「深雪先輩、おはようございます♪」
 わざとたくらむように。
 校門前にいた昨日の後輩は、俺の名前を強調するように呼んだ。

 俺は、無視して横を通り過ぎていく。

「…おい、あれ、昨日のやつじゃねぇの?」
 同じ部活の友人がそう俺の耳元で聞いた。
「…だな。どうでもいいよ」
 そう俺らは二人、下駄箱へと向かっていく。
 所だったんだが。
 後ろから肩を捕まれて。
「なにっ…」
 振り返った先にいたのは、後輩。
 俺がなにか言う言葉を封じるように、口を重ねられる。
「んっ…」
 やば…。
 気持ちいいかもしんねぇ。
 だけど、むかつく。
「っざけんなよっ」
 思いっきり引き剥がして、そいつに殴りかかる。
「あぶな…っ」
 後輩は、慌てて体を退かして。
 それでも顔の横、少しかすっただろう。

「……気安く俺の名前呼ぶんじゃねぇよ」
「昨日、いいって言ったのに?」
「言った覚えはねぇよ。ただ、ちょっと頷いただけ。撤回する」
「あんなに欲しがってくれたのに…?」

 昨日のことが思い出される。
 一瞬、体が無駄に熱くなった。
「……別に、相手がてめぇだから欲しがったわけじゃねぇし。お前が特別ってわけじゃね
ぇよ。誰でもいいから」
 そう言って。
 俺らは下駄箱へと向かった。

「昨日、なんかあったわけ?」
 友達にそう聞かれ。
「別にー…。ちょっと帰りな」
 そうとだけ告げる。
 こいつじゃない…のか。
 あのとき、見てたやつ。
 誰なんだろう。
 駄目だもう、イライラする。
 そんな俺を見てか、友人もあまり声をかけずに無言のまま。


 
 昼休みのときだった。
「桐生―。先輩、来てっぞ」
 そう呼ばれ、ドアへと目を移す。
「……先輩…。どうしたんすか」
 わざわざ2年の教室まで。
「…あのさぁ。ちょっと」
 少し強めの口調でそう言うと、俺の腕を引っ張る。
 連れて行かれたのは、生徒会室だった。

 ちょっと、苦手だったりすんだよな。
 真面目なやつらの集まり…ってな感じじゃなくって。
 うちの生徒会、不良グループみたいだし。
 なぜか、気に入られてる俺は、まぁ、ほかのやつよりはいいかもしれないけど。
 
「桐生―…。お前さ。1年のやつに名前で呼ばせてるそうじゃん」
 生徒会長がそう俺に聞きだしたのを見計らってか、俺をここまで連れてきた先輩は部屋
を出て行く。
 2人っきり…?
「勝手に、あいつが呼んでくるんすよ。1回プールに突き落として、今日も、殴りました
けど」
 ちょっとしくじったけど?
「…まぁ、そいつはまたあとでしばき入れるからいいとして。名前のことはともかくな。
お前、そいつとなにかしたって、話、回ってきてるんだけど?」
 もうそんな話回ってんのかよ。
「まぁ、少しはしましたけど」
 さすがに、そこまで、この生徒会長様に縛られる必要はない。
 俺が、誰となにしようが勝手だろう?
「へぇ…」
 少し冷めたようにそう言うと、俺を壁に押さえつける。
「…桐生って、そういうこと出来るやつだったんだ?」
 確かにな。
 名前呼ばれるだけでも、あんなに拒むくらいだし?
 お堅いやつだと思われてるかもしれない。

 拒むつもりだったんだけどな。

「…桐生…。俺はお前が嫌がるなら、名前で呼ばねぇよ…?」
 そう言ってから、俺の口に口を重ねた。
「ん…」
 舌が入り込んで、自然と自分からも絡めてしまう。
「んぅ…っ…んっ」
 やばい…。
 頭がボーっとして。
 もともとこの人には、俺、わりとしたがってきてて。
 とは言っても、この人、俺のこと気に入ってくれてるっぽいから、逆に、いろいろ聞い
てくれたりもしてたけど。
 だからこそ、今、抵抗とかしづらい。
 この人、敵に回すの嫌だし。

 口を重ねたまま、先輩の手が、ズボンの上から股間を撫でて。
 もう片方の手が、俺の頬をそっと撫でる。
「っんっ…ん…」
 もう駄目だ。
 まぁいっか…。
 このまま、気持ちよくされてしまえばいいじゃん…?
 先輩が口を離して、俺のズボンを脱がしていく。
 だけれど、抵抗なんてする気はない。
 早く気持ちよくして欲しいと思うだけ。
 
 先輩の行動の一つ一つに見入ってしまう。
 そっと、先輩の手が、俺のに直に触れて。
 指先でなぞっていく。
「ぁっ…あ…せんぱ…」
 体が熱い。
 もう、すっげぇやばい状態なのに。
 指先で撫でるだけで、わざと俺の様子をうかがっているんだということに気づく。
「っはぁっ…あっ…」
 たまに、体が変にビクついてしまっていた。
「どうして欲しいんだ…? お前」
 耳元で、そう聞きながら舌を這わして。
 やんわりと、股間のモノを手で包まれる。
「ん…先輩…」
 視線を先輩に向け、目が合った。
「……桐生…。すっげぇ、イイ表情してんぞ…」
「なに…それ…」
「酔いまくりな感じ…」
 さすがに、少し顔を逸らす。
 耳元で軽く笑うのが聞き取れた。

 ゆっくりと、先輩の手が、俺のを擦り上げる。
「あっ…んぅっ…ぁっ…」
「お前、もっと嫌がると思っていままで手、出さなかったんだけどな…。1年に先越され
るとは思ってなかったよ」
 なにそれ…。
 前からこの人、俺のこと、狙ってたわけ…?
「こうゆうこと…桐生はよくしてたわけ…?」
 よくしてた…のか?
「んっ…わかんな…」
「俺に、隠したい…?」
 ホントに。
 よくわかんねぇって…。
「違……はぁ…っ…」
「まぁ、言いたくないならいいさ…」
 不良グループさえも取り仕切る生徒会長様とは思えない穏やかさで。
 まぁ、裏がありそうで恐いんだけど?
 俺のから手を離すと、その指を俺の口の中に差し込む。
「ん…」
 俺の顔をじっくり見ながら、口内を指先が探っていった。
「桐生―…。俺は、お前が嫌がるから名前で呼ばなかったし。他のやつらにも呼ばせない
ようにしてきたよ…。あの1年は…? お前が呼んでもいいって言ったとか、言ってるみ
たいなんだけど?」
「んっ…」
 俺の口から指を引き抜いて。
 足の間。奥へと唾液で濡れた指先を持っていく。
「どういうこと…?」
 そう俺の顔を見て聞きながら、指先が秘部をそっと撫でる。
「っぁっ…」
「桐生…」
 何度も入り口を行き来して撫でられて。
 ソコがひくついてしまっているのも自分でわかる。
「はぁっ…あっ…」
「こんなに、お前の体が慣れてるとも思ってなかったし」
 先輩がじっと見るから。
 目が離せない。
「んっ…はぁっ…もぉっ」
 先輩がまた、俺に軽いキスをして。
 俺の手に空いている方の指を絡めながら、ゆっくりと指先を差し込んでいく。
「んーっ…ひぁあっ」
 目を瞑った瞬間、溜まっていた涙が溢れていた。
「あっ…あっ…」
 不安が押し寄せる。
 よくわかんねぇけど。
 先輩の手を握り返してしまう。
「慣れてるんだろう…?」
 たしかに体は慣れてるのかもしれないけれど。
 全然、頭が理解できなくて。
 精神がおいつかなくて。
 気持ちが慣れていない。
 
 中をそっと出入りする先輩の指が気持ちよすぎて、よくわからなくなってきていた。
「はぁっ…ぁんっあっ…くんっ…先ぱぁっっ…」
「すっげぇ…かわいいな、お前…」
 涙を伝う俺の頬を先輩の舌が這う。
「ぁあっ…もっ…無理…っ」
 腰が、砕けそう…。
 いつのまにか、必死で、先輩の服を掴んでいた。
「ぁんっ…あぁ…ンっ…はぁっあっ」
「…かわいすぎ…」
 もう、余裕ない。
 一瞬、足がふらついた。
 それを見てなのか、俺の中から指を引き抜いて。
 後ろから抱きしめる。
「ん…っ」
「…いれて…いい…?」
「…な…に…」
 理解出来なくて、もう一度、聞いてしまう。
「お前ん中、入れてもいいかって」
「…そん…なん…」
 たぶん、父親としたことはすでにあるんだろうけれど。
 怖い…のか…?
 わかんねぇ。
「…無…理……」
「なんで?」
「だ……って…」
 抱きしめていた手を緩めて、俺らは向き合う。

 少しだけ、沈黙があって。
 それがどれくらいの時間たったのかわからなかったが、ドアをノックする音が響く。

「誰だよ」
 生徒会長がそう答えながらも、ドアを見て。
 こっちが開けようとするより先に、ドアが思いっきり開かれる。

「すいません、深雪先輩、返してくれますか?」
 笑顔でそう言ったのは、昨日の後輩。
 たしか樋口智巳……だった。

 俺の前に出るようにして、先輩が立つから、俺がなにか樋口智巳にツッこむことも出来
ず、引き下がる。
 俺は、体から力が抜けて、その場に座り込んでしまっていた。

「お前か…。1年で生意気なやつ」
「そうですか? あ、あんたが差し向けた人たち。そこら辺で寝転がってるんで」

 差し向けた人たち…となると、生徒会役員の誰かか。
 おおかた、生徒会室に、誰も近づけないようにとか言われてたんだろ。

「じゃあ、割と腕は立つわけか」
 なぜか、少し関心したように。
 見直したようにそう言った。

 だが、ホントのことだ。
 会長の下っ端を寝転がらせたとなると、ある程度、腕は立つのだろう。
 俺がプールに落とせたのは、奴が気を抜いていたからか。
 それともわざと落ちてくれたのか。
 
 今日の朝、あの距離感で俺のパンチをある程度、逃れられたのも、今思えばすごいだろ
うし。
 
 2人がしゃべる会話が耳に入らなかった。
 俺は、消化不良の状態やら、精神が参ってるやらで、体をずらし壁にもたれた。

 
 しばらくすると、2人は話のきりがついたのか、こっちを見る視線に気づき、顔をあげ
る。

 先輩は、床に座り込むと、俺の腕を思いっきり引っ張る。

「なっ…」
 先輩の股間に顔が近づいて。
 まさか、口でしろって?
 四つんばい状態。
 俺の顎を取って、先輩の取り出した股間のモノが口の前に差し出さる。
「…ちょ…っ…」
 俺がそっちに気をとられている隙に、後ろから下着を脱がされる。

 樋口智巳だろ…?
 なに? こいつら…。
 
 俺が驚いて、どうにも出来ないでいるうちにも、樋口智巳の指が、双丘の間に割り込ん

「なにす…っ」
 秘部に触れた指先が。
 入り口をさ迷って、そっと入り込んでいく。
「んぅんーっ…ぁっあぁあっ」
 また。
 体が痺れそう。
「桐生…」
 先輩が、俺の手を取って、先輩のを握らされる。

 緩やかに、1本の指で中を探らると、気分がおかしくなって。
 いやらしい気分になってきていた。

「桐生。口で、して?」
「っや…」
「出来るだろ…?」
 この人に逆らえる力が俺にはないから。
 
 いまはいいけれど、逆らったらどうなる…?

つい。
 舌が、先輩のを舐め上げていた。
「んっ…んぅっ…ぁっっ…んっぁんっ…んぅっ」
 意外に…。
 不味くないかも…。
 平気。
 舌を絡めていくと、先輩が、俺の口の中にソレを入れてくる。
「んーっあっ…」
 腰を動かされて、口内を出入りして。
 口の中も十分性感帯だ。
 
 変。
 俺って、口も結構、慣れてる…とか…?

「んっ…ぅんっ…んっ」
「…桐生…出すよ…」
 なに…。
 こういう場合、どうすればいいわけ? 
 わかんねぇよ…。
 少しヒートアップされて、中に。
 口の中に、出される。
「んっ…ぅんん…」
 先輩の出した精液が、口から溢れる。
 少し飲んじゃったかもしれない。
 
 口の方が一段落ついたからか、少し腰を引き寄せられるようにして、また後ろ。
 樋口智巳の指が2本に増えて少しだけ激しく中を動く。
「ひぁっ…ぁあっんっ…あっ…あっゃめっ」
 体がガクガクする。
 なんで…。
 こいつら、2人で俺をやってるわけ?
 
「入れるよ」
 樋口智巳がそう言う。
「なっ…」
 俺が振り返ろうとする顔を先輩がつかんで。
 上を向かせると、口を重ねる。
「んっ…んぅっ」
 意味わかんな…。
 指が引き抜かれて。
 樋口智巳のモノが押し当てられる感覚。
「んぅっ…ンゃんんっっ」
 俺は必死になっていた。
 指くらいならばまだ大丈夫だし。
 気持ちいいというのもわかってはいる。
 だけれど、それが男のモノとなると不安の方が強すぎる。
 逃げようと前に体を少し動かすが、先輩と重なった口が深く重なるくらいの効果しかな
い。
「んっ…んーっ」
 口が離れたのと入れ違いくらいのタイミングで、押し当てられていたモノが中にゆっく
りと入り込んできた。

「ぁっひぁあっ…」
 先輩の服にしがみ付く。
「かわいいよ…桐生…」
 俺の頭を先輩がやらしく撫でながらそう言って。
 しがみ付く俺の手に手を添える。
「ぁっあっ…抜…やめ…っ」
「大丈夫…」
 なんで。
 先輩が俺を子供でもあやすようにそう言って。
 
 不安。
 恐怖。
 わけわかんねぇ。
 逃げたいのに、下手に動くことも許されなくて。
 ただ、助けを求めるみたいに、先輩にすがりつく。
「や…っぁ…痛ぁ…あっ…抜けってばぁっ」
 なに俺、かっこ悪すぎ。
 泣きながら何言ってんの?

 初めての感覚。
 俺、父親としてなかったんだ…?
 父親とはどこからが夢なのかわかんなくなってるし。
 そうか。
 してなかったのか…。
 そりゃそうだよな。
 あいつ、いくらなんでも息子と最後までやるような性質じゃないもんな。

 だけど、それを今、理解したところでなんだってんだ。
 不安な要素が増えただけ。
 
 樋口智巳のが、俺の言葉を無視して奥まで入りきってしまう。
「ゆっくり…動きますから…」
 そう言って、そっと奥まで入りきったモノが少し引き抜かれる。
「あっひぁあっ…んぅっ…痛ぁっっ」
 あいかわらず、先輩は俺を宥めるようにして、頭を撫でてくれていた。
 
 ゆっくりとした速度で出入りをされ、内壁を擦られて。
 先輩の服にしがみついていた手の力が抜けてしまう。
「やぅっあっ…痛ぃっやっ…やぁあっ」
「抜き差しされると痛いんだ…?」
 そう言うと、樋口智巳は奥まで入り込んだソレで、ゆっくりと中をかき回す。
「あっあぁあっ…」
 そんなこと、出来るんだ…?
「ひぁっ…あっぁんっ…あっ…それっ…っ」
「なに…?」
「ぁっあっ…ぃいっ…」
 待てって。
 そんなこと、いちいち言わなくていいだろって。
 何、俺言ってんの…?
 
―イイときは、ちゃぁんと口で言うんだよ?―
 そっか…。
 あいつが、いつも言ってるからか。
 もう、恥とかなくなってくる。
 どうでもいいかもしんない。
 もともと恥じらいとかはない感じ。
 ただ、不安とか。
 感情に反比例した肉体とか。
 そういったモノが強すぎて、羞恥心なんてものを考える余裕もない。

「はぁっぁんっ…はぁっ…おかし…」
 先輩の手が、何度も俺の頭を撫でてくれる。
「桐生…。かわいすぎるな、お前…」
 俺は、先輩の腕に手を絡めて、後ろからの刺激に耐える。
「やぁっ…ぁあっ…変っあっ…駄目っ…」
「いいですよ…。深雪先輩…そのまま、解放しちゃって…」
「やぁっんっ…ぁんっあっ…駄目っあっ…あぁあっ…やぁああっっ」

 すっげぇ、気持ちよくて。
 イかされて。
 気が遠くなりそうだった。
 
 樋口智巳のが引き抜かれる感覚なんてもうわからなかった。

 放心状態だった。
 
 気持ちいいよ、そりゃ。
 俺だって、大して抵抗しなかったし、はじめはまぁいっかとか思ってた。
  2人も、俺のこと好きくさいけど。

だけど、こんなん強姦じゃねぇのかよ。

 男として。
 人間として。
 なんか、悔しくて。
 
 
 俺はなんでもない風に下着とズボンを履く。

 2人の方は見ないで。
 なにか言ってた気がする。
 俺に話しかけてるのかもしれないけれど、耳に入らない。
 
 俺は生徒会室を一人で出て、一番近くのトイレに逃げ込むようにして向かった。

 
 
 下手に長い距離を歩くのに耐えれそうにない。
 2人にどこへ行ったか悟られたくない。
 
 だからってトイレもどうかと思うけど。
 誰にも見られない一人の場所が欲しくて。

 個室に入ると、生理的に溢れた涙とはまた別の。
 悔しさとか、精神崩壊気味で我慢していた涙が、たくさん溢れた。

 しゃがみこんで、ただひたすら溢れる涙を感じ取る。
 
 なにがこんなに泣けるのか、よくわかんなくなってきていたけれど。
 それでも、溢れてくるもんだから。
 俺は、肉体が感じ取って溢れるがままの涙を、受け入れていた。

 


 どれくらいの間、そこにいたのかはわからない。
 教室に向かって、足を進める。
 
 かったりぃな。
 もう帰ろうか…?
 午後だけだから、2時間だろ?
 確実に1時限はサボったし。

 部室へと、足が向かっていた。
 
 
 
 誰もいないプールサイドで。
 寝転がると思い出してしまう。
   
悦んで求めてしまった自分が憎かった。