈夫。

 そっと頷く俺を見て、会長は俺の中から指を引き抜くと、手錠をはずしてくれる。
 良介先輩から鍵を預かっていたのだろう。
 それにしても、手錠外して、俺が逃げたらどうするつもりなんだろう?
 まぁ、逃げれそうにないし、それがわかってるのかもしれないが。

 ゆっくりと、俺の中へと先輩のモノが入り込む。
「んっ…ひぁんんっ…」
「キツいな…。あれ以来、誰のも入れてないんだ…?」
 あれというのは樋口智巳のときのことだろう。
 俺は、とりあえず頷いて答えるものの、思考がうまく働いていなかった。

「はぁっ…ん…先輩…っ」
「…こうでもしないとお前は俺の元へ来ないんだろう?」
 なんでそんな切なそうな声出してんだよ。
 会長らしくねぇ。

 中をゆっくりと出入りされると、もうなにもかも放棄したくなっていた。
 考えることとか。
 もう、しばらくどうでもいい。
 ただ、この行為に没頭している自分がいた。

「ぁんんっ…やぁんっあっ…あぁあっ…」
「……やらしい体だな、ホント…。俺じゃなくても、こうなんだろ」
 俺はたぶん。
 先輩じゃなくっても、こうやって喘いでしまうんだろう。
「はぁンっ…やっんっもぉっ…やぁっあぁあああっっ」



 精神的になにかを考えれなくて。
 ただ、気持ちよかった。

 だけれど、後味は悪い。
 
 俺ってなにしに来たんだっけ。
「先輩…。俺のせいで、いろんな奴らが殴られてんの、やっぱ辛いんで…。どうにか出来ませんか…」
 そう。
 これが言いたかったんだ。
 疲れきった声だな、俺…。

「じゃあ、俺と付き合えって言ったら? 付き合うのか」

 先輩と?
 少し言いとどまる俺を見て、先輩はにっこりと笑顔を見せる。

「…桐生…。なんだかんだ言って、お前のその嘘のつけない性格、俺は好きだったりするんだよ。肩書きだけあっても意味がないってのはわかってるし。権力で無理やり付き合おうとは思わない。俺も、そこまでに曲がったことは嫌いだからな。…俺が手をひくことは出来るけれど、よく考えろよ、お前。毎日、何人の奴がお前を訪ねてってると思ってんだ? 下手すりゃ輪姦されっぞ。…ま、遠めに傍観してやるよ」
 先輩って。
 やっぱりすっげぇいい奴だよなぁって思うときがある。
「…ありがとうございます」
「お前がよければだけど……役員にならないか。軽い防衛にはなる」
 生徒会の役員に?
 たしかにそれなら、自分の身の安全も手に入る。
「……でも…」
「考えとけ。お前、最近まともに部活してないだろ。まぁいまからする気になるかはわかんねぇけど、行けそうなら行きな」
 すっげぇ俺のこと知ってんのな…。
「…はい」
「それと悟のことだけど」
 そう切り出され、少し前に見た悟先輩の背中を思い出し、恐くなる。
 が、そんな俺を見てか、会長は苦笑した。

「あいつなら大丈夫だ。そうすればお前が来るんじゃないかって、良介さんがやったことだからな…」
「結局、それで悟先輩が犠牲になったんじゃないんですか」
「良介さんが考えて、俺が許可を出した。だが、実際は良介さん自身が嫉妬しているだけのことだ。良介さんは悟のことが大好きだからな。お前が考えてるのとは少し違うと思う。…ちなみに言うと、あいつらはそういうプレイを好んでする。見えるところに痕を残すのは珍しいがな。羞恥プレイだとかなんだとかで、見させられたことが何度かある」
 なんか、どう答えていいのやら。
 でも、少し罪悪感から開放された。
 これから悟先輩を見る目が変わるぞ…。
 でもあのかわいらしい良介先輩が悟先輩を攻めるわけだろ。
 それもまたすごいよな…。
「…良介先輩って…よくわかんない人ですね…」
「良介さんは、ダブってんだよ。ここだけの話、俺が1年のとき、2年で生徒会長だった。俺が2年になってから会長は俺に代わって、良介先輩は3年で一旦、生徒会引退。まぁ影で支えてはくれたけど。現在、2回目の3年と生徒会復帰…というわけだ。今3年のやつしか知らないだろう」

 また新しいことを知ったな…。

 なんだか、やることに関して慣れてきてしまっている自分が、少し嫌になっていた。


 あんまり部活って気分じゃないけれど、一応、プールへと向かった。

「…桐生。大丈夫か」
 一番に心配して飛んできてくれたのは雅紀だった。
「大丈夫。…いや、大丈夫じゃないのかもしんねぇけど…。まぁ大丈夫だから」
「意味わかんねぇけど、その調子ならいいか」
 
 悟先輩は思ったとおり、今日は陸トレ。
 プールには入らないようだった。
 俺もちょっと今は入る気分じゃねぇな…。
 
「どうしてそんなに楽しそうなんですか」
 そう聞くのは樋口智巳だ。
「……別に。ちょっとな」
 とりあえずは会長と悟先輩のことがある程度、自分の中でキリがついて、すっきりした気持ちでいたんだけど。
 こいつのこと少し忘れてたな…。

「…お前だろ」
「なにがです?」
「生徒会にチクったの」
 樋口智巳は笑顔で
「そうですけど」
 あっさりとそう答える。
 あまりにもあっさりしすぎて怒る気にもなれねぇ。

 ため息をつく俺を見てか、
「結果的にはよかったでしょ」
 企むようにそう言った。
 どうにも言い返せず、そのまま俺は黙っていた。

 陸トレもまともにする体力がなかった。
 っつーか、気力がない。
 

「帰るから」
 なんでいちいち俺は樋口智巳にそれを告げてんのか。
 あほらしくなって、すぐに背を向けた。

 一応、悟先輩には伝えるか…。

 俺は、振り返って樋口智巳がついてこないのを確認する。
 視線はこちらに注がれてるが、ついてくる気はないようだ。  

「悟先輩…。今日、ちょっと早退します…」
「…わかった。お前…会長と話したのか」
 さすが、よくわかってんな。
「話しました。…少し、落ち着きそうです」
「そうか…。あと……安藤って奴に会わなかったか」
 やっぱり気になるのだろうか。
「会いました」
「…なにか…されなかったか。あいつ……っ」
 どう言えばいいのかわからないと言った感じだ。
 言葉を失っている悟先輩に俺が付け足す。
「大丈夫です。ただ、俺が悟先輩と仲良くしてたのが気に入らなかったみたいですけど」
 初め、会長命令で、俺がどこまでされたのか伺ってるもんなんだと思っていた。
 だけれど、悟先輩の方が心配だったのだろう。
「…大事にされてますね」
 そうぼやく俺に、意外にもものすごく恥ずかしそうに顔を赤らめて反応してくれる。
「なに言って…っ…」
「付き合ってるんですか」
「………まぁ…一応な…」
 ふてくされるような態度でそう言う悟先輩は、なんだかいつもと違ってかわいらしくも思えた。

「もういいから早く早退するなら帰って休んでろ。どうせ、あいつのことだから、変に尋問とかして疲れてんだろ」
 はき捨てるように悟先輩が言う。
「…さすが…」
「なにがっ」
 さすが、良介先輩のこと分かってるよなぁって。
 それが伝わっているのだろう。
 しまったと言わんばかりに、照れ隠しで背を向ける。
「…帰ります。ありがとうございました」
 そう言う俺に、
「明日はちゃんと参加しろよ」
 背を向けたままそう言った。
「はい」
 それだけ答えて俺は家へと向かった。


「あれ、深雪、早いじゃん?」
 そう声をかけてくれたのはアキラさんだ。
「アキラさん…」
 なんか、ものすごく久しぶりな気がした。
 2,3日しかたってないだろうに…。
 俺の中でやっぱり大きな存在なんだよ。

「なぁに、切なげな目、しちゃってんの?」
 そう言って、俺の手を取ると引き寄せて抱きしめてくれる。
 見上げると、目が合って。
 なんとなく、ものすごく切ないような気分だった。

「深雪…」
 優しく笑って、俺を見ると、そっと口を重ねてくれた。
「ん…」

「今日は、光流さん、同伴でもう行っちゃったから、俺と一緒に夕飯食べような…」
「…う…ん…」
 駄目だ、俺…。
 この人のこと、すごい好きかもしんない。
 父さんがいなくって、二人きりだとわかると、気持ちが昂ってくる。

 髪を撫でられて。
 自然ともう一度、口を重ねた。
 今度は、さっきとは違って、もっと深く舌が絡まりあう。
 俺も、アキラさんの頭に手を回した。
「んぅっ…ん…」
 アキラさんの片手が俺の頭を支えたまま、もう片方の手がズボンの上から腰を撫でてお尻の方を軽く掴むように撫でる。
「っ…ン…」
 アキラさんの足が、俺の脚の間に割り込んで、堪らなくなってきていた。
「っんっ…あっ…」
 息苦しくて俯くようにアキラさんの口が逃れる。
「んー? どうした、深雪」
「はぁ…」
「エロくなっちゃってる?」
 俺の体をクルっと反転させ、後ろから抱くと、アキラさんは俺の股間をズボンの上から擦り上げていく。
「んっ…ぁ…」
 空いた手が、シャツの中にもぐりこんで、胸の突起を指で嬲る。
「あっ…くっん…っ」
 首筋にアキラさんの舌が這って、体中がぞくぞくした。
「アキラさ…っ」
「どうした…? 学校でやなことでもあったんか、お前」
 わかってしまうのだろうか?
「ん…っ…また…やられて…」
「…そっか…」
 アキラさんが一旦、愛撫の手を止めて、俺の体を強く抱きしめる。
「…ホントは、光流さんに止められてんだけど、そうやって、お前が学校で別の奴とやったって話聞いたり、甘えられたりすっと、我慢出来ないかも…」

 そんな言われ方をすると、アキラさんも俺のこと好きでいてくれるんじゃないかって、期待してしまう。

「ま、我慢するけどな」
 軽く笑って、アキラさんは、抱きしめていた手を解いて、俺から離れる。

「アキラさん…してよ…」
 つい、そう口走っていた。
「なぁに言ってんだって。お前、疲れてんだろ?」
「疲れてないよ。……っ消化不良だし…っ」
 そう言う俺の頭を、子供をあやすみたいに撫でてくれる。
「俺はそういう道具じゃないよ」
 冗談っぽくそう言われ、自分がアキラさんを利用しているみたいな言い方をしたことに気づいた。
「っそうじゃなくて…っ…。肉体的な問題じゃなくて……アキラさんに、されたい…っ」

 そこまで言うと、強引に俺を壁に押し付ける。
「…俺はそんな優しい男じゃないよ…?」
「な…に…」
 アキラさんは、手早く俺のズボンと下着が下ろし、俺の目の前で、指を舐め上げる。
「……こんな風にイキナリされても、興奮するんだ?」
 耳元でアキラさんにそう言われるだけで、実際、物凄くゾクゾクした。
 唾液で湿った指先が、俺の脚の間に割り込まれ、ゆっくりと奥へと入り込んでいく。
「んっ…ぁあっ…」
「…甘えてくんなよ…我慢できねぇっつってんだろ…?」
 我慢してくれる必要なんてないじゃんかよ。
 俺は、アキラさんに頭に腕を回した。
「アキラさ…っ…ぁあっ…あぁんぅっ…」
 こんな、玄関入ってすぐのところで立ったまま、なにやってるんだろう。
「…深雪の声、もっと聞かせて…?」
 2本目の指が入り込む。
 もう、アキラさんのことしか考えられなくなっていた。
「んぅっあっあんんっ…やっやぁあっ」
 俺は、アキラさんにしがみついたまま、俺の中で蠢くアキラさんの指に翻弄されて、気が遠くなりかけていた。
「すごい、中、ぐちゃぐちゃなんだけど。中出しされた…?」
「やっだっ…アキラさっっ」
「やぁっぱ…嫉妬しちゃうな…」
 舌打ちをしてそう言うと、アキラさんは、俺の中から指を引き抜いて、俺の体を反転させる。
 後ろから、腰を引っ張られ、俺は体を支えるために、目の前の壁に手をついた。
「アキラさ…っ」
 振り返って確認する間はなかった。
 押し当てられたアキラさんのが、強引に入り込んでくる。
「やっ! あっんーーーっ!!!」
 上体を支えるのにいっぱいいっぱいで、必死で壁にすがりついた。
「…お前ん中、すっげぇあったけぇよ…」
 そう言うと、奥まで入り込んだ肉棒でやんわりと中をかき回していく。
「あっあんっ…アキラさぁあっ」
「んー…? 気持ちいい?」
「はぁっあんんっ…ぃいっ…あっ…気持ちぃいよぉ…っ」
 比べ物にならなかった。
 好きな人とするセックスってこんなに気持ちよくって、飛んじゃいそうなんだ…?

「もっと…っあんんっアキラさぁんっ」
 ゆっくりと掻き回してたソレが、今度は強引に出入りする。
 気が狂いそうで、壁にしがみつく。
「はぁっっ…やっもぉ、あっイクっ…アキラさっ…」
「いいよ。…深雪…出しちゃって…?」
 アキラさんの声が耳について。
 ゾクゾクして、たまらない。
「ぁっあっんっ…やぁあああっっ」


 1回、その場でやって。
 その後も気が狂ったように、お互いを求めた。
 
 たぶん、アキラさんは父親に止められてたからか、本当に我慢してたんだろう。
 1回やってしまえばもうおしまいっつーか。
 1回だろうが罪は罪で。
 それ以降の回数は問題じゃなかった。

 俺のベッドで、寝転がるアキラさんの上に俺は跨って。
 アキラさんを見下ろして。
 アキラさんは俺の腰を掴んで、揺さぶりながら、じっくりと俺を見上げてくれた。

「はぁんっ…アキラさぁ…俺っ」
「深雪…好きなんだよ…。ホントはお前のこと、たまらなく好きなんだ…」
 切なそうにそう言ってくれる。
「アキラさんっ…ぁンっ、俺も、好き…っ」
 大好き。
 好きすぎて、たまらなくて。
 ずっと、このままでいたいと思った。

 その後も、お風呂場で体を洗いながら、泡だらけになって行為を繰り返した。