制服に着替えてから、プールサイドとは逆、運動場へ繋がるドアから外に出た。

なんなんだろう。
すごい、また泣きたい気持ちでいっぱいだ。

「終わった? 深雪ちゃん」
その声に、誰なのか確認もしないで、持っていた鞄を声のする方へ振り回す。

「っッツ!!!」
 
 一応確認。
 見事に顔面ヒット。

「……っつーか、なにやってんのさ、浩ちゃん」
 自分が鞄をぶつけた相手は、幼馴染の浩二だった。

「…痛いって…」
「ごめんって…。まさか浩ちゃんだとは思わなかったから…」
 1つ年下。
 高1だ。
 
「どうしたんだ? わざわざこんなとこ来て…」
「雪寛さんが深雪ちゃんはまだ学校だって教えてくれたから」
父さんが…?
「どうして来るんだよ。いや、来ちゃ駄目ってわけじゃねぇけど」
 浩ちゃんは嬉しそうなのを隠すようにして俺を見る。
「今日、深雪ちゃん家に泊まってもいい? 母さんがお祖母ちゃんのとこ行くから、一人だし…。雪寛さんはいいって言ってくれたけど」
 浩ちゃんのお父さんは単身赴任で、今は母親と二人暮らし。
 祖母が体が悪いらしくたまに見舞いに行くようだ。
 浩ちゃんがついて行くと余計にお祖母ちゃんの負担になるといけないとかで、母親一人で行くらしい。
 もっとも、ついて行く日もまれにあるようだが。


「父さん、俺が6時くらいになるって行ってなかった?」
「詳しい時間までは聞いてないよ。家で一人で待ってるより来てみようかなって思っただけ」
「そっか。まぁいいや。今日は早く帰るから。いいよ。行こ」



 俺は先輩に手を出された嫌な気持ちを無理やり押し殺して、浩ちゃんと家に帰った。


「お帰り深雪〜。お、浩ちゃんも一緒か。今日はハンバーグな」
 笑顔でエプロン姿で。
 なんかもう。
 少しだけ癒されるような気分だった。

「深雪、浩ちゃんのこと頼むな」

「わかってるよ」
父さんは夕飯後、仕事に行ってしまうので、夜は俺ら2人だ。
もう高1だし、全然1人でも問題ないんだろうけれど、浩ちゃんの母親は少し過保護な部分がある。
浩ちゃんもそれを嫌がらないし、うちの父さんも、いつも俺が一人からか、あえて浩ちゃんを泊まらせようとしているみたいだった。

俺らは夕飯を済ませ、父さんを見送り、部屋へとあがった。

「今日さぁ。深雪ちゃんの高校行って、深雪ちゃんのこと聞いたらすっごい驚かれちゃったよ…」
…そりゃ、深雪って名前出したら驚かれるわな。
「俺、探すときは、水泳部の桐生って聞けよ。すぐわかるから」
「そっかぁ。なんかね。生徒会につれてかれたよ?」
その言葉に驚いて、つい浩ちゃんの肩を自分へ向けた。
「生徒会って…なんでだよ」
「なんか…深雪ちゃんとどういう関係かとか聞かれたけど」
「…大丈夫かよ。なんか…されたり…」
 変な緊張が走った。
「別に、なにもされてないよ」
 その言葉に、安心感からぐったりと力が抜けた。

「でもなんか…深雪ちゃんとやったことあるんかって聞かれたけど」
 生徒会の誰かはわかんねぇけど、余計なこと聞きやがって。
 イライラする。

「やるって…どういうことかなぁ…」
 つぶやくように俺に聞く。
「意味はわかんだろ?」
「わかるけど…。俺はまだそんな経験ないから。深雪ちゃんはあるの?」

 あぁ。俺すっげぇストレス溜まってんだ。
 浩ちゃんにぶつけるべきじゃないってわかってる。
 だけど、とまらなかった。

「あるよ…」
 そう答えて浩ちゃんの腕を引く。
 体を引き寄せて、顔を自分へ向かせると口を重ね、ゆっくりと舌を差し込んだ。
「んっ…ん…」
 浩ちゃんは俺の腕にしがみつくように爪を立てた。

 そのまま、口を重ねたまま浩ちゃんを押し倒す。
 息つく間もなく何度も重ねなおし、口内を舌で犯していった。

 やっと口を離してやったころには、浩ちゃんはボーっとした感じで俺を見上げていた。
「深雪ちゃん…なにして…」
「そりゃわかんねぇよな…。やるってことがどういうことかさ…」
 馬鹿だろ、俺。
 俺だけがやられて屈辱を受けるのが耐えられない。
 だからって、浩ちゃんは関係ないだろ。
 そう思うのに。
 ズボンの上から浩ちゃんのを手でなで上げる。
「ぁっ…深雪ちゃ…」
 浩ちゃんの体が過敏にビクついていた。
「…ね…。ヒトにされるとすごい感じるでしょ…」
 ズボンのチャックを下ろして、直接、浩ちゃんのに触れてみる。
 浩ちゃんは不安そうに目線をそこに落とした。
 
 思えば、こうやって改めてヒトのに触れるのって、初めてかもしれない。
 無理やり口の中に入れられたことはあるけど。

 指先で、そそり立つ浩ちゃんのモノの裏筋をそっとなで上げてみる。

「あ…っ…ねぇ、深雪ちゃん…っ」
 浩ちゃんがなにか言おうとしてるのはわかるけれど、耳に入らなかった。
 掴んで上下に擦りあげると、耐えれないのか浩ちゃんは顔を横へと背けた。

「あっ…んっ…くっ」
「…もっと、いやらしい声、出してよ」
「っ…!…ぁっ…そんなん…っ」
 恥ずかしいのか、顔を赤らめる浩ちゃんを見てると、ストレスが溜まっているせいか、もっと苛めてみたくなる。
 俺って、サドだったんだなぁと実感した。

「声、出したくないならかまわないけど」
 あえてそう言ってから、ズボンを下着を抜き取った。
「っ…なに…して…っ」
「わかってるんでしょ。男同士でどうヤるか」
 体が強張ってんのか、抵抗出来ずにいるようで。
 それもまた、俺を興奮させる材料にすぎなかった。

 したことはないけれど、されたことならある。
 自分で思うのもなんだけど、手つきが慣れているみたいに思えた。
 
 舐めあげた指先を浩ちゃんの足の間、入り口へとさまよわせる。
「っそんなとこ、無理…っ!」
「無理じゃないよ。…でも浩ちゃんは処女だから、キツいかな」
 ゆっくりと指を中へ押し込んでいく。
「っ…くっ…ンっ」
「キツいね…。でもすぐ慣れるよ」
 ギュウギュウに締め付けるソコへと押し込んだ指で、ゆっくりと中を探っていった。
「っ…くんっ…あっ!!…やっ…」
「なに…?」
「ゃだっ…ソコっ…」
「やなの…?」
 何度もそこを指で擦ってやると、次第に浩ちゃんの目が潤んできていた。
「ぁっ…ゃあっ…ンっ…だ…めっ…ぁあっ…やだっ…声っ…」
「ね…すっごいやらしい声、出てるね」
 そう指摘して、あいている手で股間のモノも擦りあげてやった。
「あっ…ぁんっ…やぁっ…そんなん…っ…」
「なに?」
「っ…イっちゃぅ…からっ」
「いいよ。かまわないから。イって?」
 浩ちゃんは、泣きそうになりながら、俺の腕の服を軽く引っ張った。
「んぅっ…ぁっあっ…イくよぉっ…やぁああっっ」

 浩ちゃんがイってしまうと同時くらいに指を引き抜いてやった。

「……浩ちゃん、嫌?」
「…わかんないよ、そんなの…」
 不安そうな顔で俺を見上げる。
「…いいよ。続きはしないから、安心して」

 俺は、樋口智巳にされてるときって、嫌だとか感じてたのだろうか。
 しょうがない。
 精神的になにかを考える余裕なんてなかったから。
 嫌なのかどうか聞かれたら、わかんないって答えるのかもしれない。


 相手がアキラさんならもちろん嫌じゃないんだよ。

 駄目だ。泣きそう。

「浩ちゃん、ゲームでもしよっか」
 俺は、なにもなかったように笑顔で浩ちゃんの腕を取ると、体を起こさせた。

「深雪ちゃん、大丈夫…?」

 心配そうに覗き込まれて。
「大丈夫だよ」
 とりあえずそう答えておいた。

 ホントは、全然大丈夫なんかじゃない。
 アキラさんに会いたい。
 
 そういえば今日、アキラさんはどこにいるんだろう。
 もう店かな。
 
「深雪ちゃん、泣きそうだよ」
 そう聞く浩ちゃんも苦しそうで。
 指摘された俺は、胸が苦しくなった。
「浩ちゃん…。俺、どうすればいいのかわかんねぇよ…」

 頼れる人が誰なのかもわからなくて。

 ただ、今素直に話を聞いてくれそうなのが浩ちゃんだったから、俺は聞いてもらうことにした。