誰かに相談したかった。
生徒会が絡むことだから、出来れば桐生に。
だけれど、桐生は桐生でなんか悩んでるみたいだし。

また、俺はいつ宮原先輩が出てくるんじゃないかって。
毎日、緊張しっぱなしだった。
だけれど、もう3週間たつが、なにも音沙汰なしだ。

気まぐれだったのだろうか。
1回きり。
なんでもない行為なのかもしれない。
宮原先輩はいろんな人とやってるって噂を聞くし。
実際、やり慣れてるっぽかった。

俺はあの人にとって手の出しやすい相手だったのかもしれない。
桐生のおかげできっかけがもてて。
それだけだ。


「…俺、好きな男が出来たわけ…」
朝。
桐生が俺にそう告げる。
「な…ホントに?」
その話題で、俺も、宮原先輩のことが気になっているのだと、桐生に告げることにした。

「あのさ…俺も、前々から言おうか言わないでおこうか迷ってたことがあって…っつーか、相談しようと思ってたんだけど、お前が退くかもしれないから…。実はさ…俺も気になる人がいてさ…」
「俺の知ってる人? 別に、退かないよ。俺だって男、好きになってんだし」
「……生徒会の人…なんだけど」
「…生徒会…? 雅紀、生徒会と仲イイわけ?」
 桐生が驚いた表情を見せた。
 俺が、生徒会と繋がってるってわかったら、あまりいい気はしないだろう。
「……知り合ったきっかけは、俺が桐生の友達だからって声かけられて…。生徒会のやつらはみんな俺のことも知ってるみたい。でも、俺、別に桐生の情報、流したりしてねぇからっ…」
「かまわないって。俺のことは気にすんなよ。会長とは最近、落ち着いてきてるっつーか、結構、諦めてくれてるみたいだし。まぁ、俺が誰かと付き合い出したらまた騒がしくなるかもしんないけど」
 そう言ってくれ、安心した。
「で、生徒会の誰なんだ? 聞いてもいいわけ?」
「…副会長…。知ってるだろ…?」
「…今年から副会長になった人…だよな…」
桐生の声が、なんだか緊張しているのが、俺にまで伝わっていた。
「…宮原先輩だよな…?」
確認を取る桐生の顔も見れずに頷いた。
「…桐生…。わかってんだよ、あの人が遊び人で、いろんな後輩に手、出してて…。軽い人なんだって…。やめた方がいいかな…。会長に言われて、桐生の情報が聞き出したいだけなのかもしれないし」
「…話したりしたんだろ?」
「というか…もうやっちゃったんだけど…」

そう告げると、一瞬会話が途切れた。
少したって桐生が口を開く。
「…何度もそういうことしてるわけ?」
「別に、1回しかしてないけど…。もうだいぶたつよ。それからなんにも音沙汰なくて…。桐生をきっかけに声かけられて、ただやられただけかもしんないし、ホントに遊ばれたって気がするけど…。…気になるんだよ…」
「雅紀が、好きなら押してった方がいいと俺は思うけど。疑って、諦めて、後悔するのって、苦しいし。もちろん、押していって、遊ばれて、後悔するかもしんねぇよ。でも、同じ後悔なら、俺は押す方を選ぶね」

 桐生はそう言ってくれた。
 つまり、応援してくれている…と受け取ってもいいのだろう。

 押してくって?
 桐生はよく生徒会に出入りしてるみたいだけど、俺が急に行けるようなところでもないし。
 宮原先輩を訪ねていったら、目立ってしまうだろう。
それにまだ、この人のこと、ちゃんと好きかわからないし。  
結局、どうすればいいのかわからない。  
だけれど、聞いてくれる人がいただけで、少し気分が落ち着いていた。


 部活時間。
 部室へと向かうが、桐生の姿が見当たらなかった。
 俺より、先に教室出てったのに。

 俺は先に着替えてプールサイドに行き、体を慣らしていた。

 しばらくたって、やっと桐生が顔を出す。
「遅かったな、桐生」
「あぁ、ちょっと寄り道。雅紀、昨日はなにやった?」

 昨日、学校を休んでいた桐生に、俺が答えようとしたときだった。  
周りがざわつくもんだから、目を向けると、そこには宮原先輩の姿。  
もう一人は見たことはあるが知らない先輩だった。

 なんで…?
 悟先輩がなにか話しに行くのがわかった。
 俺は、なんでもないフリをして、部活に取り掛かる。
 それでも気が気じゃなかった。

 しばらく泳いでいたが、やはり精神が落ち着かない。
 俺は、更衣室へタオルを取りに戻った。

「久しぶり」
 その声に、少し暗い更衣室内を見渡すと、宮原先輩。
「な…んで…」
「雅紀に会いに来たんだけど?」

 そこからはもう強引だった。
 俺の体を一気に壁へと押し付けて、口を重ねられる。
「んっ…ぅンっ…」
 それだけで体が熱くなって。
 頭がボーっとした。

 宮原先輩の手が、水着越しに俺のを何度も撫で上げる。
 口を離されて、耳たぶに舌を這わされて。
 いやなくらいに体がビクついてしまっていた。
「…ぁっ…」
「感じる…? 雅紀のココ…すごい熱いね…」
「っ…ん…もう、やめてください」
これ以上されたら、止められないし、この人にハマってしまいそうだ。

「だったら、もっと抵抗したら…?」
 宮原先輩が、俺の胸元に舌を這わす。
「っなっ…ぁ…」
 熱い。
 自分の体が冷えているせいか、ものすごく熱を感じた。

「んっ…ンっ…」
 こんなトコロ、感じるわけ…?
 軽く宮原先輩の歯が胸の突起に当たって、その刺激に体がビクついた。
「あっ!…んっ……も…っやめっ…」
「…ほら…硬くなってきてるし。気持ちいいんだ…? ここも、使おうか…?」
 水着越しに俺のを撫でていた手が、そっと奥を撫でる。
 水着の上から、入り口を撫でられるだけで、体がこわばる。
「っ……どういう…つもりで…っ」

 一旦、俺から離れると宮原先輩はドアの鍵を閉めた。
「…駄目…? 雅紀としたいんだけど」
 どうして、俺は拒まないわけ?
 この人は、遊び人で。
 俺、遊ばれてもいいわけ?
 駄目だろ?
 この人、好きになっちゃいけないだろって思うのに。

 でも、桐生は押していけって…。
 だけれど、やっぱり自信なんてない。
 恐いし。
 
「っ…俺、もう部活戻るんで…っ」
 俺の方へと戻ってくる宮原先輩の横をすり抜けて、ドアの鍵を外しにかかった。

「…駄目…」
 後ろから、そのドアが開かないように押し付けられて。
 鍵を開けようとする手を取られる。
 振り向くと、宮原先輩がにっこり笑って俺を見下ろした。

「…騒がないでくれる?」
 宮原先輩が、俺の水着を脱がせていく。
 しゃがみこむ宮原先輩に、じっくりと俺のモノを見られて、体が思うように動かなかった。
 金縛りにでもあったみたいな。
 動けない。
 宮原先輩の手が、俺の太ももを撫でて。
 ゆっくりと、指を舐めるしぐさが視界に入った。
 その指が、俺の入り口を撫でていく。
「っんっっ…やめてくださ…」
「んー…? ホントに止めちゃっていいの…?」
 立ち上がって、俺のことを見下ろして。
「とりあえず、1本、入れようか…?」
 ゆっくりと、指先が入り込んで、体が強張る。
「やっ…んっ! …んーーっっ」
「雅紀…ココ、すごい熱いね…」
「ぁっ…んっ…んっ…」
 俺は、その刺激に耐えるよう、宮原先輩のシャツにしがみついた。
「ね…誰かと、しちゃった?」
 俺は、首を横に振って示す。
「そぉ…? じゃあ、自分で弄った…?」
「なっ…」
 つい顔を上げると、企むように笑って、俺の口に軽くキスをする。
「図星…?」
「っんなこと…してなっ…」
「ふぅん…」
 指が中をゆっくりと蠢いて、体中が熱くなった。
 気持ちよくて。
 涙が溢れる。
「ぁっ…んっ…ぁあっ…」
「どうした…? 指1本で、もうこんなに…」
「ンっ…あっ…んっんっ…」
 宮原先輩が緩やかに、それでもイイところを擦るたびに、とめどなく声が洩れる。
 手で押さえても、殺せないくらいだった。
「声、出しちゃいなよ…。ココ、いいんでしょ…」
 宮原先輩が俺の手を取って。
 感じる箇所を、俺に教えるように指先で突く。
「っあっ…ぁあっ…んっ…やっ…」
「気持ちイイ…? ここ…」
「ひぁっ…んっ…やっやぁあっ…っンっ…だっめ…っ」
「どうして?」
「っ…ぁっあんっ…も…やめっ…ぁあっあっ…あぁあああっっ」


 イイトコロを何度も突かれて、指先1本でイかされてしまう。
 足に力が入らず、その場に座り込んでしまっていた。
「もう、イっちゃったの…? ずいぶん、エロい体になったね…雅紀」

 宮原先輩がしゃがみこんで。

俺の頬に舌を這わして伝う涙を拭った。
「後ろだけで、こんなに感じて、すごいね…。もう1本、足すよ…?」
 俺に教えるようにして、2本の指を入れていく。
「んっ…やっ、やあっ…!!!」
「イったばっかで、体おかしいかな…? 大丈夫だから…ゆっくり、動かすよ…?」
「やっ…っぁっ…あっんっ…」
緩やかに、2本の指で中を回されて。
体が熱くって。
やばい。
本当におかしくなってきた。

前みたいに、変なこと口走りそうで。
そう思うのに、止まらない。

「ぁっあっ…やぁっんっ…せんぱっ…ぁあっ」
「どうした…?」
「やめっ…もぉっ…」
このままじゃ、おかしくなる。
「嫌なの?」
「おかしぃっ…あんっ…ぁ……んっあ…んっ…」
「ん…目、とろけてきたねぇ…。気持ちいい?」
 律儀にも、頷いて示してしまう。
 もう、気持ちいいことしか考えられそうになかった。

「はンっ…ぁっあんっ…いいっ…あぁんんっっ」
「…全然、違うだろ…? 自分でするのと…」
「っ…あっ…」
「ね…。ここ、自分で使ったんでしょ?」
 強い口調でそう言われ、焦らすようにイイところを避けられる。
「やっやだっ…」
「本当のこと、言ってごらん…?」
「んぅっ…そこ、やっ…やあっ…やだぁっ、はやくっ…」
「…自分で、使った…?」
「っ…違っっ…あっしてなっ…」
「ホント…? じゃあ、誰かにされた?」
「されてなっあっ…もぉっやっ…」
「ホントのこと、言ってくれないと…してあげないよ…?」
「やっ…あっ…少し…しかっ…」
「そう…したんだ…?」
「ぁんっ…しましたぁっ…あっん、もぉやっ…」
「ん…いい子だね、雅紀は…。どう使ったの…?」
 宮原先輩は、俺の中から指を引き抜いて、俺の頬を撫でる。
「っ……な…んで…っ言ったのに…っ」
「俺の、入れやすいように自分の指で、拡げて…?」
「っそんな…っ」
 宮原先輩は俺の手を取って、指に舌を這わす。
「っ…ん…」
 丁寧に舐めあげられた指先を、後ろの入り口へ導かれる。
「じゃ、入れて…?」
 この人の口調はなんだか、従わなければならない強さがあった。
 
 ゆっくりと、自分の中へと、1本指を押し入れていく。
「んっ…んぅんっ…」
「そう…2本目も入れてみようか。出来るよね…?」
 
宮原先輩は、2本目の指を入れる俺の頭を撫でて、ジッと見守ってくれていた。
「はぁっ…あっ…ぁっんっ…」
「じゃあ、拡げてごらん…?」
 2本の指でそこを拡げると、その間へと宮原先輩が指を押し込んでいく。
「ぁっあっ…無理っ…」
「大丈夫…。一緒に奥まで入れようか…」
「んぅンっ…はぁっあっ…やぁうっ…」
「どこが、気持ちいい…?」
「ぁっそこっ…ぃいっ…あっぁあっ」
「俺の…入れて欲しい…?」
「ぁっんっ…欲しぃっ…もぉっ…」
「ん…? 我慢出来ない…?」

 涙で視界がぼやける。
 宮原先輩が、俺の目をジッと見てくるのがわかった。
「っ…我慢…出来なっ…ぁっ…」
「3週間…ずーっと、待っててくれた?」
「んっ…ぅんっ…」

 頷く俺の頭をそっと撫でて、ゆっくりと指を引き抜く。
 それにあわせて、俺も自分の中から指を引き抜いた。

 駄目だってわかってる。
 性欲のせいかもしれない。

 この人は、桐生のこと、関係ないって言ってるけれど、わからないし。
 桐生だって、ホントは俺とこの人のこと、100%賛成してるとは思えない。
 生徒会の人だし。
 軽いって。
 悪い人だって、噂が絶えないから。

 だけれどもう、この人のこと。

 俺は、好きになってる。

俺を引き寄せて、うつぶせに寝かされる。

「…腰、上げて…?」
「ん…」
俺は先輩に従って、腰だけを突き上げた恥ずかしい格好をとっていた。
先輩のが押し当てられて、ゆっくりと入り込む。
「ぁあっあっ…んーっ…やっ…奥っやぁっ…」
「ん…? 奥で、感じるようになったんだ? 一人でどんだけ遊んだのかなぁ、雅紀は」
宮原先輩のが、ゆっくりと出入りを繰り返して、奥へ奥へと入り込んでくるような感覚だった。

「ぁんっあんんっ…やっぁっあぁあっ…」
「んー…? 気持ちイイ…?」
「は…ぃっ…ぁんっ…あっ…ぃいよぉっ…」

何度も、出入りを繰り返され、方向感覚が狂った。

気持ちいい。
あれ以来、何度も一人Hをして、こっちも使ったけれど、全然違う。
たまらなく気持ちよくて。
俺って、こんなにエロいっけ。

恥ずかしいのに止まらなかった。

「ぁンっ…ぁあっ…先ぱぃっ…やぁっ…ぃくっ…」
「んー…? いっちゃう…?」
 先輩は、いったん動きを止めると後ろから俺を抱き上げる。
「んっ…」
 そのまま、後ろから抱きしめられて。
 耳元に舌が這う。
「雅紀……好きだよ…」  
 
思いがけない言葉に、体がこわばった。

「…っそんなの…っ…今、言われても困ります…」
「エロくて考えまとまらない?」
 軽く笑ってそう言うと、俺の股間を擦り上げた。
「んっぁあっ…んっ…やぁっんっ…」
「しょうがないね…」
 
 少し強引に、また俺を後ろから押し倒して。
 俺は床に這い蹲るようだった。
 内壁をゆっくりと、宮原先輩がかき回していく。
「はぁっぁんっあっ…あぁあっ…」
 そっと、髪の毛を撫でられて、背中を指先が這って。
 焦らされているのが、わかった。

「っ…やっ…やぁあっ…」
「なにが、嫌…?」
「っ…んっ…もっとっ…おねがっ…」
「もっと…どうして欲しいのかなぁ、雅紀は」
 もっと。
「もっとぉ…っ。強くっ、突いてくださぁっ…」
「ふぅん? どこ?」
 探るように、宮原先輩がじっくりと動いて。
 たまにすごく感じるところを擦っていった。
「ぁっぁンっ…そこっ…あっ…そこぉっ…」
「ここ?」
「はぃっ…そこっ…あっぁあっ…ぃいっ…ぃくっ…ぁんっ…いくっ…」
「もう、一人でイっちゃうんだ…?」
「ぁあっ…ごめ…なさっ…もぉ、駄目っ…いくっいっちゃぅっ…やぁっあぁあああっっ」


 イってしまう俺の中から、宮原先輩は自分のモノを引き抜いた。
 俺はぐったりと、その場に仰向けになる。

 俺だけ、イってしまって。
 罪悪感みたいなものを感じる。  
 
と同時に、俺相手じゃイけないのだろうかって。  
そういった不安も入り混じった。
   
イけなくても満足だったり、そういう日があったり。  
それは理解できるけれど、不安な要素のひとつだった。


 宮原先輩は俺の頭を撫でてくれて。
 
 駄目だと思うのに好きだということを実感してしまう。

「もう…やめてください…」
 傷つきたくないし、不安だし、恐いし。

 わかってる。
 好きになるべき相手じゃないんだって。
 のめりこむ前に、避けたいのに。

 そんな俺を、裏切ってくれる。
「雅紀…好きだよ。…雅紀は? 俺のこと、どう思う?」

 好き。
「っ…好きに…なりたくないんです…。もう、離れてください…」
「つまり、近くにいたら、好きになってくれそうなんだ?」
「……離れてください…。やっぱり俺……関わりたくないんで…」

 
 
桐生にも、押していけばって言われた。  
そう言ってくれた。  
俺だって、宮原先輩が好きになっている。
 
 
だけれど、苦労するし、傷つくだろうし。  
別の人と、平凡に付き合って行く方が幸せになれるような気がするから。
 
桐生がああ言ってくれたのだって、俺を気遣ってだ。  
本当は、俺がこの人を気にしてるって聞いて戸惑ったはずだろうし。  
ただ、俺のこと否定できなかっただけだろう。

「……ホントに…俺と、関わりたくないとか思ってるんだ…?」
「……というか…生徒会とですけど…俺は、そんなレベルの人間じゃ…」
「また、会いに来たら迷惑?」

 また会いに来られたら。
「そんなこと…されたら、俺、勘違いするんで」
「勘違い?」
「……ホントに…宮原先輩が俺なんかを好きになってくれてるんじゃないかって、勘違いしそうだから…。本気にしちゃうんで、止めてください…」

 宮原先輩は、俺を見下ろして、そっと口を重ねた。
「…じゃあ、また会いに来る…。本気になって…?」
 そんな風に言われたら。  

 もう、駄目だ。  
宮原先輩はもう一度、軽く俺にキスをしてから立ち上がる。
「じゃあね…」
 俺に手を振って別れを告げて。

 どうしよう。
 
 もし。
 本当に、この人がもう一度、俺に会いに来てくれたら。

 たぶん、完全に抜け出せなくなってしまうんだろう。
 
 ただの憧れで済ませて置きたかったのに。  
宮原先輩のことが、好きになってしまっていた。