体が熱くてボーっとしていた。
掃除時間がちょうど終わったところ。
もともと教室掃除だった桐生が自分の席についていて、俺も、その隣へと座った。
「雅紀…」
桐生が声をかけてくれて。
それでもなにも聞けないのか、ただ黙ってくれていた。
「桐生…。宮原先輩に会ってきた」
「うん…」
「…付き合うことに…なったから…」
桐生はにっこり笑って。
「よかったじゃん。おめでとう」
そう言ってくれた。

ぐったりした状態で、机に突っ伏す。
体力の問題じゃない。
精神的なものだろう。

まだ、体が、顔が熱くって。
ほてった状態。
あぁ。悟先輩にもお礼言わないと…。
そもそも、悟先輩はなんで協力してくれたんかなぁ。
俺が、宮原先輩を呼び止めたのがわかったから?
だとしても、いきなりあんな大げさに口ふさがれて。
生徒会室まで用意してくれて。

…宮原先輩から、俺のことでなにか聞いてたりするんだろうか。
もしそうだとしたら、ちょっと嬉しいかもしれない。



桐生と一緒に部室へ行って。
プールサイドに出ると、悟先輩がすでにいた。
「悟先輩…」
俺は、一人で悟先輩の方へ行く。
「今日…ありがとうございました」
「いや。いいけどさ。……お前さぁ。秀一が好きなの?」
唐突に、そう聞かれ、顔が熱くなってしまうのを感じた。
「好きっていうか…っ…。なんですか、いきなり」
「いや…。一応。あいつの噂とかは耳にしてるだろ? 来る者拒まずで手を出すってさぁ」
「はい…でも…っ。俺から行ったわけじゃ…」
そう言うと、悟先輩は、驚いたように俺をジっと見る。
「なに…? どういう意味?」
「いえ…少し前に、宮原先輩の方から、来たんですよ」
悟先輩はにっこり笑って、俺の頭を叩く。
「なら、大丈夫そうか。で。伝言。部活が終わったら、生徒会室に来て欲しいって」
「…部活が終わったら…ですか?」
「あいつ、今日、補習あるみたいだからな」
そう教えてくれる。


「あの…生徒会の役員って…」
悟先輩は、今日、確かにそう言っていた。
「…まぁ一応な。桐生のお目付け役だよ。部活中の。もちろん、他にも仕事してるけど。だから、秀一とは、それなりに交流あるし、俺は…3年の中では、結構有名なんだけど、一応付き合ってる奴がいるから、秀一と仲良くしてても、目、つけられないんだよ。知ってる奴は、生徒会役員だって分かってるしな」
「付き合ってるって…男ですか? 有名ってことは、この学校の人なんですよね」
少し目線をそらして、それでも悟先輩は言ってくれるような雰囲気だったから、俺は言葉を待った。

「…俺が1年のときに、生徒会長やってたやつだから。ちょっと有名なんだよ」
「じゃあ、もう卒業されて…」
「いや…。そんとき2年で俺より1つ上なんだけど……留年してるから、まだ3年」
悟先輩に年上の恋人がいたなんて…。
「どんな人ですか。見てみたいです」
「…雅紀って、みかけによらず結構ミーハーだったりするんだ?」
ミーハーってほどではないが、人の情報は気になってしまう方だ。
「知りたいですよ。イメージ的には綺麗系のかわいめなんですけど、でもそれだと、生徒会長って感じではないですよねぇ…。しかも悟先輩より年上なわけだし」
「…そのうち、生徒会室で会うんじゃねぇの? 結構、不良っぽいやつら多いだろ、ここの生徒会。唯一、真面目そうに見えるのが秀一で。もう一人さ、見た目、かわいい感じのやつ、まぎれてっから。普段、生徒会として顔出してないから、わかんないだろうけど」

 かわいい感じのやつ…。
 今日、生徒会室にいた、かわいらしい人を思い出す。
あの人。
雰囲気的には生徒会の人じゃなさそうだった。
だけれど、俺に、宮原先輩が来ることを教えてくれて。
それを知ってるってことは、悟先輩と交流があったわけで。

…やっぱりあの人、生徒会の人だったんだ?
でもって、悟先輩の…彼女?

「あの…なんか、髪の色少しだけ明るくって、背がこんくらいの…」
俺は、自分のおでこくらいに手を当てて、その人の身長を思い出しながら示す。
「…会ったの?」
「今日、生徒会室に行ったときに、なんかかわいらしい人がいて…。宮原先輩がもうすぐ来るって教えてくれたんですよ」
「…あぁ。そいつだな。大丈夫か? なんか、されたり…」
「…しないですよ。されたりって……あの人、する側の人なんですか」

悟先輩が、なにも言わないということは肯定なんだろう。
あの人が攻める側…?
「悟先輩って…」
「……年上の生徒会長、押し倒す勇気ねぇよ」
「…ですよね…」
でも、あの人、かわいいから…。
「秀一も、結構サドだから、まぁがんばれよ」
なにを言ってるんだろう、この人は。
にしても、秀一も…って…?
あの元生徒会長さんもそうなのだろうか。

…これから、いろいろと悟先輩に相談に乗ってもらうのもありかもしれないな。

「ありがとうございます」
そう告げ、俺は桐生のいる方へと戻った。


部活中も、宮原先輩のことばかり考えてしまう。
集中できなかった。
まぁそれほど頭を使わなければならない部活でもないし、いいんだけれど。

他ごとを考えながら、なんだかんだで部活終了時間になる。
着替えて、悟先輩の言ってくれたように、生徒会室へ向かう。

けれど、徒会室なんて堂々と行けるわけじゃないし。
人の目だって気になる。
早く行かないと…とは思うんだけど、少し手前の3年の教室あたりで止まってしまう。
誰かに入っていくところを見られたら。

さっきは、6時間目の直後だったということもあって、人の目が気になることはなかったんだけど。
それに俺、宮原先輩のことでいっぱいいっぱいだったし。

彼女になったからって、いきなり生徒会室に堂々と出入りしていいわけでもない。
だいたい、ホントに宮原先輩がいてくれるんだろうか。
宮原先輩だけがいるとは限らない。


少し、遠めに生徒会室の扉が開かないか見守って。
しばらく時間が経ってしまう。


すると、そこの扉が開いて。
メガネをかけた宮原先輩。
いつもと違う。

視線が、こっちに向いて、目が合う。

「…雅紀」
ため息をつくようにして、メガネを外す。
足を進めれないでいる俺のもとへと来てくれた。

「どうした? 入ってきてくれればいいのに」
「…生徒会室には入り辛いです…」
「…少ししたら慣れるだろうね。行こ?」
そう言って、下駄箱の方向へと向かう。
「…どっか行くんですか…?」
「明日、休みだろう? 一緒に、ホテル行こう」
俺に聞くというよりは、それは肯定で。
俺は一人で戸惑ってしまう。
「え…ホテルって…っ」
「ラブホ、行ったことない?」
「っない……ですけど…。お金も持ってないし…っ」
宮原先輩は、軽く笑って俺の頭を撫でる。
「お金なんて気にしなくていいから。ね?」

実際、お金の問題ではない。
そんなところへ行くだなんて。
「携帯、持ってる?」
「…持ってないです」
「親に。友達の家に泊まるって、連絡入れておこう?」
そう言うと、俺に携帯を貸してくれた。
「…泊まるんですか…?」
「ホテルに泊まるかはそのときしだいかな。でも、一緒にいよう? 俺の家にそのあと来てもいいから」

俺は宮原先輩に言われるように、家には友達の家に泊まると連絡をした。
携帯を返してからは、緊張して、俺からはなにも話せなくなっていた。

二人で、校門を出て。
近くの駅に置いてあった原付に二人で乗って。
「雅紀。ちゃぁんとつかまってるんだよ?」
「は…い…」

宮原先輩って、原付登校してたんだ…?
そのギャップにもなんだかドキドキしてしまう。

宮原先輩の原付に乗って、しがみついて。
以前の自分からは考えられなくて。
頭がボーっとした。

夢みたい。

初めに、来てもらえたときだって、もちろん信じられなかった。
だから、信用しないでいようって思ったのに。



このまま。
ホテルに行ってしまうんだろうか。
緊張する。
どうすればいい…?

そうこうしているうちにも、ホテルについてしまう。
俺はなにも考えられないで、
「ついたよ」
そう言われ、やっとそっと手を緩める。

降りる俺の手を取って。
宮原先輩は慣れた感じで中に入り込むと、
「どの部屋がいい?」
そんな風に俺に聞く。
俺は、恥ずかしくって、選ぶ余裕はもちろんない。
むしろ、他のカップルに居合わせないかとか、そういったことを気にしてしまう。
「わかんないです…」
「そう」
宮原先輩の顔も見れず、部屋選びも出来ず。
恥ずかしく顔を俯かせていると、少しだけ笑って。
宮原先輩は、俺の手を引いた。
「じゃあ、俺が決めるね?」
そう耳元で伝えてくれて。

鍵を取ると、一緒にその部屋まで移動。
絶えられない沈黙が続くが、なにか話そうとも思えなかった。

いざ、宮原先輩が部屋の鍵を開け、手を引かれると、少しだけ躊躇してしまう。
「…来てくれないの?」
そう言われ、俺は顔を俯かせたまま、首を横に振り、前へと足を進めた。

ドアが俺の後ろで閉まって。
宮原先輩が、俺の体をそのドアに押し付けながら、無理やり顔を上に向かせて口を重ねる。

「んっ…」
口を重ねたまま。
俺の後ろで、鍵を掛ける音が響いた。

後戻りできない状況に、体が熱くなっていく。
舌が入り込んで。
宮原先輩の手が俺の髪を撫でて梳かしてくれる。
「んっ…ぅんっ…」
舌が絡まって。
頭で物事を考えてられなくなる。

そっと口を離されて。
すぐさま俯く俺の耳元で
「緊張してる…?」
そう聞く。

緊張していて、答えることも頷くことも出来ない。
こんなんじゃ、また俺、宮原先輩につまらない想いをさせてしまいそうで。
だけれど、どうにもできなくて。
そんな俺の心情が分かってなのか、そっと俺の首筋に手を触れて。
「…プール入ってたから、体も冷えてるしね。…シャワー浴びてくる?」
そう聞かれ、俺はやっと頷いた。

「一緒に行く? 一人がいい?」
一人がいい…とも言えなかったけれど、宮原先輩はわかってくれたのだろう。

「…じゃあ、俺は待ってるから。暖まっておいで?」

そう言ってくれて、俺はやっと一人でお風呂のある部屋まで行った。

信用していないわけではないが、なんとなく鍵をしめてしまう。
俺は一人で、シャワーを浴び、湯船につかり、体を温めていた。

こんなにも、緊張するだなんて思っていなかった。
思えば、いつもは宮原先輩に流されてやってしまう感じだったから。
こんな風に改めてするのって、ものすごく緊張する。
場所もホテルだし。
恋人になったわけだし。

緊張したまま、体が落ち着かない。
だけれど、あまりに待たせてしまうわけにもいかないから、俺は風呂を出て、宮原先輩のいる部屋に行く。

「また、服着たの? どうせ脱いじゃうのに」
そう言って、俺を手招きする。

正面の少し大きめのモニターではAVが流れてきた。
いやらしい声が響く。
俺がそっちに目を向けたのに気づいたのか、
「…雅紀も、あんな風になっちゃうのかなぁ?」
少し企むように俺に聞く。
冗談だってわかってるのに、なにも言い返せない。

AVの映像を止めて。
立ちすくむ俺の元へと来てくれる。

「雅紀…」
少し無理やり俺の体を担ぎ上げて、ベッドへと乗せてしまう。
大きいベッドのちょうど中心くらいに俺の体を寝かせて、上からジっと見下ろされていた。

「どうしたの? 雅紀…」
俺の右手を宮原先輩がとって。
俺の耳元で、その手に指を絡めながら、握ってくれる。
「雅紀…」
握った手側の耳元で俺の名前を呼んでくれて。
宮原先輩の右手が、俺のズボンの上から股間を撫で上げた。
「っ…」
宮原先輩とは逆側に顔を背けて、その刺激に耐える。
「…雅紀…。ずごい硬くなってるよ…ここ」
自分でもわかっていたことだが、それを耳元で指摘され、羞恥心が高まった。
何度も、何度も、ズボンの上から擦られて。
体が少し震える。
「んっ…あっ」
つい声が洩れてしまい、俺は宮原先輩に取られていないほうの手で、自分の口を押さえた。

それでも、宮原先輩はなにも言わないで、ズボンのホックを外し、チャックを下ろしていく。
直に取り上げられたソレが、宮原先輩の手で扱かれて体中が熱くなる。
「んっ…ぅんっ…くっんっ…」
宮原先輩は、握っていた俺の手を開放して、ズボンと下着を俺から剥ぎ取っていった。

体が落ち着く暇がなかった。
常にどきどきしっぱなし状態。

シャツのボタンも外されて、前をさらけ出す。
宮原先輩の指が胸の突起を何度も転がして。
それだけなのに、体がビクついてしまう。
「んっ…んっ…」

「どうした…? 雅紀…」
今度は俺の右足を持ち上げて。
あろうことか、その指へと舌を這わす。
「なっ…」
びっくりして、その様子を見てしまう。
宮原先輩の舌が、俺の足へと絡まって。
その情景にも、鼓動が高鳴る。

「んっ…ぅンっ…」
その舌先が、ゆっくりと俺の足を這い上がっていく。
太ももを撫でられて、おへその下辺りにまで舌を絡める。
「…水着だもんねぇ。ココらへんなら、隠れる? 跡、つけよう?」
そう言うと、水着で隠れそうなへそ下あたりをキツく吸い上げられる。
「んーっ…くンっ…!!」
痛いくらいに吸い上げられて、体がビクついていた。

「…残った」
楽しそうにそう言って。
力の抜けている俺をそのままに、宮原先輩は自分のシャツを脱ぐ。

男の上半身なんて、部活で見慣れてるのに。
この人だとドキドキしてしまう。

ホテルに設置してあったローションを宮原先輩が自分の手に垂らして。
ローションを纏ったその手で、俺の胸元をなでていく。


「んっ…」
冷たさで体がビクついたが、すぐその冷たさにも慣れる。
が、その感触には慣れれずに、ぬめった手が胸の突起を掠めるたびに、体が小さくビクついてしまっていた。
「ぅンっ…ぁっ…んぅっ!」
両手で口を押さえて、必死でこらえる。
そんな俺の様子を、少し楽しむように見下ろされ、余計に恥ずかしくて、涙が溢れる。

もう一度、ローションを取り直した宮原先輩は、今度はその手で俺のモノを握りこむ。
上下に擦りあげられると、静かな部屋にローションが絡まるような濡れたいやらしい音が響いた。
「んっ…ぅんっ…ンっ…んーっ」
何度も何度も扱かれて。
涙が流れ落ちる。
「聞こえる…? いやらしい音…」
耳元でそう教えてくれながら、何度もその音を響かせる。
「やっ…く…んっ…やっ…めっ…」
俺は、少しだけ手を離して否定の声を出す。
「なに…?」
「もぉっ…やめっ」
「嫌なの…?」
くちゅくちゅと音が響いてくる。
こんなに恥ずかしいのに、イってしまいそう。
「なにが嫌…? この音?」
「ぁあっ…んっ…んぅっ…ぃきそぉっ…」
それだけ伝えて、口を塞ぐ。
「んー…。そっかぁ。イっちゃいそうなんだ…?」
俺は、素直に頷いて示す。
「じゃあ…手、離して?」
俺は、つい目を見開くようにして、宮原先輩をジっと見る。
「…イってもいいよ。だから、代わりに、その口を押さえてる手、どかして…?」
そう言いながら、そっと手の動きを止める。
とりあえず、俺は手を離すが、もちろんそんなのは恥ずかしい。
「…宮原先輩…っ俺…っ」
「手で押さえちゃ駄目だよ…?」
そう強く言ってから、また手で擦りあげていく。
「ぁっあっ…やっ…」
つい、反射的に手で口を押さえてしまうと、宮原先輩は耳元で、
「…手、離して…?」
もう一度、そう言うもんだから、俺は首を振って嫌がってみせる。
「聞かせてよ…。雅紀の声。聞きたいな…」
そう頼むように言われて、俺はそっと手を離した。
「ぁっんぅっ…あっんっ…」
「我慢しないで…もっと、声だして?」
「やっぁあっ…んっ…あっ…んぅんんんーっ…」

俺は宮原先輩の手でイかされて。
放心状態だった。
「恥ずかしいの? 雅紀…。今日は誰にも遠慮せず、たくさん声出して、いいんだよ…?」
「でも…っ…」
「まぁいいよ。後ろ使うと、それどころじゃなくなるもんね…?」
俺をからかうようにそう言って。
膝を軽く曲げさせられ、ローションでベトベトになっている手が、俺の足の付け根辺りを撫でていく。
「…ココ。ひくついてる…」
場所を示すように入り口をその指先が行き来する。
「あっ…」
「なに…? 入れて欲しいの…?」
入れて欲しい。
俺は、そう視線を送る。
「…ちゃんと口で言いなよ」
にっこりそう笑われてしまう。
「だって、そうでしょ? 雅紀は今日、俺の恋人になったんだよ。だから、素直に欲しがって?」
言うまで入れてくれないのか、何度も指でソコを撫でられて、体が熱くなる。
「ぁっ…んっ…」
「腰、また動いてる。早く言って? それとも、焦らされたいのかなぁ?」
少しだけ、さ迷うようにそこを撫でて遊んだ指先は、そっと俺から離れていく。
「っ……」
「言わない子にはあげない」
子供に言い聞かすようにそう言われてしまい、少し涙が溢れる。
「…泣いても駄目…。言ってごらん…?」
宮原先輩は、俺の目元にキスをしてくれて。

俺は、空いている宮原先輩の左腕に、手を絡めた。

「っ…入れ…て…っ…」
恥ずかしくて、溢れる涙を舌で拭われて。
少しだけ、精神が落ち着く。
が、恥ずかしいことには変わりなかった。
「宮原せんぱ…っっ…」
「なに…?」
俺の言葉を聴くように、口の近くに宮原先輩が耳を傾ける。
「入れて…っ…」
「ここに?」
また、場所を確かめるように、指がヒクつく俺の入り口を少し強めに撫でて示す。
「ぁっそこ…にっ…」
「うん…。いい子…」
そう言って、一旦、手が離れたかと思うと、ゆっくりと指ではないなにかを挿入していく。
「ぁっあっ…あぁああっ…」
宮原先輩の耳が近くにあるのに、大きな声で喘いでしまう。
恥ずかしくって、俺は宮原先輩の腕を掴んでいない左手で、宮原先輩の体を押し退けようとしていた。
「やっやめっ…やっ…なにっ…」
「んー…? なんだろうねぇ?」
「っわかんなっっ…」
「じゃあ、見てみよう?」
挿入する動きを止めて、俺に覆いかぶさっていた宮原先輩は、体を横へとずらす。
俺は上半身を上げて、ソコを確認した。
鮮やかなオレンジ色の、棒状のモノを宮原先輩が掴んでいる。
「…なに…」
「バイブ」
「バイブって…っ」
もちろん、バイブの存在は知っている。
が、それを今、入れられるとは思っていなかったから。
そこまで太くないサイズのバイブだった。


「はい。確認できただろ? もう一度、寝ようか?」
俺にそう言い聞かせて、俺は言われるがままにわけもわからず上半身をまたベッドへと寝かす。
横から宮原先輩が、俺を覗き込んで、頭を撫でてくれていた。
「もうちょっと、入れるよ…?」
また。
バイブが中へと入り込んでくる。
「んーっ…やっ…ぁっあっ…」
「すごいねぇ、雅紀。どんどん入ってくよ…」
「ぁああっ…奥っ…っおくっやだぁっ…」
「んー…? 奥? 奥好き…?」
たぶんそれほど奥まで進んでないんだろうけれど、どんどんと奥の方まで入り込んでいくような感覚。
「やぁんっ…やぁっっ…」
「嫌なの? 好きなの?」
「ぁっぁんっ…好きぃっ…」
「そうだね。雅紀…すごい奥まで入っちゃった…」
そうとだけ言って、いきなり電源を入れ、振動が響く。
「やぁあっやだっ…ぁんっあっ」
「どうして嫌…?」
「んーっ…ぁっいっちゃうっ…やだぁっ…」
「気持ちいいんだ…?」
「だめっぁあっ…ぃっちゃうっっ…やあっぁんんっ」
「もうだめ。俺のこともイかせて」
そう言うと、振動を止めて、そっと抜き去っていく。
「いやっ…」
「…どうしようか、雅紀。俺のこと、イかせてくれるって、分かってる?」
俺は、力なく頷いた。
「じゃあ、自分で入れて…。騎乗位、わかるだろ?」
もう一度、頷いて。
寝転がる宮原先輩のズボンに手をかける。
ものすごく緊張していた。
けれど、宮原先輩をイかせたい想いもあるし、そういうつもりで今日も来たわけで。
さすがにこれ以上、先送りにするわけにもいかない。

俺は取り出した宮原先輩のモノを確認してから、そっと体を跨いで。
手で支えながらゆっくりと、自分の中に収めていく。
「ぁっんーっ…んぅんんっ」
「……雅紀。声は殺さないで。何度も言わせないように」
今度は厳しくそう言われ、俺は緊張したまま頷いていた。

「わかったら、そのまま、奥まで全部入れてごらん」
「は…ぃっ…ンっ…あっぁあっ…やぁああっ」
ゆっくりと奥まで全部入り込み、俺は次の指示を求めるように宮原先輩を見ていた。
「なにか、言いたそうだね、雅紀…」
「声…抑えないと、たくさん、出ちゃうから…っ」
「いいよ?」
「うるさいし…っ」
「うるさくなんかないから。抑えないように。…自分のいいように、腰、動かしてごらん…?」

そう教えられ、俺は宮原先輩の腰辺りを掴んで、自分の腰を少し前後に動かした。
「ぁっんっ…はぁっあんっ」
熱くて大きい宮原先輩のモノが、俺の中に入り込んでいて。
俺が腰を動かすたびに、擦れて気持ちよくてたまらない。
「ぁんっ…あっ…ぃいよぉ…っ…はぁっあんっ…あっぁンんっっ」
宮原先輩が、俺の股間を指先で撫でていく。
「ぁんっあっ…気持ちぃいっやっ…やぁんっ」
「雅紀、腰、すごい動いちゃってるねぇ…」
「やっやぁっ…止まんなっ…ぁあっ…やぁあっ」
「んー…? 止まんないの? 下から突いてあげようか?」
下から。
想像するだけでゾクゾクする。
「ぁっ突いて…ぇっ…ぁあっ、突いてよぉ…っ」
「いつから雅紀は、俺にタメ口使うようになったんだろうねぇ」
「ごめ…なさっ…あっぁあっ…突いて…くださぁっ…」
宮原先輩は下から手を伸ばして俺の頬を撫でた。
「かわいいねぇ…。いいよ」
俺の腰を宮原先輩が掴む。
揺さぶりながら俺のことを突き上げて、俺は自分の体を支えるように、前屈みになりベッドに手をついた。
「ぁあっあっ…んぅんっ…せんぱ…ぁっぁんっあんぅっ」
「雅紀…ちゃんと、自分でも動くんだよ…?」
「ぁっはぃっぁあっ…ぁんっあぁっやっぁあっ」
体がガクガク揺さぶられて、気持ちよすぎる。
「ぁんっあっぃいよぉっ…あっぃくっ…ぃっちゃうっ」
「雅紀…中に出してもいい…?」
にっこりと笑って見上げられる。
いいのかどうかなんてわからなかった。
だけれど、断ればまた、宮原先輩はイかずにやめてしまうんじゃないかって。
そう思うと、俺はいいとしか答えられない。
「ぁあっ…ぃいですっ…あっぁあっ…出してぇ…っ」
「ホント、かわいいよ…。雅紀」
「はぁっあっ…んっ…宮原…先輩ぃっ…あっぃっちゃうっ…やぁっやぁあああっっ」

中に流れ込んでくるのを感じて、少し安心する。
が、頭が上手く働かず、そのまま宮原先輩の方へと倒れこんでいた。
その体をギュっと抱きしめてくれる。

「雅紀…」
「ん……」
「これからはもっと虐めてもいい…?」
抱きしめられているせいで、宮原先輩の表情は伺えなかった。
虐めるって…?
「…どういう…」
「好きだから。縄で縛られても、耐えられる?」
好きだから。
そう付け足されてしまうと、どうにも弱い。

「…は…い…」
後先考えず、ついそう答えてしまっていた。