「ナツ…」
「なに…?」
正月早々、こんな人、ありえないだろ。
年末から実家に帰って来ていた俺は、ナツに誘われるがまま初詣へ。
わざわざ少し離れた所。

電車内はすごい満員だ。

なんでもないことのように俺は尻を撫で回されて、顔を俯かせる。

「っんっ……」
「どうした?」
どうした? じゃねぇよ。
マジですか。
やばい。
ズボンの上からなでられるだけで、頭がボーっとする。
後ろにあった手が、前に回って、すでに硬くなっている股間のモノを布越しに撫で上げていく。
「…っっ」
俺はナツの腕を掴んで。
それでも、ぎゅうぎゅう詰めの電車の中、顔も上げれずに、声を出さないよう息を洩らす。
「はぁ…っ…っ…」
あろうことか、ズボンのチャックを下ろして直に取り上げた手が、俺のを擦り上げていく。
「ぁ…っ…」
嘘だろ…こんな人ごみで…。
そりゃ、逆にこんだけ満員なら、視界には入らないだろうけどっ。
「っン……ん…っ」
指先が亀頭の部分を撫でて、ぬめりを取られてしまう。
「あ…っ…はぁ…っ…次、降りるぞ…っ?」
ナツのことも見れずにそう言うと、
「…どうして?」
どうしてって。
わかってるくせに…っ。
「気分、悪い?」
そう言って、ナツは俺の頬に手を当てる。
「え…」
「熱いね…。貧血?」
その手と、俺が掴んでる腕と。
嘘。

だって、俺の触ってんのって…っ。

誰…。
指先が、奥の入り口を這い、少し入り込む。
「っっ!!!」
体がビクついて、ナツにしがみ付く。

「…深雪ちゃん…?」
「んっ…ぅんっ…」
さっき、俺の股間から取ったぬめりと、暖房で熱くなってるせいか、汗ばんだ指先がすんなりと奥に入り込んでくる。
「あ…っ…」
駄目…。
声、出る…っ。
「んっ…ぅんっ…はぁっ…」
涙が溢れてきていた。

大体、なんで俺、気づかなかったんだよ。
全然、ナツと違う。
指の動きとか、感触とか。
でも、こうも密着してていつもと違う体制だと、触りにくいかもしんねぇし。
というか、それよりも、こんな人ごみの中でってことの方に意識がいってて…。

今はそれどころじゃないっつーか、感じちまうしっ。
「あ…っ…!!」

もともと密着状態に近かったナツの胸元に顔を埋め、助けを求めるようにナツの腕を自分の股間に持っていく。
「…深雪ちゃ…っ!?」
すると、気付いてくれたのか。
指が引き抜かれていくのは、ナツがそいつの手を取ってくれているんだろう。
その刺激に、また体がびくついていた。

俺はもうなんにも出来ないまま、ナツの腕に体を抱きかかえられる。

こんだけ満員なら、男同士で少し体を寄せ合ってても、気にならないはず。

ナツは、俺とくっついたまま、体の位置を変える。
「…なにしてんの…?」
冷たいナツの声。
俺へ向けてじゃないだろう。
痴漢への言葉だ。
「…警察に突き出す? 大の男が、襲われたって、泣きつくの?」
静かにそう言う低い男の声が聞こえた。
そんな恥ずかしいことで警察に行けるわけがない。
わかってて、男を狙ってんのか?
…俺とナツの様子見て、関係になんとなく気付いてたんだろうか。
「…警察には行かないけど。ってか、反省とか罪悪感とか、ないんだ?」
「は?」
すると、ボキって、鈍い音が響いた。
「っいっ…!!??」
そいつが少し大きく声を洩らす。
ナツに抱かれたまま顔もあげられず、状況はいまいちわからなかったが、周りの数人は、なにか気づいたかもしれない。


関節、イった…?
「…言いたきゃ言えば? 駅長さんに泣きつきなよ。男に痴漢しようとして、指折られましたって」

それなら、万が一、本当に言われても、俺が襲われて泣きついたということにはならない。
触られたから、指を折っただけという、なんとも男らしい感じに。
折ったというのも、正当防衛で済まされる範囲だろう。

答えを聞く前に駅に着き、俺らは人を掻き分け、電車を降りた。

みんなが向かう神社はまだ先で、他に降りる奴らはいない。


ナツに腕を引かれるがまま、駅のホームに用意された待合室に入り込み、ベンチへと座らされる。
こんな駅、こんな時間帯に誰も降りるはずもなく、見た感じ俺らだけのようだった。

頭がうまくはたらかない。

「ねぇ、どうしてすぐに助け求めないの?」
っつーか、最初の方の時点だったら、自分ででも逃げられただろう。
「…っ…ナツがしてんのかと思ったんだよ」
「……ふぅん…。…ココ、たくさん触られた…?」
濡れたままの股間を、ナツの手が包み込んだ。
「あっ…っん…まぁ…」
「そう…」
ナツは、前にしゃがみ込んで、俺のを口に含む。
「ちょっ…んぅんっ…!!」
ジュプジュプといやらしい音を立てながら、激しく舌と唾液を絡めて、吸い上げられていく。
「ぁあっ…やっ…っあっっばかっ…あっそんなにっ…ぁあっ」
足がガクガクして。
ナツの髪の毛を掴みあげる。
こんなの、されたことない。
激しすぎる。
喉と唇で挟むようにして、何度も出入りを繰り返す。
ぬめった口内の感触がたまらなく気持ちよかった。
「やぁあっ…あっ…やっ…もぉだめ…っっ…あっ、あぁあああっっ」

なんだかんだで痴漢の愛撫で感じさせられていたこともあり、すぐにでも、ナツにイかされてしまう。

放心状態だ。


ズボンと下着を脱がされて。
こんなとこで…?

そりゃ、電車内から見られることはないと思けど。

けど、そんなこと考えていられなかった。


ナツは、俺の足もとに跪いて。
足を持ち上げるとそっと、靴と靴下も脱がしていく。
「はぁ…ナツ…」
俺の足の甲にキスをして。
舌が這う感触に体がビクついた。
「んぅっ…んっ…」
「ん…また、硬くなってきた…」
足を支えていない方の手の指が、俺のをそっと撫で上げる。
「んぅっ…ナツ……」
「…なに?」
「はぁっあっ…っ」
奥を撫でた指先が、そっと入り込んできて。
舌先は、ゆっくりと、這い上がり俺の太ももに口付けた。

中の指が、優しく探るように回される。
緩やかで少しじらされるような感覚だけれど、ものすごく頭がボーっとした。
心地よくてたまらない。
さっき口でしてくれたのとは対照的だ。

「ぁんっ…あっ…はぁ…っっ」
「ねぇ…気持ちいい?」
「ん…っ…あっ…ぅんんっ…」
「どっち?」
「あっ…いいっ…はぁっ…あんっ…」
ゆっくりゆっくり、中を掻き回されて。
激しすぎないその感覚に、酔わされていく。
「あんっ…あっ…ぁんんっ…なっちゃぁ…俺っ…あっ…なんか…っ」
「どうしたの…?」
「変っっ…あっ…ぁあんんっ」
「んー…いつもより、エッチな声、出てるね」
やっぱり…。
ナツにもわかってしまうのだろう。
「あっ…いやっ…あぁあっ…これっっ…」
「どうして?」
「なんかっ…あっ…はずかしぃっ…」
「ねぇ、深雪ちゃん…。違うでしょ? 俺と…さっきの人」
急に、ナツは年下らしい甘えた感じで俺に問う。
「え…?」
「一緒? 俺の指と、さっきの人の指…」
示すように、ナツの指が俺の感じるところを優しく突く。
「あっ! あんっ…そこっ…」
「うん…ココ、好きでしょ…? 軽く突かれるのも、優しく擦られるのも。深雪ちゃん、いつもココ、やさしくしてあげると、トロトロになっちゃって、やらしぃ声、たくさん出してくれるもんね」
ナツって、本当に全部わかっててやってるんだ?
知られすぎてて恥ずかしいのに。
ナツの言うとおり、もうトロトロでわけわかんねぇし。
「ぁんっ…やあっ…ゃンっ…あっ…なっちゃぁっ……」
「どうして欲しい…?」
「はぁっ…んっ…もっとっ…ぁっもっと入れてぇっ」
「んー、指でいいの?」
「やっ……っもぉ、ナツのっ…」
ナツは、指を引き抜いて俺をジっと見下ろす。
「…深雪ちゃん、どこに欲しいの?」
「んっ…ここ…っ…」
椅子の上に両足を乗せ、開脚しつつもナツに場所を示していた。
ものすごく恥ずかしい格好だという認識は薄い。
そんなこと、今はもうどうでもよくなっているから。
「入れるよ…」
ナツのが押し当てられて、ゆっくりと挿入されていく。
「ぁっあっんーっ…」
奥へと入り込んでくるソレを受け入れながら。
ナツの肩に手を置き引き寄せる。
「…ぁあっ…ぉく…っ…」
「感じる?」
「っあっっ…ぃいっ……もぉ、動いて…」
「うーん、駄目かな」
その言葉に、目を見開く。
「え…」
「俺と。痴漢と。間違えちゃうんだもんね」
「だって…っ」
ナツの熱くて大きいのが、中を埋め尽くしたまま、奥まで入り込んで。
それなのに動いてくれない。
お前だって、こんだけ大きくしてるくらいだし、本当はやりたいんだろう?
「もぉ…ぃいから…っ」
「よくないよ?」
「っ…場所が場所だったから、そっちに意識いってて…まさか、ナツ以外のヤツだなんて…思わなかったんだよ…っ」
「俺が、深雪ちゃんの頬撫でたから? 両手塞がってんのわかって、やっと気付いたんだ?」
「…っまだ…そんときは、入れられてない…し…っ」
「入れられてたら、さすがに違い、わかった?」
「わかったよ。ナツの指かそうじゃないかぐらい…っ」
「でも…ココ、触られるだけじゃあ、気付かないんだねぇ」
そう言うと、俺の股間のモノを中途半端にゆっくり擦りあげていく。
「あっ…ぁあっ…」
後ろは動いてくれなくて、前だけ。
「はぁっやっ…やめ…っ…ナツっ…」
「腰…動いちゃってる…。それにぎゅうぎゅうに締め付けて。かわいいね。トロトロ溢れてきてるよ?」
「っ…なっちゃ…っもぉ、っ…んっ…やだっ…」
俺の言葉を無視して、ナツは股間のモノと、もう片方の手を衣類の中へと潜り込ませ、胸の突起を撫でる。
「はぁっ…んっ…ゃっ…やっ…もぉっ…」
涙が溢れて。
理性なんてもう吹っ飛んでしまう。
自分が腰を動かすとわずかに中でナツのが擦れて、気持ちよかった。
その刺激がもっと欲しくていやらしく腰がくねる。
「あっ…やめ…っ…もぉ、やめ…やぁあっ…ぃっちゃうからぁっ…」
「気持ちいいんだ…? いっちゃいなよ…?」
こんな中途半端な刺激でイかされたら、イっても消化不良だろう?
「いや…っ…なっちゃぁ…っはやくっ…はやくしろよぉ…っ」
「しろよって? 人に物を頼むときって、そんな言い方?」
「あっ…して…っしてくださぁ…っ動いてっ…」
「しょうがないねぇ」
やっとナツは、俺の中に入り込んだモノで中を掻き回す。
出入りされると、いやらしい音が耳についた。
「はぁっあっ…あんっあーっ…なっちゃぁっ…もっとぉっ」
俺の言葉に従ってか、何度も激しく中を突き上げてくれ、視界が失われかけた。
「あぁあっ…んっっそこっ…」
「んー…わかってるよ」
「ぃいっあっ…なっちゃンっ…ぃくっやぁあっ」
「深雪ちゃん…ホント、かわいいねぇ。いいよ? イこ?」
「ひぁあっ…あっぁんっあっ…あぁあああっっ」

ココが駅だという事も忘れて、大きな声をあげてイってしまう。
ナツのが中に流れ込んできていた。

待合室の中だし、ドアもしまってるし。
外は夜とはいえ、風の音も響いている。
俺の声なんてかき消されているだろう。
ぐったりしてしまう俺の頬を、ナツは優しく撫でてくれていた。



そっと、薄目を開くと、少し俯きがちな、切なそうなナツの表情が見えた。
見てはいけないものを見てしまったような。
そんな気がして、俺は顔を逸らし、もう一度、目を瞑った。
存在を確認するように、ナツにしがみつく。

「…ナツ…?」
「ん? どうした? 深雪ちゃん」
ほら。
いつもみたいな口調。
なんでもないフリしてくれる。

本当は、絶対、気にしてるはずなんだ。
俺が、痴漢とナツとを間違えたこと。
「……なっちゃんは、特別だから…」
「どうしたの、急に」
「……なんでもないけど…。…普段だったら、間違えるはずなかった」
そういう俺の頭を優しく撫でてくれていた。
「わかってるよ」
「…ホントだよ…。あんな場所じゃなきゃ、間違えるはずない」
「ありがとう」
「こんな風に、俺のこと優しく抱いてくれんの、なっちゃんだけだから…」
「うん…」


見なければよかった。
あんな切ない表情。
見なければ、こんな苦しい思いしなかった。
だけれど、ナツが傷ついてんのに、気付かないでいるわけにもいかないだろう。

「なっちゃん、俺…」
「わかってるよ。大丈夫だから。気にしないで」
「だって」
「どうしたの? 今日は。やたら気にしてくれるね。冗談で、ちょっと言っただけ。本当に、間違えて怒ってるわけじゃないよ?」
「間違えてないから…っ」
「うん…。わかってるし。そう言ってくれるのも嬉しいから。大丈夫。深雪ちゃんが心配することはなにもないよ」

優しく頬を撫で、そっと口を重ねてくれる。
あぁ。
なんだか今だけは、恋人同士みたいだ。
そんなんじゃないのに。

体中が熱くなる。

「深雪ちゃん…心配しないでね」
いつもいつもナツの言葉に救われてきていた。
ナツにとっては、負担かもしれないけれど。
俺にはナツが必要なんだよ。


「……甘えてもいい…? なっちゃん…」
「いいよ」
本当は困ってるのかもしれないよ?
こんなの、平気なフリしてるだけかもしれない。
ナツのこと、都合よく扱いすぎだ。
悪いとは思ってる。
それでも、俺は、ナツから離れられないでいた。